サッカーにまつわるフォントの話~プレミアリーグとリバプールFC編~

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タクヤKOP
ビートルズからリバプールFCのサポーターになった珍しいKOPです。戦術的なことはあまり得意でないので、クラブやリバプールという街を色んな角度から掘り下げていきたいと思います。

デザインにそれほど馴染みのない人でも「フォント」や「書体」という言葉を聞いたことはあると思います。

※「フォント」と「書体」は本来は区別される言葉ですが、これはデザインの専門的な解説記事ではないのでラフな意味で使っています。

フォントとは、ひとことでいうと「ある統一感をもってデザインされた文字の種類」です。基本的に、世の中のあらゆる「文字」は決められたフォント(書体)が使われていて、その種類は無数に存在しています。有名なものでは、和文フォントであれば「MS Pゴシック」「メイリオ」「ヒラギノ」、英文フォントであれば「TimesNewRoman」「Helvetica」「Arial」などですが、これらは普段意識しないでも目にし、実際にそのフォントで文字を入力していることでしょう。

サッカーの世界でもあらゆるところで「文字」が登場します。海外サッカーの中ではもちろん欧文フォントが中心ですが、様々な種類を目にすることができます。

この記事では、そんなサッカーにまつわる「文字」をプレミアリーグとリバプールFCを中心に語っていきたいと思います。

ユニフォームと背番号

サッカーで使われる「文字」といって、真っ先に思い浮かぶのがユニフォームの背番号(数字)と選手名(アルファベット)ですね。とくに背番号は、試合中に選手を識別するためだけに留まらず、ときに選手自身を象徴するほど重要な意味を持つものです。

今では当たり前になっている選手個人に背番号が割り当てられる固定番号制は、欧州サッカーの長い歴史において実はここ最近の話です。それまでは試合ごとにおよそポジションに応じて1~11までの背番号を割り当てていました。(このあたりは各国または年代によって諸説あります)

固定番号制をいち早く取り入れたのがイングランドのプレミアリーグです。リーグ発足2年目となる1993-94シーズンに選手ごとに番号を固定にし、ユニフォームにも背番号と名前がセットでマーキングされるようになりました。これによって、それまでの「番号とポジション」から、「番号と選手」の結びつきが強まったのはいうまでもありません。当然、名前入りのレプリカユニフォームがよく売れるようになったということです。

Embed from Getty Images

プレミアリーグのフォントは全クラブ統一

さらにプレミアリーグでは、1997年から全クラブのユニフォームで使用する数字とアルファベットのフォントを統一します。色のパターンは数種類用意されていて、ユニフォームごとに決められます。

プレミアリーグはキャプテンマークも全クラブで共通のものを使用していますが、こうした取り組みはプレミアリーグのブランドイメージの確立に大きく寄与します。2017-18シーズンからはリーガ・エスパニョーラもリーグで背番号の統一をはじめましたが、いかにプレミアリーグが早くからリーグとしてブランディング戦略に力を入れていたのかが伺えます。

また、統一フォントはブランディング効果だけでなく、スポーツショップにおいてどのクラブのユニフォームにも背番号と選手名をマーキングできるという利点があります。ショップはより多くの在庫を持てるようになり、ユニフォームの販売数も伸びるようになりました。

2017-18シーズンからは3代目となるフォントが使われていますが、97年の初代からどのように変化してきたのか見てみましょう。

初代プレミアリーグ統一フォント(1997年~)

まず、初代のプレミアリーグ統一フォントはこんな感じです。

初代プレミアリーグ統一フォント(1997年~)

画像出典:Premier League Launch Fresh Font – SoccerBible

なかなかトラディショナルな雰囲気が出ています。

欧文フォントには大きく分けて「セリフ体」と「サンセリフ体」があります。和文フォントでいう「明朝体」と「ゴシック体」のようなものです。

この初代の英字は、セリフ(文字のうろこ)はついてませんが、セリフ体の特徴である文字の線の太さに幅があるフォントです (AやNやVなどが分かりやすいですね) 。 そして数字も太い部分と細い部分の差がはっきりしています。なお豆知識ですが、これらの太細は手書きで書くときに力が入る部分が太くなるようになっています。

2代目プレミアリーグ統一フォント (2007年~)

そして、2007年に登場した2代目がこちらです。ついこないだまで約10年間使われていただけあって、とても馴染みがありますね。

2代目プレミアリーグ統一フォント (2007年~)

画像出典:Premier League Launch Fresh Font – SoccerBible

これは当時おこなわれたロゴ変更にあわせて変わったもので、英字はタイトルスポンサーであるBARCLAYSのロゴで使われているフォントをベースにアレンジされているようです。

プレミアリーグの旧ロゴ

文字の線の太さがほぼ均一のサンセリフ体ですが、初代とは逆に今度は微妙にセリフ(文字のウロコ)がついています。一気に現代的になった印象がありますね。

このフォントを開発、実際にユニフォームにマーキングする番号を製造しているのが、Sporting iD(前身はCHRIS KAY)という会社です。ここではプレミアリーグはもちろん、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグのバッチなども作っています。

追記)19-20シーズンよりAvery Dennisonという会社へ変更されています。

以下は、Sporting iD社が公開している動画で、実際にジェラードのユニフォームにプリントしている様子です。

また、各ショップ向けにはアプリケーションガイドが配布されています。

New Product Application Reminder

このようにしてリーグが中心になって統一的なレギューレーションを作り、各クラブやショップに対してオペレーションを徹底しているのです。

その後、2013年に材質の変更などはありましたが、デザインは基本的には変わっていません。

3代目プレミアリーグ統一フォント(2017年~)

そして、プレミアリーグのフォントは2017-18シーズンから新しくなりました。


プレミアリーグは16-17シーズンからリーグのロゴをはじめとしたブランドデザインが一新されていましたが、その中でオリジナルのフォント「Premier Sans」が制作されています。

これにはクリエイティブエージェンシーのDesignStudioや前述のSporting iDに加え、フォントメーカーのMonotype社が参加していますが、その中心的なデザイナーがなんと日本人の欧文書体デザイナー、 大曲都市(Toshi Omagari)さんなのです。あのプレミアリーグの新しいフォントを作ったのが日本人だなんて、とても誇らしくないですか?

参考記事:Premier League: a brand identity that works hard, plays hard

Man uses his Mobile Phone outdoor

画像出典: Premier League: a brand identity that works hard, plays hard | Monotype

この 「Premier Sans」はプレミアリーグの新ロゴの文字はもちろん、WEBサイトや放送画面など、あらゆる場面/デバイスで使用されています。ユニフォームは1年遅れで新フォントに対応した形となっています。(ユニフォームでの英字は「Premier Sans Condensed Bold」という文字幅が狭めの種類が使用されているようです)

さて、続いてはリバプールFCで使われているフォントを見てみましょう。

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