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いやね。3得点はわかるんです。
今シーズンの対戦でも、4点取ってるわけですし。
勝ったのも理解できるんですよ。
リバプールは今シーズン、全コンペティションを通しても本気のシティを破った数少ないチームですから、勝つとしたらむしろ我々だ!とは思ってたんです。
でも、正直な話、0失点とは思いませんでしたよ。
ある意味、どうしたリバプール⁉︎
ご挨拶が遅れました。トリコレッズです。
CLRound of 8,リバプールはアンフィールドでシティに3-0の勝利。
正直なところ、望外の好結果だったのではないでしょうか?
その中でも際立ったのが、シティ攻撃陣を完封しきったリバプールの守備。
というわけで今回は、シティを黙らせたリバプールの守備のポイントを分析していきます。
1.アーノルドvsサネ、そしてその「裏」の戦い
試合プレビューにおいて、僕が注目選手にあげたトレント・アレクサンダー・アーノルド。
あの時点では正直、「活躍するかけちょんけちょんにやられるかは分からないけど、とにかく注目ポイント」という意味で書いていました。
ですが、蓋を開けてみればサネを1対1でほぼ完封し、シティ左サイドからの攻撃を機能不全に陥らせたことで、ペップにフォーメーション変更まで強いた見事なプレーぶり。
試合後には、サポーターが選ぶMOMに、得票率68%で選出されています。
https://twitter.com/LFC/status/981775944472920064
では、そのTAAの活躍ぶり、そしてその「裏」で起きていた攻防について見ていきましょう。みんな大好き(?)ロヴレンも活躍していますよー‼︎
この試合、TAAvsサネというシーンは10回以上繰り返されており、シティとしては明らかに「穴」として狙い目にしているようです。その最初が3分35秒以降のプレーです。
下りてきたデブライネがロングボールで左サイドへ展開。プレビュー記事で分析した、オタメンディ→スターリングという展開とシチュエーションとしては同じです。
逆サイドにしっかりと振っておいてから、高速サイドチェンジしたおかげで、シティとしてはウィンガーのアイソレーションを作り出すことに成功。アーノルドとの一騎打ちです。
アーノルドはサイドでの1対1守備の基本、いわゆるワンサイドカットの体勢に。これは、基本的には、正対することで中央へのカットインを切りつつ、縦への突破で走り合いに持ち込むときの体勢です。が、今回アーノルドはサネと完全に正対するのではなく、少し自分たちのゴール側にずれて立っていることがわかります。こうなると話は別で、カットインは可能ですが縦への突破には1歩分アーノルドが有利な状況です。サネは左利きなので、カットインしてもそれほどできることがないからなのでしょう。
サネは軽くカットインしてから急激に縦に抜けることでアーノルドの体勢を崩そうとしますが、アーノルドはバックステップで素早く対応。さらにこの間にサラーも戻ってきたことで中央へのコースも消されており、サネは仕方なくバックパスに逃げます。
(あんまりというか全く関係ないですが、右サイドにおいてこの状態の1対1からまたぎフェイントで相手のタイミングを外しつつ、カットインすると見せかけて足の甲を使って縦に突破するプレーを得意としていたのが、元ポルトガル代表のルイス・フィーゴ。僕は小学生の時に、当時全盛期だったカカとインテルに移籍しもうベテランだったフィーゴが表裏になっているポスターでフィーゴの方を貼るほどフィーゴが好きでした)
また、コンビネーションを用いてサイドを突破しようとしてきたシーンも見ておきましょう。時間は67分50秒。
デブライネがボールをキープ。このタイミングではジニがシルバへのパスコースを消せていますが、惜しむらくはチェンボがサネへのパスコースを消しきれなかったところ。ここでサイドをちゃんと消せていれば、後述する「窒息」状態に持ち込むことができたのですが。
一瞬できたパスコースを見逃さず、デブライネはサネへパスを通します。
アーノルドがサネへ対応に出たため、時間を作れるかと思いきや、ハーフスペースに位置するシルバがアーノルドの「裏」のスペースを狙っています。
