チアゴの貢献から紐解く、リバプール不調のワケ

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26lover

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お気に入りの選手はロバートソン。正統派SBが好き。 スコットランド代表も追ってます。

今季、順調とは言えない滑り出しのリバプール。開幕から8試合を消化し3勝3分2敗と昨年4冠を目指したチームとは程遠いパフォーマンスに留まってしまっている。その要因として考えられるのが離脱者の多さである。とりわけ、チアゴ・アルカンタラの不在はリバプールにとって大きな打撃であると言えるだろう。

次のデータを見てほしい。これは21-22シーズンのリバプールの戦績をチアゴが45分以上出場した場合と45分未満しかプレーしていない場合、そして欠場した場合の3つに分類した表である。45分未満の場合は負傷交代または怪我明けの出場と仮定し、チアゴがチームに貢献する余地で分類する意図を持ってこの条件とした。

21-22戦績 勝率
45分以上出場 20 3 2 80%
45分未満出場 11 2 1 78.5%
欠場 15 8 1 62.5%

結果を見るとチアゴが一切出場していない試合は勝率が62.5%なのに対し、45分以上出場した試合は80%と実に17.5%の開きがある。(母数も25試合と24試合でほぼ同条件)さらに45分未満の出場でも勝率は78.5%あることからも彼の重要性が見てとれる。(こちらは母数に開きがあるので参考程度)

このように、チアゴはまさにリバプールの心臓であり、今季の不調はチアゴ不在によるものであると考えることも出来る。サディオ・マネの退団や主力選手の不調を理由に挙げる声も少なくない。が、今回は原因をチアゴ不在と仮定して、彼の存在が必要不可欠な理由を考えていきたい。

チアゴ不在で失われる2つの利点

出典:LFC公式Twitter

チアゴはリバプールのビルドアップを最終ラインから安定させるいわば縁の下の力持ちでは無いだろうか。彼のいる試合は攻撃が円滑に行われ、左右どちらのサイドからもチャンスが作れているように見える。逆に言えば、彼がいなければ下支えを失ったビルドアップは行き詰まってしまう。

チアゴ不在時にはなかなか相手のブロックが崩しきれなかったり、片方のサイドに攻撃が偏ってしまうことが多いように感じる。実際、今季チアゴ不在の試合で生まれた全16ゴールのうち、左サイドから生まれたのはわずか2ゴール。しかも両方、ルイス・ディアスの個人技から生まれたゴラッソだ。残り10ゴールが右サイドから、4ゴールはコーナーキックからということを考えても、攻撃が右サイドに偏っていることは確かだろう。勿論、右サイドにトレント=アレクサンダー・アーノルドやモハメド・サラーといった特別な存在がいる事は考慮すべきだと感じるが、従来リバプールはアンドリュー・ロバートソンをはじめ左サイドの選手も同じように躍動するチームだったはずだ。

チアゴの動きで特に効果的だと感じるのは、進んで陣形の低い位置からゲームを組み立て、攻めあぐねている場面でも一列下がってビルドアップに参加するプレー。チアゴは頻繁にこの動きを繰り返すが、これには主に2つのメリットがある。

1.SBをきっかけにした攻撃の活性化

出典:LFC公式Twitter

チアゴ不在の試合では最終ライン付近までボールが押し戻された局面でCB2枚+SB2枚+ファビーニョのような形でビルドアップを図ることが多い。しかしながら押し込んだ状態で2-3-5のような形を作るリバプールにおいて、SBが最終ライン付近まで下がってプレーすることは望ましい状況ではない。さらに最近ではSBが前進したいがためにWGが入れ替わるように低いポジションに下がってくる事もある。ナポリ戦でも独力で一矢報いたディアスやサラーを始めとした得点力の高い選手がゴールから離れた位置でプレーすることは得策では無い。(右サイドの特殊な配置については割愛します)

SBが高い位置に位置取ることでWGの選手との距離は近づき連携が取りやすくなったり、幅をとることが出来て多くのスペースが生まれたり、相手の守備が間伸びしやすくなったりと多くの好影響が連鎖的に起きる。実際にチアゴが出場している試合では、同じような局面でも彼と入れ替わるようにしてロバートソンやコンスタンティノス・ツィミカスが高い位置を取るシーンが散見される。それによってアーノルドから対角の効果的なパスが供給されチャンスを生むことからも、ポジティブな変化であることは明確である。時折見られるチアゴ自身からアーノルドへの対角のロングパスも同じことが言えるだろう。

