フロリアン・ヴィルツのプレースタイル/プロフィール解説|リバプール選手名鑑

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コーク

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選手の分析記事や移籍の噂を メインに好き勝手書きます。 ハンネとアイコンは大好きな コカ・コーラから。

基本プロフィール

画像出典:LFC公式HP

  • 選手名:フロリアン・ヴィルツ
  • 生年月日:2003年5月3日
  • 国籍:ドイツ
  • 身長:174㎝
  • ポジション:CMF, AMF, LMF, RMF, SS, CF
  • 背番号:??
  • チームキャリア:レバークーゼン(GER/19-20~), リバプール(ENG/25-26~)
  • 市場価格:€ 140.00Mill.
  • 契約終了年:2030年6月30日

プレースタイル

22歳という年齢ながら、すでに完成された世界最高峰の攻撃的MF。現代の“10番”タイプに求められるありとあらゆる能力が高く、リバプールのみならずフットボール界のアイコンになれるだけの存在といえる。

ストロングポイント

画像出典:LFC公式HP

フィジカル的な観点から見ていくと、177cmという身長はやや小柄で、総合的なアスリート能力は標準を少し上回る程度。ただ小柄ゆえにアジリティやクイックネスには優れており、オープンスペースを攻略するだけのトップスピードもある。その上で走力も備わっており、スプリントを厭わず守備にも積極的。この手のポジションの選手にありがちな守備を放棄するようなことはない。

守備に対するヴィルツの積極的な姿勢はデータ(出典元はOpta)にも現れており、2024-25季のリーグ戦におけるハイ・ターンオーバー(オープンプレー中に相手ゴールから40m以内で始まるポゼッション)が90分間平均1.25回で、これはブンデスリーガ全選手の中で最多。ちなみに24-25季のプレミアリーグにおいてハイ・ターンオーバーから最もゴールを決めたクラブはリバプールである。そのため高い位置から積極的に守備に参加してボールを獲得し攻撃に転じることのできるヴィルツは、守備面から見てもリバプールにマッチしている選手といえる。

テクニカルな観点から見ると、トラップやドリブル、パス、シュートなど、あらゆる技術的な能力が高い。両足のセンシビリティに優れ、ボールタッチは繊細でキックの精度は抜群に高い。プレスを簡単に回避する技術も有しているので密集地帯でもボールを失うシーンは稀。現在のリバプールでトップ下を主に務めるドミニク・ソボスライはむしろオープンスペースで力を発揮するタイプなので、ヴィルツとは得意とするシチュエーションや展開が異なる。

ボールを持った際は自ら運ぶ選択をする傾向が強い。キャリー数549回は24-25季のブンデスリーガにおいて4番目に多く、さらに自らのキャリーで生み出した5アシストという数字は全体の2番目なので、ただ運ぶだけでなくそれをゴールに繋げる力もある。

また、ドリブル突破を試みた回数と成功した回数はそれぞれ165回と82回で、どちらの数字もブンデスリーガでトップである。ちなみにリバプールのアタッカー陣(ウイングとトップ下)の成功回数を見てみると、モハメド・サラーが58回、ルイス・ディアスが53回、コーディ・ガクポが31回、ソボスライが21回となっている

このようにキャリーやドリブルに自信を持つ選手は得てして独善的なプレーを選択しがちで、無駄に保持してリリースのタイミングを逃したり、やや強引でも単独での突破を試みたりするものだが、ヴィルツはそういった心配がない。それどころか状況を把握する能力や展開を予測する能力は傑出しており、プレーはシンプルながら効果的。周囲の味方選手を上手く使いながらプレーを的確に選択・実行できる戦術的なセンスやインテリジェンス、そして視野の広さといったタクティカルな側面こそがヴィルツ最大の武器といっていいかもしれない。

プレービジョンとテクニックを高いレベルで兼ね備えているので、当然ながらチャンスを創出する能力は圧巻。24-25季のリーグ戦においてヴィルツは90分間平均2.1回のチャンスをオープンプレーから生み出しているが、プレミアリーグでこの数字を上回るのは平均2.3回のサラーだけだ。また、チャンスを生み出すだけでなく決定的なラストパスも出せる彼は全コンペティションを通じてオープンプレーから12アシストを記録。これを超えるのはやはりサラー(18回)と、バルセロナのラミン・ヤマル(13回)のみである。

