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基本プロフィール

画像出典:リバプール公式Twitter
- 選手名:チアゴ・アルカンタラ・ド・ナシメント
- 生年月日:1991年4月11日
- 国籍:スペイン
- 身長:174cm
- ポジション:CMF, DMF, AMF
- 背番号:6
- クラブキャリア:バルセロナ(ESP/11-12~), バイエルン(GER/13-14~), リバプール(ENG/20-21~)
- 市場価格:€ 20.00Mill.
- 契約終了年:2024年6月30日
プレースタイル
ストロングポイント

画像出典:リバプール公式Twitter
圧倒的なテクニックと傑出したプレービジョンでピッチを制圧する、文句無しでワールドクラスのMFだ。司令塔としての実力及び実績は世界でも最高の一人である。しかし、来年で30歳を迎える選手の獲得はリバプールの補強方針からは外れており、その実力に疑問は持たずともクラブがこれだけ執心し、獲得したことに疑問を持っているサポーターは少なくないだろう。
本稿では、チアゴ・アルカンタラのプレー分析のみでなく、リバプールがこれまで抱えていた問題も同時に見ていき、その上で彼がリバプールにもたらすものを考えていきたい。
さて、創造性の不足が叫ばれて久しいリバプールのMF陣には、ゲームを組み立てる力が欠けていた。それはリバプール最大の武器であるトランジションの速さとプレスの強度を保つために犠牲にしていたものでもあり、特に中盤の選手たちには技術以上に身体的強度が求められていたからだ。
ビルドアップにおける問題は、DFとしては別格のビジョンとキックのクオリティを持つ右SBのトレント・アレクサンダー=アーノルドの存在によってある程度は補えていた。ただ、フットボールは日進月歩のスピードで進化を続けている。リバプールが頂点に留まり続けるためには、速やかに解決しなければならない問題であり、その解決の糸口は既存戦力では見つからなかった。
より詳しく問題を見ていこう。まず、アーノルドと現MF陣の補完性は高いといっていい。空けたスペースや全幅の信頼が置けない守備面の穴を献身的に埋めるMFは必要で、攻撃の起点となる彼を生かすために、MFの創造性を犠牲にするのは致し方ない面もあった。
しかし、右SBのみにゲームメイクを任せていれば、ここを徹底的に封じられた場合、途端に攻め手を失ってしまう。そうなればサディオ・マネやモハメド・サラーらの個に頼らざるをえないが、相手が堅固な守備ブロックを形成していたらそれも厳しいのが実情だ。
アーノルドを封じるために前線から果敢にプレスをかけてくるようであれば、必然的に相手のラインも高くなり守備ブロックにも綻びが生じやすくなるため、それを逆手に取ってマネやサラーが暴れ回ることができるだろう。反対に、相手が自陣に引き籠っているだけであれば、前線の選手たちで殴り続けつつ自由な66番(こうなれば逆サイドの26番もだ)が存分にその攻撃性能を発揮し、いつかはこじ開けることができるだろう。
とはいえ、プレミアリーグやチャンピオンズリーグで優勝を争うようなトップクラスのチームが相手となれば、一筋縄ではいかなくなる。アレクサンダー=アーノルドを抑えリバプールの生命線を断ったうえで、整備された守備ブロックで隙を与えないようなチームだ。窮屈になったFW陣は必要以上にビルドアップに参加せざるをえなくなり、フィジカル能力に振り切ったMF陣に多くは望めない。そうなった場合のリバプールは大抵、沈黙することになる。
簡単ではあるが、これがリバプールの抱えていた問題である。そして、その中盤における創造性の欠如に対するソリューションとして獲得されたのがチアゴなのだろう。ずば抜けたパスのクオリティを持ち、並みのMFが数試合に一度だけ見せることのできるような高難易度のパスを一試合で何度も繰り返す。球種も多彩で、攻撃を加速させるテンポの速いパスやゲームを落ち着かせる一息付いたパスでリズムを作りながら、相手の意表を突くふわりと浮かせたパスでゴールを演出する。なにより、それらのパスを使い分けるセンスが抜群で、ピッチの上で起きていることを読み取りながら最も効果的なパスを選択してゲームを支配する。
キープ力も桁違いで“運ぶドリブル”が非常に巧い。切り裂くような高速ドリブルは難しいが、身体を巧みに使い密集地帯でも失うことなくボールを前進させることができる。もし前を向いていない状態でボールを受け取っても、後ろにも目があるのではないかと思わせるほどの華麗なターンで相手をかわしパスコースを独力で生み出す。
