ゆーり
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- 新時代の幕開け ~2022年プレシーズン 若手特集~ - 2022年07月12日 火曜日 9:55 PM
こんにちは。初めまして。ゆーりと申します。
この度、LFCラボに寄稿する機会を戴き、大変嬉しく思っています。これまでの経験を生かして、自分らしい文章を書いていきたいなぁという所存です。拙い文章ですが、どうぞよろしくお願いします。
史上初の四冠を目標に最後まで勇敢に戦い続けたシーズンが終了してから早くも1ヶ月が経とうとしている。各クラブが新シーズンに向けた活動を再開し始めている現在も移籍市場の真っ只中であり、来月終わりに向けて獲得や放出の噂はさらに加速するはずだ。リバプールの補強はファビオ・カルヴァーリョとダルウィン・ヌニェス、カルヴィン・ラムゼイの獲得と計画通りに順調に進んでいる。中盤強化という最大の課題が残っているが、予想外の事態が起こらなければ大方の補強は終わりであろう。本音では補強して欲しいが…。
一方、退団の話は今後も続々と出てくる筈だ。今回のプレシーズンツアーに名を連ねている選手の中にも新たなクラブへの移籍が決まり、離脱する者も現れてくるであろう。リバプールは東南アジアへのツアーを皮切りに、恒例となりつつあるレッドブル系列のクラブとの試合を経て、新シーズンへと動き出す。そして今夏もアカデミーから沢山の若者がトップチームの遠征へと招集されている。クロップやトップチームの選手達と共に過ごす期間は自身の未来を切り拓く大きなチャンスであり、ターニングポイントとなり得る。今夏のプレシーズンツアーは例年よりも過密日程であり、アカデミー組の若手たちが試合に出場する機会も幾らか訪れるであろう。
そういうわけで今回の記事ではトップチームへと招集されたアカデミー所属の若者に焦点を当てる。普段は彼らを目にする機会が少なく、この夏が初めての機会になる方々も少なくない筈だ。リバプールで活躍することを夢に見る若者を応援しよう。輝かしい未来が待つ若者を。大切なプレシーズンを前に、この記事が今後の参考になることを願い執筆する。
「今夏のプレシーズンでトップチーム帯同を果たす若者たち」
それではのんびりと最後までお付き合い戴けると嬉しいです。
―――
☆今回のトップ帯同組一覧リスト
【GK】
- Alisson Becker
- Adrian
- ☆Harvey Davies
- ☆Fabian Mrozek
【DF】
- Ibrahima Konate
- Joel Matip
- Nat Phillips
- Rhys Williams
- Virgil van Dijk
- Joe Gomez
- Trent Alexander-Arnold
- Kostas Tsimikas
- Andy Robertson
- ☆Sepp Van den Berg
- ☆Luke Chambers
【MF】
- James Milner
- Jordan Henderson
- Fabinho
- Alex Oxlade-Chamberlain
- Thiago Alcantara
- Naby Keita
- Curtis Jones
- Fabio Carvalho
- Harvey Elliott
- ☆Leighton Clarkson
- ☆Tyler Morton
- ☆James Norris
- ☆Stefan Bajcetic
- ☆Bobby Clark
- ☆Melkamu Frauendorf
- ☆Thomas Hill
- ☆Isaac Mabaya
【FW】
- Mohamed Salah
- Diogo Jota
- Roberto Firmino
- Luis Diaz
- Darwin Nunez
ハーヴェイ・デイヴィス
- 名前:Harvey Davies
- 年齢:18 (September 3rd, 2003)
- ポジション:GK
- 長所:セービング能力, 1on1の対応, 空中戦
- 弱点:スペース管理, ビルドアップ関与
9歳からリバプール一筋のデイヴィスは直近2年間で最も株を上げた若者の一人であろう。一昨季のシーズン当初は控えに甘んじていたが、守護神離脱で巡ってきた出場機会やトップチームでの練習参加で印象的なアピールに成功し、U18の守護神の座まで序列を上げることに成功した。典型的なセービング型GKである為、安定感や総合力、後方での繋ぎに関しては物足りない側面もあるが、劣勢の試合展開を大きく変え得るショットストップの数々は多くの者を魅了するであろう。今夏は出場機会こそ無かったものの、イングランド年代別代表の一員としてU19 EURO制覇を経験。ケレハーがツアー帯同メンバーから漏れた今夏のプレシーズンでは若手GK陣の最上位の序列に位置するデイヴィスはトップチームデビューのチャンスも十二分にあるはずだ。イングランド年代別代表のビッグセーバーは近年の着実な成長を証明するチャンスをモノにしたい。