 

次に、リバプールにおけるヴィルツの起用法について考えてみたい。ヴィルツは両足でボールを扱える上に、単騎でも十分な突破力とある程度のスピードを備えているため左右のサイドでもプレーできる(実際、ドイツ代表では他の選手との兼ね合いからかサイドを担当することも多い)が、彼の持ち味を生かすのであればやはり中央での起用が望ましいだろう。

レバークーゼンでは3-4-3の2シャドーの左側を務めることが多いが、現在のリバプールは初期配置が4-2-3-1となっているため、想定される起用法は2列目の中央、あるいはCFと考えられる。ただ、4-2-3-1はあくまで初期及び守備時のセットであり、リバプールは攻撃/保持時に右のボランチ(主にライアン・フラーフェンベルフ)がアンカーと化し、左のボランチ(主にアレクシス・マクアリスター)とトップ下(主にソボスライ)がインサイドハーフとなって、4-3-3へと変化することが多い。

ここからは、4-3-3というシステムにおけるCFで起用された場合を考えてみたい。リバプールにおいて4-3-3のCFといえば、かつてユルゲン・クロップ政権下においていわゆる偽9番のタスクを担っていたロベルト・フィルミーノを思い出す。フィルミーノもホッフェンハイムに所属していたドイツ時代の主戦場はトップ下で、クロップの下で途中からCFとしてプレーするようになった。

CFの位置でプレーするフィルミーノがその走力や献身性、ボールを扱う巧さ、オフ・ザ・ボールの動きの質などを武器に、最前線に留まるのではなく流動的に降りたり開いたりして両WGが飛び込むスペースや時間を作り出し、モハメド・サラーやサディオ・マネらWG陣の得点力を支えていたことは記憶に新しいだろう。フィルミーノはCFの位置でプレーしながらも、自らが点を取ること以上に、周囲の選手に点を取らせたストライカーだった。

もしもヴィルツがCFの位置で起用されることがあれば、期待されるものはフィルミーノのようなプレーだろう。ヴィルツはフィルミーノに比べてコンタクトプレーや空中戦の強さ、守備力(全盛期の彼は世界で最も守備力の高いFWだった)という点で見劣りするものの、その分アジリティがあり、ボールスキルも勝る。オフ・ザ・ボールの動きや走力といった部分も現時点ですでに全盛期のフィルミーノに肩を並べうるレベルにあり、スペースを作るのも使うのも上手いヴィルツは十分にそのタスクを担えるだけのクオリティを備えた選手に見える。

スロットは現在リバプールでCFを務めることが多いルイス・ディアス、ダルウィン・ヌニェス、ディオゴ・ジョタの3人に対し、それぞれ理由はあれど(少なくとも先発するCFとしては)誰一人とて満足していないと思われる。もしリバプールが別なストライカーを獲得せず新シーズンに突入した場合、CFに得点能力だけではなくプレッシングやチャンスメイクなど様々なタスクを求めるスロットがヴィルツにCFでのプレーを託し、フィルミーノのようなプレーを再現してもらう可能性も(それをメインにするかどうかはさておき)あるかもしれない。リバプールのシステムを4-2-3-1ではなく、(トップ下が存在しない)実質的には4-3-3だと捉えるのであればなおさらである。

仮にも最前線でプレーする以上は多くの得点関与が求められることになるが、ヴィルツはリーグ戦において直近2年連続でゴールとアシスト共に二桁を達成している(Optaがこの統計を開始して以降、ブンデスリーガでこの記録を達成した選手はトーマス・ミュラーのみである)ため、その点においても期待していいかもしれない。

とはいえ、ヴィルツのクリエイターとして多彩な能力を考えればやはりCFではなく、ビルドアップからファイナルサードの攻略、そしてフィニッシュまで攻撃の全局面に顔を出しやすいMFとしての起用がやはりベストだろう。4-2-3-1であればトップ下(あるいはボランチ)、4-3-3であればIHなどだ。

しかし、リバプールの既存戦力を考えると、ヴィルツをどのポジションで起用するのがベストなのか答えを出すがやや難しい。MF(10番)として起用するとリバプール自慢のMF陣から誰かが外れる上に、CFの不足感が改善されない。逆にCF(9番)として起用するとヴィルツの能力を最大限に生かしきれない。絶対的なCFが不在である現状ではこれらを天秤にかけ、どちらかを諦めなくてはならないといえる。

