均衡した戦力差を打開したクオリティの高さと意外な要因~第12節リバプールVSマンチェスター・シティ~

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たくみ(サッカーライター志望)
サッカーライターを目指す大学1年生。 noteにてJリーグの選手記事から欧州サッカーのレビュー記事まで幅広く投稿中。 Twitterで精力的に活動。フォローや記事の拡散をお願いします。 岡山→山口
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開幕から未だ負けなしの勝ち点31で首位を走るリバプールとすでに3敗の勝ち点25の昨季王者マンチェスター・シティが聖地アンフィールドで激しい火花を散らした。勝てば勝ち点差を9に伸ばす、負ければその差が3に縮まるという優勝の行方が左右すると言っても過言ではない重要な意味を持つ大一番となった。

試合結果

リバプール 3-1 マンチェスター・シティ

【得点】
(リバプール)
  6分 ファビーニョ
13分 モハメド・サラー
51分 サディオ・マネ

(マンチェスター・シティ)
78分 ベルナルド・シウバ

スタメン

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 チャンピオンズリーグ、ゲンク戦からスタメンを5人変更。いわゆるベストメンバーを起用。負傷中のマティプの穴を埋めるのは、世界最高のCBであるDFロヴレン。DFファンダイクと”世界最高CBコンビ”を形成し、マンチェスター・シティ(以下 シティ)の攻撃を迎え撃つ。

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 対するシティは、MFフェルナンジーニョをCBで起用。FWサラーとマッチアップするであろう左SBにはフィジカルとスピードに優れるDFメンディーではなく、PSVから買い戻された期待の若手DFアンヘリーノが務めた。負傷していたMFロドリがスタメン復帰、MFダビド・シルバがベンチに帰ってきた。

代名詞の必殺カウンターとゲーゲンプレスが昨季王者マンチェスター・シティを粉砕

 重要な意味を持った一戦は開始早々、激しい展開を繰り広げた。お互い相手の出方を探る「見の時間」は一切なかった。シティはリバプール陣内深い位置に果敢に侵入し、再三にわたりゴールに近づいた。その様子はまさにエンジン全開だった。先制点を絶対取る、そんな意志がシティの選手たちから感じた。一方、リバプールはクロスボールを多用したシティの攻撃を跳ね返し続け、ゴールを割らせない。

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 試合は前半6分に動く。PAエリアでFWベルナルド・シウバのクロスボールをDFアレクサンダー=アーノルドがハンドの疑惑があったもののカットするとDFロバートソンからFWマネにパスが繋がり、カウンター開始。ドリブルで持ち運びクロスを上げる、そのこぼれ球は押し上げていたファビーニョの前に。迷いなく放ったミドルシュートはゴール左隅に突き刺さった。攻められ続け、主導権をシティに握られると危惧していたところを得点を奪うことで渡さなかった。クロップ監督にとっても理想的な展開だったのではないだろうか。
 シティに攻められる時間もあるが、クロスボールを跳ね返し、パスをカットするなど要所を完全に抑えること、3センターをはじめとする素早いプレッシングによって良い守備ができていた。FWサラーの守備意識がいつもより高いことから、この試合の重要度を伺えた。

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 そして、うれしい追加点が生まれる。DFアレクサンダー=アーノルドからの精度の高いサイドチェンジを受けたDFロバートソンがアーリークロス、DFフェルナンジーニョがギリギリ届かないポイントに落とし、FWサラーがヘディングで押し込み2-0とした。2点リードで前半を終えることができた。

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 後半に突入し51分、右サイド高い位置からのスローインからMFヘンダーソンがキックフェイントから縦に持ち出しクロスを上げると、待っていたFWマネが飛び込んだ。FWマネがPA内で、DFウォーカーの死角に動き直すオフ・ザ・ボールとGKブラボが届かないかつマFWネにピンポイントだったクロスの質がこのゴールを生み出した。点差を再び広げ、さらに優位に立つことができた。
 シティが意地を見せ、FWベルナルド・シウバがゴールを決めるが反撃はここまで。優勝を占う運命の一戦はリバプールが圧巻の3-1でマンチェスター・シティに勝利した。

