[リバプールCL対戦相手分析]レアル・マドリード〜In Kyiv, we’ll win it 6 times〜

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トリコレッズ

トリコレッズ

現役大学院生 日本ではマリノスファンなので、Redsの虜(トリコロール=マリノス)という意味でトリコレッズという名前にしました 戦術・選手分析などをしていきたいと思います

ついに。ついに、CLファイナル。
ヨーロッパ最強の座まであと1つのところまで、我らがリバプールは帰ってきました。
対戦相手は、まさしくCL最強王者と呼べるレアル・マドリード。

さぁ、最高の舞台は整いました。
ヨーロッパ全土を征服し、f**kin’ lotのビッグイヤーを獲得してきた我らリバプール、欧州最強という凱歌を再び高らかに響かせるための最終決戦です。
世界最高といっても過言でないこの一戦、最高に楽しむために、準決勝の熱戦をレビューしつつレアル・マドリードについて紐解いていきましょう。

CL Round of 4・1st leg バイエルン・ミュンヘン1-2レアル・マドリード @フスバル・アレーナ・ミュンヘン

まずは1st leg、バイエルンのホーム、フスバル・アレーナ・ミュンヘン(いわゆるアリアンツ・アレーナ)にて、バイエルンが先制しながらもレアルが逆転したゲームから。

バイエルンは守護神マヌエル・ノイアーをほぼシーズン通して欠いていますが(練習には復帰しているそうですね)、2ndGKの実力者スベン・ウルライヒが活躍を見せており、ブンデスリーガでは他を寄せ付けず6連覇を達成しています。
レアルから2シーズンレンタル中のハメス・ロドリゲスですが、この試合では出場可能なようです。

レアルはコパデルレイ、リーガは共に優勝に絡めませんでしたが、現在2連覇中のCLでは流石の番長ぶりを発揮。前身の大会時代を含めても、過去レアル自身(5連覇)、アヤックス、バイエルン(3連覇)しか成し遂げていない3連覇に向けて邁進しています。
この日のスタメンは、中盤以降は完全なベストメンバーですが、3トップは大エース、クリスティアーノ・ロナウドを中央に置き、イスコ、ルーカス・バスケスを両WGに置く形。ベンゼマ、ベイルは共にベンチスタートとなっており、かつて猛威を振るった「BBC」も今や「C」のみとなってしまいました。

試合展開

試合開始直後からホームのバイエルンが激しく攻め込むと、そのまま流れを手にします。開始7分でロッベンを怪我で失うアクシデントには見舞われますが、交代で入ったチアゴ・アルカンタラ、そして古巣対決に燃えるハメス・ロドリゲスの2人がダブル司令塔として機能。リベリーなどに鋭いスルーパスを供給し、チャンスを量産して行きます。

その流れの中で前半27分。GKからパスをつないで展開すると、ボールを受けたハメス・ロドリゲスに対してレアルの守備が3人食いついてしまったところで、裏をとったキミッヒへスルーパス。抜け出したキミッヒは中を確認し、クロス……と思いきや、そのボールがゴール方向へ(僕が見る限りクロスのキックミスだと思います)。完全にクロスと思い込んでいたナバスの逆をついてボールは逆サイドのサイドネットを揺らし、バイエルンが先制に成功します。

Embed from Getty Images

レアルはそれほど攻め手が多くなく、単発の攻撃が続きます。
バイエルンはさらにボアテングも負傷交代、今季ホッフェンハイムから加入の大型CB、ズーレを投入します。が、流れは以前バイエルン。

それでも前半終了間際でした。レアルが左サイドからサイドチェンジ。そのボールを上がっていたカルバハルが折り返すと、クリスティアーノ・ロナウドがオーバーヘッドの体勢を見せたことでバイエルン守備陣が引きつけられます。そのまま流れたボールがマルセロの元へ渡ると、迷わずマルセロは左足を振り抜き、エリア外から正確にゴール右下隅を撃ち抜くゴラッソ。アウェイゴールを挙げると共に、いい時間帯に試合を振り出しに戻します。

