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イスタンブールの奇跡以来のビックイヤー獲得を夢見る我らがリバプールがセミファイナルで衝突するのはディフランチェスコ率いる-サラーの古巣-ASローマ。オリンピコで「奇跡」を起こし、勢いに乗るセリエAの名門との対戦に筆者は最も「不気味な」ドローだったと感じます。同じく奇跡を知るKOPではありますが、欧州でも屈指の熱狂の渦に包まれるアンフィールドとオリンピコの両地でどちらがキエフへの切符を手にするのでしょうか。
リバプールFCラボでは、セミファイナルに向けて対戦相手のローマについてさらに深く知り、より濃密な180分間を迎えれるように緊急企画を実施しました。ローマほどの名門といえども、他国リーグの試合を普段のリーグ戦まで細かく観察していられる方は少ないのではと思います。(筆者もCLの試合を見返したり、セリエAでのビックマッチの観戦による外観しかつかめておらず、プレミアの諸チームほど中身については知れていなかったのが現状です。)
そこでローマについて詳しく知るため「絶対にクロップに情報を漏らさない」という完全紳士協定のもとロマニスタの方にご協力願い、年中試合を観戦するファンだからこそ知るローマの内側についてインタビューさせて頂きました。
今回快く企画協力してくださったのはASローマ速報を運営する如月さんです。クロップに情報を漏らされるかもしれないというリスクの中、詳しく大人な文章の中にローマへの愛情を感じる素敵な回答をいただきました。
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— ASローマ速報 (@roma_sokuhou) 2018年4月21日
ASローマ速報さんインタビュー(以下インタビュー引用)
基本布陣の各ポジションの役割
基本4-3-3です。このフォーメーションを徹底したことで、リザーブとの戦術理解の差がなくなり、選手を入れ換えてもトーンダウンしないローテーションを生み出しました。 モモとトッティが抜けて、新加入選手が軒並み故障離脱したローマがなぜ準決勝まで駒を進めたのか、それはローテーションが機能したからでしょう。事実スタンフォードのチェルシー戦ではほとんど主力を欠きながら1ptを持ち帰っています。
選手たちが4-3-3をマスターしたところで、今年からはその展開形である守備的な4-2-3-1、可変式の3-4-1-2を併用しています。このシステム変更がことごとく当たっているので、リバプール戦では更なる新フォーメーションを用意するかもしれませんね。
GK アリソン
愛すべきおとぼけGKシュチェスニーをレンタルバックして、セリエA初体験のブラジル人アリソンをレギュラーにしたところ、これがすぐにフィットしました。パントキックで前線にフィードせずに、相手が戻る前にライナー性のスローイングでサイドから攻撃の起点を作ります。ストッパーとしての能力に関しては、この1年間で800万ユーロから7000万ユーロになっただけの事はあります。
DF コラロフ、ファシオ、マノラス、フロレンツィ
CBについては後程書くとして、左SBコラロフですが、プレミアを見ている皆さんは既にご存知の通り犯罪者の顔をしていますね。右SBのフロレンツィは、ローマ生まれの未来のバンディエラ。数年前までは純粋なサイドアタッカーでしたが、攻守の状況判断に優れていることから、守備を教えてバランサーとして起用されるようになりました。
MF ストロートマン、デ·ロッシ、ナインゴラン
常に数的バランスを重視するディフランチェスコ監督は、サイドライン沿いでトライアングルを作りプレスを掛けます。三辺のひとつは必ずボールアウトするので、残り二辺の裏をリカバーするのがローマの守備であり、同時に攻撃の起点です。 デ·ロッシは最もCBに近い場所でプレーする、暗躍という言葉がよく似合う守備的MF。ストロートマンは本来攻撃を得意とするタイプでしたが、ディフランチェスコ監督は彼をデ·ロッシと組ませて前述のプレスの指揮を執らせます。ナインゴランは皆さんご存知の通り犯罪者の顔していますね。ヨーロッパの大会ではクラッシャーのイメージが強いと思いますが、イタリアではテクニカルな司令塔で、フィニッシャーに多くのラストパスを供給します。
FW トリデンテ(3トップ)
センターのジェコ以外は固定されていません。対戦相手に合わせて最も変えてくるポジションで、両翼に誰を置くのかが毎試合ぼくの楽しみになっています。ロマニスタによって、それぞれ好みのトリデンテが異なります。
攻撃の基本メカニズム
今季のローマは常に故障との戦いであり、監督の求める基本メカニズムと、実践出来ているサッカーには大きな開きがあります。やりたいこととやれることを毎試合精査してここまで来ました。その中で、チームが最も監督のイメージに近いプレーをしていたのがグループリーグが行われた10月から11月でしょう。