ナポリ戦48分付近の様子。この直前に32マティプがボールを持っていたため26ロバートソンが受け手になるためにポジションを落としている。もしこの場面でチアゴがいたら、21番を吊り出すように低いポジションをとっていて図に示した水色の円付近に左SBがポジショニングでき、アーノルドからロバートソンへのサイドチェンジが決まっていたかもしれない。

アヤックス戦41分30秒付近の様子。6チアゴと入れ替わるようにして高い位置をとった左SBが幅をとった位置でフリーになっていることが分かる。この場面では32マティプが縦パスを通して見せたが(これに関しても幅を取ることでコンパクトな陣形が作りづらいことも関係している子もしれない)このように有利なポジショニングができている場面は何度も見られた。また、アーノルドも高い位置を取ることが出来ており、結果この後のチャンスに絡むことが出来ている。

スタッツを参照するとパスやクロスなどボール関与の回数が特別多いわけでは無い。しかし彼のポジショニングがスイッチとなり、SBをはじめとしてチーム全体の陣形が改善することでリバプールのビルドアップは対処しにくいものになり、結果的に攻撃の安定をもたらしている。この貢献が失われることはリバプールにとって非常に痛手だ。

2.ファビーニョの負担軽減

出典:LFC公式Twitter

さらに、チアゴはファビーニョのタスク軽減にも一役買っている。守備的にはファビーニョがアンカーの役割をこなし、攻撃時にはプレーメイカー的なアンカーとしてのタスクをチアゴがこなすという分業が可能になるからである。先ほど紹介したSBが高い位置を取る2-3-5の形はチアゴ不在時でもある程度作れてはいるが、中盤で後方に残ってゲームを組み立てているのはファビーニョのみであることが大半だ。ファビーニョを封じてしまえばボールの前進が難しくなることを考えれば、彼の負担だけではなくチーム全体としても良く無い状況である。

他のIHの面々も後方でのビルドアップ参加が皆無なわけではないが、ファビーニョがポジションを下げたり一度ボールタッチをすると再び前線へ戻っていくことが多い。リバプールのスタイルを考えてもファビーニョには膨大な守備のタスクが与えられているわけだが、チアゴ不在時にはそれに加えてボールを前進させたり、タクトを振るったりする役割までもが押し付けられている事になる。というのはチアゴ以外のIHの面々は基本的に前線に近い位置でプレーすることを望むからである。例えばジョーダン・ヘンダーソンは2列目から飛び出していく動きを好む傾向にあるし、ジェイムズ・ミルナーは時にCF付近まで特攻している事もある。かつてWGとしてプレーしていたハーヴェイ・エリオットや今季もWG起用が見られたファビオ・カルバーリョは適正ポジションが前線に近い選手だ。さらに決定的なことに、そもそも後方から一人でゲームメイクできるスキルを持ち合わせている選手がチアゴ以外いない。(彼のスキルが圧倒的すぎるとも、中盤の補強が必要とも言える)

ナポリ戦の先程と同じ場面。中盤が若干空洞化してしまっている。7ミルナーと19エリオットは高い位置でプレーしており、ファビーニョのみが後方でビルドアップに参加。さらに99アンギサが18シメオネと挟むようにフォビーニョのプレーを封じている。この試合フィビーニョが囲まれてしまい前進できない場面は何度も見られた。この後ミルナーへの縦パスが通ったがエリオットの場所でカットされてしまっている。(勿論、個人の技術力の問題もある)

後方から組み立てに参加するチアゴによって、チームの攻撃がスムーズになるだけではなく、攻撃時の負担が軽減されたファビーニョがより高次元なパフォーマンスを発揮できるようになるわけである。結果として、リバプールの泣き所である広大な背後や脆弱性が度々指摘されているファビーニョの脇のスペースはカバーされ、副次的効果として守備力も増強されているのではないか。逆に言えば、チアゴ不在時にはファビーニョの負担が増加し、これらのウィークポイントが相手により一層際立つ事になる。

