ライアン・フラーフェンベルフのプレースタイル/プロフィール解説|リバプール選手名鑑

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コーク

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基本プロフィール

画像出典:LFC公式HP

  • 選手名:ライアン・フラーフェンベルフ
  • 生年月日:2002年5月6日
  • 国籍:オランダ
  • 身長:190㎝
  • ポジション:DMF, CMF, AMF, CB
  • 背番号:38
  • チームキャリア:アヤックス(NED/18-19~), バイエルン(GER/22-23), リバプール(ENG/23-24~)
  • 市場価格:€ 70.00Mill.
  • 契約終了年:2028年6月30日

プレースタイル

画像出典:LFC公式HP

 

ストロングポイント

同胞のアーネ・スロット監督の下で特大のポテンシャルを開花させ、今やリバプールの中盤において欠かせぬ戦力となったライアン・フラーフェンベルフ。これまでは主にドイスボランチの一角やインサイドハーフ、あるいはトップ下など、比較的高めの位置や攻撃色の強い役割を与えられてきたが、現在は主に中盤の底で“アンカー”役を務めており、より守備的なタスクを担っている。

リバプールのシステムは表記上4-2-3-1だが、攻撃時/ボール保持時はボランチでコンビを組むアレクシス・マクアリスターがより前目のポジションに移動し、トップ下のドミニク・ソボスライと共にインサイドハーフを形成。そしてフラーフェンベルフがアンカーと化し、中盤の形が正三角形からユルゲン・クロップ監督時代に慣れ親しんだ逆三角形の4-3-3へと変化する。

とはいえ、スロットとクロップではアンカーを務める選手に求める能力がやや異なる。クロップ時代は基本的に守備能力に秀でた選手が配置され、プレスの網を掻い潜ったボールの回収や最終ラインのプロテクトなどを主な仕事としていたが、スロットはこのポジションにビルドアップ能力の高い選手を置くことを好んでいる。高い危機察知能力やボール奪取を武器とする遠藤航ではなく、プレス耐性に優れ独力でボールを前進させることのできるフラーフェンベルフのアンカー起用はスロット政権における象徴の一つと言っていいだろう。

身体的なプロフィールを見ると、やはり190cmというMFとしては非常に恵まれたサイズが目を引く。やや細身だが手足が長く、身体のコーディネーションも比較的スムーズで硬さはあまり見られない。そんな巨躯は攻撃的なポジションだと宝の持ち腐れといった感じが少し否めなかったものの、アンカーではそのサイズをとりわけ守備の局面において効果的に使えている印象だ。

守備面を見るとフラーフェンベルフは元来アンカーとしてプレーしていた選手ではないため、ポジショニングや危機察知能力で未然に防ぐタイプというよりかは、フィジカルやリーチを武器にインターセプトやハードなコンタクトによってボールを奪いに行くタイプ。特にインターセプトは2024-25シーズンのプレミアリーグにおいてMFとして頭一つ抜けた最高の数字をマークしている。空中戦でも頼りになり、総合的に見ればアンカーとして最終ラインをプロテクトするという守備での役割も十分にこなしていると言えるだろう。

画像出典:プレミアリーグ公式

また、退場者が出た際や圧倒的な劣勢(失うものがなにもない状態でゴールが欲しい場合)といったややイレギュラーな状況においては、ポジションを下げてCBとしてプレーすることも。現時点では緊急時のオプションの一つにすぎないが、あまり違和感なくプレーしている様子からも彼のポテンシャルの高さが窺える。

スピードに強みを持つ選手ではないものの、オープンスペースを使われた際にストライドの大きさを生かして本職CB顔負けのカバーを披露するシーンもめずらしくない。いずれにせよ守備者としての経験の少なさを高いポテンシャルや万能性で補っており、今後の成長次第ではより様々な展開でCBとしてプレーするフラーフェンベルフが見られるかもしれない。

とはいえ、フラーフェンベルフの最大の魅力はやはり攻撃面にある。相手選手に背を向けた状態でボールを受け取り、完璧なタイミングで入れ替わるファーストタッチやターンの技術は圧巻で、一度前を向けば狭いスペースでも失わずにボールを前進させる。本人もターンやテクニックが最大の武器だと考えているようで、自身のプレースタイルを「曲芸師」と表現していたことも。

このスタイルはアンカーを担うようになってからも大きな変化は見られない。長短のパスを使い分けながらボールを動かす司令塔/ゲームメーカーというよりかは、以前までと同じように高いボールスキルとプレス耐性を生かし自ら運ぶことによって局面を推し進めることが多い。アンカーにポジションを下げたことによって高い攻撃性能が隠れる心配もあったが、むしろ自慢のキャリー能力を生かせているのではないか。

ただ、プレーエリアが低くなったということはそれだけボールを失った際のリスクが高くなるということでもある。当然そこは本人も認識しているようで、無謀なチャレンジはあまり見られずシンプルに捌くところは捌いており、今後より場数を踏んでいくことでさらなる伸びが期待できる。

かつてのフラーフェンベルフは、選手の自主性に任せるフットボールを展開していたクロップの下でやや迷いながらプレーしていたように感じる。能力が高くやれることが多い反面、経験の少ない彼にとって自由すぎるピッチの上で自分がなにをするべきかよくわからなくなっていなかったのではないか。そんな彼にアンカーという役割を与え、プレーに(いい意味で)制限をかけることでやるべきことを明確にし、ポテンシャルを上手く引き出したスロットの戦術的な手腕には恐れ入る。

