リバプールとレッドソックスの強化体制を比較する~『客観』から『主観』へ揺れるFSG~

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ヘンリー

ヘンリー

ヘンリーです。FSGやオーナーであるジョン・ヘンリー関連の記事を書いていこうと思っています。基本まったりとやっていきます。

お久しぶりです。ヘンリーです。

これまでの記事では主に、FSGやリバプールのフロントの人物を紹介する形で記事を書いてきましたが、今回の記事では、本格的にリバプールとレッドソックスを比較する内容です。

記事の流れとしては、最初にメジャーリーグ(以下MLBとします。)の移籍の仕組みを前置きで説明し、レッドソックスの強化体制の変遷を紹介いたします。それを踏まえてリバプールの強化体制の変遷を紹介し、最後に考察、まとめとなっています。

今回、強化体制を比較するというテーマで書かせていただきましたが、野球界とサッカー界では、移籍の仕組みや、環境面で違いがあり、一概には比較できないと思います。そんな状態なので一部分かりにくい点や少し強引な部分もあるかと思いますが、最後までお読み頂けると幸いです。

では、始めます。

1前置き

今回の記事では、レッドソックスとリバプールの強化体制の比較を基に進めていきますが、MLBとサッカー界では、補強に関して違いがありますので、それを前置きとして説明いたします。

MLBにおいて選手を補強する際には主に以下のやり方があります。

  • ドラフト(新人選手の補強)
  • FA(契約が満了した選手の補強)
  • トレード(選手同士の交換)
  • ポスティング(海外の選手を補強する際、サッカー界で言う移籍金を所属球団に払い、その後選手との契約交渉に入る)

細かくするともっと多くのやり方があるのですが、今回はこの4つの中からFAとトレードが多く登場します。

FAとトレードについてザックリと説明すると、以下のようになります。

① FA

契約が満了した有力選手の獲得が可能。有力選手を獲得する場合、8年〜10年の長期かつ年平均20億円以上の年俸が必要。選手が活躍出来なかった場合、高額な年俸を長期に渡って払い続けなければならないリスクがある。(いわゆる不良債権化)

② トレード

MLBでは一般的に、有力選手のトレードを行う際には、自チームの有望な若手と交換する形が多い。この場合は有力選手が前所属球団と結んでいる契約を引き継ぐ形になるため、比較的安い年俸だった場合は契約満了まで安く雇うことが可能。獲得した選手が活躍できず、放出した若手が活躍するケースがあり、チームが損をする場合がある。

これらを踏まえながら、まずレッドソックスの補強体制の変遷を紹介したいと思います。

2レッドソックスの強化担当者の変遷

①セオ・エプスタイン 『データ寄り』【データ分析による、過小評価された選手の発掘】

 

現レッドソックスのオーナーである、ジョン・ヘンリーはオーナーに就任した際、当時注目され始めていた、データと統計を選手分析に活かす「セイバー・メトリクス」を活用したチームづくりを行います。そんな中で、当初は「マネー・ボール」にも取り上げられた、オークランド・アスレティックスのGMである、ビリー・ビーンを引き抜こうと考えます。

マネー・ボールにも描かれている通り、ビリー・ビーンにこの申し出を断わられたことにより、白羽の矢が立ったのがこのエプスタインでした。この時のエプスタインの年齢は28歳であり、当時の歴代GMの中で最年少のGMとして就任いたしました。

当時の球団社長である、ラリー・ルキーノはsi.comによる記事で以下のようにコメントしています。

「野球活動はここに移行している」とレッドソックスCEOのラリー・ルキーノは語っています。 「我々は決して伝統的なアプローチを捨てることはないが、より現代的で定量的なセイバー・メトリクスを混ぜ合わせた方法を作り出そうとした。テオの魅力の不可欠な部分はその方向に動くことだった。」

Si.comより引用

 

エプスタインのチームづくりの特徴としては、セイバー・メトリクスによる、『過小評価された選手の発掘』が挙げられます。

slate.comによる記事では、『過小評価されていた選手の発掘』の例としてデイビッド・オルティスが述べられています。

このオルティスは昨年、現役を終えた名スラッガーなのですが、レッドソックス在籍以前は怪我と左投手を苦にしていたこと、当時の所属球団のチームスタイルに合わなかったことから、FAで放出されていましたが、セイバー・メトリクスによる分析で長打と出塁率の割合が高かったこともあり、エプスタインは獲得に踏み切ります。

その後、2004年にはリーグ2位の本塁打数を記録するなど、レッドソックスの中心選手として去年引退するまで活躍いたしました。

『このデータによる過小評価されていた選手の発掘』や若手選手の育成が功を奏し、エプスタインは2004年と2007年にチームをワールドチャンピオンへと導きます。

レッドソックスを2011年に退団した後は、シカゴ・カブスの球団社長に就任し、ここでもチームをワールドチャンピオンに導くなど、成果を残しています。

②ベン・チェリントン 『データ寄り』 【エプスタインの路線の継承】

 

エプスタインがシカゴ・カブスを去った後、後を継いだのがベン・チェリントンでした。

レッドソックス公式サイトの紹介によれば、彼の野球界でのキャリアはクリーブランド・インディアンズでビデオスカウトとして始まり、その後レッドソックスへと移ります。

レッドソックスでは、選手育成の副ディレクターに任命され、翌年には選手育成ディレクターへと昇進します。エプスタインの下では選手育成や選手分析の副リーダーとなり、エプスタインを支えていました。

