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開幕から6連勝と波に乗るリヴァプールに立ちはだかったのは昇格組のシェフィールド・ユナイテッドだった。質的に劣るシェフィールドユナイテッドは圧倒的に整備された組織的なフットボールで欧州王者を苦しめた。
試合結果
シェフィールド・ユナイテッド 0-1 リバプール
【得点】
69分 ジョルジニオ・ワイナルドゥム
スタメン
リバプールのスタメンは言ってしまうといつものメンバー。10月2日にCLザルツブルク戦を控えている過密日程ではあるがターンオーバーをすることもなくベストメンバーをクロップ監督は並べてきた。
昇格組のシェフィールド・ユナイテッドは基本布陣である5-3-2を採用。リバプールが誇る強力3トップを5枚のDFで数的優位性を作り、68メートル幅を5人に5人が並ぶことによりスペースを与えない意図も含まれていると考える。
序盤から見えたシェフィールドユナイテッドの一貫性
Embed from Getty Images リバプールが終始ボールを握る展開は容易く予想できた。ボールを保持し、パスを回しながら試合を支配していく。この展開を目にすることは多い。しかしこの試合ではボールを保持するリバプールは試合を支配することはできなかった。シェフィールド・ユナイテッドは主導権を渡さない。
シェフィールド・ユナイテッドが徹底したのはゾーンを消し続けたことだ。ボール非保持時は5-3-2のラインを形成。プレスの基準点は人ではなく、場所であった。リバプールのDFラインでのパス回しはほとんど無視。シェフィールド・ユナイテッドの2トップは追いかけず、睨みを利かせながらファビーニョを常に監視。バイタルエリア付近にポジションを取るワイナルドゥムやフィルミーノにパスが入ると直ちに自ゴール方向から2枚で挟み込むようにプレスをかける。正面からアタックできることで圧力をかけ、ボールにしっかりアプローチをかけれるのでボール奪取率は必然的に上がる。
攻撃では徹底してサイドバックの裏、特に右のアーノルドの裏を狙うところに一貫性を感じた。ポジティブトランジションはリバプールに引けを取らないものを感じた。奪うと2トップに当て、インサイドハーフとウイングバックが後ろからどんどん追い越し厚みのある攻撃を展開していく。片方のサイドに人数を集め、リバプールSBに対して数的優位を作り、クロスを上げきる、ボックス内には常に4枚が入ってくる走力。GKとDFの間に速いクロスを上げて攻撃を完結させるので、リバプールの得意なカウンターがあまり発動されない。
キーワード”人と人の間”
Embed from Getty Imagesここでシェフィールド・ユナイテッドの攻撃についてもう少し言及していく。ピックアップしたいのは20分のシーン。CB間でのパス回しにプレスをかけに行ったフィルミーノとその後ろからサラーとマネが外のパスコースを切りに行ったときにトライアングルができた。そのトライアングルの中心でノーウッドが縦パスを受け前を向くと、ファビーニョとヘンダーソンの間に顔を出したフレックへパスがつながる。2ライン間(DFとMF)に少しボールを前に運び、ファンダイクとロバートソンの間を斜めに走ってきたロビンソンへスルーパスが通り、シュートまでもっていけた。
ゴールにはならなかったが、欧州王者相手に完璧に崩したと言って良いと思う。ここで人と人の間いわゆる”ギャップ”でボールを受けることが連続したのでプレスがかかりにくく、前進できた。相手の前に立つとプレスをかける選手ははっきりするが、ギャップだと一流の選手でも一度迷いが生じる。そのわずかな時間を有効に使うことができたので一度も触らせずにシュートシーンを作ることができた。ギャップを徹底的に使う攻撃とが逆にギャップを使わせない守備は効果的な戦術であった。
”欧州王者の意地”プランBという引き出し
Embed from Getty Images スコアレスドローに終わった前半はリバプールにとって狙い通りのゲームプランに反したものだっただろう。攻撃ではボールを持つことはできるが、サイドチェンジの繰り返し。相手の目線を変えることもできず、得点機会を生み出せなかった。攻撃が停滞した1つの要因として”魔法使い”フィルミーノが消されていたことが挙げられる。ギャップでパスを受けたり、少し下がってスペースを開けつつ、繋ぎに参加するプレーがあまりなかった。相手ゴールを背にしてボールを触る機会が多く、パスを受けるときもシェフィールド・ユナイテッドのCBがしっかりとアタックしてくる。完全に輝きを失っていた。
そこで、クロップ監督はキャプテンであるヘンダーソンをベンチに下げ、オリギを投入。システムも4-3-3から4-2-3-1に変更した。