一言で言えば、ハーフスペースにアタッカーが飛び込むモダンサッカーのスタイルですが、ぼくのおつむではこれらをかいつまんでは説明できないので、既に事前にかいつまんだテキストがこちらにあります(3分クッキング風)。ローテーションについても言及しているので、ローマを研究しときたいという方は是非御一読下さい。
現在はジェコがトッティと同じ仕事、つまり相手を背負ってタメを作るクラシカルなスタイルに落ち着きつつありますが、両翼がワイドに開いて中央にスペースを作り、更にはコラロフとフロレンツィのSBまでガンガン上がってくる超攻撃は監督と選手が共有している一貫したコンセプトです。
守備の基本メカニズム
前体重のチームは爆発的な得点と引き換えに失点が多いですね。例えばリーグ83得点のラツィオはここまで43失点、レアルマドリーは80得点で36失点(4月23日現在)、この失点数ではリーグ戦で結果を出すのは難しい。
では前述したように多くの選手が攻撃参加するローマはどうなのか、これが55得点、27失点、なんとも微妙な数字ですが偏重していないとも言えます。少なくともこの時期に27失点はまずまずですね。
ローマは常に前線からプレスを掛け続けます、その裏のスペースを消すためにDFラインが信じられないくらいハイラインを保ちます。しかしほとんど裏をとられてキーパーとストライカーの1対1からの失点がありません。これは司令官ファシオが絶妙なラインコントロールを行い、結果として、オフサイドを取れているからです。
先日のローマダービーでは、相手のエースストライカー、インモービレを8度、ラインの背後に置き去りにしています。 マノラスが潰しに行き、その後ろでファシオが指示を出すというのが守備のベースになります。以前は両サイドが上がると、ボランチのデ・ロッシがCBに入るという暗黙の約束事がありましたが、最近は数的不利をラインで対処している印象です。時代ですかね。
しかし古くからローマにはこんな言い伝えもあります。『失点は義務』忘れないでください笑
ストロングポイント
サッカー的な部分は他に譲るとして、あえてロマニスタの自分が感じているふわっとした概念の話をすると、チャンピオンズにおけるローマ最大の強みは相手の油断ですね。 スタジアムの楽観的な空気、地元紙の勝ち抜けが決まったかのような見出し、SNSの祝勝ムード。それらに監督は注意を促しますが、クラブハウスの出待ちのファンや、いきつけのパブやレストラン。奥さんを迎えに行ったエステサロン、様々な場所で「ローマで良かったね」と声を掛けられ、無意識の内に選手たちの安心材料になってしまいます。
一方でそういった声はローマの集中力に繋がっているように思います。 ただし、これはチャンピオンズに限った話で、セリエAではどこもローマに油断してくれません。9人、10人にゴール前を固められて、用意した戦術を実行できないなんて事は多々ありますから。
先日ローマ速報で実施したアンケートで『リバプールは戦力、経験、勢いでローマよりも上回っている』という回答が342回答中244(71.3%)でした。日本のロマニスタはリバプールの方が強いと知っています。ですが、同時に自分たちが挑戦者であることも理解しているのです。
ウィークポイント
その戦術が通用しない時のプランBが全くないですね。ジェコやコラロフ、アリソンなどが注目されがちですが、あくまで総合力で戦うチームなので、各ポジションにタレントをぶつけられるようなミラーゲームでは、推進力が出せなくなります。
今回は特別にローマがお手上げになった時のサインをお教えします。これはクロップに言わないでくださいね(笑) 今のローマには、トッティやサラーのように1人で試合を変える事の出来る選手がいません。なので、必然的にビハインドの状況でFWを足して、火力を上げざるを得ない。そこでフォーメーションが4-2-4になった時は、少なくとももうベンチからは打つ手は無いんだなーと思って頂いて構いません。
リバプール戦でキーマンとなりうる選手とその理由
全員の名前を挙げたいところですが、サラーの後釜として頑張ってるウインガーのウンデルは閃きがありますね。また守備面ではCBのマノラスが相手のストライカーと競れるほど足が早く、相棒のファシオは速さは無いけど、読みが鋭く、足元の技術がとても高いです。
ロマニスタからみたリバプールのキーマンとその理由
サラー、マネ、フィルミーノで60得点近く決めているのだから、キーマン1人というより、ユニットとして考えるとひたすら怖さしかないですね。
あとは逆にぼくがリバプールを知らないので、3人へのパスが誰から出てくるのか気になりました。幾つか短い動画を観た感じだと5番の選手なのかなと思いますがどうなのでしょう?
