【リバプール対戦相手分析】マンチェスター・シティ〜数センチ先にある勝利を掴め〜

The following two tabs change content below.
トリコレッズ

トリコレッズ

日本ではマリノスファンなので、Redsの虜(トリコロール=マリノス)という意味でトリコレッズという名前にしました 戦術・選手分析などをしていきたいと思います

天・王・山!!!!

まぁ昨シーズンから予想してはいましたが、やっぱり今シーズンも、既にシティとのタイトル争いの様相を呈しているプレミアリーグ。

というわけで、シティの試合を見直しながら、シティ戦のプレビューをしていきましょう。プレミアリーグの前節シティvsセインツも見たんですが、セインツはガッチガチに引きまくっていてあんまり参考にならなかったため、ミッドウィークのCLアタランタ戦を見直していきます。

アタランタ1-1シティ @サンシーロ

CLグループステージ第4節、アタランタ対シティのスタメンはこちら。第4節なので、第3節のリターンマッチです。

アタランタについては、すいません、あんまりわからないのですが、イリチッチやパシャリッチはここにいたんだなぁ的感じがありますね。とはいえ、試合を見てみればわかりますが、非常にアグレッシブで、いいサッカーを展開しています。

一方のシティ、週末のセインツ戦は苦しみながらもなんとか勝利。その試合からはメンバーがそれなりにターンオーバーされています。CL第3節で5-1で勝利していたこともあるでしょうが、CLをターンオーバーに使うのって割と凄いですね。しかもそれでこのメンバーとは。

一つポイントとなるのは両SB。セインツ戦ではウォーカー&アンヘリーニョのコンビでしたが、この試合ではカンセロ&メンディ。っていうかジョアン・カンセロってシティにいたんでしたね……。全然イメージありませんでしたが。ダニーロとのトレードで加入したんですねぇ。ただ、多分リバプール戦ではウォーカーが先発でしょう。

Embed from Getty Images

エデルソンも怪我っぽいですしね。

まぁとりあえず、この試合を振り返りながらシティを眺めてみましょう。

シティの攻撃〜成熟のポジショナル・フットボール〜

さて、マンチェスター・シティの攻撃ですが、正直、もう皆様お馴染みなのではと思います。その基本は、ボールを握って、選手達が動きながらパスコースを作り出し、パスをつないで相手を崩すというスタイルです。そのパスコースの作り出し方や攻撃のパターンが、非常に論理的でパターン化されているところが特徴です。その辺については、一昨シーズンに僕が書いたシティ分析が色々細かいので、そちらをご参照ください。

セインツは5-3-2で自陣深くにブロックをつくって対応、アタランタはマンマーク気味に人に強く対応してきましたが、どちらにせよシティの戦い方の基本は変わりませんでした。というわけで、シティがマンマークのアタランタをつり出しながら、うまく前方につけたシーンを見てみましょう。ついでにアタランタの守備の特徴も見るので、10分45秒ぐらいからちょっと長めに見ていきます。

シティは後方でパス回し。オタメンディにパスが入った瞬間に、パシャリッチが激しくプレスします。オタメンディは無理をせずエデルソンに返します。

エデルソンはカンセロに展開します。これはシティとエデルソンの得意パターンですが、ちょっとボールが弱くなってしまい、フロイラーがハードプレス。オタメンディとベルナルド・シウバが下がってパスコースをサポートします。が、ここがアタランタの凄いところで、シウバには3バックの一角であるジムシティがそのままついていきます。

カンセロはシウバへ預けるも、既にジムシティやフロイラーが激しく詰め寄っており、前を見ることができません。結局カンセロに返し、カンセロ→オタメンディ→エデルソンまで返してやりなおし。

エデルソンまでボールを戻したタイミングでは、パシャリッチやフロイラー、イリチッチあたりがうまくポジショニングし、各所で1対1ができています。エデルソンからすれば、ショートパスでのパスコースはない上に、かつてのロボ並みに走りまくってプレスしてきたジムシティが迫っている状態です。

この状況を一瞬で解決してしまうのがエデルソンの凄み。当たり前のように左足でロブパスを蹴り、メンディへ。後で触れますが、スターリングに引っ張られ気味のウィングバック、ハテブールは、メンディとの距離が詰め切れていません。

シティは両サイドへしっかり振り回し、右がダメなら左へ素早く切り替えたことで、メンディがフリーになっています。そしてそのサイドチェンジを最後方から仕切るエデルソン。アタランタの人に強いプレッシングも見事なのですが、これだけ振り回されてしまってはどこかに穴が空いてしまいます。

ハテブールが飛び出ると、そのスペースが空きます。ここがマンマークの厳しいところで、スペースの管理が難しくなってしまうのです。そこをスターリングが下がって使います。そのうえ、シティで一番の危険選手であるデブライネがフリーランで攻め上がっていくため、デローンはスターリングに対応せずデブライネに対応せざるを得ません。

結局ここで受けたスターリングは、スターリングについて上がってきたアタランタのCBのもう一角、トロイに潰されてファウルを受けます。

もういちど整理しましょう。

1.アタランタはハードプレスでシティのビルドアップを阻止(ただし、この際に激しくプレスしたことで、中盤にスペースを残す)