ただ、スロットはトップ下を務めるソボスライに対して「リバプールでプレーする“10番”の位置の選手として、もっとゴールを決めたり、チャンスを生み出したりする必要がある」と語っていた。選手としての純粋なクオリティの高さと総合的なチームへの貢献度からそこまで問題になっていないが、ソボスライはおそらくスロットにとって理想的な10番役ではないと思われる。

前述の通り、その点においてヴィルツは世界で最も優れた選手と言っても過言ではない。その上で守備の強度を下げる選手でもないので、スロットにとって正に理想の10番役だろう。そのため、CFの問題は別な解決策を見つけることを前提に、トップ下でヴィルツを起用したいというのがやはり本音ではないか。そしてそうなったとき、ソボスライをどう使っていくのか、及び中盤の構成がどう変化するのかも見どころといえる。

獲得時点でのフットボール界における存在感という点でヴィルツはクラブの近代史において最高のスターであり、彼の獲得はクラブの野心を窺わせる。そんなヴィルツは彼を軸にチームを作るだけの価値がある選手だが、スロットが彼をどのようなポジションで起用し、どのような役割を任せるのか、これらは新時代のリバプールにおけるもっとも楽しみな要素の一つと言っても過言ではないだろう。

ウィークポイント

画像出典:LFC公式HP

誇張でもなんでもなく、攻撃的MFとしてヴィルツは(まだ22歳でありながら)極めて完成された選手であり、そのクオリティの高さも申し分ないため、取り立てて言及すべき弱点という弱点がない。とはいえ、完全無欠な選手など存在しないのでほとんど粗探しに近いが探してみよう。

まず真っ先に気になるのは空中戦の弱さ。下記の表はヴィルツとリバプールの2列目の選手たちの空中戦のデータ(24-25季のリーグとCLの2つのコンペティション)をまとめたものだが、勝率は20%と5人の中で最も不得手にしているのがわかる(ディアスはCFでの起用も多かったので、その分だけ勝率も下がっていると考えられる)。

ヴィルツがCFとしてプレーする場合、(ほぼ)唯一にして最大の問題になるのがこの部分だろう。殊にイングランドは世界で最も空中戦が激しい国と言っても差し支えないので、彼にエアバトルを制してもらうのは絶望的といえる。

このデータからもわかるようにヴィルツは圧倒的なフィジカル(主にサイズやパワー)の持ち主ではないが、とはいえフットボーラーとして十分に活躍できるだけの身体能力は備わっている。コンタクトプレー(特に空中戦)の弱さは目を瞑るとして、身体能力の不足によってプレミアリーグでは活躍できない、などということはないだろう。

また、感情の昂りがプレーに現れてしまうことがある。余計なファールを犯しカードを貰ってしまうというシーンが見受けられるので改善は必要だろう。ただ、まだ22歳という若さを考えればやや仕方のない話で、ここからメンタル面をコントロールする術を身につけていけば然したる問題にはならないかもしれない。

その他に気になるのはやはり2022年3月に負った左膝の前十字靭帯断裂という負傷歴だが、復帰後はそれを全く感じさせないプレーでレバークーゼンを牽引し、リーグ無敗優勝などの栄冠をもたらしている(元来フィジカルに頼ったプレーをする選手ではないことも幸いだったかもしれない)。むしろヴィルツは「怪我をしていた期間に自分を形成することができたし、周囲の人たちの支えによってより強くなることができた」と大怪我をポジティブに捉えている節すらある。

このエピソードからもヴィルツが優れたパーソナリティと強靭な精神力の持ち主であることが窺える。リバプールは自身初の国外挑戦かつ初のメガクラブとなるが、これまでの彼の歩みを考えると環境の変化やプレッシャーなどに負ける姿は想像し難い。

冒頭でヴィルツは全ての能力が高くすでに完成された選手だと記したが、だからといって伸びしろなどが残っていないわけではない(スロットはヴィルツと会談した際に改善点なども話したという噂もある)。また、自身が語っていたようにレバークーゼンというコンフォートゾーンを飛び出し、世界の頂点を争うクラブでプレーすることで選手としてさらなる成長が可能だろう。