シティのクロスボール攻撃を無効化した2つの要因

マンチェスター・シティの今シーズンの攻撃の特徴はクロスボール。CBとSB間に入り込むMFデブライネからの高速クロスや幅を取ったウイングからのクロスにより得点を決めるのが必勝パターンである。シティは1試合平均のクロス本数は26.9本、成功率は27.4%とリバプールの25.8本、21.8%(引用元 DAZN YouTubeチャンネル)に比べても高い数字を誇っている。このパターンで失点することを避るために効果的だったことは2つ。

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 1つ目はMFデブライネの監視である。開幕のコミュニティ・シールドではDFロバートソンとDFファンダイクの間にポジションを取られ、ウイングが幅を取っていたので、どちらがマークをするのかが定まらずクロスボールに対してプレスをかけられなかった。しかし、この試合ではクロッサーへのマークは明確になっていた。ウイングにはSBが、インサイドハーフにはCBがすこしずれることでプレッシャーを与えることができた。迷いが生じなかったため、フリーでクロスを蹴り込むシーンが激減したのだ。

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 2つ目は、冒頭でも述べたように、DFロヴレンとDFファンダイクの世界最高CBコンビのクロスボールへの強さである。サイドを抜け出され、クロスを上げられても、CBがクリアでシュートを許さない。身長が高いだけでなく、ポジショニングが素晴らしい。狙われやすいGKとDFの間を素早く埋め、体制を整えた上で迎撃していた。シティにとっては高いボールではなく、低いボールを選択したいのだが、目の前のCBを超えることができない。徹底したショートコーナーにも決定機を作らせなかった。仕方なく、高い軌道を蹴っても跳ね返す。
 まさにクロスボールでの攻撃を無効化させることができた。相手のストロングポイントを潰せたことが勝利を導いた要因の一つだった。

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勝敗を分けたのはポゼッション的ロングパスを蹴れるか否か

 王者マンチェスター・シティを圧倒できた理由はいくつか考えられるが、ここではリバプールのサイドバックのプレス耐性に触れつつプレスを外すロングパスについて述べたい。昨シーズン両サイドバックともに2桁アシストを達成することから、攻撃力は周知の事実だろう。高い位置を取る両サイドバックからのスピーディーで味方にピンポイントで合わせるクロスボールは世界最高レベル。この試合でもFWサラーの2点目をアシストしたDFロバートソンのクロスボールがまさに観る者を沸かせる、圧巻のものだった。その得点シーンから注目したいのは、DFロバートソンがクロスを放つ前、右SBのDFアレクサンダー=アーノルドから利き足ではない、左足でのサイドチェンジ。DFロバートソンの足元につけるのではなく、少し前に落とすことで前進を促し、ゴールを奪いに行くというメッセージが込められているように感じた。シティはタイミングを計って、人数をかけることでボールを奪いに来た。しかし、ファーストタッチで躊躇なく逆足に置き、広大なスペースがある左サイドへロングパス。右足の精度は言わずもがな、逆足でも、しかも長(中)距離を正確に繋げるとなるとプレス耐性の高さにシティはお手上げ状態だ

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 前からのプレスは、CBからの縦のパスコースを消しながら寄せ、SBに出させて奪いにいくというものが主流である。狙いであるサイドバックからサイドを変えるボールをいとも簡単に出されると、プレスを無効化されてしまう。つまりボールの奪いどころがなくなるというわけだ。得点のシーン以外にも、SBからSBへ、SBからプレスをかけに来る選手の頭を越えて、CBに出すロブパスなどでプレスを回避。シティの前プレスを半減させていた。
 

