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敵地で3-1の勝利をおさめ、ドイツの雄バイエルン・ミュンヘンを撃破したリバプール。
アリアンツ・アレーナで素晴らしい夜を過ごせたことは選手たちの自信にもなり、続くプレミアリーグでは劇的な展開で3連勝を果たしたことで、悲願のプレミアリーグ制覇に向けて望みを残しました。
そんな彼らの次の舞台はチャンピオンズリーグラウンド8の大舞台。
待ち受けるのは、リバプールと同様熾烈なリーグ優勝争いを繰り広げるポルトガルの雄FCポルトです。
昨季のラウンド16での大勝もあり比較的楽なドローという話も耳に挟みますが、成熟の2年目を迎え勝負強さを兼ね備えた革命家コンセイサオン政権との対戦に筆者は恐れを感じます。
昨季に引き続きリバプールFCラボでは対戦相手のポルトについて知り、この大舞台をより深く味わい尽くすためのインタビュー企画をおこないました。
快くインタビューに応じてくださったのは、ポルトガルサッカー総合情報サイト「FutePor」を運営し、ポルトにも在住歴のあるYSさん。
FutePorでは日本で唯一のポルトガルリーグ監督名鑑を手掛けるなどポルトガルサッカーのスペシャリストとして知られるYSさんが、コンセイサオン率いるポルトについて、ポルティスタならではの目線で明晰かつ詳細な解説をしてくださいました。
YSさんインタビュー(以下インタビュー引用)
今季のポルトガル国内リーグの上位チームの勢力状況
今年も「例年通り」で、何ら代わり映えのないシーズンです。
例年通りというのは2つの意味です。
まずは、今年も優勝争いがポルトとベンフィカに絞られていること。
ポルトガルリーグは「3強」などと言われて久しいですが、実質この2クラブの「2強」です。
スポルティングは2001-02シーズンを最後に、約15年間優勝から遠ざかっています。それ以来、リーグタイトルはポルトが10回、ベンフィカが6回と2強によって独占されているのが実状です。
次に、2強の勝ち点の重ね方。
今季は、昨季のプレーバックを見ているような、全く同じような展開です。
ポルトがシーズン開幕からスタートダッシュに成功する一方でベンフィカがつまづく。
シーズン後半になるとポルトが失速、ベンフィカが驚異の追い上げを見せていつの間にか競い合っている、という構図となります。
昨季はポルトが終盤の直接対決を劇的に制してベンフィカの追い上げを抑え、5年ぶりにリーグ王者を奪還しました。
しかし今季はクラシコでシーズンダブルを食らっており、昨季以上に優勝争いは熾烈になっています。
ベンフィカはリーグ4連覇の立役者ルイ・ビトーリア監督を途中解任、新しくBチームからブルーノ・ラージュ監督を抜擢してV字回復を遂げました。
あのジョゼ・モウリーニョが、ポルトガルメディアに対して今季の優勝はポルトだろうと予想したのを「私が間違っていた」と訂正する事態にもなりました。
ベンフィカが後半戦に入ると圧倒的に追い上げるのはいつも通りですが、トップチーム経験のない監督がここまでの快進撃を見せるのは、モウリーニョにとっても、そして私にとっても正直予想外でした。
昇格組ナシオナルに10-0で勝った試合は、敵ながらあっぱれというほかありません。
4月5日現在、両者は勝ち点で並んでおり、得失点差でベンフィカが首位。今年も最後まで優勝争いからは目が離せません。
今季のポルトの評価
ポルトは監督がセルジオ・コンセイサオンになって2季目ですが、堅実かつ勝負強く試合を決められるようになりました。
アンドレ・ビラス・ボアスやフッキらが去り、ベンフィカに4連覇を許していた暗黒時代にはなかった力強さを取り戻しています。
何より下位チームからの取りこぼしが減った印象です。
相手をシャットアウトしてしっかり逃げ切る、もしくは、終盤の劇的ゴールで粘り強く勝ち星を重ねられるようになりました。
昨季の勝ち点はシーズンを通して88。
コンセイサオンがモウリーニョの持つクラブ歴代最多勝ち点記録を更新したのも、いまのポルトの勝負強さを示すひとつの指標と言えるでしょう。
基本布陣と各ポジションの役割
コンセイサオンの基本布陣は4-4-2で、試合によってはクラブ伝統の4-3-3で戦うこともあります。
GKは安定と信頼のカシージャス。
CBはブラジル代表候補のフェリプと、今季途中に古巣復帰を果たしたぺぺ。
RSBは来季レアル加入が決まっている若きブラジル代表エデル・ミリタオン。本職はCBですが、ぺぺの途中加入によりSBを任されています。読みが鋭いのでSBとしても安定感があります。
LSBはCLベスト16ローマ戦で、延長戦に勝ち越し弾を決めてヒーローになり、直近のブラジル代表にも選ばれるなど旬な男アレックス・テレス。
