16-17シーズンも佳境、リバプールとクロップの”鬼門”を考察する。

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木靴屋

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11歳の頃、画面越しのアンフィールドに惹かれてファンになりました。

CL出場権を巡り、熾烈な争いを繰り広げるトップ6との対戦を5勝5分けの無敗で終えた今シーズンのリバプール。第3節のホワイトハートレーンでのスパーズ戦、同じく敵地に乗り込んでのユナイテッドとの試合は、それぞれオフサイド絡みの判定で勝ち点2づつを失ったという見方もできるだろう。判定により勝ち点を拾うケースも同様に存在するため深く言及する気はないが、強豪相手にさらに勝ち点を積み上げるポテンシャルを秘めたチームだと言える。一方、度々話題に上がってるようにリバプールが勝ち点を落としている相手の多くはボトム10、とりわけ残留を争うチームとなっている。ゲーゲンプレッシングで難敵を窒息させるような“ヘヴィメタルフットボール”を展開したかと思えば、ボールを保持するだけの流動性に欠ける攻撃に終始し、カウンターやセットプレーで沈められる。その様は勝ち点を平等配分する社会主義に例え揶揄されるほどだ。当然、リバプールが目指すのは優勝であり、強豪との対戦で勝利を収めることはその手段に過ぎない。

 

Not a New Problem

このリバプールの苦戦に対し選手層、戦術の幅、”attitude problem”など様々な問題が囁かれている。グラッドさんの記事でも言及されているが、ハイプレス対策としてのロングボール多用に応戦するための戦術の幅をもたらすのに十分なスカッドがないのは明白だ。しかし、プレミア下位チームの“土俵”とも言えるアバウトなボールを屈強なCFに直接放り込む戦い方へ適切な処置を施すことのできなかったクロップが批判の対象となったのも結果・内容両面から見ても不思議ではない。

このような戦いぶりについてSky Sportsはリバプール、クロップ双方にとって新たな課題ではないと報じている。ブレンダン・ロジャーズ前監督がマージ―サイドで最後にフルシーズン過ごした14-15シーズン、レッズはプレミアリーグで唯一トップ8との成績が残りクラブとのものを上回ったという。また、ユルゲン・クロップが08-09シーズンから14-15シーズンまでドルトムントで指揮を執りブンデスリーガ連覇を含む5つのタイトルを獲得した事は周知の事実だろう。しかし、ドイツで一時代を築いた黒と黄色のクラブもまた同様に”取りこぼし”の問題を抱えており、クラブと監督の短所の一致が現状を引き起こしているというのが同記事の見解だ。

Dortmund 10-11 ~ 12-13 season

(上位6チーム、中位6チーム、下位6チームでカウント)

プレミアリーグとブンデスリーガでは上位同士の対戦結果の価値、リーグの特性、時代など様々な相違点はあるが、Sky Sportsの主張を検証するべくリーグ連覇からCL準優勝という結果を残した10-11から12-13シーズンにかけての3年間を分析する。

10-11シーズン 1位 23勝 6分 5敗 75ポイント

香川真司を加えリーグ制覇を達成したシーズン。

11-12シーズン 1位 25勝6分3敗 81ポイント

12-13 シーズン 2位 19勝9分6敗 66ポイント

バイエルンに独走を許しリーグ三連覇は逃すもCLは決勝進出。

10-11シーズン~12-13シーズン

クロップ・ドルトムントの全盛期と言える3シーズン、上位(1位から6位。とはいえ30ポイント近く、12-13シーズンに至ってはバイエルンと6位との勝ち点差が40ポイントと格差が存在する)相手に僅か3敗に抑えた。更には、バイエルン相手に2度のシーズンダブルを達成し、CLでも決勝進出するなどビッグマッチで力を発揮するチームスタイルはやはり共通するだろう。一方、Sky Sportsが指摘したように、中位や下位に対しての勝ち点を多く落としていることも分かる。

Liverpool クロップ就任以降

(上位6チーム、中位7チーム、下位7チームでカウント)

15-16シーズン第9節より 8位 13勝9分8敗 48ポイント

16-17シーズン29節消化現在 4位 16勝8分5敗 56ポイント

シーズン途中に就任し、思うような結果を残すことができなかった昨シーズン。しかし、ピッチ内外で長期的なプランが見られ、勝ち点の取得率も大幅に引き上げることに成功しているクロップを評価すべきというのが筆者の考えだ。上位から無傷で奪った勝ち点20という数字も、2位トッテナムと6位アーセナルの勝ち点差が9(アーセナルは1試合未消化)、その間に3チームがひしめく群雄割拠のプレミアリーグにおいてより大きな優位性を示すだろう。しかし、今シーズンのリバプールと10-13ドルトムントの戦績に目を向けるとやはり順位ごとの勝ち点の取得率に近いものがある。この2チームの戦績がクロップの特徴を反映していると仮定すると、彼の長所はプレミアリーグを戦う中で更に凄みを増すだろう。他方、ゲーゲンプレッシング対策と一般的にプレミア下位クラブの得意とする戦術のマッチングがこの問題を際立たせていると考察できる。

 

とはいえ今シーズンも残すところ9試合、「層が薄い」などと嘆いてる場合ではない。CL出場権抜きでも”クロップ”という移籍交渉において強力なカードを持ち、財政的にも大きく劣ることはないリバプール。それでもCL権の有無は選手補強において大きな役割を果たすことに疑いの余地はない。そして、この問題は冒頭でも述べた通り補強により緩和できるものだろう。悲願のプレミアリーグ制覇、ヨーロッパの舞台での再躍動に向けたクロップ・リバプールはまだ始まったばかりだ。その一歩として今シーズンのCL枠の確保は至上命題だろう。

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2 件のコメント

  • TK 中盤の底(ヘンドorジャン)に競らせて、CB2人はカバー。ってのがバーンリー戦でよかったかな。クロップの戦術らしく空中戦も運動量で対応してしまえい。

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