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4月8日の現地時間21時頃、プレミアリーグの選手たちが以下の声明をそれぞれのSNSで一斉に投稿した。
「先週、私達はプレミアリーグの選手グループとして、このCOVID-19の危機の中で『最も必要なところにお金を分配するために使用できる寄付基金を創設する』というビジョンと共に、数多くの話し合いを行いました。 NHSの最前線や重要な領域で私達のために戦っている人々を支援します。
これは私たちの国にとってもNHSにとっても重要な時期であり、できる限りの支援をする決意です。 プレミアリーグの全てのクラブからなる膨大な数のプレーヤー間での広範囲な会談の後に、私たちは独自の集団的なプレーヤーイニシアチブ、#PlayersTogether を創設し、資金の生成と配布を支援するためにNHSチャリティートゥギャザー(NHSCT)と提携したことを確認します。そして支援は彼らが最も必要とされている場所に迅速かつ効率的に行います。
NHSCTは、150以上の登録されたNHS慈善団体のための全国的な組織であり、慈善委員会、保健社会福祉省、及びNHSイングランドと緊密に協力して、NHSの公式慈善団体を代表し、擁護し、支援しています。 NHSCTは、全国的なNHSの公式チャリティーパートナーです。
このイニシアチブによる今後の貢献としては、NHSCTが最前線に資金を迅速に提供し、COVID-19の影響を受けるNHSスタッフ、ボランティア、患者の幸福を促進し、それらへの支援だけでなく、他の多くの重要な領域に必要なサポートする彼らの仕事を長期的に援助します。
#PlayersTogether は、プレーヤーとして、他のクラブやリーグの会話とは別に、私達が協力して自発的なイニシアチブを創設しています。これにより、今すぐ必要な多くの資金で得ることができます。 国内の他の多くの人達と一緒にトライし、支援することで、真の違いが生まれるのです。
私達の祈りと考えは、この危機の影響を受けた全ての人に向けられます。 共に結束し、これを乗り越えましょう。
Stay Home,
Protect the NHS,
Save Lives.
#PlayersTogether」
プレミアリーグの選手たちがクラブやリーグとは独立した選手主導の取り組みとして、新型コロナウイルス対策支援の寄付金を適切に分配するための基金『#PlayersTogether』を設立したのだ。
本記事では、現在イギリス全土で称賛が巻き起こるこの活動が起きることとなった流れを詳細に振り返り、もたらした影響、また現在はどのような活動をしているのかを紹介していく。
#PlayersTogetherが起こるまでの流れ
きっかけは、4月2日のイギリスのマット・ハンコック保健相の一言から始まった。
「プレミアリーグの選手がまずできるのは給与カットを受け入れ、自分たちの役割を果たすことだ」
と述べ、選手達に減給を受け入れるよう要求したのだ。
この流れを受けてか、プレミアリーグも翌3日、COVID-19による経済的影響を受けて、全クラブが選手たちと年俸30パーセントに相当する給与減俸について協議すると発表していた。
しかし、これに対してイングランドサッカー選手協会(PFA)は4日に声明を発表する。内容は、以前から選手たちの間で経済的支援の議論は行われていたことを強調しつつ、給与の減俸については政府の税収減につながり、それがCOVID-19と戦うNHSや公共サービスに悪影響を及ぼすというもので、半ば反論に近いものだった。
そして、元マンチェスター・ユナイテッドのFWウェイン・ルーニーを筆頭とする多くの選手は、最終的にはクラブにお金を還元することになる選手の給料を減らすよりも、ターゲットを絞った寄付の方が効果的だと主張し、国やリーグと選手の間でこれらに関する考えの隔たりがあることが明らかとなったのだ。
その後、プレミアリーグでプレーする選手達により先程の声明が発表され、『#PlayersTogether』が設立される運びとなった。