そこへパスが通りますが、詰めていたのがロヴレン。アーノルドの裏のスペースをうまくカバーしています。
結局ロヴレンがクロスをブロック。CKにはされましたが、オープンプレイでクロスを上げられることは阻止しました。
(ただし、一つ言及しなければならないのはジニのポジション。サネにボールが通った時点で、ジニは曖昧に戻っているように見えます。ここでは、全力でシルバを追いかけ、ロヴレンのやったクロス対応をするか、それが間に合わなければロヴレンの空けたスペースを埋める、それをヘンドorミルナーがやるならそのポジションへ順次スライド……と、やらなければならないことは山ほどあるのですが、正しいポジションを取れているようには見えません。ジニは愛すべきキャラクターですし、優れたプレイを見せる試合も多い反面、こういったプレイにおいてはどうしても改善点が目立ってしまいます)
このように、アーノルド、そして右CBであるロヴレンらのコンビネーションにより、シティの元々の狙いであっただろう
「シティ左サイドでのサネvsアーノルドの質的優位を生かす」
という目論見は崩れ去ってしまいます。これがシティにとっての第1の誤算でした。
2.シティのビルドアップを封じた”not”ハイプレス
試合後僕が確認したメディアの中には、「リバプールのハイプレスでシティのビルドアップを破壊」的な書き方をしてあったところがありましたが、僕はこれはあまり正しくないと思っています。
リバプールがハイプレスを仕掛けていたのは、自分たちの攻撃していたボールを奪われた直後、いわゆるネガティブトランジションのタイミングのみで、シティのビルドアップに対する定位置守備のシーンでは、それほど前から激しいプレスはかけていません。
それでは、リバプールはどうやってシティのビルドアップを封じ込めたのでしょうか?
それには、シティを誘い込んで窒息させるような巧妙なポジショニングが仕組まれていました。まずは6分54秒からのシーン。
シティのビルドアップに対しリバプールの定位置守備のシーン。プレビュー記事で分析したような4-2-3-1になっているわけではありませんが、今回の試合でよく見られたのは3センター横並びの4-3-3の状態から、中央のヘンダーソンが飛び出して4-2-1-3のようになるパターンです。今回もそれに当てはまります。
おりてきてボールを受けているのはデブライネ。この試合、一応予想フォーメーションでは右ウィングあたりに置かれていたデブライネですが、実際にはこの試合のシティは左右非対称の図には表しづらいフォーメーションをしており、その中でもデブライネは実質フリーロールのような形でボールを引き出したりハーフスペースを出入りしたりしていました。頻度としては、いわゆる6番としてフェルナンジーニョと横並びになるようなシーンが多かったように思います。
デブライネあるいはシルバがこのように下りてきてボールを受けた際、大抵は数秒間前向きにドリブルをして相手を引きつけてからパスコースを選択します。ここでも同様にドリブルを開始しますが、チェンバレンのポジショニングが絶妙で、デブライネとシルバの間のパスコースを常に切りながらデブライネをシティ右サイド側に誘導します。ですが、シティの右ハーフスペースに入っているギュンドアンに対してはヘンダーソンとミルナーがパスコースを監視しており、デブライネとしては出すわけにはいきません。そして、ある程度深くまで引きつけたところでヘンダーソンが迎撃に向かいます。
ですが、シティにはこのパターンがあります。すなわち、CFが下りてきて3センターの裏でボールを受ける仕組みです。ここにはロヴレンがついていって対応しています。シティ第2の誤算はこの日のジェズスの出来。前半では動きそのものが少なく、このシーンはその少ないうちの動き出しの一つだったのですが、デブライネのパスがやや強かったこともありトラップが浮いてしまい、ボールを収めることができません。
ここで、とりあえずシティのビルドアップを封じたリバプール。3トップも3センターも激しくプレスするのではなく(まぁ、定位置守備のシーンになると、全員がヨーイドンでプレス開始しなければならないため基本的にはやりませんが)、パスコースを切りながら相手を引きつけ、囲い込むようにして奪っていくやり方をとっています。
