[リバプールCL対戦相手分析]ASローマ〜空中戦を乗り越えキエフに至れ〜

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トリコレッズ

トリコレッズ

日本ではマリノスファンなので、Redsの虜(トリコロール=マリノス)という意味でトリコレッズという名前にしました 戦術・選手分析などをしていきたいと思います
CL Round of 8・2nd leg ローマ3-0バルセロナ @スタディオ・オリンピコ

「1st legに3点差をつけられて逆転したチームはほぼない」と言われに言われて迎えた2nd leg。3点リードを持っていた3チームのうち、リバプールは最終的に完勝、レアルは追いつかれつつもギリギリで突破、しかし守りきれなかったのがバルセロナであり、ジンクスを打ち破ったのがローマでした。

スタメンは上の通り。
ローマは3-3-2-2と言われていましたが、運用の仕方としては必ずしもそうとも言えない状況です。守備時は1st legと同じ4-1-4-1になっているシーンも多かったですし、攻撃時にはシックというよりもナインゴランがジェコと並ぶようなシーンも多く、また選手の特性もあって左右非対称にも見える状況でした。大きかったのはこのナインゴランの復帰で、ピッチ上を駆け回りながらプレスをしかける姿が印象的でした。

バルサは1st legと同じスタメン。「勝っているチームは変えない」という原則をしっかりと守った形です。

試合展開

試合そのものとしては1st legとそれほど変わらない展開。ローマがバルサのビルドアップに対してしっかりとマンツーマンに近いプレスを仕掛け、ビルドアップを遮断できています。

何が違ったかといえば、ローマの先制点が5分に決まった事。ローマのDFラインに対してバルサがプレスをかけるより前にロングボールを蹴りこむと、アルバとウムティティの間をとったジェコがうまく運んでゴールします。

バルサとしては慣れないロングボール戦術を強いられているものの、バルサの選手たちの技術があれば正確なロングパスを通す事も十分可能なのですが、この試合ではなかなか有効な攻撃になっているようには見えませんでした。

その理由については正直よく分からないのですが、恐らくメンタルなことなのではないでしょうか。1st legを4-1でリードしている状態で試合に向かう際の油断、そこから5分で失点したときの動揺など、言葉には出来ないものの感じる雰囲気のようなものは、サッカーを見ていると意外と良く感じるものではないでしょうか。

バルサの事情はともかく、ローマは試合を通じてしっかりとしたプレスからロングボールや縦パスを強要→回収、の流れを何度も繰り返し、攻めてはバルサのプレスを回避してロングボールを蹴り込みジェコが納めるorこぼれ球を中盤が拾うという形で、バルサに試合の流れを渡しません。フォーメーションを変更したことで、1st legよりもボール回収が確実に行えている印象です。

後半になってもその流れは変わらず、60分にはロングボールをジェコが納めたところで、エリア内にも関わらずピケがガッツリ掴んで引っ張り回して引き倒し、案の定PKに。これを、1st legで痛恨のオウンゴールを喫したデ・ロッシがしっかりと決めて1ゴール差に詰め寄ります。

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そうなるとオリンピコ含めローマ全体がイケイケムードに。前述の形で攻撃を繰り返すと、81分についにCKをマノラスが流し込んで3-0。アウェイゴールの1点を含めて4-4、逆転に成功します。

ここでようやくバルサは目が覚めたのか、あるいはピケをあげてパワープレイにした効果か、バルサがようやく攻撃の主導権を握ります。その状況でもローマはハイプレスをしっかりとかけていたため、全体としてバックラインも高く保っていたことは(ドン引きするよりは)良かったのですが、ロングボールでバックラインの裏を取られるシーンも散見。1点とればバルサの勝ち抜けのうえ、結局のところメッシという破壊兵器には一瞬の隙が命取りであるため、最後まで試合の緊張感は高く保たれます。

しかし、そのままタイムアップ。1st leg1-4という不利を吹き飛ばし、ローマが大逆転で実に34年ぶりのベスト4進出を成し遂げました。

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ローマの攻撃②

1st legに続いて、攻撃単独として理解するのはそれほど正しくないでしょうが、ジェコのプレーを見てみましょう。1点目のシーン、時間は5分13秒からです。

バルセロナのクロスボールをクリアするシーンから。


そのクリアボールに対しジェコとピケが競り合います。ピケもフィジカル的に優れている方ですが、ジェコはプレッシャーを受けつつ収め切ることができます。


そのまま右サイドに展開しますが、そこからは一度スローダウン。1回アンカーのデロッシまで戻します。

ここにフラット4-4-2の弱点が出ます。一応、2センターのラキティッチとブスケツは縦関係になっているのですが、アンカーにまではプレスがかかりません。おそらく2トップのうちのどちらかがこの辺りまで対応すべきなのですが、メッシ、スアレスにそもそもその仕事を課していないのでしょう。