でもやっぱりここまで勝ち進むのは全員の力あってこそだと思うので、ピッチに立つ11人がキーマンになり得ると思います。
ただし、誰か1人だけプレーさせないならば(よくイタリアのメディアはそう言う質問を対戦相手にします)、そこは当然モモ・サラーです(笑)
ローマファンからみたリバプールのイメージ
最初に覚えた名前はジェイミー・ギャラガーだったかなと思います。最近思い出した名前もジェイミー・ギャラガーでした(笑)トッティもクリスティアン・ポウルセンに唾を吐いたことがあるので、行為自体は絶対に許されませんが、同じ家と同じ職場を十数年往復する人生だとそうなるのかなと思ったり。
イスタンブールの奇跡はとてもよく覚えています。
そして有名なあの曲ですね(笑)マジスタさんはYou’ll never walk aloneは人智を超えた何かが宿っていると仰られました。ぼくも完全に同意します。世界中の様々なクラブのサポーターが歌っていて、それらを耳にすると、この歌詞が持つ普遍のメッセージに胸が震えるからです。
ローマにも試合前に歌われるアントネッロ・ ヴェンディッティの『ROMA ROMA』があります。両チームとも似た精神性(特に反骨精神)をクラブとサポーターが持っているように思います。
初戦アンフィールドではどちらが勝つか
験を担いでリバプール。
そのファイナルスコアは?
我々は初戦の負けを2戦目で辻褄を合わせるように回収しているが、決勝は1試合だけだ。もはやアンフィールドでアウェイゴールを獲って喜んでいることはできない・・・とディフランチェスコ監督が言い出す頃ですが(笑)結局は2-1で落として、オリンピコで1-0というのが「らしい」のかなと思います。ローマ速報はこういった大人の回答もできるのです。
最後に一言
KOPの皆さん、準決勝進出おめでとうございます。
実はリバプールを応援しているロマニスタはとても多く、ぼくらにとって悩ましい2試合がもうじきやってきます。
モモは今でもローマのアイドルで、それは彼がローマをフィナンシャルフェアプレー制度から救ってくれたら――ではなく(笑)選手としてはもちろん、いつも笑顔で、神への感謝を忘れず、驕らずに、ゴシップとは無縁の謙虚さで、家族を愛し、決して他人の事を悪く言わない人間だからです。それはリバプールでもずっと変わらないでしょう。 日本で一番モモのインタビューを翻訳した自分なので、自信を持って断言致します。
ローマ時代の発言を読んでみたいという方は、電子書籍『ローマ速報offline』をご一読下さい。amazonで250円、絶賛好評発売中です!テヘ(←ここ宣伝)
そして今回このような機会を設けて頂いたリバプールFCラボさんどうもありがとうございました。どちらかが決勝に行くという、アンフィールドとオリンピコの素晴らしい夜がぼくたちを待っています。少しでも皆さんのお役に立てたら幸いです。
編集後記
『彼を知り己を知れば百戦危うからず』
孫子の残した有名な故事ですがセミファイナルの舞台を戦い抜くためには「ローマを知りリバプールを知らなければ」なりません。そういった意味でもセミファイナルに向けて、筆者自身もKOPとして良い準備ができたかと思います。
今回我々KOPにこのような機会を与えてくださったロマニスタの如月さんありがとうございました。対決の日がより待ち遠しくなったと共に、ローマというチームについてさらに深い興味を持つことが出来ました。
クロップが10年ぶりに掴んだセミファイナルへの切符。アンフィールドとオリンピコの地で両チームは一体どんな試合を見せてくれるのか。セミファイナルの地で両チームが対決出来ることを誇りに思いながら、決戦の日を待ちます。
悲願のビックイヤー獲得を願って…!
YNWA!
今朝のアンフィールドでは「犯罪者顔のナインゴラン♪」
によってアウェーゴールを2度も演出されたので・・・
やっぱり!?クロップに告げ口させて頂きます(笑)。