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期待の”ローニー”、リーグカップでの一撃
18‐19シーズン、マージーサイドから71マイル離れたイングランド中部ダービーにいながらも、リバプールファンの心を掴んだプレイヤーがいた。リーグカップ3回戦、アカデミー出身のハリー・ウィルソンは、マンチェスターユナイテッド相手に直接フリーキックを叩き込んだ。若きウェールズ代表は無回転気味の一撃で宿敵を敗退に追いやるだけでは満足せず、リバプールのUCL優勝回数65回(当時)を誇示するセレブレーションをオールド・トラッフォードで敢行し話題を呼んだ。
チャンピオンシップで40試合15ゴール3アシストを記録する充実のシーズンを過ごしたことで、トップチームへの合流も期待され迎えたプレシーズン。マネ、フィルミーノの国際大会への参加やシャキリの負傷離脱の影響により例年よりも若手アタッカー陣にアピールの機会が与えられた。主戦場である右ウィングや左サイド、インサイドハーフでも起用されミドルレンジでのシュートを随所に示し2点を記録するも、「第4のアタッカー」としてクロップの構想に組み込まれるには至らなかった。BBCによると、アストンヴィラ、ニューカッスル、ドルトムントからの接触もあり、クラブも25mポンドのオファーがあれば応じる姿勢であったが、最終的にはボーンマスへのシーズンローンが決定した。
リーグカップでみせたゴールパフォーマンスに留まらず、ウィルソンの立ち姿は先日惜しまれながらも引退した”エルニーニョ”を彷彿とさせる。リバプールとの現行契約は2023年6月30日までだが、22歳という年齢を考慮すると残された時間はそう長くはない。アンフィールドの新たなアイドルへの足掛かりとなるプレミア初挑戦のシーズンを追いかけていこう。
初のプレミア挑戦、デビュー戦で魅せた代名詞、そして再びFK
ハル・シティやダービーカウンティといったチャンピオンシップのクラブへのローンを経て、いよいよ掴んだプレミアクラブでの武者修行。エディ・ハウ率いるボーンマスのフットボールのなかで、どのようなパフォーマンスを発揮できるのか。
第1節 v Sheffield United 1:1 (@Vitality Stadium)
(Scorers)
BOU: 62' Mepham
SHU: 88' Sharp
ウィルソン:ベンチ入り、出場なし
ホームで迎えた開幕戦は 3-4-2-1で臨んだボーンマス。 ゲームはセットプレーから挙げた得点を守り切れずにドローに終わった。両WBにはアダム・スミスとリコというSBを本職とするプレイヤーを配置。シャドウにはフレイザーとジョシュア・キングが入り、比較的自由に動きまわる。ボール保持においてボーンマスはやや優位に試合を進めるものの、中央で有効な縦パスを供給することができず所謂”外-外”でのボール循環となり、幅を取る選手の人選からも個の打開の期待は薄く、高いポジションに進出することもできずにいた(下記画像参照)。
第2節 v Aston Villa 2:1 (@Villa Park)
(Scorers)
BOU: 2' King 12' H. Wilson
AVL: 71' Douglas Luiz
ウィルソン:スタメン、76分交代、1ゴール
第2節、エディ・ハウは4-4-2に布陣を変え、ウィルソンにはRSHでスタメン出場の機会が与えられた。開始早々2分に得たPKで先制したボーンマス。続く12分には高い位置でのプレッシングが功を奏し、ペナルティエリア外中央でこぼれ球はウィルソンのもとへ。左足を振りぬいたミドルは相手に当りながらもネットを揺らし、プレミアデビュー戦にして名刺代わりのゴールを挙げた。また、ウィルソンはチャネルへのランニングから決定機を迎えるなど76分まで精力的な動きをみせた。
チームとしては37%の保持率に終わった試合ではあったが、ワイドの選手が高い位置でボールに絡むシーンが増えたことがPlayer Influenceからも伺える。しかし、22本のシュート(うち枠内7本)を浴び、1点差に詰め寄られてからも最後まで守勢に回ったボーンマス。4-4で構えてから前に出た際のバラツキ、ネガティブトランジションの局面で緩慢なシーンも散見され、ボールを持たない展開での振舞いに課題がありそうだ。
第3節 v Manchester City 1:3 (@Vitality Stadium)
(Scorers)
BOU: 12' H. Wilson
MCI: 15' Agüero 43' Sterling 64' Agüero
ウィルソン:ベンチ入り、37分投入、1ゴール
2試合連続で昇格組との対戦であったチェリーズの次の対戦相手は王者シティ。開幕戦のメンバーとの相違こそLWBのリコ→ダニエルズだけだが、全体の重心を下げた5-4-1のような配置でゲームに入った。しかし、1点を先行された37分、そのダニエルズの負傷交代により思わぬ形でウィルソンが投入される。フレイザーをWBに降ろし、キングを左サイドに回すことでRSHに入り攻撃を牽引した。まずは右サイド、ボックス角から入れたクロスがオタメンディの中途半端な対応を誘い、決定機を誘発する。そして前半アディショナルタイムに得たFK、ウィルソンの左足から放たれたボールは鋭く落ちながらゴール右隅に吸い込まれ、1点差に詰め寄ることでゲームの延命に成功する。プレシーズンでは壁に当てるシーンも目立ったFKだが、ここぞという場面で抜群の精度を見せつけた。
後半頭にもスルーボールからビッグチャンスを演出し存在感を示したウィルソンであったが、チームはシティのラポルトを起点とした多彩な攻撃に成す術なく3-1の敗戦。リードを許した終盤にもバランスを崩すことを嫌ってか後ろに5枚を残すシステムに手を加えることもなく、時間が過ぎるにつれて攻め手を欠くこととなった。
おわりに
ローン加入後の3試合で2ゴールと上々の滑り出しをみせたハリー・ウィルソン。WhoScoredのレイティングでもチームトップの数字を示しており期待は膨らむ。パンチの効いたミドルレンジからのショットはプレミアでも通用することは充分アピールした。決して常時試合を支配できるわけでないボーンマスにおいて、ロングレンジのドリブルでチームの押し上げを助けるようなプレーもフレイザーと共に今後求められてくるかもしれない。
リバプールの攻撃陣の顔ぶれをみても、ウィルソンは攻撃に深さを与えうるスピードと、コウチーニョ以降定まりきらない飛び道具を兼ね備えた稀有な存在と言えよう。来季の構想に食い込むため、この連載を続かせるためにも彼の飛躍は不可欠である。ウィルソンの成長と、筆者のボーンマスを毎試合フルで観続けるという根気に期待したい。
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