後半になっても流れそのものはバイエルンで、リベリーのキレキレのドリブル、チアゴやハメスのスルーパス、神出鬼没のミュラー、彼らのコンビネーションでレアルゴールへ迫りますが、ナバスの好守などもあってなかなかゴールを割ることができません。

すると56分。バイエルンのCKのこぼれ球がラフィーニャへ渡ると、ラフィーニャは横パスを選択しますが、そのボールを後半から投入されたアセンシオに奪われてしまいます。そのままバスケスとのパス交換から再度受けたアセンシオにシュートをたたき込まれ、バイエルンにとっては痛恨の失点で逆転を許します。

Embed from Getty Images

その後も流れはそれほど変わらず。フンメルスが上がってパワープレイを仕掛けたりもしましたが、お互いゴールを割ることはできず。クリスティアーノ・ロナウドもワンチャンスを物にしネットを揺らしたかに思われましたが、ここは残念ながらハンドの判定。

結局試合はそのまま終了し、アウェイゲームでレアルが貴重な勝利を得ました。

レアルの攻撃①

この試合、そして2nd legを観戦・分析して思ったのですが、レアル・マドリードの攻守において、基本的な決まり事以上の戦術というものはないような印象です。最近リバプールやマンチェスター・シティ、ローマなど、緻密な分析に基づく戦術的チームの試合分析ばかり行っていた影響でなんだかすごく新鮮に感じたのですが、レアル・マドリードというのはそもそもそういうチームですよね。とはいえ、2シーズン前に決勝でアトレチコを破ったときには結構戦術的にオーガナイズされた戦いをしており、対戦相手に合わせて最低限のモディファイは行ってくるようです。

まぁとにかく、この2試合でのレアルの攻撃の基本コンセプトは、「クロース、モドリッチで作り、ロナウドで決める」という、そりゃそうだ的発想。もちろんそのために周りの選手達がしっかりと動き回っており、また陰の主役として両SBが非常に攻撃的に振る舞いながら相手を押し込む姿も印象的ですが、最終的には一瞬のアドリブ的閃きと大エースの決定力に頼る印象。ですが、それがあまりに強いので恐らくほとんどの相手では問題にならないのでしょう。ただし、この2試合、ロナウドは珍しくノーゴールに終わっています(前述の怪しいハンドを取られてゴール取り消しになったシーンはありましたが)。
というわけで、その狙いが見えたシーンを見てみましょう。まずはごくごく単純なシーンで、時間は1分40秒。

バイエルンのGK、ウルライヒからのボールをセルヒオラモスがカット、中盤で収めてからマルセロに下げたシーンです。ラモスからのヘッドを、一応ウィング扱いのイスコが中盤まで下りてきて受けますが、そこにはバイエルン右SBのキミッヒがそのままプレス。そのためキミッヒのポジションがバイエルンにとっては空いてしまっています。キミッヒとしてはもう少し連動してマルセロまでプレスして欲しかったシーンかも知れません(シーンによってはバイエルンもゲーゲン気味にプレスすることがありましたが、その場合においても基本的にはパスコースを消して、行けるときにボールホルダーへのプレスという形を取っていました。リバプールの行うゲーゲンプレスとはやや目的というか狙い所が異なっており、もしもfootballista3月号をお持ちの方がいらしたら、そのゲーゲンプレスの項を確認して頂ければと思います)。が、結局そこまでプレスは間に合わず、マルセロはかなりフリーにボールを受けています。また、クロースはアンカーのハビ・マルティネスの脇のスペースでややフリーになっています。

キミッヒが空けたポジションに顔を出したのがロナウド。バイエルンとしては最も触らせたくない相手ですが、実際の狙いはクロース。この縦パスのコースへの警戒をそらすこともロナウドが顔を出した1つの要因でしょう。

ちょっとぶれてしまって見えづらいですが、恐らくボアテングがロナウドに対してかなり深くついて行っています。一般的なゾーンディフェンスであればこのようなことはしませんが、恐らくこの試合、負傷退場まではボアテングがロナウドを(少なくとも自陣内では)マンツーマンで見ていたように思います。実際、敵陣に入った辺りまでボアテングが追い回すシーンも見られました。
しかし、こうやってボアテングが追い回してしまえばレアルの思う壺。マルセロからの正確なスルーパスがクロースへ通る道筋が見えました。