選手たちに減給を求める呼びかけをしたことで議論を呼んだマット・ハンコック保健相は、選手たちのこの取り組みについて、
「NHSチャリティを支援するために #PlayersTogether を立ち上げてくれて、非常に多くのプレミアリーグの選手たちからのこの心のこもった取り組みを心から歓迎します」
「自分たちの役割を果たしてくれました」
と、賞賛した。
この基金が選手たちにとって重要視されている一つの例として、協力を表明する選手の1人、ニューカッスルで現在ブレイク中の若手、マティ・ロングスタッフが挙げられるだろう。
2018年に結んだ週給850£(およそ11万円)という最初のプロ契約のまま、現在もプレーしている。
プレミアリーグで最も給与が低い選手の一人であるにも関わらず、彼は『#PlayersTogether』に参加し、およそ3割程の給料を寄付しているのだ。
それほどに、この活動はプレミアリーグの選手一丸となって取り組まれている。
ヘンダーソンとミルナーの貢献
この『#PlayersTogether』基金を設立するために、それぞれのクラブとキャプテン間の話し合いが長い間行われてきた。
その鍵となる役割を務めていたのが、リバプールのキャプテンであるジョーダン・ヘンダーソン、そして副キャプテンのジェームズ・ミルナーだったという。
他に募金活動の先頭に立っていたのは、マンチェスター・ユナイテッドのハリー・マグワイア、ウェストハムのマーク・ノーブル、ワトフォードのトロイ・ディーニーの3人。
特にヘンダーソンは彼のリーダーシップや権威に周りの人々は感銘を受けるほどの貢献だったようだ。
当時の出来事をディーニーがこのように振り返っている。
「それは話をするという点では長い間パイプラインの中にありましたね。
そして、すべてのプレミアリーグのチームからすべての選手が関わることについて話しているので、それはキャプテンと選手の間で多くの仕事が必要だったんです。この大規模な活動の中で、ジョーダン・ヘンダーソンとジェームズ・ミルナーは沢山の基礎を作ってくれました。
キャプテン全員でWhatsApp(日本で言うLINEのようなチャットアプリ)グループを作り、『これについてどう思う? 』と話し合い続けました。私たちは全員で莫大な金額を集めましたが、それが適切な人たちに届くことを願っています。」
止まらない称賛
プレミアリーグの選手たちのこの活動に、様々な方面から称賛が巻き起こった。
NHSチャリティートゥギャザーの最高経営責任者 エリー・オートン氏は、 「特にCOVID-19との戦いの最前線で働いている人たちにとっては、信じられないような試練の時ですが、彼らによるNHSのスタッフ、ボランティア、患者への支援は、絶対に信じられないようなものでした。」と振り返っている。
また、現在EFLリーグ1(3部相当)に所属する、リンカーン・シティの監督を務めるマイケル・アップルトンも基金に参加していないプレミアリーグ以外のチーム、人物の視点として独自の評価を述べた。
「プレミアリーグの選手たちは、我々が知っているように、給与の支払いは非常に良い。
国の上下に、さまざまな産業と多くの人々がいる。リーグ1とリーグ2の選手よりもはるかに良い報酬を得ているがね。
繰り返すが、それがIT業界であろうと建設業界であろうと、彼らはリーグ1やリーグ2の選手よりも高い給料をもらっているんだ。
私が言いたいのは、プレミアリーグの選手達がもらっている報酬について、今回の件で何も相談無く先に(給与減の)決断が下されたことで、私は彼らが(賞賛を)得た順序が間違っていたということだ。
誰かと会話をする前に誰かに向かって叫んだり、怒鳴ったりすることはできないだろう。
このグループを作ったジョーダン・ヘンダーソンやハリー・マグワイアのような人たちは、それについての対処法が素晴らしかったと思うよ」
ボーンマス所属の副キャプテン アンドリュー・サーマンはこう語った。
「ジョーダン・ヘンダーソンが設立した基金を使ってしたことに、私は脱帽しなければならない。
彼や他の関係者がやったことは信じられないことだし、何人かの選手がそれに力を注いだことも知っている。それは彼の素晴らしいジェスチャーであり、彼は多くの賞賛に値する。
