ジョーダン・ヘンダーソンのインタビュー

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平野 圭子
LIVERPOOL SUPPORTERS CLUB JAPAN (chairman) My first game at Anfield was November 1989 against Arsenal and have been following the Reds through thick and thin

9月5日、アスレチック紙がジョーダン・ヘンダーソンの独占インタビューを掲載し、イングランド中が鉢をつついたような騒ぎになった。インターナショナル・ウィーク中で、イングランド代表チームのため帰国した機会を利用して、ヘンダーソンが一連の動きについて説明したものだった。長いインタビューは、主としてLiverpoolを出た理由、行く先としてサウジアラビアを選んだ理由、そしてLGBTQ+という3点で構成されていた。

ヘンダーソンの発言は、「世間から不当な非難を受けて傷ついている」という主張で終始した。

まず第一に、Liverpoolを出た理由は、クラブが仕向けたからであり、自分は留まりたかったが出て行くしかないと判断した、とのことだった。「いつかはこの日が来ることは知っていたが、それが今だとは思わなかった。積極的に出て行けと言われたわけではない。ただ、話をした人々の誰一人として、僕を引き留めたいという意思は感じられなかった。ショックだった」と、ヘンダーソンは語った。

行く先としてサウジアラビアを選んだのはお金に目がくらんだからだ、という批判は全く不当だ、とヘンダーソンは続けた。Liverpoolでの給料は週給£140,000と、既に一般的な給料の100倍前後という破格なものだった。サウジアラビアでは更に3-4倍の給料という噂だったが、ヘンダーソンは否定した。具体的な金額は明かさなかったが、実際は3-4倍よりは少ないということだった。

では何故、プレミアリーグの他のクラブか、もしくはヨーロッパの他リーグのクラブにしなかったのか?と質問されて、「サウジアラビアは、スタジアムやトレーニンググラウンドなどインフラ面も作っている最中で、リーグそのものの発展に加担するというのは全く新たなチャレンジだと思った」と、ヘンダーソンは答えた。

ヨーロッパを出れば、代表選手としてのキャリアは断念とは思わなかったか?との質問に、「事前に代表監督と話をした。代表選出に際して所属クラブは関係ないと言ってくれた」と、ヘンダーソンは答えた。その通り、今季最初のインターナショナル・ウィークでヘンダーソンは代表入りした。

議題がLGBTQ+に及ぶと、ヘンダーソンは、「僕の行動で傷ついた人がいるとしたら申し訳ないと思っている」と謝罪した上で、反論した。「自分としては、人々の助けになることをやりたいと真剣に考えてきたつもりだ。見かけだけで実際は他人のことなどどうでも良いのだろう、という批判(※偽善者と言われたこと)は不当だ」。

ヘンダーソンのインタビューに対する世間の反応は一致していた。「サウジアラビアに行った動機はお金ということは誰の目にも明らかなのに、それを否定して自分の行動を正当化するためにインタビューに応じた」と、ライバル・ファンや中立のメディアは痛烈な批判を掲げた。

ヘンダーソンに対して好意的だったアナリストも、口調は柔らかかったが同趣旨の批判を表明した。例えば、マッチ・オブ・ザ・デイのガリー・リネカーとアラン・シーラーは、肩をすくめて言った。「引退前の2-3年間で一財産を作るために、レベルが異なる外国リーグに行くことはありだろう。お金が目的だと正直に言う必要もないかもしれない。ただ、フットボール面を犠牲にして外国に行くと決めたならば代表選手のステータスも放棄すべきだ」。

Liverpoolファンの間では、ヘンダーソンのサウジアラビア行きが正式になった時点で既に、批判派の方が擁護派よりもはるかに多かったが、今回のインタビューで後者はほぼゼロになった。

お金の面に限ったとして、まず2018年にヘンダーソンが契約更新にサインした時に、給料の額が折り合わずにしばし平行線が続いたことは誰もが記憶していた。ユルゲン・クロップがヘンダーソン引き留めを強く望んだため最終的にクラブが折れて£140,000で決着した。2021年に契約延長の交渉が行われた時も、31歳だったヘンダーソンに対して給料は据え置きで4年契約という、FSGとしては異例な条件で妥結した。この時は、Liverpool筋のアナリストも眉を吊り上げたものだった。

「インタビューで語った言葉を冷静にひも解くと、矛盾が目に付く。何も言わずにいた方が良かった」と、あるファンは目を伏せた。「Liverpoolを出る決意をした理由はさておき、お金ではないならば、生まれ故郷の古巣で愛するサンダーランドに戻って、サンダーランドの再生のために尽くすことの方が遥かに『新たなチャレンジ』だったはず」。同じタイミングで、セルヒオ・ラモスが10倍の給料を提示したサウジアラビアを蹴って古巣のセビーリャに戻った。

ファンの間でどんよりとした空気が流れていた中、ユルゲン・クロップがウルブス戦の記者会見でジャーナリストの前に立った。「ヘンドの言ったことは100%正しい」と、クロップは語った。

「私はヘンドに留まって欲しかったし、そう言った。ただ、会話は様々な内容に及び、全てにおいて私は正直に話した。ヘンドのポジションで戦力補強を複数計画していること、そのためヘンドの試合に出る機会は減るかもしれないこと。私としては、シーズン開幕前に選手に対して全試合に出す、などという確約はできない。パフォーマンスを見て決めることだから。好調を維持すればヘンドは50試合に出るかもしれないし、それは全く可能だ。ヘンドは私にとって大切な選手で唯一の主将だったことは真相だが、ただ、その時点で『君は絶対的にメイン・マンだ』という約束はできなかった。そのため、ヘンドがそのような印象を受けたとしても理解できることだし、結果的に良かったと思う」と、クロップは締めくくった。

クロップの回答は、ヘンダーソンを否定することなく、クラブの立場を的確に説明していた。「この問題は完結した」と、ファンはほっと息をついた。

一つの時代が完全に幕を下ろし、新しい時代がスタートした。後ろを振り返っている余裕はない。

*本記事はご本人のご承諾をいただきkeiko hiranoさんのブログ記事を転載しております。

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