ファビアン・ムロジェク
- 名前:Fabian Mrozek
- 年齢:18 (September 28th, 2003)
- ポジション:GK
- 長所:セービング能力, 反射神経
- 短所:ビルドアップ関与
ポーランド出身のビッグセーバー。ムロジェクは典型的なセービング型GKであり、チームの最後尾で安定したショットストップを披露する。一方、最終ラインの裏のスペース管理や足元の技術は怪しい部分もあり、今後の向上が期待される。今季は怪我人が続出する若手GK陣の中で多くの出場機会を得て安定した活躍を披露し、今夏は自身初のトップチーム帯同の機会を得るに至った。また近年のリバプールはポーランド方面のリクルートに力を入れており、彼の先輩にもポーランド人GKが在籍している。昨夏コペンハーゲンへと移籍したカミル・グラバラも同様にポーランド出身である。
ルーク・チェンバース
- 名前:Luke Chambers
- 年齢:18 (June 24th, 2004)
- ポジション:CB, LSB
- 長所:読みの鋭さ, ビルドアップ, ユーティリティー性
- 弱点:フィジカル, 球際の強さ
プレストン出身のチェンバースは昨季一年間最も評価を高めた若者の一人である。最終ライン全てのポジションでプレー可能なチェンバースはシーズン当初こそ便利屋的な起用が多かったが、レフティーの良さを存分に生かした高いビルドアップ能力や優れた読みと判断力で相手の攻撃の芽を摘む堅実な守備で着実なアピールに成功すると、シーズン半ば以降は最終ラインの中心としてチームを後方から統率した。左CBと左SBを主戦場とし、ビルドアップやセンスの良い守備を武器とするチェンバースが目指す先はダビド・アラバであろう。シーズンを通して評価を高めたチェンバースは今夏イングランド年代別代表の一員としてU19EURO制覇に貢献、過密日程の中でもトップチームのアジアツアーに招集されたのはユルゲン・クロップやぺパイン・ラインダースからの期待の表れだ。今夏の貴重な経験を経て昨季の急速な成長がさらに加速することに期待したい。
レイトン・クラークソン
- 名前:Leighton Clarkson
- 年齢:20 (October 19th, 2001)
- ポジション:DMF
- 長所:ビジョン, ゲームメイク, キックレンジ
- 弱点:フィジカル, スピード, フィルター能力
クラークソンは一昨季のCLミッティラン戦でのプレーが印象深いであろう。中盤の底から長短のパスを散らし、試合を巧みにコントロール、小柄な若者は大きな存在感を放っていた。U23では図抜けた存在感を発揮するが、トップチームで安定的な出場機会を確保するには弱点であるスピードやアジリティー、フィジカル面で適応する必要がある。今季前半戦は故郷ブラックバーンへのローン移籍を果たしたが、昇格も視野に入るほどの絶好調のクラブでは安定した出場機会を確保するのに苦労した。現在の彼はフィルター役として未だ不十分であり、キックレンジの広さとゲームメイクという長所を生かすことに加えて、苦手な要素や局面を減らすことが当面の課題になるであろう。現在も下部リーグのクラブが数多く関心を示しており、来季は再びチャンピオンシップへの武者修行で経験を積むことになる筈だ。リバプールでの将来は非常に難しい現状だが、ナントで良い活躍を見せる先輩ペドロ・チリベジャのように自身の価値を証明する機会にして欲しい。
タイラー・モートン
- 名前:Tyler Morton
- 年齢:19 (October 31st, 2002)
- ポジション:DMF, CMF
- 長所:キックレンジの広さ, ミドルシュート, 得点力
- 弱点:狭いスペースでのボールコントロール, 身体的な線の細さ