入れ替わって完全にクロースがフリー。とはいえ、割と展開の早い攻撃だったためレアル側も選手の数が間に合わず、クロスボールは無人の逆サイドへ流れてしまいました。
ロナウドで決める、といいましたが、特にCLにおいてまさに怪物級の決定力を持つロナウドに対しバイエルン側もかなりの警戒態勢を敷いていたため、このシーンではそれを逆手に取った格好となりました。

お次はモドリッチ。レアルのビルドアップからのシーンですが、結果的にモドリッチに始まりモドリッチに終わる、まさにモドリッチ劇場。最後の最後にモドリッチにパスが戻りっちすれば良かったのですが。自分でも何を言っているのかよく分かりませんが、とにかく18分24秒から。

レアルのGK,ケイラー・ナバスのスローイングがヴァランに渡ったところから始まります。今のところモドリッチはこのいっち。ひとつチェックしておきたいのは彼の目線です。しっかりと周りの味方の位置を確認しており、ただ漫然とボールを受けに下がってきたわけではありません。

ここからサイドに展開しつつプレスをかわしながら中を窺うのがレアルの定石なのですが、ここではヴァランが結構強引にモドリッチを選択。しかし、この瞬間にハビ・マルティネス、ハメス・ロドリゲスがプレス。モドリッチ、ぴんっち!!

ここでモドリッチらしさが炸裂。テクニックというほど派手なものではないのですが、ボールにいち早くタッチするのではなく、ボール側に一歩踏み出してタッチするフェイントをかけてから反対方向に持ち出し、ハビ・マルティネスのプレスを一旦外側に引き出します。そのためプレスは間に合わず、モドリッチはパスコースを確保します。また、静止画ではわかりにくいのですが、この一連のターンの間じゅうモドリッチはルックアップしています。絶対的な技術への自信もそうですが、特に中盤の選手において、周囲の状況の認知ということがいかに重要か思い知らされる気持ちです。よく「判断力」という言葉が選手の特徴を述べる際に使われますが、そのさらに前提としての「認知力」についても議論されるべきという気がしてなりません。

よく考えると、明らかに囲まれているのだからパスを出すなよヴァランという気もしますが、モドリッチのキープ力があるからこそ「パスコースがある」という判断になったのでしょう。カゼミーロがここにいる場合には出さなかったシーンも一応ありました。
ここではクロースを選択。ビルドアップの初期段階としてはこれで完了です。と、いうわけで、モドリッチのテクニックを活かしたゲーゲンプレス外しが成功したシーンでした。
このあとは崩しの局面になりますが、もう一段外のマルセロが受けたところでウィングの位置から左ハーフスペースへ下りてきたイスコが引き取り、逆サイドバックカルバハルへ展開しますが、そこではパスコースが無く再度作り直しに。そこからの続きのシーンも見てみます。

さっきと似たようなシーンですが、今度は下りてきたのはクロース。ヴァランを経由して相手のプレスを剥がし、右SBカルバハルへもう一度展開します。ちなみに、ビルドアップ時にクロースがカゼミーロの脇に降りてくるのはややパターン化されており、そこからはヴァランを使うor使わないの差こそあれ右サイドへ展開というのが定石になっていました。
バイエルンが本当にプレスでレアルのビルドアップを破壊したいのであれば、この時点でヴァランまでリベリがプレスし、一気にラインを上げるべきでしょう。リバプールであればそのようなシーンは容易に想像できますが、1回レアルがビルドアップに成功した時点でバイエルンはリトリートしてしまっており、そこからの作り直しに際してそれほど全体を押し上げなかったため、ここではプレスが効かない状態になっています。

先ほどのシーンでビルドアップに関与してから、作り直しには参加しなかったモドリッチはふらふらとこの辺りまで進出。ここが嫌らしいところで、知らんぷりをしながらいつの間にかかなりクリティカルなポジションへ顔を出す、本当に頭の良い選手です。しかしバイエルン、この守備はいただけませんね。行くのか行かないのか中途半端になったところで全体が間延びし、モドリッチにこれほどのスペースを与えてしまっています。