ちなみに。このシーンには続きがあって、ジェズスが収め損ねたボールは再度シティへ渡ります。
このボールをオタメンディがこの時点で既にその日3回目に近いサネへの展開を見せます。
チェンバレンがシルバをチェックしていましたが、この時点では捕まえることができていません。TAAは外につり出され、かなり大きなスペースがシルバの前に広がっています。先ほど見たのと同じパターンです。
シルバは当然のようにそのスペースへパスを要求。TAAの裏をつきます。しかし……
残念そこはアーノルド。この展開を読み切っていたTAAがパスに足を伸ばしてカットしてみせました。ちなみに言っておくと、ロヴレンはジェズスのポジションが気になったのでしょうが、TAAとの間のスペースを空けすぎです。ジェズスを気にしてバックステップで下がっているのですが、実際はジェズスを受け渡してTAAとの間を埋めるべきだった気がします。先ほどのプレーでは、それほどサイドへの展開が大きくなかったことでここに詰めることができたわけですね。
なんにせよ、リバプールのこの日の守備のやり方はジェズスを潰したシーンで完結しているわけですが、そのやり方がさらにわかりやすいのが次のシーン。19分28秒からです。
シティのバックラインからのビルドアップの場面。マネがサイドへのパスコースを切ると同時に、ミルナー、ヘンダーソンがギュンドアン、フェルナンジーニョにそれぞれ寄ります。この寄り方が絶妙で、離れていたと思ったら寄る、寄ったと思ったら離れるを絶え間なく繰り返しており、まるでアメーバのように中盤の選手たちが伸び縮みしながら相手CMFをマークしているシーンが見られました。
パスコースがなくなったオタメンディはコンパニへパス。しかし、パスコースがないことに変わりはありません。
仕方ないので少し下がりながら再度オタメンディへ戻すコンパニ。すると、ここでマネが突如としてスピードアップ。オタメンディに襲い掛かります。
オタメンディが慌ててコンパニに返すと、今度はボビーがコンパニへアタック。シティの両CBは完全に後ろ向きに動きながらのプレーになってしまっており、時間的余裕もないためこれではビルドアップは難しい状態です。
それでもコンパニは下がりながらサイドへロングパス。これがなかなか正確なのがすごいところですが、そのボールのフリックがロボに引っかかり、リバプールのボールに。
以上見てきたリバプールの守備ですが、そのキーポイントは2つ(記事でピックアップした順番とは逆になってしまいますが、ご容赦を)。
1.サイドへのパスコースを消した状態で3センターが相手の中盤をマーク。中盤における地上戦での展開が不可能だと思った相手CBがパス交換を始めたところで激しいプレスをかけてボールを乱れさせ、奪う。
2.より早いタイミングor長いボールでサイドを狙われた場合には、両SB(特に攻撃的WGと対峙したアーノルド)が1対1でボールを奪う
この2つが高次元で融合したことにより、リバプールは最強シティを零封。3点のアドバンテージ+アウェイゴール献上なしという理想的な状態でエティハドに乗り込むことが出来ます。
しかし、油断は明らかに禁物。ここでペップが仕掛けてこないとは思いません。というか、1stレグのペップ采配はややミスで、次の試合では恐らく右サイドにもWGタイプ、すなわちスターリングを配置して来るのではないかという気がします。もちろん、1stレグでは彼らにとって重要なマンチェスターダービーを控えていたり、選手のターンオーバーがあったりでそれほど簡単ではなかったのでしょうが。
なんにせよ、有利な立場にいることは変わりませんし、得点すればさらに優位は動かなくなります。攻撃的な姿勢を忘れることなく、エティハドでも勝利を目指して戦ってほしいものです(リバプールの守備固めを1試合通じて見ていられるほど僕はメンタルが強くないので……苦笑)。
それではこのへんで。YNWA!
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