リバプールは名門復活の旗を打ち立てるか。10年振りCL準決勝はローマとの激突

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UEFAチャンピオンズリーグ1718、クロップ率いるリバプールはマンチェスターシティをトータルスコア5-1で「撃破」しCLベスト4に駒を進めた。レッズがこのステージまで到達するのはラファエル・ベニテスがジェラードとトーレスコンビを率いた0708シーズン以来。当時、実力十分なメンバーで挑むもチェルシーとの接戦の末決勝に進むことはできなかった悔しさを筆者は今でもよく覚えているが、現クロップのチームはスターティングイレブンはベニテス期を凌ぐという声も多い。サラー、フィルミーノ、マネの3トップは現時点(2018年4月1日)で82ゴール37アシストと驚異的な記録を残している。冬の市場でフィリペ・コウチーニョがCLを含めたタイトルの獲得を目的の一つにバルセロナに移籍したことが、約13年前マイケル・オーウェンがレアルマドリーに移籍をしたことと重なり、数多くのサポーターが同年のビッグイヤー獲得の語り草「イスタンブールの奇跡」を頭に浮かべているに違いない。

画像出典:UCL公式Twitter

リバプールがベスト4で衝突するのはフランチェスコ監督率いるASローマ。ベスト8バルセロナとの一戦でファーストレグ1-4からの大逆転を決めた出来事は大きな話題となった。リバプールの選手にとっても、クロップにとっても、サポーターにとっても、負けられない一戦であることに違いないが、それはローマも同じである。リバプールはどんな戦い方で”16年ぶり”に衝突するセリエAの名門に挑むのだろか。

本記事では、この大一番に向けて以下の3つのポイントでASローマについての情報をまとめていく。

  1. ローマとリバプールの対戦記録
  2. ローマとリバプールの相性〜レッズの「くじ運」はよかったのか〜
  3. アンフィールドでの両チームの戦い方推察

ASローマとリバプールの対戦記録

画像出典:AS ROMA公式Twitter

リバプールの対ASローマとの公式戦戦績は2勝2分け1敗。勝ち越してはいるもののほぼイーブンであり前述の通り”直近”の公式戦が0102シーズンと実に16年ぶりの激突となる。UCL公式が公開しているデータを紹介しよう。

  • ジェコはマンチェスターシティ時代にリバプールと11戦し3ゴール決めているがいずれのゴールも勝利には繋がっていない。
  • ローマはノックアウトステージではじめてイングランドのクラブと激突してからの3戦は勝ち進んでいるが、それ以降の6戦ではいずれも敗退している。
  • リバプールはイタリアのクラブに対して9勝5分11敗。ノックアウトステージでは突破4回、敗退2回。
  • 両者が直近で対戦した2016年のプレシーズンマッチではジェコとサラーのゴールでローマが勝利を納めている。
  • サラーはローマでの合計2シーズンのリーグ29ゴール。リバプールでの一シーズン目ではシーズンを終える前に同ゴール数に到達している。

サラーにとってはローマ帰還となる一戦。ローマはサラーを知り尽くしていると言う意見もあれば、サラーもローマを知り尽くしていると言う意見もある。しかし、UCL情報にもある通りサラーはリバプールの地で新たな才能を開花させウィンガーとして振舞いながら唯一無二のストライカーとしての得点を量産するという新たな領域に足を踏み入れている。ローマでプレーしていた当時とは全く別の選手になっていると言って良いだ。

サラー本人にとっては複雑な一戦になるかもしれないが、両者はCLベスト4の組み合わせが終わった直後ツイッターで実に交友的な気持ちの良いやりとりをしている。清々しい気持ちで緊張感のある一戦に臨めることだろう。

ローマとリバプールの相性〜レッズの「くじ運」はよかったのか〜

画像出典:UCL公式Twitter

レアルマドリー、バイエルンミュンヘンではなくローマを引いたリバプール。ネームバリューや国内での成績から、その他2チームと当たるより勝利できる確率は高いと言う声もあるが果たして本当にそうだろうか。5大リーグのクラブを比較したSquawkaの客観的なスタッツを元に考えてみよう。