誰もがNHSのために働く人々に何かを返すことができるという考え、それは絶対に信じられないようなことなんだよ。」
現在の活動
『#PlayersTogether』の活動、存在はイングランドサッカー界にとって大きくなる一方だ。
イングランド女子代表は4月に『#PlayersTogether』を通じて、NHSCTに寄付を行うことを発表しており、先月にはイングランド代表の男子チームもFA(イングランドサッカー協会)と協議し、NHSへの支援のために「多額の寄付」を行うことを決定した。
なんと、2018年9月以降のすべての試合報酬を寄付するという。そして、その寄付金の行く先が『#PlayersTogether』である。
それだけでなく、最近ではNHSへの資金調達のために、サッカー史上最大のサイン入りシャツ抽選会を開始した。
概要としては、オンライン・オークションサイトのeBayを通じ、500人のプレミアリーグ選手の中から1人を選んでシャツを獲得するチャンスを得られるというものだ。
エントリーするためのコストはわずか5£で、すべての収益は200以上のメンバーの慈善団体を代表するNHSチャリティートゥギャザーに直接行くこととなっている。
「#PlayersTogetherは、プレミアリーグのサッカー選手が中心となって立ち上げた、COVID-19への危機に直面しているNHSの最前線の労働者、ボランティア、患者を支援するために、すべてのクラブの選手が一丸となって立ち上がることを目的とした、選手主導の団体です。
選手たちはeBayUKと提携し、プレミアリーグの全選手のサイン入りサッカーシャツが抽選で当たる『#ShirtsForHeroes』チャリティを開始し、必要不可欠な資金を調達することとしました。」
eBay UKの副社長ロブ・ハットレル氏は
「我々は、選手たちのアプローチに感銘を受け、彼らの素晴らしいイニシアチブを支援するために我々のプラットフォームを提供できることを嬉しく思っています。
500枚のサイン入りシャツを賞品としてプレゼントすることで、国中のサッカーファンが、COVID-19との戦いにすべてを捧げている勇敢で英雄的な最前線の労働者のために、この活動を応援してくれることを期待しています。
大義のためにこのキャンペーンを支えてくれた選手やクラブに感謝の気持ちを伝えたい」
と、『#PlayersTogether』に関わる選手たちの活動に最大の敬意を表した。
現在、『#PlayersTogether』の活動はCOVID-19に対するものだけでなく、人種差別とも向き合っている。
先日、アフリカ系アメリカ人の黒人男性がアメリカ ミネアポリス近郊で、警察官の不適切な拘束方法によって死亡させられた事件によって広まることとなった「#BlackLivesMatter」という抗議活動に対しても選手が一斉に声明を公表し、協力を表明している。
ヘンダーソンの想い
今回の『#PlayersTogether』を全面的に引っ張っているヘンダーソンは、この活動についての想い、今後への期待についてこのように語った。
「少し時間がかかりましたが、我々は皆で協力して素晴らしいことを成し遂げましたね。
我々は、それを必要としている慈善団体と、それを必要としている人々のために多くのお金を集めました。
それは彼らにとって大規模なものでした。我々はこのロックダウンの中で一丸となって、このひどい時期にできる限りの支援をしようとしてきました。 本当に総力を挙げての取り組みでした。
誰もが何かをしたいと思っていました。
みんなで何かをしたいと思っていました。
すべては、それを最も必要としている人々、NHS、主要な労働者のためのものであり、資金が適切な場所に行くことを確認しています。
近い将来、さらに1つ、2つのことが起こることを期待していますよ」
リバプールでのリーダーシップが、チームを越えてリーグへ。今後の『#PlayersTogether』の発展、貢献に注目だ。
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