昨夏のプレシーズンでトップチームへと帯同したアカデミー組で最も過小評価されていた若者こそがモートンであった。そして昨季は自身の価値と将来性を示すデビューシーズンとなった。一昨季からモートンの能力を高く評価していた私にとっても国内カップ戦のみでなく、プレミアリーグやCLでも出番を得られたのは予想を大きく超える出来事であった。昨季のトップチームではアンカー起用が多かったが、本来のプレースタイルは典型的なボックスtoボックスの8番。全てのプレーを高水準に熟し、オンザボールとオフザボールの両面で輝くことが出来る。持ち味はロングレンジのキックとミドルシュートを含めた非凡な得点力。未だ線が細い上に中盤の狭いスペースで前を向く能力や細かいボールコントロールなど改善の余地は数多く残しているが、キックレンジの広さは教えられても身に付かない生まれ持った才能である。またモートンの存在は現アカデミー組のモチベーションに繋がることにも期待したい。下部年代から才能が異次元であったトレント・アレクサンダー=アーノルドやカーティス・ジョーンズと異なり、近年の急成長で自身の存在感をアピールした叩き上げのモートンは別の意味で良い刺激になるはずだ。キャプテン気質があり、皆から慕われる人間なのも良い。そして何よりも顔も良い。クロップが高く評価する若者は将来、大きな役割を担うかもしれない。
ジェームズ・ノリス
- 名前:James Norris
- 年齢:19 (April 4th, 2003)
- ポジション:LSB, CMF, RWG, LWG
- 長所:足元の技術,状況判断, サッカーIQ
- 弱点:運動能力, フィジカル
昨夏のプレシーズンに最も呼んで欲しかった若者の一人がノリスであった。一昨季はU18の左SBとして活躍していたため、トップチームのコンスタンティノス・ツィミカスやもう一つ上の世代でありU23で活躍するオーウェン・ベックとポジションが重なった為に招集が見送られてしまっていた。しかし今季昇格したU23では中盤の左IHを主戦場として高水準のプレーを安定して披露しており、彼の継続性には目を見張るものがある。ノリスの特徴は確かな「止める・蹴る」の技術に起因するミスが少なさである。足元の技術と状況判断に優れており、前方の状況によって立ち位置や使うレーンを変更することも出来る。また元々は左SBで活躍していたため、内側の立ち位置と大外のレーンを上手に使い分けることも可能だ。スピードや運動能力などフィジカル面に課題が残る為、トップチームに昇格するのは難しいかもしれないが、小回りが効く彼は中央でも大外でもミスなく堅実なプレーが可能であり、貴重なレフティーとしてチームを助けるユーティリティーな存在へと成長する可能性を秘めている。
ステファン・バイチェティッチ
- 名前:Stefan Bajcetic
- 名前:17 (October 22nd, 2004)
- ポジション:CB, DMF
- 長所:ビルドアップ, フィルター能力, フィード
- 弱点:プレス回避, 機動力, 初速
筆者の最推しこそがこの若者である。スペイン人の元サッカー選手の父とセルビア人の母を持つバイチェティッチはスペイン世代別代表の常連であり、2021年1月にセルタから加入して以来、クラブ関係者に多くの感銘を与え続けている。加入直後はU16のCBとして大きなインパクトを与えると、クラブは直ぐにU18への昇格を提案。弱冠16歳ながらU18の重要な戦力として見事にアンカーの座を射止めた。CBとDMFでプレー可能な若者は今季前半戦U18の不動のレギュラーとして大活躍、クラブにさらなる飛び級が可能だと判断され、シーズン半ばにはU23への昇格を果たした。後半戦は筋肉系の怪我により離脱を余儀なくされたが、現在の実力と将来的なポテンシャルを見せ付けるには十分な活躍であった。スペイン人らしく素晴らしいビルドアップ能力と中盤の底で相手の攻撃をシャットアウトし続けるフィルター能力を兼ね備える若者は今季中のトップチームデビューが十分に期待出来る存在で間違いない。狭いスペースでのプレス回避に関しては改善の余地があるが、後方からの運びと球出しの状況判断を良いバランスで行えるのは優れた才能である。クラブの長期的な課題になっていくであろうファビーニョの後釜問題を解決し得る存在はアンフィールドで名前を轟かせる時を今か今かと待っている。
ボビー・クラーク
- 名前:Bobby Clark
- 年齢:17 (February 7th, 2005)
- ポジション:CMF, AMF, RWG, LWG
- 長所:足元のテクニック, 狭いスペースでのボールコントロール, 発想力
- 弱点:アジリティー, トップスピード