CMFは、いまやクラブの顔になったメキシコ代表エクトル・エレーラと、つぶらな瞳がチャーミングなポルトガル代表ダニーロ・ペレイラ。RMFはメキシコの快速ドリブラー、ヘスス・コローナ。LMFは昨季からブレイク中のブラジル人オタービオ・モンテイロが、アルジェリア代表のエースFWヤシン・ブライミとのポジション争いを制してスタメンの座を確保しています。
そして破壊力抜群の2トップはチキーニョ・ソアレスとムサ・マレガのガチムチコンビ。
特にアトレティコが獲得を狙っているとも報じられているこのムサ・マレガは反則的なストライカーです。
4-3-3を採用する際は、オタービオが3セントラルに入り、コローナとマレガがウイングを形成しますが、あのガタイながら加速力もあり、ボールの受け方も巧みなため、いちウインガーとしても脅威になっています。
アンフィールドで行われる一戦は、エクトル・エレーラとぺぺが出場停止。代わりに、オリベル・トーレスやマキシ・ペレイラなどの出場が有力視されますが、ここは正直流動的。ただ、大枠のメカニズムとしては上記が基本になるのではないかと予想しています。
攻撃の基本メカニズム
システムは4-4-2ですが、攻撃時、2人のサイドアタッカーはウインガーのように高い位置を取り、4-2-4に近い形を取ることを好みます。
そこに、CMFのひとり、主にエクトル・エレーラが縦横に機動力をもって関わり、左サイドではLSBアレックス・テレスが頻繁にオーバーラップをして攻撃に人数をかけます。
ボールを回収したら素早く2トップにつけてタメを作り、左右のサイドアタッカーに展開。
右はヘスス・コローナが個人で打開もしくはエレーラとのコンビネーションで崩します。
左はオタービオ(もしくはブライミ)がインレーンから切り込みゴールを狙う、もしくは大外を駆け上がるアレックス・テレスが高精度のクロスを上げ、2トップが合わせる。
もちろん、2トップがサイドアタッカーやCMFと連携して中央突破を図ることもあります。
攻め立てた後のこぼれ球は2人のCMFが回収して二次攻撃を展開していく、という形が基本となります。
守備の基本メカニズム
アタッキングサードでは、2トップ、両サイドアタッカー、CMFがハイプレッシャーをかけ、そこでボールを奪えればショートカウンターを発動。
奪えきれなくてもしつこくプレスをかけて続けてロングボールを蹴らせることで、空中戦に滅法強いフェリプ、ぺぺ、ミリタオン、ダニーロ・ペレイラらが跳ね返して回収します。
ハイプレッシャーをかいくぐられ、アタッキングサードを超えられた際には、素早く撤退して4-4-2のブロックを敷き、迎撃を試みます。
CBとCMFは前に強い選手が多く、バイタルエリアにボールがつけられると、食いつき・奪い切ろうとします。その反面、DFラインの裏のスペースが空きがちで、ここを狙われて失点するケースは多いです。
ストロングポイント
ポルトガルのチームならではの素早いショートカウンター、および、優れたキッカーと高身長なスカッドに支えられたセットプレーは、リバプールにとっても脅威になるのではないでしょうか。
上記の基本メカニズムで素早く相手ゴールに迫り、2トップがバイタルエリアでファールをもらう、もしくは、クロスからコーナーキックが取れれば、ポルトにとっては儲けもの。
戦術アレックス・テレスが発動します。
テレスの左足から繰り出される低弾道の高速クロスに、187センチのエデル・ミリタオン、191センチのフェリプ、188センチのぺぺ、188センチのダニーロ・ペレイラ、183センチのムサ・マレガ、187センチのチキーニョ・ソアレスらが合わせ、ゴールを脅かします。
特に、チーム内でも屈指の巨体を誇るフェリプかダニーロ・ペレイラがニアで合わせる形は、一撃必殺のパターンとなりつつあります。リバプールとしては、なるべくコーナーに逃げるのも避けたいところですね。
ウィークポイント
ここまで散々とアレックス・テレスの素晴らしさを書き連ねてきましたが、なんとリバプールとの1stレグは出場が危ぶまれています。
3月31日行われたポルトガルリーグ第27節、4位ブラガのホームに乗り込んだ大一番で、PKを決めた直後に腰を痛めて負傷離脱してしまいました。
下記動画をご覧いただければ分かるように、テレスは腰のひねりでボールに威力をつける蹴り方をするため、疲労が蓄積していたであろう軸足側の腰をついに痛めてしまったのです。
彼の左足に依存してきたポルトにとっては、痛い代償と言えるでしょう。
https://twitter.com/espnuk/status/1112062899269324801?s=21
