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3.リバプールのスカウト体制を紹介
この章では、リバプールのスカウト陣を紹介させて頂きますが、公式サイトでもスカウト陣への言及は少ないため。ファンフォーラムのredandwhitekop.comでの2015年の記述を基に記事を進めていきます。そのため少し信憑性に欠け、一部現在と異なる場合がありますが、ご了承いただければと思います。
このファンフォーラムで紹介されていた2015年時点でのスカウト体制は以下の様になっています。
・2015年でのリバプールスカウト陣一覧
◯ Head Of Scouting & Recruitment デイブ・フォールズ ◯ Chief Scout バリー・ハンター Head Of Performance & Analytics マイケル・エドワーズ Director Of Research イアン・グラハム ◯ Scout ケビン・ハント ◯ Regional Scout アンディ・セイアー Spanish Scout デイビッド・ビスカイーノ 現ソショー ◯ Head of South American Scouting フェルナンド・トロイアニ ◯ Regional Scouting Manager (Spain & Portugal) ジュリアン・ウォード International Scout スティーブン・アプトルー 現フェイエノールト Scout & Player Recruitment コリン・カーディンズ 現クリスタルパレス North Regional Scout ニール・リチャードソン Northeast Scout アレックス・スマイルズ 現ニューカッスル? South Ameriacn Scout ディエゴ・カニーヒア Danish Scout マッズ・ヨルゲンセン ◯+太字はマンチェスターシティ出身
この表に表したスカウト陣の内、4人が現在別のクラブに移っており、スペイン・ポルトガル地域の担当スカウトをしていたジュリアン・ウォードは、近年新設されたレンタル移籍をしている選手を管理するフットボール・パートナーシップマネージャーという役職に就任しています。
(このジュリアン・ウォードに関しては、リバプールFC公式サイトによる紹介記事があり、その日本語訳を山羊男のKOPスタンドブログさんがアップしていますので、ぜひお読み頂ければと思います)
この表で興味深い点は、この内、◯印で示した人物はマンチェスターシティから移ってきているということです。この表以外にもリバプールはシティからロブ・ニューマンとデイヴィッド・フェルナンデスの2名を引き抜こうとしたようですが、シティはスカウト部門内での昇進によって阻止したようです。
・マイク・リグの改革当時のマンチェスターシティの主なスカウト陣
Head of Scouting and Recruitment マイク・リグ First Team Scouting co-ordinator デイブ・フォールズ Chief Scout for Germany, Holland, Scandinavia アンディ・セイアー Chief Scout for Italy, Switzerland, Russia バリー・ハンター Chief Scout for France, Croatia, Bosnia, Serbia, Belgium ヨハン・カノン Scouting Information Manager ジュリアン・ウォード Chief Scout for Spain, Portugal ロブ・ニューマン
こちらの表からも伺える通り、最初に紹介したマイク・リグの下でのスカウト体制から、主要な人物をリバプールが引き抜いています。
この表には書いてありませんが、シティから引き抜いたスカウトの一人であるトロイアニがエクアドルに視察に行った際、lfctransferroom.comでインタビューに答えていますので、紹介いたします。
Qあなたはリバプールのファーストチームのためだけに選手を探しているのですか?
A「いいえ、まったく違います。私はすべての年齢層に渡って、できるだけ多くのプレーヤーをできるだけ見るようにしています。ファーストチームからリザーブ、さらにはアカデミーの選手までです。」
Qあなたはエクアドルの天気は本当に暑いと言いました、これはあなたが探す選手に何らかの形で影響を与えますか?
A「もちろん!選手がさまざまな状況や環境に適応できるかどうかを知る必要がありますからね。」
Qこのような場所を訪れたとき、あなたは選手の能力の中で具体的に何を探しますか?
A「私は、選手がより高いレベルに進むことができるようにしたいのです。エクアドルのプレーヤーはコロンビア人やアルゼンチンのフットボール選手とは違います。私は彼らの試合のあらゆる面を見て、そして彼らがどのようにサッカーの様々なスタイルに順応できるかを確かめる必要があるのです。」
Qバルセロナ(トロイアニが視察したエクアドルのサッカーチーム)はもうすぐビッグマッチがやってきます。これらのタイプの試合であなたが探している主な特徴は何ですか?そして、選手があなたの目に留まるものは何ですか?
