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フットボールクラブのファンには愛称が付いていることが多々あります。ACミランのファンなら「ミラニスタ」バルセロナのファンであれば「クレ」というように、クラブごとに愛称は多種多様、様々です。
そこで今回は、リバプールファンの愛称である「KOP」について掘り下げていきます。Twitter上でもよく見かけるこの表現ですが、由来や歴史、現地との用法の差などについて興味深い内容がいくつかありました。
(本文ではできるだけわかりやすい文章になるように、座席を指す文脈で使う際にはKop、リバプールファンを指す用法の際にはKOPと表記を変えて記述しています。)
目次
- KOPの由来
- リバプールとKopの歴史
- 現地と日本の用法の違い
KOPの由来
実はKOPは元々、リバプールのファンを指す言葉ではありません。Kopは「Spion Kop」の略であり、イギリスのスポーツスタジアムにある急斜面のスタンドの俗称です。そしてその最たる例がリバプールのホームスタジアムであるアンフィールドのコップスタンドです。
Embed from Getty Imagesなぜスタジアムの一角をこのように呼ぶのかというと、その傾斜の険しさを、第二次ボーア戦争の最中である1900年1月に勃発したスピオンコップの戦いの舞台である、南アフリカのレディスミス近郊にある丘に例えているからです。
まとめると、KOPは元々Spion Kopの略称であり、スタジアムにある急斜面のスタンドを指す言葉である。そしてSpion Kopという言葉の由来は南アフリカの丘にあり、転じて、その急斜面のスタンドで応援するファンをKOPと呼ぶようになった、ということになります。イギリスのマージーサイドにあるフットボールクラブのファンへの愛称が、元々は南アフリカで起こった戦争に起因しているとはなんとも興味深い話ですね。
ちなみにSpionはオランダ語で「スパイ」や「見張り」、Kopは「突出部」や「丘」という意味になります。イギリスとオレンジ自由国との間で起きた、南アフリカが舞台である戦争の名称になぜオランダ語が出てくるのかというと、当時南アフリカに住んでいたボーア人の書き言葉が1920年頃までオランダ語だったためです。
リバプールとKopの歴史
最初にSpion Kopに例えられた急斜面のスタンドは、現アーセナルの前身であるウーリッジ・アーセナルのスタジアムにある、メナー・グランドだとされています。現在、既にメナー・グランドは存在しないため、コップスタンドを持つ現存する最古のスタジアムはアンフィールドです。
Embed from Getty Imagesアンフィールドの急斜面のスタンドであるKopは、当時動員数に比べて座席が少なかったため、より沢山のファンが観戦できるよう1906年に建設されました。最初の呼び名はKopではなく、「Oakfield Road Embankment」というものだったそうです。正式にKopと名称が改名されたのは、1928年にスタンドが27000人収容に拡張された際だとされています。
1989年4月15日に起きた「ヒルズボロの悲劇」を受け、事故原因究明のために調査・作成されたテイラー・レポートによって、イングランド1~2部所属のクラブは観客席を全て椅子席へ改装することが義務づけられたため、アンフィールドは1994年に改装されました。これに伴ってKopの座席が12390席増加し、アンフィールドのKopは当時のイギリスで最も規模の大きいKopとなりました。なお、現在ではトッテナム・ホットスパーが新スタジアムを建設したことにより、イギリスで最も大きなKopを持つスタジアムはトッテナム・ホットスパー・スタジアムとなっています。
どのような基準を以てしてスタンドをKopと呼ぶのかについては様々な議論がありますが、アンフィールドのKopが代表的なものであることは間違いありません。
現地と日本の用法の違い
アンフィールドのKopスタンドで頻繁に観戦し、熱心にチャントを歌うリバプールファンは伝統的にKopitesと呼ばれてきました。複数形ですから、一人の熱心なリバプールサポーターを指す際にはKopiteと呼ぶことになります。
現地でのKOPもやはり、アンフィールドでの試合をKopスタンドで年に何度も観戦し、熱い声援を送るリバプールサポーターを指します。KOPは複数形の表記がなく、KOPの状態で複数扱いになる名詞として使われています。つまり、Kopites≒KOPという意味です。
日本ではTwitterで頻繁に見かけるように、単にリバプールファンを指す際にKOPという言葉を使います。これは前述した現地の用法に照らし合わせると、サポーターの集合体を指す言葉を一人のサポーターを指す際にも用いている点、年に何度もKOPスタンドで観戦しているわけではない人にも用いている点の2つの意味で、厳密にいえば間違った使い方であると言えます。
ですが、日本特有のKOPの用法は既に定着しているものですし、分かりやすく、かつ馴染みやすい、使い勝手の良い言葉です。ですから、日本人同士で自己紹介やフットボールの話をする際に間違っていることを気にしたり、使用を控えたりする必要は特にないと思います。
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