アンカーでのプレーが板についてきてからはゴール前に顔を出すシーンも増えており、積極的にミドルシュートを打つ場面も見られるようになってきている。ポジショニングやタイミング感覚などを磨きながら、持ち前のダイナミズムをさらに発揮してゴールやアシストといった目に見える数字までついてくるようになれば、世界最高峰のMFの一人として称されるようになる日はそう遠くないだろう。

ウィークポイント

画像出典:LFC公式HP

年齢やアンカーとしての経験の少なさを考えれば致し方ないものの、フラーフェンベルフか改善していくべき点は少なくない。生粋のアンカーと比較するとやや守備面での粗が目立ち、攻撃面においても特に配球に関してもう少し求めたいところ。

守備の局面において、いるべき場所にいる/動くべきタイミングで動く、あるいは危険なスペースを予め埋めておく、といった状況判断能力や危機管理能力はまだまだ伸びしろを残している。リーチがある上にアスリート能力が高いので無理やり間合いを詰めるなどして解決出来てしまうことも多いが、アンカーであれば上述のスキルを磨いていくことは必須だろう。幸いここは経験によって改善が期待できるので楽しみにしたい。

配球面に関しては、司令塔タイプと比較すると流石に見劣りすると言わざるをえない。フラーフェンベルフはそういったレジスタ系の選手が持ち合わせいないフィジカルやダイナミズムによってボールを持ち運び局面を打開できるが、低い位置からパスによってリズムを生み、ゲームをコントロールする能力はもっと求めたいところ。

ただ、配球能力やゲームメイクのセンスなどに関しては成長によってどうにかなるものかと言われるとやや微妙なところ。むしろフラーフェンベルフには(保持面の)短所を改善すること以上に自身の長所をさらに伸ばしてもらい、配球面に関してはよりその能力に長けた選手を獲得しフラーフェンベルフと併用する方が解決策として手っ取り早いように思える。

リバプールは2024年の夏季移籍市場においてスロットが必要としていたMF(アンカー役)が獲れなかったがゆえにフラーフェンベルフをコンバートし、結果的にそれは大成功という形で終わった。しかし、前半戦はチームMVPと評せるほどの圧倒的なパフォーマンスを披露していたフラーフェンベルフの輝きは年明け以降、翳りが見えていた。

フラーフェンベルフが(若さもあってか)体力/精神面共にシーズンを通してパフォーマンスを維持する術をまだ持ち合わせていないことも考えると、彼(やマクアリスター)と高いレベルでのローテーション/併用できる、チームをよりアップデートしてくれる新たなるレジスタ(DLP)型のMFの存在は必要だろう。そういった選手とポジションを争うことで、彼自身さらに伸びるのではないか。

そして、そのようなMFを実際に獲得できた場合、フラーフェンベルフをアンカー以外ではどのように起用されるのか非常に興味深いところだ。より前目の位置で以前のようなオールラウンダーなMFとしてプレーさせるのか、もしくはコンバート後のように最終ラインでの起用をさらに増やして、より守備的な方向で伸ばしていくのか。

アンカー役という軸が変わることはおそらくないが、前か後ろか、スロットがどちらに比重を置くかによってフラーフェンベルフの成長する方向性や改善していくべき点は変わってくる。いずれにせよ、今後もフラーフェンベルフがリバプールにおいて重要な選手であり続けることは間違いなく、その未来がとても楽しみである。

エピソード・小ネタ

画像出典:LFC公式HP

◆オランダ・アムステルダム出身で、スリナムにルーツを持つ。アムステルダム出身の元リバプールといえばライアン・バベルがおり、スリナムにルーツを持つ選手といえばそのバベルやフィルジル・ファン・ダイク、ジョルジニオ・ワイナルドゥムなどがいる。

◆アムステルダムのゼーブルギアというクラブのユースでサッカーを始めたフラーフェンベルフ。ゼーブルギアは元リバプール/元モロッコ代表のウサマ・アサイディもプレーしていたクラブで、その他にもプレミアリーグのファンなら知っている人も多いであろうティモシー・フォス=メンサーやケニー・テテ、清水エスパルスを始めJリーグでもプレーしていたカルフィン・ヨン・ア・ピンなどを輩出している。

◆アイドルは元フランス代表MFのジネディーヌ・ジダン。

◆リバプールでの背番号は38番だが、これはアヤックスのトップチームに上がったとき最初に着けた背番号で愛着があるとのこと。アヤックスからバイエルンに移籍した際もこの番号を選んでいる。

◆バイエルン時代にリバプールへの移籍をサディオ・マネに相談したそう。マネはリバプールの素晴らしさを説き、フラーフェンベルフに移籍を勧めてくれたとのこと。

◆リバプールで一緒にトレーニングして最初に驚かされた選手はドミニク・ソボスライで、特にシュートがクレイジーで凄いらしい。

◆リバプールの選手で最も面白いジョークをいう選手にアンディ・ロバートソンを選んでいる。特にフラーフェンベルフがリバプールに加入した際、ロバートソンが本人に向かって言った「ようやくいいオランダ人選手が来たな!」という発言は覚えている人も多いことだろう。

◆アンカーとしてプレーするようになってからというもの、プレーエリアが近くなったファン・ダイクによくポジショニングについて叫ばれているらしい。しかし、その頻度も徐々に減っているようで、フラーフェンベルフ曰く「僕の守備がよくなってきたということだね」。

◆フラーフェンベルフがオランダ代表としてドイツ代表と対戦した際に繰り出した超ロングパスが話題を呼んだことがある。母国の先輩であるラファエル・ファン・デル・ファールトは「フラーフェンベルフのあのパスを見たとき、今日はもう帰ろうかと思った。あれ以上に素晴らしいプレーを今日見ることはないと思ったから」と語っている。そして、そんなフラーフェンベルフを成長させたスロットのことも同時に褒め称えていた。

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