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基本プロフィール

画像出典:リバプール公式HP
- 選手名:クィビーン・オドーラン・ケレハー
- 生年月日:1998年11月23日
- 国籍:アイルランド
- 身長:188㎝
- ポジション:GK
- 背番号:62
- チームキャリア:リバプール(18/19~)
- 市場価格:€ 15.00Mill.
- 契約終了年:2026年6月30日
プレースタイル
ストロングポイント

画像出典:リバプール公式HP
ゴールキーパーにとって必要な様々な能力を高いレベルで備えた、リバプール・アカデミー出身の頼りになる第二の守護神。贔屓目抜きで見てもプレミアリーグで最もクオリティの高いセカンドGKの一人であり、出場機会が絶対的な存在であるアリソン・ベッカーの不在時orプライオリティの低い国内カップ戦などに限定されているのことに対して不憫に思っているリバプールのファンは多いことだろう。
フィジカル的な観点から見ると、188cmというサイズは現代のGKとしては比較的小柄なカテゴリに分類されるものの均整の取れた体格の持ち主であり、身体のコーディネーションもいい。優れた反射神経に支えられたシュートストップは彼の持ち味の一つである。
実際に彼のシュートストップに関するデータはプレミアリーグの平均的なGKよりも上位に位置し、とりわけそれが発揮されているのがペナルティキックの場面。これまでのキャリアにおいて彼は28回のPKと遭遇している(もちろんPK戦を含む)が、そのうちの7本を防いでおり、パーセンテージは驚異の25%。実に4回に1回は止めており、GK全体の平均値が16%であることを考えると、これは極めて優れた数字である。
ケレハーは傑出した身体能力を持ち合わせているわけではないので、この数字はフィジカルに頼り切ったものだけでなく、彼の冷静さや読みといった部分も色濃く反映されているのではないか。実際に彼は(PK戦に限らず)どんな状況においてもとてもクールに見える。
身体が大きすぎないため身のこなしはスムーズで、ボックスの外もカバーできる。カバー範囲はもちろん飛び出しの判断/質なども及第点以上で、ラインを押し上げる時間帯の多いリバプールのようなクラブにおいて彼のスタイルは適したものだ。もしも彼のプレーエリアがボックス内に限定されるクラシカルなショットストッパーであればこうはいかなかった。そういった意味では彼もまたアリソンと同じくモダンなGKと言える。
技術的な観点から見ると、ディストリビューションもケレハーの魅力の一つと言っていいだろう。ビルドアップに違和感なく参加できるだけの配球力を備えており、これもまた彼を現代的なGKと位置付けることのできる要素となっている。PKのときと同じように涼しい顔で相手選手のプレッシャーをいなしながらパスを繋ぐプレーからは、彼の技術的な高さだけでなくメンタリティの強さも感じさせる。
ここまで複数の観点からケレハーのGKとしての特徴を見てきたが、彼の最大の特徴は“これといった弱点がない”ことだと筆者は考えている。多くの能力が平均的かそれ以上であり、目立った欠点がない。アリソンというフットボールの歴史上においても最高クラスのGKがライバルである以上は彼がセカンドであるのは致し方ないことだが、アリソンをファーストにケレハーをセカンド(もっと言えばアドリアンをサード)として抱えている現在のGK陣は控えめに言っても贅沢というものだろう。実際にユルゲン・クロップは「アリソンは世界最高のGKで、ケレハーは世界最高のセカンドGKだ」と語っている。
しかし、そう考えると個人的にはケレハーのプレータイムの少なさにやや不満が残る。2021-22シーズンは彼の多大な貢献によってリーグカップのタイトルを獲得したが、翌2022-23シーズンは主戦場となるリーグカップで早期敗退したこともあって計4試合の出場に留まっている(リーグカップの2試合、FAカップの1試合、消化試合となったプレミアリーグ最終節の1試合)。
2023-24シーズンはヨーロッパのコンペティションがCLではなくELということもあり、リーグカップだけでなくそちらの方でも出場機会を得ているが、もしこれがCLであればアリソンが起用されていたことだろう。
やや疑問に思うのは、2つある国内カップ戦のうち、ケレハーがメインとして起用されるのがリーグカップのみである点。もう一つのFAカップはアリソンがメインであり、ケレハーがFAカップで登場する機会は前後の試合感覚が短い場合に留まる。たしかにアリソンとケレハーの間には歴然たるクオリティの差があるが、それはケレハーの能力が低いからではなく、アリソンがあまりにも凄すぎるだけである。
2つの国内カップ戦をどちらもケレハーに任せるというのは、彼に出場機会を与えるだけでなく、アリソンの負担を軽減することにも繋がる。アリソンはGKとしては怪我による離脱が多い点が玉に瑕であり、絶対に欠かしたくない戦力であることを考えると重要度の低いゲームでは極力、起用を控えたいところではある。それを考えれば、リーグカップだけでなくFAカップもケレハーに託すという判断は理にかなっているように思える。
ケレハーは(リーグ内の立ち位置にもよるが)リバプール以外のクラブであれば正守護神の座を託されうるだけの実力者であるため、プレミアリーグの中堅クラブなどからの誘いが後を絶たない。いつ出場機会を求めてクラブを飛び出すかわからないが、彼から今置かれている立場を嘆くような発言は聞こえてこない。クラブ側がその現状に甘えるのもやや違う気がするが、これはケレハーの優れたパーソナリティを象徴しているようにも思える。
これは余談だが、アイルランド代表の監督など外からは移籍を勧める声があるのもまた事実だ。リバプールにとっては都合の悪い意見だが、彼らの立場を考えればそれは致し方ないことだろう。クロップは「ケレハーがアイルランド代表の正守護神でない理由がわからない」と過去に発言したことがあるが、その立場を築けていない最大の理由は出場機会の少なさによる経験値と試合勘の不足だろう。もし私が代表監督の立場であったら「であればもっとケレハーを試合で使ってくれ」と言いたくなるはずだ。
GKたちは1つしかない席を争う一方で、彼らGKグループにはポジション争いの垣根を超えた非常に強い結束があると言われている。GKにはGKにしかわからない世界があるということだろう。アリソンやアドリアンは誰もが認める素晴らしい人格者であり、そしてケレハーもまたチームに不和をもたらすようなタイプではなく、むしろチームのために自分のできる仕事をしっかりとこなし自らを犠牲にできる卓越したパーソナリティの持ち主である。これもまた、彼を控えのGKとして信頼できる一つの理由だろう。
ウィークポイント