ジェコのランニングコースはアルバとウムティティの間。アルバは空中戦に強くはないですし、ウムティティはこの試合でも何回かマークの受け渡しを正しく行えていないシーンがあり、事実ジェコは何度かこの間を狙ってボールを引き出そうとしていました。


入ってきたデロッシのボールも絶妙で、フリーで蹴っているとはいえバックラインとGKの間にぴったりと落とすボールを供給、テアシュテーゲンも出ることはできません。ジェコが上手く合わせて反撃の狼煙をあげました。

次にはバルセロナの前プレスを交わしたシーンを見ておきましょう。ここでもジェコのキープ力は非常に大きな役割を果たしています。時間は28分08秒から。

ローマのバックラインに対しセルジロベルトがプレス。ただし、全体として連携しているような形にはなっていません。ラキティッチのポジショニングも気になりますが、競り合ったボールを拾う狙いなのでしょうか。

確かに、落下地点付近にはローマの選手よりもボールに近い位置にバルサの選手が2人います。ジェコとピケの競り合いのボールがこぼれれば、バルセロナが回収する可能性が高くなっているでしょう。

しかし、ここでヘディングの競り合いではなく胸トラップでこぼさず納め切れるのがジェコの真骨頂。プレスも交わして完全にマイボールにします。

1回落としてからもう一度ロングボールを逆サイドへ。


そのボールがフロレンツィに入るタイミングで、右CBのファシオが猛然とサイドを駆け上がります。ローマ左サイドから大きく逆サイドに振っていることでイニエスタが中に絞っていたため、ファシオへのカバーが全く効いていません。ファシオがフロレンツィを追い抜くあたりでようやくイニエスタが間に合いますが、大外を使われては結局マークが間に合いません。

そこからファシオがクロス。バルサの中の対応も微妙で、ピケとウムティティの間にシックを置いてしまっており、マークが曖昧になっています。一応アルバがクロスのカバーに入っているため、この場合はウムティティがもう少しシックにタイトに行くべきだったと思います。

結果シックはほぼフリーでヘディング。シュートはギリギリ枠を外しますが、ローマのロングボールを軸とした展開にバルセロナの守備のカバーが間に合わず、決定的チャンスへと繋がったシーンでした。

ローマの守備②

1st legと同じようなやり方ではありますが、恐らく1st legよりもさらに攻撃的に、人数をかけて前からのプレスを行なっています。その様子を見てみましょう。時間は22分33秒から。

シチュエーションはこのような状態。シック、ジェコに加えてナインゴランが上がってきて3トップに近い形になっていますが、ナインゴランはここに張り付くわけではなく中盤まで降りたり左サイドに張り出したりして様々なタスクをこなしています。

ピケからテアシュテーゲンへボールが入ったタイミングで、ジェコ、ストロートマン、シックで各々パスコースとボールホルダーへプレスに行きます。

テアシュテーゲンは、ウムティティを飛ばしてアルバへ。それによりローマのプレスを軽く緩和できています。

しかし、即座に切り替えてシックがアルバへ。さらにそこからパスコースを作りに近寄って行くイニエスタに対してもストロートマンがチェックしています。

イニエスタは受けてすぐにウムティティへ。結果としてウムティティが余裕を持ってボールをキープするという形には成功しています。

そこからテアシュテーゲンに入った瞬間でまたもやジェコがプレス。さらにその裏、テアシュテーゲンが右サイドのピケへ展開しようとしていることを読んだナインゴランが既にスタートを切っています。

ナインゴランはそのままピケまでプレス。それに連動してSBのセメドへコラロフ(?)がプレスに。この辺りの絶え間ない連動プレスがローマの守備の高い組織化を表しています。

ここでワンツーでかわせるのがバルサイズム。ピケはセメドに渡してからすかさず動きなおし、ワンツーのパスコースを作ってボールを受けます。

しかし、そこからが問題。ピケの考えうるパスコースは大体示した3つぐらいですが、全てにローマのカバーが入っています。左SBのアルバだけは行けそうな感じもありますが、ジェコがすでにプレスにきていることがピケの目に入っており、ここでカットされると大ピンチということもあってCBとしては選択しにくいパスコースでしょう。

パスコースがないためピケがパスを出しあぐねている間に、ジェコがピケへタックル。ファウルにはなりましたが、奪い切れれば大チャンスというシーンでした。

1st legとメカニズムとしてはそれほど変わらないのですが、バルサが何度交わしてもローマがその都度パスコースを封じながらプレスを仕掛けてくるため最終的には出しどころを消され潰される展開。1st legよりもよりアグレッシブに前から限定をかけて行くことで、バルセロナの得意なショートパス攻撃を封じ切ってみせました。

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