欧州5大リーグの中で「トータルのパフォーマンススコア」を確認するとバイエルン4位、レアルマドリー6位、リバプール8位、ローマ9位。これだけで評すると確かにローマが一番楽な相手と言えるかもしれない。しかし、リバプールはランキング2位のマンチェスターシティに4戦3勝し、43位のセビージャに3戦して1勝もできないという記録を直近で残しているチームであることを忘れてはいけない。リバプールというチームにおいてこの様な例は多分に存在することはKOPが一番よくわかっている筈だ。

画像出典:Squawka TEAM RANKING

リバプールのサッカーはスタイルが明確な故に相性がはっきりと現れるのだ。クロップはこれまで誰よりもペップに土をつけてきた男である。わかっていても交わしきれないゲーゲンプレスと網を張るようなチーム全体の位置どりの妙は、ポゼッションスコアが高ければ高いチームほど格好の”獲物”にしてしまうほどの鋭さ。ペップシティの「ポゼッションスコア」は4206と欧州最高である。

ではローマに特徴的なスコアはあるだろうか。ローマはレアルマドリー、バイエルンよりも「ディフェンススコア」が高く欧州4位。

画像出典:Squawka TEAM RANKING

さらにローマは「空中戦のスコア」で欧州ナンバーワンを誇っている。

画像出典:Squawka TEAM RANKING

アンフィールドでの第一戦、守備陣形を整えながらリバプールにボールを持たせ、最前線のジェコにハイボールを集めて競ったボールに両脇からカットインしてSBの内側のエリアを狙いに行く。そんなローマの試合運びが眼に浮かぶ。レアルマドリード、バイエルンは圧倒的な個の力で無慈悲に試合を決められる怖さもあるが、得手不得手を考えるとリバプールにとっては決してよいドローだったと言えないというのが筆者の見解である。

アンフィールドでの両チームの戦い方推察

最後にリバプールに対するローマの戦い方、それに対するリバプールの策について考察を述べローマ戦前の記事の締めとしたい。まず、前提条件を整理しよう。ローマは現在リーグ戦でCL圏ギリギリの4位でインテルとの勝点差は「1」。”CLが最重要”だとしても来季のことを考えると落とすわけにいかないリーグ戦がリバプールとのCL前の1週間にそのリーグ戦が3試合詰まっている。更にはレッズ戦は彼らにとって2連続のアウェイ戦でありコンディション的にも、時間的にも腰を据えてクロップのサッカーを隅々まで研究し尽くし対策を選手に叩き込んでアンフィールドにやって来ることはほぼ不可能と言って良い。

画像出典:UCL公式Twitter

そんな前提の中で、リバプールのスタッツとビデオを繰り返し分析してできる限りのスカウティングを行ってくることは言うまでもないが、選手のコンディションを加味すると中盤での激しいプレッシングを軸とした戦い方を選択してくる、あるいは、バルセロナを圧倒した一戦のように走力とパス回しを基軸に戦いを挑んで来るするとは考えづらい。加えてセカンドレグを聖地オリンピコで戦えることを踏まえると、ドローもしくはアウェイゴールを奪っての1点差の負けであればローマにとって十分。安定感のある守備網と得意のライン調整でリバプールのスリートップを押さえ込み効率よくウィークポイントを叩く準備をして来ると見込むのが妥当だ。

前章で述べた通りジェコとシャーラウィなどの縦に抜けられるアタッカーを組み合わせてリバプールの右サイドに襲いかかってくることは容易に想像がつく。 すなはち、KOPから愛される19歳のアーノルドはシティのサネを抑えて一息ついている暇はなくローマ戦でも鍵を握るプレイヤーとなる。リバプールは過労気味の彼ができるだけコンディションの良い状態でこの大一番に臨める様準備する必要があり、再離脱したクラインを直前のリーグ戦で使えるかどうかは決して層が厚くないリバプールにとって重要なポイント。