画像出典:リバプール公式HP
前述の通り、彼の特徴と強みはいわゆる“GKとしての弱点のなさ”にあるが、裏を返せばこれといった絶対的な武器を持っているわけではないともいえるだろう。グッドではあるが、ベストではない。アリソンとの間にある決定的な差もここにある。ケレハーは素晴らしいGKだが、それはあくまでセカンドGKとして考えたときであり、プレミアリーグやCLといったメジャータイトルの獲得が課せられたメガクラブのファーストGKとして考えるとやはり物足りなさを感じてしまうのは否めない。
そして、これこそがまだリバプールがケレハーを手放さずにいられる要因であると言える。もしもケレハーがアリソンとポジションを争えるような(あるいは、リバプールでなくともメガクラブのファーストGKを任せられるレベルの)実力者であれば、流石に彼をクラブに留めておくのは難しい。メジャータイトルを狙うメガクラブのセカンドGK or 中堅クラブのファーストGKを天秤にかけ、ケレハーは前者を受け入れているのではないか(もちろんそこにはアカデミー時代から所属するリバプールへの愛着などもあるだろう)。
例えば素晴らしいセーブを披露しても弾きどころが悪く結局相手に押し込まれて失点を許してしまったり、絶体絶命の1対1の状況でやや淡泊に失点してしまったりと、独力で土壇場の状況を救えるような理不尽さは持ち合わせていない。そうなるとやはり彼のセービング能力に対して「高いことは高いが…」といったような評価に留まってしまう、というのが正直なところだ。そしてこれはセービングだけでなく、ポジショニングやクロスへの対応、カバー範囲、ディストリビューションなど多くの項目に当てはまる。
最も身近な比較対象がアリソンであるため厳しいものになっている可能性も否めないが、例えばアリソンがクラブを去った後のファーストGKをケレハーに託したいかと言われると、(あくまで筆者は、であるが)ややそれには否定的で彼では心許ないと思うことだろう(もちろん、そのときのリバプールの状況次第。例えばリーグの優勝ではなく4位以内が目標になっているのであればケレハーでも十分と考えるかもしれない)。
このようにここまでケレハーに対して“ファーストGKを任せるようなレベルではない”と評してきたが、それはそれとしてかつてリバプールの守護神としてゴールを守ってきたシモン・ミニョレやロリス・カリウスと比べた場合、ケレハーの方が彼らよりも優秀なGKなのでは、と考えている。つまり、時代やタイミングが違えばケレハーがリバプールの正守護神として君臨している世界線もあったのかもしれない。
最後になるが、ケレハーはセカンドとして考えれば極めて頼りになるGKである。選手として優れたクオリティを持つだけでなく人格的にも素晴らしく、さらに貴重なクラブ育成枠を埋めるホームグロウンの選手である。言葉を選ばずに言えば、リバプールにとって彼以上に都合のいいセカンドGKは存在しないだろう。それゆえに他クラブから数多くの誘いがあるのもまた事実だが、出来る限りクラブに留めたいところだ。もしこれから先もリバプールでプレーしてくれるのであれば、ぜひとも彼により多くの出場機会を与えられることを筆者は望んでいる。
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