テレスはすでにトレーニングには部分合流しており、現地メディアでは、初戦のアンフィールドに向かう遠征メンバーには間に合うのではないかとも報じられています。
しかし、出場可否は不透明。テレスの出場が叶わなかった場合は、今季途中にポルティモネンセから加入したマナファが代役を務める可能性が高いです。
しかしこのマナファ、人並み外れたスピードが武器ではありますが、ビルドアップやポジショニング・判断には難ありです。当然プレースキックも蹴れません。
ポルティモネンセ時代には中島翔哉とともに左サイドを形成し、カウンターのため中島翔哉が低い位置まで守備に戻らないことが多く、ひとりでその尻を拭いをするなど奮闘はしていましたが、やはりポルトほどのメガクラブに来てしまうと悪目立ちしています。
ポルトのDF陣は、前に強いタイプが多いためボールに食いつきがちで、裏のスペースを使われて失点することが多いとは前述しましたが、リバプールの右ウインガーはあのサラーでしょうか。
特にマナファの裏をサラーに攻め立てられたら、耐えられる気がしません。
アレックス・テレスが出るのか出ないのか。それ次第で、強みの左サイドが一転、弁慶の泣き所と化してしまうでしょう。
ラウンド8でキーマンとなりうる選手
なので、試合に出ても出なくても、キーマンはアレックス・テレスであり、彼が間に合わなかった場合は、ある意味でマナファが最大のキーマンです。
ポルト側からみたリバプールの要注意選手
サラー、フィルミーノ、マネの3トップは、もはや言及不要かと。
なので、あえてファン・ダイクの名前を挙げたいと思います。
彼相手にマッチアップするソアレス、もしくはマレガがボールを収め、得意のショートカウンターに繋げられるか。ここがリパプール戦の生命線になるのではないかと予想しています。
リバプールのイメージ
反対にリパプールファンの皆さんに、ポルトのイメージを聞いてみたいですね。組み合わせが決まった時、皆さん泣いて喜んだのではないですか?(笑)
昨シーズンも決勝トーナメント1回戦で対戦しましたが、ホームのドラガオン・スタジアムで行われた一戦は、ポルトが0-5の歴史的大敗。
サラーにサーカス芸のようにもて遊ばれ、マネには強烈なミドルをお見舞いされてコテンパンにやられました。
ポルティスタにとっては、直近で一番の屈辱でありトラウマになっています。
最後に一言
ポルトはCLの舞台でリパプールに勝ったことがありません。
3分3敗で圧倒的に苦手です。
対戦相手がリパプールに決まった時、ポルトガルは「やっちまった感」に溢れました。
私もそう思います。
それでも、ポルトの歴史を変えたコンセイサオンが1年越しのリベンジを果たし、ポルトに初白星を持ち帰って来てくれることを願っています。ぜひ良いゲームを期待しましょう!
編集後記
インタビュー中に現れた”リバプールファンからみたポルトのイメージ”という問いにあえてここで答えるとすれば、筆者は昨年カシージャスがTwitterで発信した呟きに強いイメージと思い出があります。
Este ataque a @LorisKarius va a terminar alguna vez? Hablo de él como tantos otros guardametas. Hay muchos más problemas serios en el mundo joder! Dejar al chaval en paz! También es persona. Como lo somos todos!
— Iker Casillas (@IkerCasillas) 2018年7月22日
昨年のチャンピオンズリーグファイナルで(脳震盪による)失点につながる大きなミスを犯してしまったロリス・カリウスに対する鳴り止まぬ批判を聞いて、
「このカリウスに対する攻撃は終わるのかい?世界にはもっと深刻な問題がたくさんあるじゃないか。彼に口出しする必要はないんだ!彼だって人間なんだ。我々全員のように!」と彼は擁護してくれました。
この件に関して彼には本当に感謝していますし、そんな彼とまたこの決勝トーナメントの舞台で対戦できることを本当に嬉しく思います。
そしてアンフィールドで彼が温かく迎え入れられることを願っています。
この度、快く企画に協力してくださったYSさん、本当にありがとうございました。
ポルト、延いてはポルトガルサッカーについて大きな興味を持ったとともに、対戦の日がより一層楽しみになりました。
アンフィールドとドラガオン・スタジアムの地で両チームがみせてくれる美しい夜を楽しみにしています!
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