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ロベルト・フィルミーノ、1991年生まれ、ブラジル代表FW、愛称は「ボビー」。2015年にホッフェンハイムから£29mでリバプールに加入してからチームの柱としてほぼ離脱せずにプレーし続け、3シーズン目でクラブ100試合を達成に迫っている。本記事ではそんなフィルミーノを分析していく訳だが、主題は「フィルミーノのスタッツには表れない美しさ」である。彼の真骨頂は数字に表れにくい。この陽気なブラジル人が得点後に毎回披露する準備された秀逸なパフォーマンスも「スタッツには表れない美しさ」に該当するかもしれないが、今回取り上げるのはもう少し試合結果に関わることだ。
リバプールサポーターの中では絶大な評価を得ているフィルミーノであるが、市場価値や外部からの評価という面では過小評価をされているという声も少なくない。事実、2018W杯のブラジル代表招集確定メンバー第一陣の中に彼の名前があったことはサプライズとして報じられた。毎シーズン10得点以上をあげるコンスタントなゴールへの嗅覚と味方を生かす技術に長けているが、メディア受けするずば抜けたスタッツを残すタイプではないことがその所以であろう。現在のスコアリング技術では単純化して可視化することが難しい、前線からのクレバーな守備によって彼はチームに多大なる貢献をしている。スタッツで表現できるとしたら「タックル数」。Squawkaによるとプレミアリーグで90分間のタックル成功数が1.6回と3番目に多く(ちなみに4位はレスターの岡崎慎司)、トップ6のチームに所属する選手の中では最多だ。
しかし、フィルミーノの働きは「タックル数」というシンプルな指標だけでは表すとミスリードを起こしてしまうだろう。筆者は以前自身の戦術系メディアPaxFootballにてリバプールが当時リーグ優勝を果たしたレスターを撃破した試合の核となったフィルミーノの守備的貢献について考察をした。本記事では、上記の考察をリバイスする形で改めてフィルミーノの「美しさ」について述べていきたい。
先に結論を述べると、フィルミーノは完璧なカバーシャドーをしながら前線からプレスバックし続けられるという点で現代サッカーで極めて価値の高いプレイヤーなのである。
フィルミーノの「美しさ」が全面に出たレスター戦
プレミアリーグ1516シーズン、リバプールがその年王者となったレスターに1-0で勝利した試合を分析の題材とする。当時、優勝に向けて勝ち点を重ねていた(実際にプレミアリーグを制覇した)レスターは直前の3試合で平均ゴール2.7、シュート11.7本、エリア内からのシュート7.3本、決定機2.0回と、得意のカウンターから数多くの攻撃を仕掛けそれをものにしていた。
一方、リバプール戦ではシュート7本、エリア内からのシュート5本、決定機0回と完封されている。このシーズン他のどのチームより強かったレスターがリバプール戦は不発に終わったのである。ラリエニ監督が試合の早い段階で2トップにテコ入れをしたがこれも上手く作用しなかった。では、なぜレスターは持ち前の攻撃力を発揮できなかったのか。「STATS ZONE」より参照させていただいたデータを元にその理由を紐解いていく。
レスターの「パス成功数」
下記グラフはレスターの過去4試合のパス成功数を比較である。リバプール戦では「エリア内・ミドルサードで通したパス数」が少なく「クリア数」が多い傾向。スワンズ戦と比較するとダブルスコアがついている。
レスターの「パス成功率」
続いて「パス成功率」を見てみる。まず「ミドルサードへのパス成功率」が他試合と比べてやや低いが上述の「パス成功数」ほど他試合との差はついていない。先のデータも含めて読み取るとリバプールは「ミドルサードでパスをする機会自体を奪う」「ミスパスを誘発する」この2点において上手く機能したと解釈できる。
加えてレスターの「ロングボールの成功率」は他3試合と比較し低い値となっている。また上述の通りこの試合では「クリア数」の多さも目立った。
この日クロップは前線にターゲットマンを置いて中盤を省略する戦い方を取ったこともあり、レスターは長いボールを蹴らざるを得なかったことが上記スタッツから伺える。ただ、1516シーズンのレスターは中盤での攻防からボールを奪うや否や、素早くヴァーディら前線に鋭いパスを配給し好機をつくることで得点を重ね、文句なしの勝点差でプレミアリーグを獲ったチームである。実際にクリアに近いボールからのこぼれ球を拾い攻撃に向かおうとするシーンは前半から多数見られた。それでも上述の通りレスターがこの日ミドルサードで通したパスの数は極端に少ない。その理由を作ったのがロベルト・フィルミーノである。
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