2.いったんエデルソンまでボールが戻ったところで奪い切れればよかったものの、プレスがかかり切らない逆サイドへ一発で展開するエデルソン

3.さらにアタランタの選手が対応するも、空いたスペースを利用され、結局ファウル

という流れでした。

で、やはりシティの攻撃を仕切っているのはエデルソン。そのエデルソンの配球能力を活かすためのシティの設計、そしてこの試合後半からブラーボへ替わったときの試合展開の変化を、このあと見ていきますよ〜(早くそっちが読みたい方は、この後出てくるウォーカーの写真の後まで飛ばせば続きになります)。

Embed from Getty Images

さて、アタランタ戦では相手のマンマークを逆手に取り、そこで空いたスペースを上手く利用したシティですが、相手がガッツリ引いて守ってきたセインツ戦では、苦労しながらもサイドでの選手のコンビネーションを用いて突破するシーンが目立ちました。

特に目立っていたのが、左サイドではスターリングとダビド・シルバ、右サイドではカイル・ウォーカー

突破力と得点力を兼ね備えるウィンガーへ成長したスターリングがボールをキープし、その間にダビドシルバがするするっと嫌なポジションへ入り込んで、そこでボールを受けて……など、5バックを敷いてスペースを埋めてくるセインツの守備の小さな穴を丁寧に広げるようなコンビネーションが印象的でした。

Embed from Getty Images

シルバは今シーズン限りでのシティ退団が決まっています。その後はJリーグ札幌?なんていう一部報道もありましたが、もし本当なら是非是非みたい選手ですね。

逆に右サイドでは、カイル・ウォーカーの存在感が圧倒的。スパーズにいたときはいわゆる「槍」タイプのSBだと思っていたんですが、現在のイメージは「非常にしなやかな選手」です。サイドから精度の高いクロスを上げることも出来ますし、インナーラップで相手の守備の間に入り込むことも出来ます。ポジショニングも正確で、パスコースを作り出し、相手の嫌がるポジションに入り込むことも得意です。

Embed from Getty Images

さてお待たせしました。シティの攻撃のもう一つの大きな特徴、ゴールキーパー、エデルソンのパスを散らす能力を活かした、サイドへの展開を見てみましょう。アタランタ戦16分付近のプレーです。

オタメンディからエデルソンにパスが入ります。エデルソンは少し前に出てきて、両CBと合わせてほぼ完全な3バックを形成します。

このとき、エデルソンから一番近い中盤の選手達には、アタランタの選手がマンマークについています。

しかし、よく見ると、実はシティの両SBは空いています。アタランタは引いて守るタイプの守備をしていなかったので、必要があればアタランタの両WBが出てきて対応しそうなものなのですが、何故出てこないのでしょうか?

それは、マフレズやスターリングがアタランタのWBとCBの間に位置しており、ここでもしWBが出て行ってしまって外されると、一気にシティの3トップとアタランタの3バックが対峙する状況になってしまうから。つまり、シティのウィングによって、アタランタのWBは「ピン留め」されている状態です。

そこで空いたSBに、エデルソンから高速グラウンダーパス。エデルソンがキックのモーションに入った段階でイリチッチもプレッシャーを掛けているのですが、エデルソンはものともせずパスを通します。

エデルソンはキック力が高く、ワンステップ、ツーステップで両サイドまでボールを散らせます。かつ精度が非常に高く、多少のプレッシャーなら気にしないメンタルもあるので、ちょっとプレスしただけではパスを乱すことができません。今更ですが、恐ろしく厄介です。

しかしこのアタランタ戦、エデルソンは前半で負傷交代、後半からはクラウディオ・ブラーボが出場します。ブラーボもパスが上手いですが、流石にエデルソンほどではありません。ということで、あからさまにアタランタが1列前までプレッシャーをかけるようになります。58分40秒ぐらいのプレーを見てみましょう。

先ほどのプレーと同様に、オタメンディからブラーボへパスが渡ります。そのタイミングでイリチッチがブラーボへ激しくプレスします。また、先ほどは上がってこなかったカスターニュも、パスが出ればカンセロへプレスするという素振りを見せています。

ブラーボからのキックは、ジムシティがマフレズをうまくブロックしたこともあり、そのままサイドラインを割ります。

まぁ、実を言うとこのシーンだけ切り取るとやや語弊があって、エデルソンのキックがそのままラインを割ったシーンもいくらでもありますし、その際にはアタランタが前線から激しいプレスを掛けたりもしていました。

ただ、キックの成功率でいえばエデルソンの方が高く、またプレスを掛けられてもその成功率に大きな変化がありません。そのため、試合序盤はエデルソンまで激しいプレスを掛けていたアタランタの選手も、プレスを掛けて得られるメリットよりも掴むべき選手を外すことによって受けるデメリットの方が大きいと感じたのか、エデルソンまで追いこむプレスは少なくなっていました。

シティの守備〜やはりネックはSBの裏〜

正直、この2試合でシティがガッツリと守備を強いられるシーンはありませんでした。っていうか、多分世界中を探しても、シティにガッツリと守備を強いることができるチームはほぼありません。まぁ、そのうちの一つが我らがリバプールなんですが。