上下動の守備ができるマネを右サイドハーフに、フィルミーノをトップ下にすることで前or横向きでボールに関与する機会が格段に増え、攻撃にアクセントを加え続けた。交代で入ったオリギはコンディションの良さを示すかのように相手WBにドリブルを仕掛けまくる。普段サラーやマネが担っていた1対1で突破するという役割なのだがこの試合ではあまり見られなかった。しかしオリギが再三にわたり仕掛けることで相手DFラインを押し下げることができたし、押し下げたDFとMFのライン間にスペースが生まれフィルミーノが活用した。
Embed from Getty Images働き者ワイナルドゥムのゴール
Embed from Getty Images 69分、オリギが左サイドの深い位置でパスを受けるとフェイントで対面のWBを揺さぶる。この後クロスを上げるであろう仕掛けで時間を作ると、ボックス内にはサラー、マネ、フィルミーノが。シェフィールド・ユナイテッドのDFはクロス→ヘディングシュートを警戒し、ゴール前を固めた。そこにオリギは素直にクロスを蹴り込むとはじかれた。しかし、クリアは短くこぼれたのはバイタルエリア。シェフィールド・ユナイテッドの選手たちはゴール前を警戒するあまり、バイタルエリアはがら空きの状態である。そこにいたのはただ1人ワイナルドゥムだ。抑えの利いたシュートはGKヘンダーソンの正面だったがなんと後ろにこぼしてしまった。トンネルというやつだ。これがゴールラインを越え、ゴール。シェフィールド・ユナイテッドは人数は多くいたが、危険なスペースを埋めることが間に合わなかった。自ゴールを守るという意識が強いことによって生まれたゴールだったのではないか。そこを見逃さなかったワイナルドゥムも流石だった。試合を通して、常に走り攻守に渡り奮闘していた。彼のゴール前に飛び出す推進力はチームが苦しい時にチームを助ける。昨季のCLと同様に。この試合もヒーローになった。
良い試合運びをしていたシェフィールド・ユナイテッドは大きな悔しさを感じただろう。一方、得点を決めたリヴァプールは喉から手が出る得点を手にしたのでほっとしただろう。
クロージングに対する得点への諦めない執着
Embed from Getty Images試合終盤、リバプールはやっと手に入れた1点を守りきるプランを敢行。フィルミーノに変えて守備力と走力に定評のあるミルナーを投入。試合を締めにかかる。そんな状況の中追いかけるシェフィールド・ユナイテッドは勝ち点を諦めない。ノーウッドに変え、クラークを投入し、後ろの枚数を削りアタッカーを増やした。序盤や中盤にはあまり見られなかった前からの激しいプレスをリヴァプールのDFラインだけでなく、GKにもかけた。リバプールのカウンターを後ろ6枚で防ぎ、3トップが待つ前線にひたすらロングボールやクロスをDFとGKの間に供給し続けた。得点を取るために徹底してやるべきことをやる。実に整理された良いチームだというのが初めて見たシェフィールド・ユナイテッドへの印象だ。ここは欧州王者は慌てることもなく、落ち着いて対応し試合終了。開幕からの連勝を7に伸ばした。
次戦のCLとPLの試合をざっくり展望
Embed from Getty Imagesリバプールの次戦はチャンピオンズリーグのグループステージ。対戦相手は”オーストリアの雄”RBザルツブルク。日本代表の南野拓実や奥川雅也など日本人選手の活躍が楽しみであるが、注目すべきキープレーヤーは弱冠19歳ながらノルウェー代表であるFWアーリング・ハーランドだ。
Embed from Getty ImagesU-20W杯で1試合9得点を叩き出したり、伊藤純也率いるベルギー王者ゲンクからハットトリックを奪うなど得点力は折り紙付き。191㎝と高さも標準装備しているため世界1のDFの1人と言われるファン・ダイクとのマッチアップが非常に楽しみだ。初戦のナポリに敗れているだけに欧州王者として勝たなければならない。
プレミアリーグの次節はレスター・シティー。強豪トッテナムに競り勝ち、今勢いに乗るチームの1つだ。6試合で3勝2分1敗で4位につけている。トッテナム・ホットスパー戦で決勝点を挙げたマディソンの怪我の状況がこの試合カギを握るかもしれない。
Embed from Getty ImagesまたTOP6キラーのヴァーディーにも要注意だ。ロジャース体制になり、カウンター一辺倒のチームからボールを持てるチームへと変貌を遂げたチームにはミラクルレスターと呼ばれた時の面影はない。リヴァプールはアリソンンが復帰する可能性があり、チームにとってこれほど大きなものはない。開幕からの連勝をさらに伸ばすのか、レスターが行く手を阻むのか。見逃せない一戦だ。
【CL】
10月2日水曜日28:00(日本時間)
VS RB ザルツブルク
【PL】
10月5日土曜日23:00(日本時間)
VS レスター・シティー
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