A「それは本当に選手次第です、選手は彼らの能力を最大限に発揮する必要があり、そしてどんな状況であっても彼らの能力を磨き上げる必要があります。私は主に持久力に注目します。彼らの技術的な能力は最優先ではありますが、他国のプレーヤーを見るときに私は選手のフィットネスを見るようにしなければなりません。ヨーロッパやイギリスでプロのサッカー選手に期待されるフィットネスのレベルに対応できなければ、プレーヤーがどれほど優れていても、どれほど技術的に才能があっても、私たちにとっては役に立ちませんからね。」
以上のようにトロイアニが述べたコメントをまとめると、サッカーにおける技術的な面も重要ですが、それだけではなく、プレミアリーグに適応できるフィジカルや、環境面、サッカーのスタイルへの順応性といった面を重視していることが伺えます。
この次の章では実際にリバプールが獲得したフィルミーノに関する記事を基にしながら、実際のスカウト体制の動きを見ていこうと思います。
4.フィルミーノ獲得例から見る、スカウト陣の動き
joe.co.ukのフィルミーノ獲得の舞台裏に関する記事によると、先ほど紹介したリバプールの南米スカウト責任者である、トロイアニはリバプールに在籍する以前より、フィルミーノが17歳の頃から彼に注目していたそうです。
当時はリバプールのターゲットにはなっていませんでしたが、ホッフェンハイムが19歳のフィルミーノを獲得した際、トロアイニの分析レポートは、ドイツ担当スカウトであるアンディ・セイアーと、当時のオランダ担当スカウトである、スティーブン・アプトルーに共有されていました。
アプトルーは、2011年と2012年に彼の視察し、彼に高評価を下した後、2013年から2014年の初めにかけてセイアーがより本格的な視察を始めたと記事では紹介されています。
この際セイアーを初めとしたリバプールのスカウト陣は、他のターゲットと並行しながら15試合以上を視察しつつ、フィルミーノのピッチ上における能力を確認しながら、彼のパーソナリティの部分まで深くチェックしていたようです。
記事内では、特にフィルミーノが高評価だったポイントが散りばめられていましたので、以下のようにまとめます。
(1)環境条件に関係なくパフォーマンスを発揮できるか
記事によるとリバプールは、比較的温暖な気候であるブラジルのマセイオからホッフェンハイムに移ったフィルミーノが寒い中でも能力を発揮できるかどうかにも注目しています。
実際、2015年のアウクスブルグ戦では吹雪の中で試合がおこなわれましたが、その際の視界の悪さや、雪の中での試合を強いられた中でもフィルミーノは安定したプレイを披露した点はスカウトにとって高評価だったそうです。
記事の以下の部分を引用いたします。
「彼は鋼鉄でできているようなものでした」。さまざまな状況に適応する能力はリバプールの分析の一部であった。
「天候がどうであるか、ピッチコンディションがどうであるか、または相手が誰であるかさえも関係ありません。そんな中でもフィルミーノは同じ決まった方法でプレイします。彼の態度、献身さ、欲求が彼の多様な能力と一緒になれば、彼は何にでもなることができました。」
(2)フィルミーノの日々の練習姿勢や態度は、どのようなものか
スカウト陣はフィルミーノのパーソナリティの部分にも注目し、トレーニングでの姿勢、コーチングスタッフや、チームメイト、ファンに対する態度も視察しています。視察したスカウト陣は以下のような高評価を下していたようです。
「80分の練習を視察した後、彼のハードワークと練習態度に我々は感銘を受けました。」
「彼はボールを持っていない状態でも懸命に動き、守備の際もハードワークをしていました。彼は笑顔で練習し、試合後もファンにサインをしたり、体に障がいを持つファンのグループと一緒に写真を撮ったりしていた初めての選手でしたね。」
以上のようにフィルミーノを視察した際、ピッチ内で発揮する能力だけでなく、厳しい環境での適応能力や、パーソナリティの部分も詳しくチェックしていたことが伺えます。
この選手の性格や、練習態度、ハードワークの部分をチェックポイントに含めるのは、最初に紹介したマイク・リグ体制でのシティのチェック項目に重なる部分がありますね。
また、スカウト陣の視察と並行しながら、リバプールのデータ分析班もフィルミーノのチェックを行い、彼のプレイスタイルと実際に算出されたデータとの互換性を常に研究していたようです。
このスカウト陣のチェックの後、マイケル・エドワーズや、デイブ・ファローズ、バリー・ハンターは、リバプールにフィルミーノがフィットすると判断し、獲得にゴーサインを送ります。
その後、当時のCEOだった、イアン・エアーがホッフェンハイムとのクラブ間交渉に赴き、交渉をまとめあげますが、この間もフィルミーノにリバプールに加わった場合の役割の説明や、クラブに関する質問を積極的に聞いていたようです。
以上のようにフィルミーノの獲得の際、スカウト陣は実際のプレイだけでなく、パーソナリティを含めて視察していますが、興味深いのは、サラーを視察した際もリバプールのスカウト陣は選手のパーソナリティのチェックを行い、高評価を下していたという点です。
Goalの記事によるとリバプールが最初に彼に注目したのは、バーゼルに所属していた時で、スカウト陣はバーゼルでのキャンプで視察を行い、以下のようにサラーを評価していたようです
「レッズスカウトは詳細な身元調査を行い、アルプスのダボスでのバーゼルのキャンプに通うことにしました。そこで、彼らはサラーの性格、態度、トレーニングでの動き、そしてサラーがチームメイト、コーチ、そして彼が接触した他の人たちとのコミュニケーションについても調査しています。そして報告は圧倒的に肯定的でした。」
その後、サラーはチェルシーを経て、イタリアへと渡りますが、リバプールは継続的に彼をチェックしていたようで、イタリア担当スタッフである、ポール・ゴールドリックを始め、ファローズ、ハンター、エドワーズから、クロップにポジティブな報告が上がっていたようです。
最初に紹介したシティのスカウト体制と現在リバプールのスカウト体制で選手をチェックする要素を比較すると、技術的な面だけでなく、選手のパーソナリティや、ボールを持っていないときの動き、練習態度等の要素を重点的に見ているところが共通しています。
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