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一方、マンチェスター・シティは前から激しい圧で前プレスを行うリバプール相手にショートパスのみであまり効果的なポゼッションができなかったように思えた。ここにリバプールとシティの差が出たのではないかと思う。それはポゼッション的ロングパス(クリアではなく味方へ繋ぐロングパス)を使うことができなかったからだ。主な要因はGKエデルソンとDFラポルトの不在である。彼らの不在が大きかった理由は激しいプレスの中でも、冷静に味方へパスを繋げるというだけでなく、味方にピタリと合わせる精度の高いロングパスを蹴れるということだ。前からのプレスをかけるとボールがない逆サイドはぼかし気味になるのはよくあることだ。守備側からするとボールサイドで奪いきりたい、ボール保持側は相手がいないスペースへ展開したいと考える。そこで効果的なプレーがロングパスである。ボールがない逆サイドへ展開する、もしくは前に出てきた相手の背後を狙うフライスルーパスを供給してプレスの包囲網を抜け出すことで前進が可能になる。ショートパスのパス交換の上手さはさすがペップのチーム。しかし、それだけではリバプールのプレスは回避できない。GKエデルソン、DFラポルト2人の不在がかなり大きな影響を与えた。

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【MOM】攻守に抜群の存在感を放ったあの選手

 どの選手もMOMにふさわしい活躍をした今節。だれか1人を選ぶのは難しく1人ずつ述べたいところだが、がんばって1人に絞った。MOMはもちろん個人の見解で、だれを選ぶのかは三者三様だ。1人の意見として付き合ってほしい。  
 MOMにはMFファビーニョを挙げたい。先制点となったミドルシュートはスピード、コースともにワールドクラスの素晴らしいシュートだったのはもちろんのこと、中盤での守備とビルドアップでの貢献について述べたい。

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 守備面について。バイタルエリアを埋め、ハーフスペースでボールを持った相手に激しいプレスでボールを刈り取る。SBの裏を突かれ、CBがサイドに流れて対応するとき、本来の持ち場を一時的に離れたCBのポジションをカバー。そこからボールが相手の中盤に入ると、埋めた位置から出ていくという守備を見せた。ファウルが多かったが圧倒的な対人守備の強度を誇り、要所を確実に抑えていた。瞬時に最も危険な位置を、的確に判断し実行することで安定した守備に貢献。先制のシーンでも見られたが、セカンドボールの予測が非常に優れており、カウンター時にしっかりと押し上げができているので、セカンドボールを回収し厚みのある攻撃が可能となった。
 ビルドアップ面では、シティがFWアグエロとMFデブライネの2人でプレスをかけてきたので、その間のポジションを常に取り続けたってパスを引き出していた。SBが持つと、横もしくは斜めのパスコースを作り出し、オフ・ザ・ボールでビルドアップを助けていた。もちろんオン・ザ・ボールでの貢献度も高く、正確に味方につなげるパスや、逆サイドへの展開を披露。相手ゴールへのスムーズな前進を促した。
 常に自分ができること、やらなければならないことを考えてプレーができるクレバーな選手。まさに縁の下の力持ちで、そんな選手に得点が生まれたことは実にうれしいことだった。今季は完全にプレミアリーグに順応し、高いパフォーマンスを発揮し続けている。これからも彼のプレーに目が離せない。

終わりに

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 全世界のサッカーファンが注目する勝ち点差6の大一番に見事勝利したリバプール。この結果により、勝ち点を34に伸ばし首位を独走。マンチェスター・シティは4位に陥落した。昨季の直接対決ではリバプールの1敗1分で勝つことができなかった相手に勝つことができたのは悲願のプレミアリーグ初制覇に向けて非常に満足できるだろう。わずか1敗で優勝を逃し、悔しさを味わった昨季の鬱憤を晴らすかのような気合と情熱を選手、監督、サポーターから画面を通してひしひしと伝わってくる。まだ12節終了時点で油断するのは禁物だが、因縁の相手に勝ち興奮をもたらした選手たちを称え、喜びを爆発させようではないか。初のプレミアリーグ優勝への道のりはまだまだ長いが、着実に近づいていっていることには間違いない。

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