画像出典:LFC公式Twitter

対するクロップはローマの思惑に嵌まらず、上手く中盤にできる空間を使いながら両翼に質的優位なエリアで勝負をしたいが、ディフェンススコアセリエANo.1のローマ守備陣は一筋縄ではいかないだろう。ゴールマウスにはリバプールからの視線も熱い守護神アリソンも構えリーグ戦でのエリア外からの失点は僅か「2」。チェンバレンがシティ戦で見せた水準のミドルが放たれれば別の話だが、アリソンを前にして今のリバプールの布陣で戦術にミドルシュートを組み込むのは無理がある。つまり、個でも組織でもローマのディフェンス陣を崩して得点を狙いにいく必要があるのだがレッズが遅攻を得意としないのは周知の事実。アンフィールドでの初戦はシティの様にボールを持ってはくれない可能性が高いことを考えると、連続的に際どいエリアにボールを配給し”意図的にスクランブルをつくりにいく”ドルトムント時代のクロップの真骨頂が見られるかもしれない。一瞬そう考えたのだが、日程的に有利といってもリバプールもまた「一人負傷すればアウト」な状況であり、プレミアリーグもこれ以上マージーサイドダービーの様にメンバーを落とす余裕はない。良い意味で現実的な今季の試合プランを考慮するとローマを叩く策としてクロップがこのステージで消耗の激しい上記の戦い方を選択をする筋は僅かだ。

画像出典:LFC公式Twitter

となるとやはり最前線で個対個の場面をできるだけ多くつくり、欧州屈指のスリートップの質的な優位性で戦いたい。クロップはボーンマス戦で後半途中からフィルミーノとサラーの2トップを試し、ミルナーをワイドに位置取らせる配置を試している。3トップの布陣が抑え込まれた時のプランBを試していた可能性がある。4バック+中盤3枚で個を消された時のオプションとして、2トップ+中央でもプレーできるMFを両サイドにの配置する布陣は4バックに対して最前線で数的同数の場面をつくりやすいという点で有意義だ。

タフな試合になることは間違いないが、コンディションの面で優位に立てるリバプールはアンフィールドでの初戦を必ずものにする必要がある。リバプールとしてはポジションを上手く可変させながら質的な優位で勝負できるシーンを作り複数得点でファーストレグを折り返したい。クロップ含めコーチ陣がこの大勝負にどんな作戦を練って挑むのか実に楽しみである。

終わりに

画像出典:LFC公式Twitter

10年振りのCL準決勝の舞台、一サポーターとしてはこみ上げる思いがある。リバプールはこの10年、不安定な経営状態もあり一部の選手からは”沈船”とまで揶揄された。そんな中ジェラードがなんとか守ってきた伝統あるクラブのプライド。復活の象徴を明確に打ち立てる舞台は整っている。「イスタンブールの奇跡」振りとなるビッグタイトルの獲得を信じ、ここまでの道のりを噛み締めながらローマとのキックオフを待ちたい。<完>

チャンピオンズリーグ準決勝(リバプール対ローマ)の視聴方法について

今シーズンのチャンピオンズリーグはスカパーで視聴可能です。ライブ視聴できるのはプレミアリーグのみという環境の方もいらっしゃるかと思いますが、10年ぶりのCL準決勝の舞台をぜひリアルタイムで。「スカパー!サッカーセット」が最安です。

※1819シーズン以降のCLはDAZNでの放送が決定しています。

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2 件のコメント

  • 「ランキング2位のマンチェスターシティに4戦3敗」となっていますが、「4戦3勝」の間違いではないでしょうか?

    私も空中戦が強いローマとの対戦は、リバポ的にはやや苦手なタイプだったと思いましたが、向こうさんがこちらよりもタイトな日程という点はかなり有利に働きそうですね!

    • 失礼!訂正済みです。
      ご指摘ありがとうございます。

      明確に苦手なタイプに該当するチームかと思いますが、日程面はかなり有利ですね。リバプールはロブレンも間に合い、ゴメスも復帰しそうなのでここから怪我人が出なければクロップサッカーの成熟度を試す機会として、存分に力試しできそうです。

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