昨夏にニューカッスルから加入した才能は14歳でU18デビューを果たしたトッププロスペクトである。元サッカー選手の父親を持つクラークはニューカッスルで多大な期待を受けながらも劣悪なクラブのアカデミー環境やコーチ陣との衝突により、出場機会を多く与えられることはなく、マージーサイドへと活躍の場を移した。新天地でも確かな足元のテクニックと独特なセンス、バイタル付近で敵を出し抜く発想などポテンシャルの高さを見せ付け、ライン間の狭いスペースで特別な存在になり得るアダム・ララーナのような選手だ。現在飛び級で年上の世代とプレーしているクラークは体格差や課題のトップスピード、アジリティーに苦戦しながらも厳しい環境で揉まれている。イングランド年代別代表への復帰も期待される若者はセンス溢れるアイディアに身体面が追い付いた時、類稀な才能が一気に花開くであろう。
メルカム・フラウエンドルフ
- 名前:Melkamu Frauendorf
- 年齢:18 (January 12th, 2004)
- ポジション:RSB, CMF, AMF, RWG, LWG
- 長所:ユーティリティー性, 高い運動能力, 推進力
- 点:飛び抜けた強み
エチオピアで生まれ、ドイツで育った少年は2020年の夏にマージーサイドへとやってきた。ホッフェンハイムのアカデミーでは2歳年上の兄とともに順調な成長を遂げたフラウエンドルフは数多くのビッグクラブに狙われる存在となり、リバプール行きを選んだ。ドイツ年代別代表に定期的に呼ばれ、将来を期待される存在であるフラウエンドルフはマージーサイドでも高い運動能力に起因するダイナミックなプレーと持ち味のユーティリティー性を遺憾なく発揮している。アカデミーでは最終ラインから最前線までを熟す欠かせない存在として活躍、年明けにはFA杯のシュルーズベリー戦でトップチームデビューを果たした。プレースタイルは推進力を備えたジョルジニオ・ワイナルドゥムが近いかもしれない。現在は右WGでプレーすることも多いが、将来的には中盤へと主戦場を移すと見られ、計算が立つタイプとして指揮官に重宝される選手へと育って欲しい。
トーマス・ヒル
- 名前:Thomas Hill
- 年齢:20 (October 13th, 2002)
- ポジション:CMF
- 長所:足元の技術, 得点能力, 献身性
- 弱点:身体的な強さ, スピード
2019年12月17日、リバプールのトップチームがカタールでクラブW杯を戦う裏で行われたリーグカップ準決勝のアストン・ヴィラ戦。ヒルはあの試合でトップチームデビューを果たした若者の一人だ。6歳からリバプールのアカデミーに在籍し、勤勉なボックスtoボックスとしてチームの歯車となりながら、好機の場面ではタイミング良くエリア内に走り込み、得点にも関与することが出来る中盤。クラブからも高い評価を受けていたが2020年9月に前十字靭帯断裂の大怪我を負い、昨季終盤戦まで約2年の長期離脱を余儀なくされた。同様の怪我を負ったポール・グラツェルやレイトン・スチュワートと共に、長く辛いリハビリの中でも再びピッチに立つという希望を諦めず、見事な復活を果たした姿勢は賞賛に値する。今夏のトップチーム帯同はサプライズに近かったが、これまでの非常に厳しい暗いリハビリの御褒美として久々のフットボールの試合を純粋に楽しんで欲しい。
アイザック・マバヤ
- 名前:Isaac Mabaya
- 年齢:17 (September 22nd, 2004)
- ポジション:RSB, DMF, CMF, RWG, LWG
- 長所:爆発的なスピード, 高いアスリート能力
- 弱点:継続性, 積極性, 細かいボールコントロール
ジンバブエ出身の両親の下で生まれたマバヤは高い運動能力を持つ若者である。そして筆者が強く推す若手の一人だ。高いアスリート能力と爆発的なスピードを備えるマバヤは圧倒的な才能を裏付ける興味深い記録を持っている。地元の陸上大会へと参加した15歳の際、マバヤは100mを11.5秒、200mを23.4秒、300mを37.2秒という驚異的な記録を打ち出している。中盤を本職としながらもU18では右SBとして多く起用される彼は爆発的な加速力で相手守備陣を切り裂き、チャンスを演出する。一方で私は大外のレーンでの起用に反対である。なぜならマバヤは圧倒的なスプリント能力に加え、足元の技術や状況判断も優れた素質を備えているからだ。プレス回避や狭いエリアでのプレーなど今現在はまだまだ多くの改善の余地を残しているが、マバヤは他を寄せ付けない圧倒的な才能を秘めるロマンの塊なのだ。私は本職の中盤で世界のトップレベルへと駆け上がるマバヤを純粋に見てみたい。アンフィールドで夢を叶えて欲しい。
◎惜しくも招集外となった若者たち
ジャレル・クォンザー
- 名前:Jarell Quansah
- 年齢:19 (January 29th, 2003)
- ポジション:CB
- 長所:リーダーシップ, 完成度の高さ
- 弱点:初速, 天井の高さ…?
