「反感を買うかもしれないが」で始まる発言(アルネ・スロット)

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平野 圭子
LIVERPOOL SUPPORTERS CLUB JAPAN (chairman) My first game at Anfield was November 1989 against Arsenal and have been following the Reds through thick and thin

2月8日、アンフィールドでLiverpoolは、ドミニク・ソボスライの鮮やかなフリーキックで先制した後で84分に同点にされ、93分にPKを与えて1-2とマンチェスターシティに逆転負けを食らった。更に、試合終幕に空っぽのゴールにラヤン・チェルキが蹴った「ゴール」がVARの介入で無効となり、ソボスライが退場になるという混沌とした中でファイナル・ホイッスルとなった。この敗戦で、今季のプレミアリーグ通算で90分過ぎの失点は6試合、失ったポイントは8となった。

マンチェスターシティ監督のペップ・グアルディオーラは、ファンがいるアンフィールドでの勝利は11試合目にして初で、マンチェスターシティにリーグ・ダブルを食らったのは1936-37季以来初と、またも不名誉な記録が塗り替わった。更に、ロイ・ホジソン(在任は2010-11季)のプレミアリーグ20試合の獲得ポイントは25で、アルネ・スロットの最近20試合は24と、ショッキングな数字には事欠かなかった。

UEFAの成績ランキングで、今季もプレミアリーグがCL出場枠5を得る可能性はかなり濃厚だが、6位に低迷しているLiverpoolにとって、トップ5争いは厳しい戦いだった。マンチェスターユナイテッド(4位)と、チェルシー(5位)は、どちらも監督交代を機に調子を上げ、4連勝中だった。

マンチェスターシティ戦後のハイライト番組で、ジェイミー・キャラガーは厳しい予測を語った。「ニュートラルの人には面白い試合だったが、Liverpool側の立場で言うと、リードしても試合を完全にコントロールしていると安心して見ていられることがない。CL出場権に届くとは思えない」。

キャラは、CLグループステージ最終戦の直前だった1月27日の時点で、来季のCL出場権が確保できなければスロットは今季末でクビになるだろうと予測して話題になった。CLの収入は1月の時点で既に£83.28mという莫大な金額で、その収入がなくなればオーナーにとって財政的打撃は大きい。ヘッドコーチのクビが飛ぶ事態に発展する可能性は否定できなかった。

Liverpoolファンの間では、圧倒的多数がキャラの見解に合意していた。

ファンとキャラだけでなく、地元紙リバプール・エコー、そしてスティーブン・ジェラードというLiverpool陣営内部でのスロットに対する厳しい見解は、成績不振ではなく、スロットの度重なる失言が原因だった。

例えば、キャラのマンチェスターシティ戦での「面白い試合」という言葉は、その前にスロット本人との間で議論にもなった、「たいくつなフットボール」批判に対するスロットの反撃に対するカウンターとは、誰の目にも明らかだった。その時、スロットは、たいくつなフットボールという表現を批判し、昨季のPSG戦が自分のフットボールだと主張した。たいくつなフットボールになるのは対戦相手がローブロックだからであり、相手が良いフットボールをすれば面白い試合になる、ということだった。

これに対しては、「対戦相手に合わせて戦略を立てるアイデンティティのないフットボール」という批判と、ローブロック対策が出来ないまま同じ戦略でポイントを落とし続けている事態に非難が向けられる結果になった。何より、昨季のCL優勝チームとは言え、スロットがPSGにPK戦で敗退したことを誇りにしていると受け取れる発言は、Liverpoolのヘッドコーチとしては不本意だと、ファンの間でスロットに対する不信感が広まっていった。

そして、1月29日のCLカラバフFK戦で、Liverpoolは6-0と勝ってCLラスト16自動的勝ち抜きを決定した、その試合の後でスロットが出した失言は、ジェラードの猛批判を引き出した。「こう言うと反感を買うかもしれないが」と、スロットは切り出した。「昨季ラスト16でPSGに敗退したことが、結果的にプレミアリーグ優勝に有利に働いたかもしれない。あの後は、次の試合までの空き日数が増えたので」。

これに対してジェラードは、「ファンが不快に感じているのは理解できる」と、きつい口調で反論した。「あの時には既に2位に15ポイント差の独走中だった。なのに、CL敗退を歓迎するような言い方はクラブに対する侮辱だし、CLの応援のために大金を費やしているファンに失礼だ」。

ファンは一斉に、「我々の会話を聞いて、代弁してくれた」と、ジェラードに感謝の拍手を送った。

その翌日に、スロットの別の失言が出た。「CLラスト16進出は嬉しい。特に、僅か2年前にはEL準々決勝でアタランタに敗退したことを思うと」。これに対して、エコー紙は、「僅か2年前」という見出しで厳しい批判を訴えた。「前任者であるユルゲン・クロップを見下げたような失礼な言葉だ」。

ファンは一斉に、「クロップを卑下するような言動は絶対に許せない」と、エコー紙の批判に賛成を表明した。

内部からの猛烈な批判を受けて、スロットは、「私の意図が誤って伝わったようだ」と、即座にコメントを出した。これに対して、エコー紙は「見苦しい言い訳」と、冷たい反応だった。

「スロットの、『反感を買うかもしれないが』で始まる発言は、往々にしてファンの不快感を駆り立てる」と、同紙は書いた。「ジェラードが厳しく批判したPSGに敗退した失言、クロップに対する侮辱と取れる2年前のELという失言に加えて、アストンビラにローンに出て苦戦しているハービー・エリオットの状況に関する見解を問われて、『彼はアストンビラの選手だから私はコメントする立場にはない』と冷たく言ったこと、カルビン・ラムゼイを『他に良いオプションがある』とダメだしした発言、それら1つ1つがファンの疑問を増大させていた」。

そして、「30年間でリーグ優勝2回」という発言も、ファンに反感を植え付けていた。スロットが最近、複数のインタビューで繰り返した言葉は、「Liverpoolと言えばリーグ優勝は当然と思えるかもしれない。でも真実は、30年間でリーグ優勝は僅か2回だ」というものだった。昨年5月にプレミアリーグ優勝を達成した時に、スロットは「30年間で2回ではなく、5年で2回目だ」と言った、あの時とは180度転換して、Liverpoolはプレミアリーグ優勝の常連とは言えないという、いわばクラブを卑下するニュアンスに変わったことは、ファンの間で反感を抱く要素になっていた。

「クロップと比べてはいけないと思いつつも、ファンはどうしても比べてしまう」と、同紙は続けた。「クロップはファンを含めすべての人々との関係を重要視した人だった。対するスロットは、ファンに歩み寄ることをしないから、ファンはスロットとは距離があると感じている」。

「そのような、関係が構築されていない中で失言が続きけば、ファンは次第にそっぽを向く。クロップと同じアプローチをして欲しいとは言わない。スロットはスロット独自のやり方でファンと対峙すれば良いと思う」。

「ただ、『反感を買うかもしれないが』で始まる発言はやめて欲しい。本当に反感を買って、それが修復不可能になる前に」。

*本記事はご本人のご承諾をいただきkeiko hiranoさんのブログ記事を転載しております。

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