そして、そんな彼のキープ力を支えているのが凄まじいプレス耐性だ。現代のフットボールはプレスの強度が非常に高く(その潮流の最前線に立つのが他ならぬリバプールなのだが)、時間もスペースも昔とは比べ物にならないほど限られている。
ただ技術に優れているだけでなく、強度の高いプレスをかけられてもそれを無力化できなければ意味がない。もちろん、それを高いレベルでこなせるMFなど極一握りであり、チームに何人も揃えることは難しい。だが、リバプールほどのクラブであれば一人でもそれができるMFを抱えるべきであったし、プレスを無力化してボールを前進させることのできる選手がいれば、次の次元に進むことができた(ナビ・ケイタにもそのポテンシャルはあるのだが)。そして、チアゴはそれを叶えうる選手である。
さらに、チアゴは積極的にリスクテイクを行え、かつそれがとても上手い選手である。例えば、ナビ・ケイタはリスクの伴う難易度の高いプレーを積極的に仕掛けるタイプだ。圧倒的なボールスキルを武器に、ドリブルでもラストパスでも巨大な違いを生み出すことができる。ただ、継続性に欠け、判断力にも改善の余地を残している。仕掛けるべきタイミングや位置をもっと学ぶべきだろう。積極的にパスを要求しボールを散らしながらゲームメイクをするタイプでもなく、消える試合はとことん消えてしまうのも難点。
逆に、ジョルジニオ・ワイナルドゥムは性質的にナビとはかなり異なる選手。時折、感嘆の声をあげてしまうようなドリブル突破やパスを見せることがあるものの、時折はあくまで時折だ。基本的には無難な横パスやバックパスしか出さず、自慢のフィジカルを生かしたボールキープ後のボールの行き先は大抵、前ではなく横か後ろである。もちろん、これを一概に悪いことは片付けるのも違うだろう。無難なパスなりに彼のパス成功率は安定しており、ポゼッションの安定に一役買っていることは間違いない。
しかし、攻撃が行き詰まったときでもリスクテイクをしないのは、そもそもワイナルドゥムにそれを可能にするだけのビジョンもテクニックもないからだろう。見ている景色も、やれることも、チアゴやナビとは違うし、そもそも彼にパスやドリブルによるゲームメイクは期待されていないと思われる。
おそらく、ワイナルドゥムが所謂ビッグマッチや大一番に強い理由には、(こういった格下相手を崩すクリエイティビティには欠ける一方で)物怖じしないメンタリティの強さと、広大なスペースの享受による溌溂としたプレーが許される点にあるというのが筆者の見解だ。
その点、チアゴは例に挙げた2人の良いところ持ち合わせたような選手だ。ナビのように相手のプレスを外してチャンスを生み出せるし、ワイナルドゥムのようにパスを捌きポゼッションを安定させることもできる。フィジカルに物を言わせたプレーは出来ずとも、チアゴの引き出しの多さとそのクオリティは彼らを凌駕している。
“出し手”として優秀なチアゴは“受け手”としても優秀であり、ボールの預け先としてこれ以上の存在はないと思わせるほどだ。「質の高いラストパスが来る」とFW陣は喜んでいるに違いないが、相手のプレッシャーに晒された際の拠り所にもなるチアゴの到来には、DF陣も喜んでいることだろう。
パワーやスピードといったフィジカル能力にハンディキャップを持つため、中盤の強度及び守備力の低下が彼の起用によって不安視されているが、そのハンデすらも卓越した戦術眼が補っている。
優れたポジショニングを武器に、インターセプトは1試合で平均2回を超えるが、この数字はジョーダン・ヘンダーソンやナビの2倍、ワイナルドゥムの4倍である。最も守備に秀でたファビーニョでさえ、1試合平均1.5回だ。いかに彼がポジショニングの優れた選手か一目でわかるだろう(データは全て19/20シーズンのリーグ戦のもの)。
そして、賢く守れる彼は、粘り強く守ることもできる。スライディングタックルのタイミング感覚は抜群で、華麗なボール奪取は目の肥えたイングランドのファンをも唸らせるだろう。なにもピッチを所狭しと走り回り、のべつ幕無し相手にぶつかるだけが守備ではないのである。
リバプールのMFの役割に関してよく目にするのが、冒頭でも述べた超攻撃的な両SBの空けたスペースのカバーだ。かなり極端な表現だが、SBが攻撃の起点なのだからMFはそれの補助を務める、逆に、それが出来なければリバプールのインサイドハーフは務まらない、ということである。しかし、これは些か視野が狭いのではないだろうか?