フンメルスが食いついてきたところで、モドリッチは右足インサイドを使って素敵にフリック。ロナウドの裏抜けを促します。ボアテングは気づいてラインを止めましたが、オフサイドは取ってもらえず。この画像はモドリッチが触れた瞬間ではないため正確なことは言えませんが、かなり際どかったのでしょう。


クリスティアーノが完全に抜け出しましたが、最後どうにかボアテングが追いついてクロスをブロック。モドリッチには届きませんでした。このボアテングのスピードも驚異的ですね。
しかし、モドリッチのテクニックと視野、戦術眼を遺憾なく発揮し、バイエルンのプレスをかいくぐったシーンでした。

レアルの守備①

続いて見ておきたいのはレアルの守備。ですが、ここも特に洗練された守備戦術が用意されているわけではありません。ここでの基本コンセプトは、「最終的にはラモスかナバスがなんとかする」です。攻撃にも増して身もふたもない感じがしますが、ラモス、ヴァラン、カゼミーロの3人のユニットは世界トップクラスの守備ユニットといって過言ではなく、むしろ彼らだからこそ、両SBまで攻め上がった後の広大なスペースを任せることができるのでしょう。さらにその後方にはケイラー・ナバスが控えており、最後の最後にビッグセーブを見せるシーンも少なくありません。

とはいえ、この試合、穴のない守備を見せていたわけではありませんというか、むしろ結構好き勝手にやられていた印象で、なかでもかなり気になったのがバックラインと中盤ラインのギャップです。次の試合の分析でも触れますが、この試合でもよく見られたシーンなので、ここでも解説しておきます。44分45秒のシーンから。

バイエルン右サイドから横パスでフンメルスへ。レアルはちょこちょこプレスをかけますが奪いきることは出来ません。基本的に近くにボールが来たら近くにいる人が距離を詰めるぐらいなもので、連動してパスコースを潰したりはしません。ここではモドリッチが献身的に前からプレスを行っています。



中盤ラインの裏に顔を出したリベリーにボールが渡ると、右SBのカルバハルがそのままプレスしていきます。カルバハルのプレッシャーでリベリーの進撃を止めるとモドリッチもプレスに参加。奪えそうな感じにはなります。

どうにかフンメルスにボールを落とすと、レアルが前方向のプレッシャーをかけていたツケというのか、そのカバーリングがないため裏に大きなスペースが生まれています。本来ならばバックラインをもう少し上げてスルーパスのコースを消したいところなのですが……

中盤のラインがハーフウェイライン付近にあるのに比べ、バックラインはディフェンシブサードの前端程度にしかいないため、その間のスペースがぽっかりと空いています。そこに右から流れてきたミュラーが顔を出し、リベリーに落とすことで、リベリーが前を向いて即座にドリブルを開始することができます。
ミュラーがそのままサイドまで流れたため、プレッシャーをかけたヴァランを引き出すことに成功。体勢があまりよくないカゼミーロと自陣ゴール方向に走るバスケスがリベリーのドリブルに対応しなければならない状況になっています。


結局バスケスがファウルで潰すことになりますが、ペナルティエリアぎりぎりでのファウルとなってしまい、ハメスロドリゲスというキッカーのいるチームに対し危険な位置で直接FKを与えてしまいました。

他には、例えば41分27秒のこのシーン。


ここでも同じようにフンメルスからの縦パスを今度はハメスロドリゲスへ。この試合司令塔として高品質のスルーパスをばんばん通していたハメスがバイタルで前を向けています。ただし、バックラインが低くなっているため、ここからスルーパスを通すのもやや難しい面はあります。やはりここで持つならリベリーなどのドリブラータイプの方が相手を押し込みつつ脅威を与えることが出来るでしょう。リバプールで言えば、恐らくマネが持つのが一番脅威なのではないでしょうか。

このように、中盤、DFラインの間にぽっかりと大きなスペースが発生するシーンがこの2試合多発しており、バイエルンはかなりそこを好きに利用していた感じがあります。ただし、次の試合の分析シーンですが、そこをセルヒオ・ラモスが一人で止める、というシーンも見られ、恐らくそれが彼のタスクなのでしょう。

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