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結論から述べると、リバプールの対戦相手はシーズン前半戦の敗戦から学び、シンプルにロングボールを多用し始めている。以下の数表はシーズン前後半のハルシティ、スワンズ、レスター戦のスタッツである。STATSZONEのデータを参照し「対戦相手の長いパス数」「対戦相手のクリア数」「合計空中戦数」を算出した。どの試合もシーズン前半戦は勝点3を獲得したが、後半戦は敗れている。
実際に試合を見た肌感覚としても同様に感じたが、各チーム、明かにロングボールの数を増やしている形跡がスタッツからも読み解ける。プレミアリーグの下位チームであっても、監督含め、フロントの人件費だけで年間数億円規模で投資しているのだ。シーズン前半戦はクロップのゲーゲンプレスにまんまとやられたチームが、何の手も打たないまま次の試合に挑んで来るほど甘くはない。
クロップのゲーゲンプレスは、攻撃をする段階からボールを奪われた時のことを考え、選手間の距離を適切に保ちながら連動することで、ボールを奪われた次の瞬間にボールホルダーのミスを誘うほどの強烈なプレッシャーをかけることを前提として組み立てられた動き方である。シーズン前半戦は、対戦相手がその激しいプレスをどうにか掻い潜ろうと、ミドルパスやドリブルを選択していたためクロップの狙い通りの展開に持ち込むことができた。他方2回目の対戦では迷いなく前線のターゲットマンに蹴り込み、かつ、セカンドボールの奪い合いに人数を割くことで効果的にクロップの策を破っている。ロングボールはプレスを無効化するだけでなく、中盤を間延びさせるので、一見連動して見えるリバプールのプレッシャーに風穴を開ける。ジャン、ジニ、ヘンダーソンが最終ラインのセカンドボールの奪い合いに参加すればするほど最前線との距離が開き、ララーナやフィルミーノのハイプレスが無駄になってしまうのだ。
ではどうすれば良いのか。粕谷秀樹氏が頻繁に口にする「リバプールはマティプ以外のエリアにボールを入れられると崩れてしまう」という趣旨の主張はあながち間違いではなく、現状、ルーカスを目掛けてハイボールを入れられると苦しいことは自明であり、スワンズ戦ではジョレンテの様な高さのあるFWに対してはクラバンも十分ではないことが浮き彫りになった。ロヴレンは怪我がちでゴメスはまだ立ち上がっておらずサコはいない。また「層」の問題に戻りそうで苦しいが、ここに対してはクロップはジャンを低めの位置で起用することでフィジカルバトルに持ち込まれても勝ち切ろうと試みたのだろう。だが、彼の低調は見ての通り。
さて、ではどうすれば良いのか。ロングボール戦術に対して個で対抗するだけの選手層が揃っていない今、組織で対応する他ない。すなはち、チームのトレードマークである前線からの激しいプレスを捨て、中盤に人を策を布陣に変更することもプランに含めるべきなのではないだろうか。フィルミーノは孤立した状態で最前線で力を発揮できるタイプではないので、上記の戦い方をするのであればワントップに配置するのはオリギが適任だろう。無論、クロップは「対ゲーゲンプレス対策」への対策はいくつも持ち得ているだろうがドルトムント時代にはやはり駒が揃っていた。両CBは強靭なエアバトラーで、片方はマティプ以上に鋭いロングパスを配給するに長けていた。そして最前線にはレヴァンドフスキ。状況は異なる。
結局のところ「層」の問題は必ず解決する必要がある。昨夏はやや放出しすぎた感は否めないが、CL権がない中でクロップという飛び道具を使いマネやマティプなど見事な補強ができた。他方、一気に層を厚くするのであれば、莫大な資金を投じない限りCL権の有無が大きく影響する。ピーター・ムーアが新CEOとして就任することが決まり、リバプールが夏に大型補強を行うことは多方面で報道されている。CLの有無に関わらず、補強は実行される可能性が高いが、トップ4に入れるかどうかでその成功確率が大きく変動する。CL権がなければ獲りたい選手も獲れない。
確かに、層は足りない。だが、結果は必ず出さなければならない。シーズン前半戦が素晴らしかっただけにクロップを評価する目は厳しいが、リバプールで成功を収めるためにこれ以上打ち手を間違えるわけにはいかない。統計結果によるとリバプールがトップ4でフィニッシュする確率は40%程にまで落ち込んでいるようだが、クロップがこのまま「何もせず」に敗者となる確率は限りなく低い。必ず厄介な対策を打ってくる下位チームに対して、今のメンバーでどう立ち向かうのか期待を込めて観察していきたい。
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