桁違いの破壊力を持つSBを最大限に生かすために、MFは守備のタスクを肩代わりしゲームメイクを免除されているのか、それとも、MFに創造性が欠如しており、ゲームを作ることができないからSBに頼らざるをえないのか。つまり“鶏が先か、卵が先か”ということだ。
もちろん、こんな単純な問題ではないことは百も承知。しかし、少し見方を変えれば、中盤に圧倒的なゲームメイク能力を持つ選手を配置すれば、SBが常にハイリスクを背負ってまで攻撃的に振舞う必要性がなくなる、ということだ。そうすれば、SBが空けた穴を埋める必要性も同時に薄れるのである。
そもそも、リバプールのSBが攻撃時に主に任される役割は、中に絞ってストライカー化する両WGの代わりに大外をカバーすることであり、ピッチの中央でゲームメイクをする偽SBに化けるわけではない。
そして、いくら起点となるのがSB(この場合は主にアーノルド)とはいっても、彼らができるのはあくまで右後方や大外からの配球であり、ピッチの中央部からゲームを支配するようなタスクまでは担えない。そのため、この問題の解決策としてチアゴのようなMFを配置するのは、極めて合理的な判断といえる。
チアゴの持つクオリティは、リバプールの戦術的な欠陥をただ埋めるだけでなく、新たな次元に引き上げるものだろう。攻撃に関しては全ての側面においてレベルが上がり、守備でも穴というほどの穴にはなりえない(それどころか、これまでとは違った守備のやり方を教えてくれるかもしれない)。彼は、完成されたワールドクラスである。
チアゴの到来は、ピッチ上における純粋なフットボールのクオリティ向上だけに留まらない。数多のタイトルとワールドクラスの名声を得た彼はベテランの領域に差し掛かり、成熟しきっている。傑出したパーソナリティを誇り、苦しい局面でも積極的にボールを要求し困難な状況を打開することができる。自身が中心選手だという自覚を持ってチームを勝利に導こうとする姿勢は、全ての選手にとってロールモデルとなるものだ。
リバプール加入の際に「可能な限り勝ちたい。そして勝てたら、もっと勝ちたい。」と語っているが、このメンタリティこそ今のリバプールに求められているものだ。悲願のリーグ制覇を実現させたことによってモチベーションの維持が困難になるのではないかと心配されていた選手たちに刺激をもたらし、勝利への執念を呼び起こさせることに一役買ってくれるに違いない。
彼の獲得は、クラブの野心を具現化したものといえる。リバプールは名実共に世界のトップに君臨するクラブへと返り咲いたが、これで終わりではない。クラブが最前線を走り続けるために、多大な貢献をしてくれることだろう。
ウィークポイント

画像出典:チアゴ公式Twitter
ないと言いたいところだが、流石にそういうわけにもいかないので頑張って欠点を探してみよう。まず、怪我への耐性は気になるところ。特にバイエルン移籍後の最初の2年間は38試合の出場に留まり、計2500分ほどしかプレーしていない。ただし、その後の5シーズンは(細かい怪我による離脱が多かった17/18シーズンを含めても)年間で40試合ほど出場し、安定して3000分前後のプレータイムを記録している。
ラテン系にはありがちなイングランドの環境への適応も不安視されているが、異文化への適応は彼の過去が証明済み。より速くより激しいプレミアリーグにおいても、学習能力の高さと判断力を生かし、すぐに馴染んでくれることだろう。体格的に空中戦は不得手だが、そもそもエアバトルの強さを彼に求める人はいないので然したる問題ではない。
また、不用意なボールロストをすることがある。これはおそらく集中力の欠如によるものであるが、これは彼のキャリアを通して言われ続けていたものである。天才肌のテクニシャンというイメージを持つ人が多いのもそのためだろう。しかし、ベテランの領域に足を踏み入れている近年はそれも改善傾向にある。
もちろん、リバプールでのプレーを重ねて初めてこのチームでプレーすることによる欠点が見つかることは否定できないが、現時点で大きな欠点は見当たらない。繰り返すが、彼は完成されたワールドクラスのMFであり、リバプールを次のレベルに引き上げてくれる存在だろう。
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