ピッチ内外でチームを引っ張るリーダー的存在。一昨季はU18のキャプテンとしてビリー・クメティオと共に強力なCBコンビを形成。DFリーダーとして最終ラインを統率、ユースカップでは優れたパフォーマンスでチームの躍進に大きく貢献した陰のMVP。今季前半戦は怪我による離脱で出遅れたものの、復帰後はU23の欠かせない主力として君臨。後半戦はスウォンジーへのローンから帰還したリース・ウィリアムズと共に完成度の高い最終ラインを形成し、U23の無敗街道に大きく貢献した。19歳という年齢に見合わぬ完成度の高い守備者であり、ビルドアップ、フィード、対人守備、スピード、空中戦、カバーリングと様々な面で高い能力を備え、弱点を持たないタイプである。現時点ではクメティオを上回っているように見えるが、トップチームではクメティオが優先される辺りは将来的なポテンシャルを考慮された判断なのだろう。今夏はイングランド年代別代表としてU19 EUROに参加。イングランドの最終ラインを束ねるディフェンスリーダーとして強固な守備陣を統率するだけでなく、準決勝では値千金の決勝ゴールを沈め、優勝に大きく貢献。大会ベストイレブンにも選出をされ、評価を大きく高める大会となった。上記の大会との日程の都合や過密日程の関係もあり、残念ながらトップチーム帯同の機会は逃したが、数多くのクラブからローン移籍の打診を受ける若者には明るい将来が待っているであろう。
カイデ・ゴードン
- 名前:Kaide Gordon
- 年齢:17 (October 5th, 2004)
- ポジション:RWG
- 長所:完成度の高さ, サッカーIQ, 守備貢献
- 弱点:単騎突破力, 怪我耐性
現在、リバプールのアカデミーで最も大きな才能を秘めるワンダーボーイは一昨冬にクラブへと加入して以来、自身の価値と将来性を示し続けてきた。2004世代ではイングランド最高の才能と称される17歳の若者はダービーから加入後の半年間はU18で圧倒的なプレーを披露。一昨季の最終戦ではU23デビューを果たすと、デビュー戦で初ゴールを記録するスターぶりだ。右WGを主戦場とするレフティーはスピードとテクニックに優れているのは勿論のこと、サッカーIQが高く、オフザボールでも違いを作れる。また守備の貢献も素晴らしく、逆に心配になるくらい数多くのスプリントを繰り返す。更にフィニッシュのパターンも多彩であり、逆足でのプレーも苦にしない為、ゴール前で多くの選択肢を持つ。一方、昨季後半戦は現状の課題と将来性への疑念を示したのも事実だ。17歳ながらにU23の主力として定着したのは見事だが、上級生の体格差の前では突出した武器が徐々に消えていった。また昨季は定期的に怪我で離脱しており、後半戦は十分なプレー時間の確保も出来なかった。様々な局面で完成度の高さを見せつける反面、今後の成長予知に関しては多少の懸念が生まれたシーズンであった。しかし血筋を考えると体格はさらに大きく成長する希望もあり、我々の想像を超える急成長に期待している。リバプールのコーチ陣はゴードンをローンで放出する意思は皆無であり、今季は昨季以上に数多くの出場機会を与えられるはずだ。今夏のプレシーズンは怪我によりトップチーム帯同は叶わなかったが、無限のセンスに溢れる若者は今季最大の楽しみの一つである。
マテウス・ムシャロフスキ
- 名前:Mateusz Musialowski
- 年齢:18 (October 16th, 2003)
- ポジション:AMF, RWG, LWG
- 長所:両利き, ドリブル, ポテンシャルの高さ
- 弱点:サッカーIQ, オフザボール, 原理原則の欠如
次世代のスター候補と称されるダイヤの原石。幼い頃から異質のキャリアを歩んできたポーランドの若者は唯一無二の才能を秘めており、予測不能なドリブルと両足から繰り出されるパンチ力のあるシュートで多くの人々を魅了する。オンザボールのプレーに絶対的な自信を持っており、ゾーンに入ると誰にも止められない存在へと化ける。反面、トップチームで活躍するには多くの課題も抱える。『球蹴りは上手いが、サッカーは下手。』を象徴する彼は現代サッカーで重要視される根本的な賢さが欠如しており、サッカーの原理原則やオフザボール、守備の立ち位置など成長の余地を多く残す。今季はU23へと昇格したが、上級生との体格差や度重なる怪我に苦労したのが現状の実力を表している。しかしそれでも無限大なポテンシャルを秘める彼は我々が夢を見ていたいロマン溢れる存在であり、誰にも予測出来ない成長曲線を描いて欲しい。今季は母国ポーランドへのローン移籍が強く噂されている。