替えの効かない圧倒的な個の力

出典:LFC公式Twitter

先程も記述したように、チアゴは圧倒的なボールスキルを持ったプレーヤーである。それ故彼にしか出来ない芸当は多く存在し、比例して依存度は高まる。ロングパスの精度や視野の広さは勿論のこと、ファーストタッチで剥がすスキル、ドリブルでの推進力やキープ力にも目を見張るものがある。先ほど紹介した後方に残ってのビルドアップを担うために、これらのスキルが前提になっている事は言うまでもない。先ほどのナポリ戦の例もそうだが、不在時SB含む5人で上手くいっていないビルドアップを4人だけで上手くこなしているのは驚異的である。高い技術力を持つチアゴが居るだけでビルドアップが円滑に進むことは直感的にも考えうることと思う。

さらにチアゴは守備面でも力を発揮する。リバプールの試合を見ていると彼が誰よりも首を振って周囲の位置関係の把握に努めていることが分かる。広い視野を武器に、時にポジションを外れた位置まで走って攻撃を遅らせディフェンスラインを整える時間を稼ぎ、他の選手に指示を出しチームのポジショニングを適切に保つ役割まで担っている。この部分でもチアゴはファビーニョの負担を軽減していると言えるだろう。さらに球際にも強く基本的な守備強度も持ち合わせている。21-22シーズンの空中戦勝率は72%と身長を感じさせない。

これらの貢献が可能な選手は世界中を探してもほとんど存在しない。それが中盤の層の薄さが度々指摘されるリバプールであれば尚更である。よって自明だが、チアゴの欠場は即チームのクオリティ低下に繋がる事になる。

チアゴがリバプールに必要な理由

出典:LFC公式Twitter

リバプールは21-22シーズン頃からポジショナルプレーのエッセンスをリバプールに取り入れたと考えられている。しかし、純粋にポジショナルプレーを志向する他チーム(マンチェスター・シティなど)と比べて、ドルトムント時代からの哲学としてストーミングを志向していたユルゲン・クロップのポジショナルプレー採用は似て非なるものである。異なる点として属人的な戦術が挙げられる。シティといったチームがまさにそのペップが確立した構造によるビルドアップを採用しているのに対して、リバプールはアーノルドの特異なロングパス、攻撃参加やサラーの走力、フィルジル・ファン・ダイクの正確なフィードといったそれぞれの選手の特技を活かし、構造によらないビルドアップを採用している。属人的な戦術とポジショナルプレーを両立させるために白羽の矢を立てられたのがチアゴなのでは無いだろうか。前述の通り、彼は類まれなボールスキルと脅威的な認知能力によるポジショニングで優れたゲームメイカーとなることが出来る。それによって彼は個性豊かな選手たちの長所を束ね、調和させる「戦術」の役を担っていると考える。だからこそ、彼を失ったリバプールは構造が崩壊し、中盤空洞化をはじめとする深刻な機能不全に陥ってしまうのだ。

ここで1つ重要なのは不調の根本的要因はチアゴとは別にあるということだ。決してチアゴが怪我をしなければ良いという話ではない。21-22シーズン終了時点で明らかな勝率の差があったのだから、チアゴの役割を分担したり、不在時に重要な役割をいくつか他の選手にやらせてみたり、それが出来る選手を連れてきたり、とにかく何らかのアプローチが出来たはずだ。しかしチアゴ不在時の状況は改善していない。それを考慮すると不調の直接的原因はチアゴ不在だとしても、(もちろん本当に難しい仕事ではあるが)根本的な原因はクロップやペパイン・リンダースらの対策不足にあると考えられる。

リバプールの末長い繁栄のためには戦術を大きく転換しない限り、チアゴのリプレースを探すか(個人的には非現実的だと思う)、将来的にチアゴのタスクを分散しIH2枚で分担出来るような補強が大切では無いだろうか。少なくとも、中盤の補強が必要なことは確かだ。来年の夏、中盤の補強にリバプールの未来がかかっているのかもしれない。

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2 件のコメント

  • 現在の戦術に疑問を抱く状況は同意見です。
    過去の采配から慎重派なコーチ陣という認識ですが、現時点で改善が全く見られない事に不満を覚えます。
    それでいて、不利な位置から仕掛けられ続けるDF陣ばかりが槍玉に上げられれば内部的に不和が発生してもおかしくないでしょう。
    適切な対処が行われ、サイクルの終わりを迎えない事を祈るばかりです。

    • 拙文をお読みいただきありがとうございます。
      いくら慎重な路線で結果を出して来たとはいえ、手を打つべき状況ですよね。
      厳しいシーズンですが、色々言いながらも根気よく応援していきましょう…!

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