ここまでの経歴を見てみると、スカウトから選手分析を経て、強化担当者へと上りつめる彼のキャリアは、以前記事で紹介したリバプールのマイケル・エドワーズに似ている面がありますね。

チェリントンのチーム運営方針の特徴としては、エプスタインの「データ分析を用いた選手補強」と「育成重視」という基本理念を継承した路線となっています。

以下に挙げるのが、www.fangraphs.comでのチェリントンのコメントなのですが、スカウトの意見も参考にしつつ、データ分析を重視している点が分かります。

「我々は選手の能力を分析して、能力の高い選手を獲得しようとしているので、選手の価値を可能な限り正確に判断することができます。私が分析に関して言う時、それはスカウト分析– 我々が行なっていることよりも伝統的なスカウト – から判断することもありますし、データ分析の形で判断するかもしれません。私たちの仕事は、その情報を処理することです。私たちはそれをまとめて、プレイヤーの価値が現在と今後何年どうなるのかを描いています。

「そこには様々な領域に情報が関与しています。アマチュア選手向けのスカウト、プロ選手のスカウティング、国際的なスカウティング、アナリティクスがあります。私たちは、パフォーマンス分析に関する多くの作業を行う社内アナリティクスチームを持っています。これらのグループのすべてが情報を提供しており、情報を集約してその価値を判断しようとしています。

www.fangraphs.comより引用

ここでデータ分析を用いた選手補強として例にあげるのは、上原浩治選手です。

スポニチによる記事によると上原選手は、救援投手としてMLBにおいて活躍し始めた2011年から2012年にかけて、ストライクの多さとフォアボール少なさの比率が驚異的な数字を残しており、この点に着目したレッドソックスのデータ分析スタッフの意向でチェリントンは上原選手を獲得するに至ったとされています。

チェリントンは、FAではデータ分析によって安く、短期で契約できる選手を補強しつつ、若手選手を確保しながら成長を待つという戦略をとり、その結果2013年にワールドシリーズ優勝に成功するなど、一定の結果をあげています。

③デーブ・ドンブロウスキー 『主観寄り』【スカウトや自身の経験に基づいた選手補強】

 

チェリントンの後を継いだのは、元デトロイト・タイガースのGMである、デーブ・ドンブロウスキーです。FSGは彼をGMよりも権限の大きい編成総責任者に任命し、GMを置かないという施策を採っています。

FOXスポーツの記事によれば、このドンブロウスキーの登用は、今までのレッドソックスの強化方針から変化があるようです。

エプスタインとチェリントンの両名は、データ分析の主眼を置いた強化方針を行っていましたが、JSPORTSのコラムgrantland.comの記事で紹介されている通り、ドンブロウスキーは、データを使った選手補強よりも、スカウトや自身の経験、知識に基づいてトレードやFA補強を行うことが知られています。

レッドソックス就任後も、ドンブロウスキーはFAと有望な若手選手を使ったトレードを活用し、トレードでシカゴ・ホワイトソックスのエースであったクリス・セールや、FA補強で有力ピッチャーである、デビット・プライスと契約しています。

MLB.comによると、特にプライスとは当時の投手で歴代最高額となる、7年で年俸総額2億1700万ドルという契約を結んでおり、FAによる大型補強と若手を使ったトレードに消極的だったチェリントンの時とは違い、思い切った戦力補強を行っています。

以下に挙げるのが、www.fangraphs.comでのドンブロウスキーのコメントなのですが、ドンブロウスキーはスカウトの主観的な情報を基に、データをその裏づけとして活用しようとしており、チェリントンのコメントと比べると主観的な情報を重視していることが分かります。

「私は公衆の認識が何であるかはわかりませんが、可能な限りの情報を使用しています。我々が補強に関する取引をするとき、私たちはスカウトの勧告を大いに活用しますが、統計を使ってそれを裏付けます。私は、もしあなたが可能な限りすべての情報を使用していなければ、どんな生活の中でも、あなたは愚かだと思います。

「私たちは可能なすべての情報を見ていますが、スカウトの経験に基づいたスカウティングに関しては、より厳密に統計によるデータ分析を指向している組織よりも頼りにしています。私たちはツールとしてデータ分析を使用していますが、スカウトの意見を最優先に使用しています。」

www.fangraphs.comより引用

 

以上でザックリとではありますが、レッドソックス側の強化体制の変化を紹介いたしました。ここまでの内容から、レッドソックスの強化体制がデータメインの客観的な手法から、スカウトや強化担当者自身の経験に基づく主観的な手法を重視することに切り替わっていることが読み取れると思います。

次のページではこれを踏まえてリバプール側の強化体制を紹介していきたいと思います。

【次ページ】リバプールの強化担当者の変遷

2 件のコメント

  •  こんにちは!! ボクの好きな「マネー・ボール」とリヴァプールが、こんな関係

    で繋がっていたなんて!? とても興味深く読ませて頂き、勉強になりました♪ 

    • 背番号4さん、コメントありがとうございます。
      そう言って頂けて、嬉しく思いますし、励みになります!
      現在書いている記事でも「マネー・ボール」が出てくる予定なので、お読み頂けると嬉しいです。

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