レイトン・スチュアート
- 名前:Layton Stewart
- 年齢:19 (September 3rd, 2002)
- ポジション:CF
- 長所:フィニッシュの多彩さ, ゴールへの嗅覚, 一瞬の加速力
- 弱点:ポストプレー, バイタルでのプレーの幅
一昨季U18で10試合15得点。U23では8試合2得点。フィニッシュ能力に優れる生粋のストライカーは圧倒的な得点能力でチームを引っ張っていた。クロップや数多くのレジェンドからも「フェルナンド・トーレスの再来」として特大の期待を一身に背負っていたが、シーズン後半戦で前十字靭帯断裂の大怪我を負い、長期離脱を余儀なくされてしまった。しかし1年以上に及ぶ長いリハビリを経て昨季終盤戦で復帰を果たすと、復帰早々にゴールを記録。久しぶりのピッチで上々の活躍を披露した。今季は主戦場のU23でコンディションを整えながら試合勘を取り戻し、カップ戦でディヴォック・オリギや南野拓実が抜けた穴を埋める活躍に期待したい。頼れるエースの完全復活を期待せずにはいられない。
今回の文章は以上となります。
最近はプライベートが少し忙しかったこともあり、LFCラボに寄稿するお誘いを頂いてから、数ヶ月が経過してしまいました。最近は筆を執る気持ちが一ミリも起きなかったのですが、いざ書き始めると数時間で一つの文章を書き上げることが出来ました。今後もご縁がありましたら、アカデミーを中心に執筆したいなぁと思う所存であります。
この文章を書くにあたり幾つかの題材を思案しましたが、今回は丁度プレシーズン開始のタイミングということで「今夏トップチームに帯同するアカデミー組」というテーマにフォーカスしてみました。今後は選手各々にも着目した文章を定期的に書いていければなぁと。
若手の成長というのは予測が非常に難しいもので、プロのスカウトやクラブ関係者にとっても不確定要素が強かったりします。”才能を持っていること”と”才能が開花すること”は全くの別物であり、クラブ側は選手本人に適した環境と条件を見つけ、成長の助けとなるように上手く整えてあげなければなりません。有望な若手は飛び級で早い段階から出場機会を多く与えれば良いという話ではなく、本人の能力や意思にあらゆるコンディションが合致することが必要です。出場機会を多く与えれば経験値が溜まるゲーム脳で考えてはいけないのです。まだ身体が出来上がってない状況での飛び級が度重なる怪我や精神面の不安定さに繋がるケースも頻繁に目にします。特定の若者にとってはリバプールに残留するよりも、他クラブで新たなチャレンジに挑むのが正しいかもしれません。結局の所、正解の選択は誰にも分からないのです。
また今日ではSNSを通して過度な批判や誹謗中傷に晒される危険性が多くなりました。現代社会ならではのリスクですね。アカデミー育ちの若者に期待するのは素晴らしいことですが、応援する側が特定の若者を過度に持ち上げて勝手な期待を持つのが嫌だなぁとも感じます。皆さんも経験があるでしょうか。そしてその期待が裏切られたからといって、矛先を本人に向けるという行為などあってはいけないことです。赤の他人に期待をした側が完全に悪いのです。昨夏の移籍市場が開いていたタイミングでは番記者のジェームズ・ピアース等が補強を待望するファンへの火消しに、アカデミーの若者を過度に高く評価する記事を書くケースも度々ありました。個人的には『マックス・ウォルトマンがロベルト・フィルミーノの後釜!』という記事がいちばん面白かったですね。ただクリック数が伸びるというメディア側の勝手な都合を除けば、誰も得をしない記事なのです。そしてこのスタンスは結果的に失望へと繋がるケースが多く、全方向にメリットが皆無なので早急に辞めて欲しいなぁと思うのであります。
私はアカデミー年代を追うことは好きですが、若手厨では決してありません。リバプールの成功に繋がるのならば、若者たちが幸せなサッカー人生を歩めるのならば、アカデミー出身者の将来がリバプールにあることに固執していません。将来的に一人でも多くのアカデミー出身者がプレミアリーグで活躍できることを願っています。
クラブの宝である若者を長い目で大切に育てて欲しいです。彼らが成功する未来が待っていることを祈っています。
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