リバプールでプレーするヴィルツがどんなプレーを見せてくれるのか、そしてヴィルツが加わったリバプールがどんなフットボールを見せてくれるのか。今からとても楽しみでならない。

 

エピソード・小ネタ

画像出典:LFC公式HP

◆ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州に属するプルハイム出身。ノルトライン=ヴェストファーレンは州都デュッセルドルフを始め、ボンやケルン(ちなみにリバプールとは姉妹都市である)、レバークーゼン、ドルトムント、メンヘングラードバッハなどが属する。

◆10人兄弟の末っ子。父のハンス・ヴィルツは71歳、母のカリンは63歳である。ハンスは元国境警備官で、地元のサッカークラブであるグリュン=ヴァイス・ブラウヴァイラーの会長を務めており、息子のフロリアン・ヴィルツもそこでサッカーを始めた。また、息子の代理人も務めている。

◆「Florian(フロリアン)」という名前の起源は古代ローマにあり、元は「Florianus(フロリアヌス)」という形だった。語源はラテン語の「Flōrus」で、これは「イエロー/ブロンド」という意味を持っていたが、やがて「開花」するという意味も持つようになった。「花」を意味する「Flower」の語源も同じくFlōrusである。

◆プルハイムの隣町ケルンのユースチームでプレーするようになったヴィルツ。練習施設までは13kmほどあったというが、主に自転車で片道45分程度かけて通っていたという。

◆ケルンで圧倒的な才能を見せていたヴィルツだが、2020年1月にケルンとライン川を挟んだ隣町のクラブであるレバークーゼンに移籍する。しかし、ケルンとレバークーゼン(とメンヘングラードバッハ)の間には「お互いのユース選手を獲得しない」という紳士協定が存在しており、当然ながらケルン側は激怒。ちなみにレバークーゼン側の主張は「ヴィルツをユース選手としてではなく、トップチームの選手として獲得した」で、事実として移籍後数ヶ月でプロデビューしている。

◆プロ選手として大金を得るようになったもののキャリアの初期はお小遣い制度で、月にわずか150ユーロしか貰っていなかったという。両親の教育もあって、お金よりもスポーツ面での成功を望む人間になったようだ。

◆ドイツ代表の企画で、好きなジャガイモ料理をランク付けする動画を撮影したヴィルツ。ジャガイモを使用した様々な料理が登場する中で彼が1位に選んだのは、ただのジャガイモそのものだった。これがドイツ人の間で話題となり、事あるごとにヴィルツはジャガイモでいじられるようになってしまった。ちなみに本人は「なにが面白いのかよくわからない。どこに言ってもこの事について聞かれるからもううんざりしている」とだいぶ参っている様子。

◆ペプシ・コーラのブランド・アンバサダーを務めている。リバプールでペプシと契約している選手といえばやはりサラーだが、もしかするとペプシのCMなどでヴィルツとサラーが揃って登場することがあるかもしれない。

◆リバプールへの移籍が決定する前に、「ヴィルツが背番号10を望んでいる」というニュースがドイツから報じられた。ご存知の通りリバプールの10番は現在マクアリスターが着用しており、ヴィルツに10番を渡すかどうか、そもそも本当にそんな要求を彼がしているのか、などといった議論がファンの間でかわされていたが、この噂になんとヴィルツ本人がインスタグラムのストーリーズ機能にて「そのような事実はない」と反応。有らぬ噂に自ら終止符を打った。しかし、このようなゴシップはこの世界ではわりとよくある話であり、わざわざ本人が反応する必要はほとんどないといえる。それを踏まえるとこの反応は「事実上の加入宣言」のようなものであり、なかなかリバプール移籍が正式決定しないことにやきもきしていたファンの間で(彼の誠実な対応への感心など含め)大いに盛り上がることとなった。

◆これまで共にプレーした試合数のランキング上位5名は、ヨナタン・ター(190試合)、エドモンド・タプソバ(161試合)、ルーカス・フラデツキー(158試合)、ジェレミー・フリンポン(150試合)、ピエロ・インカピエ(125試合)となっている(データはリバプール移籍決定時点)。リバプールでもチームメイトとなるフリンポンがいつ1位に躍り出るのか注目だ。

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