それはともかく、ここではシティの失点シーンを見てみましょう。

ブラーボからのロングボールを、パロミノがうまくカットします。

そこから、パロミノはすかさずカンセロの裏のスペースへ放り込みます。シティはリバプールと同様、ビルドアップの段階でSBが高い位置を取るので、その裏が空きます。そこにゴメスも反応して走り込みます。

抜け出したゴメスにはオタメンディが対応しますが、イマイチ距離の詰め方が甘く、クロスを上げさせてしまいます。そしてファーサイドでは、フェルナンジーニョとメンディの間にパシャリッチが走り込み、クロスボールをフリーでヘディング、ゴールしました。

このシーンの注目すべき点は二つ。SBの裏のスペースを利用することでオタメンディをサイドにつり出したことと、フェルナンジーニョとメンディの間に入り込んだことです。実は、これらは二つとも、後半に入ってからアタランタが狙いとして行っていたこと。ゴメスが、オタメンディの前を通過しながらカンセロの裏のスペースに飛び出す形は3、4回見られました。また、実はこのゴールの直前のシーンでも、フェルナンジーニョとメンディの間をパシャリッチが利用して、決定機に近いシーンを生み出しています。

この失点の直接的原因でいえば、オタメンディの対応が軽いのと、メンディの絞りがやばいぐらい甘いことなんですが、この形を継続的に利用したアタランタの勝ちという面もあるでしょう。

ちなみに、この試合の注目点として、シティが左SBに誰を起用してくるかというところも挙げられます。ジンチェンコが怪我している今、アンヘリーニョやメンディ、あるいは他の選手という起用法が挙げられているようですが、正直もう一歩という感じがあります。特にメンディは守備的な難が大きく、もし出てくればリバプールとしては狙い所とできるでしょう。

勝負のポイント・キープレーヤー

1. 前線からしっかりとプレスを掛けきれるか

先ほどから述べていますが、この試合、先発GKは恐らくブラーボです。リバプールとしては、エデルソンに先発されるよりは、前からしっかりプレスを掛けるという思い切りがしやすいでしょう。とはいえ、中途半端にプレスに行けば空いたスペースを使われるのは必須。しっかりと奪いきれるかどうかが重要です。

キープレーヤー:ロベルト・フィルミーノ

Embed from Getty Images

前線からのプレッシングを指揮する、極めてクレバーな我らが9番、ボビー・フィルミーノ。彼の、コースをしっかりと切ったうえでの献身的なプレッシングで相手バックラインを苦しめることが出来るか、非常に大きなポイントになります。

2. サイドでの主導権を握れるか

シティは両SBとウィングがビルドアップの出口となる設計が多いです。また、そこを活かすためのさまざまな仕掛けが用意されています。

ところで、リバプールの強みも両SBと両ウィング。特にサイドの幅を取るSBの働きが非常に重要です。

キープレーヤー:アンドリュー・ロバートソン

Embed from Getty Images

CLゲンク戦では74分からの出場と、実質ほぼお休みを貰ったロボ。最近のパフォーマンスはまさに圧巻で、前節ヴィラ戦では劇的逆転勝利を呼び込む、同点ヘディングゴールを決めました。

どちらかといえばアーノルドの方が目立つプレーヤーです。調子がよいときの針に糸を通すようなロングクロスや若きスカウサーとしての期待を一身に背負っているTAAも世界最高クラスの右SBですが、ロボは恐らく正真正銘の世界最高左SB。守備面にも穴がなく、また無尽蔵の体力で試合終盤に最前線まで駆け上がるあの姿はもはや感動ものです。

左サイドでのマネとのコンビネーションもよく、ロボのタイミング良いインナーラップで相手守備組織を崩すことが出来れば、勝利をぐっと近づけることができます。

3.最後の一瞬を守りきることが出来るか

シティのクオリティは極めて高いです。どれだけ対策しても、崩されることは恐らくあります。その最後の瞬間、守りきることが出来るか。昨シーズン、本当に数センチの差でプレミア優勝を逃した我々はその大切さをよく知っていますね。

キープレーヤー:アリソン・ベッカ—

Embed from Getty Images

怪我で離脱したときはどうなるかと思いましたが、控えGKのアドリアンが見事な活躍を見せ、その間を乗り切ることが出来ました。とはいえ、怪我から復帰すると、相変わらずのパフォーマンスをしっかりと見せ続けています。

恐らく彼のスーパーセーブが必要になるシーンが何度かあるでしょう。そのシーンをしのぎきって欲しいものです。


昨シーズンはぎりぎりのところで涙をのんだプレミアリーグのタイトル。非常に悔しい思いをさせられた昨シーズンの借りを返すには、直接対決で叩くのが最も早いでしょう。今シーズン未だに無敗を続ける我らがリバプール、この大一番が今後のリーグ戦の動向をまさに左右します。要塞アンフィールドでの試合ということもあり、必勝態勢で臨みたいものです。

リバプールFC公式Twitterより引用

それではまた。YNWA!

LFC公式オンラインストア

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA