【名門クラブが向かう未来】 ユベントスのロゴ変更とリバプールFCのブランド戦略

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タクヤKOP
ビートルズからリバプールFCのサポーターになった珍しいKOPです。戦術的なことはあまり得意でないので、クラブやリバプールという街を色んな角度から掘り下げていきたいと思います。

クラブのシンボルマークは2つあってもいい

そもそも、ニューヨーク・ヤンキースにしても球団のシンボルマークは2つあります。(厳密にはもっとある)

ニューヨーク・ヤンキースのロゴ

 

このバットが帽子を被ってるものも見覚えあると思いますが、基本ロゴはこちらで、各SNSのアイコンはむしろこちらが使われているのです。ヤンキースに限らず、メジャーリーグ(というより野球界)の球団はこうして複数のシンボルマークを使い分けているのが一般的です。

 

リバプールFCのエンブレムとロゴの使い分け

イングランドの名門フットボールクラブであるリバプールFCも、エンブレムとロゴを使い分けています。

リバプールのエンブレムとロゴ

※この記事中では左を「エンブレム」、右を「ロゴ」と呼んでいますが、下のツイート内の記載からも分かるようにLFC公式では「Crest(クレスト)」という単語で呼んでいます。

 

リバプールFCには、この「YOU’LL NEVER WALK ALONE」のシャクリー・ゲートや「ヒルズボロの悲劇」の犠牲者を追悼する炎が灯っているエンブレム/クレスト(1999年から使用)と、ライバーバードと「L.F.C.」のみのロゴがあります。2017年はクラブ創設125周年にあたり、記念のエンブレム発表されていましたが、エンブレムとロゴの2つのバージョンを作成し、発表しているところにその意思を強く感じます。

 

 

ユニフォームにロゴを載せてるのはリバプールだけ

この2つの使い分けは現オーナーであるフェンウェイ・スポーツ・グループ(FSG)による戦略ではないかと考えられます。

2010年秋にFSGがオーナーになってから様々な変更が行われましたが、顕著なのがユニフォームです。12-13シーズンからユニフォームサプライヤーもアメリカの「Warrior Sports(現在はNew Balanceへ統合)」へと変わり、左胸のエンブレムもライバーバードに「L.F.C」のシンプルなロゴになりました。このロゴへの変更はクラブが強かった80年代への回帰と説明されていますが、本当にそれだけでしょうか。この左胸のライバーバードはその後も継続されており、クラブ創設125周年の2017-18シーズンを戦うユニフォームもこのロゴです。クラブにはエンブレムもあるのに、です。

今回この記事を書くにあたり、改めてプレミアリーグをはじめ各国リーグのクラブのユニフォームを確認しましたが、クラブのエンブレムではなく、別のマークを左胸に載せているのはリバプールだけです。

このエンブレムとロゴは、ユニフォームだけではなく、クラブのマーケティング活動のあらゆる場面で緻密に使い分けられていています。

 

リバプールのブランディングと世界戦略

2013年9月に当時リバプールFCのCEOであったイアン・エアーは次のようにブランディングと世界展開の重要性について語っています。

「リバプールFCブランドを世界中に拡大させ、2億人以上存在するサポーターたちと結びつけることは、商業的な競争力を高めます。クラブのブランド力が向上すれば、パートナー企業に付加価値を与え、世界中でビジネスチャンスを最大化させることができます。それはクラブに関わる全ての者にとって大きな利益をもたらします。」

Ayre outlines LFC digital expansion – Liverpool FC

 

実際、リバプールのコマーシャル収入は増加しており、先述のデロイト・フッドボール・マネー・リーグではリバプールは9位、CLを戦わないクラブの中ではトップです。

ユベントスと同様に、当然リバプールもまた国際舞台(特にアメリカ市場と中国市場)においてブランド価値を高めようとしており、そのLFCブランディングの一端を担っているのがライバーバードによるロゴではないかと考えられます。

その意向はグッズ展開にも現れています。公式ストアのラインナップを見ても、エンブレムよりライバーバードを使った商品が多いですし、主張しすぎないアイコンとしてこのロゴが機能しているのが分かります。

また、2016年には中国第2位の規模を誇る「京東商城(JD.com)」と提携し、国際舞台におけるグッズ販売も強化していて、とても戦略的に動いているのが読み取れます。

 

伝統の中に見出したミニマルな「ロゴ」

FSGはスポーツマーケティング大国アメリカの企業であり大リーグのボストン・レッドソックスのオーナーでもあります。「メジャーリーグではそもそもロゴを複数使い分けている事実」、「(ライバルだけど)ヤンキースの成功例」、「ミニマル化しているデザイントレンドの発祥はアメリカ」。これらの点と点を結んで推測するに、FSGが戦略的にライバーバードのロゴを使ってマーケティングに活かしていると考えるには十分ではないでしょうか。

リバプールは、ミニマルなシンボルを新たに生み出すことなく、伝統の中にそれを見出しました。

しかし、これはどのクラブにも出来たわけではありません。

 

プレミアリーグ各クラブのモチーフ

画像出典:Workshop – Minimalist AFL logos | Page 5 | BigFooty AFL Forum

上の画像はプレミアリーグ各クラブのエンブレムから象徴的なモチーフを切り出したものですが、これだけを見てどれがどのクラブか認識できますでしょうか。英国人はともかく日本人の一般的な感覚からすると、おそらくリバプール以外ではアーセナルの大砲と、マンチェスター・ユナイテッドの悪魔くらいではないでしょうか。そして、その中でフットボールファン以外の一般層が「自分が身に着けても良い」と思えるデザインはどれでしょうか。ここでライバーバードと答えるのは、筆者がリバプールサポーターであるからだけではないと思います。(大砲や悪魔はあまりにも男性的すぎる)

幸運にもリバプールは、そもそも街のシンボルがライバーバードであり、エンブレムの中からシンボリックでデザイン性に優れたアイコンを見出すことができました。そしてミニマルデザインのトレンドと共に、それをクラブのマーケティングに利用しています。これは伝統を資産として捉え、最大限に活用することに長けているFSGの手腕です。

 

まとめ~今後のサッカークラブのブランディング展開は~

リバプールは「ライバーバード」という共通項をもってエンブレムとロゴを巧みに使い分け、伝統を守りながら統一されたブランディングの元でマーチャンダイジングの世界でも成功を収め始めています。

一方で、ユベントスは大胆にも伝統のエンブレムを捨て去り、ミニマルで先進的なロゴに一本化しました。

今後、どのレベルのサッカークラブであってもブランディングの強化、そして多角化展開は求められていきます。今回取り上げたユベントスとリバプール、それぞれ目指している目的は近いものの、それに対するロゴ戦略のアプローチが対照的です(良し悪しではなく)。

これらがどのような結果をもたらすのか、また他のクラブが選ぶ道はどのように変わってくるのか注目していきたいと思います。

 

あとがき的な

2回に渡ってフットボールにまつわるデザイン事例を取り上げましたが、こうして色々な背景を深掘ると、エンブレム/ロゴひとつとってみてもフットボールの世界が広がっていきますね。ユベントスのロゴもいま改めて見ると、最初と見え方が変わっているのではないでしょうか。

今度、プレミアリーグの中継を観る時はその放送のデザインにも注目してみてください。リバプールの広報活動において、ロゴとエンブレムがどのように使い分けられているのか観察してみてください。

奥深いフットボールの世界を楽しみましょう。

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リバプールFCについて

7 件のコメント

  • フットボリスタ#042(シャビアロンソが表紙)を見ていたらp.110「CALCIOおもてうら」にも、この「エンブレムのロゴ化」に関する記事がありました。
    こちらの記事は「デザイン」そのものよりも、「言葉の意味」特に『「J」という文字がイタリアでどれほど特殊か」という面からの解説が多めでした。
    記事曰く、「J」という文字がイタリア語では滅多に使われず、とても珍しい字らしいです。なので「JAPAN」などで「J」を見慣れている我々日本人などよりも、イタリア人にとっては、インパクトが強いロゴということになるのかもしれません。
    ただ世界的にはよく使われる文字だと思うので、その意味ではどうなんだろう?とは思いましたが・・・。

    「JUVENTUS」ってイタリア語ではなく、ラテン語(「若さ」「若者達」という意)なんですねぇ(‘Д’)

    • えばとさん、情報ありがとうございます!
      dマガジンのバックナンバーで読もうと思ったのですが、カットされてました…。。
      確かにイタリアでは「J」が特殊でも英語圏ではよく見るので、世界展開を考えるとその意味では疑問が残りますね…。
      まあ結局ユベントスがCL連覇とかものすごい強さを見せれば、一気にこのロゴの評価も変わってきそうですよね^_^;
      ということで今年のCL決勝はユベントスを応援します笑。

      • スペイン語圏でも「J」は珍しい文字ではないので、「世界戦略的」な観点からは「J」という「文字」のロゴ化という選択はビミョーかもしれないですね。
        ただ他にユベントスJUVENTUSを1~2文字、もしくは簡易なロゴに現すものも思いつかないので、「良い落としどころ」なのかなとは思います。
        CL決勝でユーべが勝ったら、速攻で大々的にロゴのPRが始まりそうですね(笑)。

  • たぶんユベントスのは成功しないと思うけど(没個性しすぎてわざわざ選ぶ理由がないから)、狙いは面白いと思う

    ヤンキースのロゴビジネスは世界中のスポーツチームが羨む大成功ぶりなのは周知の事実。

    例えば日本では巨人が真似て失敗してるように
    「実際ファンの垣根を超えたムーブメントになる確率は極めて低い」ものの、これまた巨人もそうであるように今のロゴでも新デザインでもサポは買ってくれる

    だったら失敗覚悟で挑戦するのも面白いと思う。売れて余裕できたらサポも得するしね

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