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基本プロフィール
- 選手名:フィルジル・ファン・ダイク
- 生年月日:1991年7月8日
- 国籍:オランダ
- 身長:193cm
- ポジション:CB
- 背番号:4
- クラブキャリア:フローニンゲン(NED/11-12~), セルティック(SCO/13-14~), サウサンプトン(ENG/15-16~), リバプール(ENG/17-18~)
- 市場価格:€ 55.00 Mill.
- 契約終了年:2025年6月30日
プレースタイル
ストロングポイント
風車の国からやって来た “摩天楼”。フィジカル、テクニカル、タクティカル、メンタルと、どれをとっても世界最高峰のクオリティを備えたモダンなCBだ。
まず、DFに最も求められるフィジカル的な観点から考察していきたい。白眉なのが絶対的なパワーで、対人能力は空陸共に最高レベルの強さを誇る。特に空中戦は無敵と言っても過言ではなく、試合を通して制空権を握られるシーンは皆無。純粋なコンタクトの強さだけでなく、優れたタイミング感覚や駆け引きによって、そもそも競り合う相手FWを飛ばせないこともめずらしくない。
リスクを承知で最終ラインを高く設定し、最前線からハイプレスを仕掛けるリバプールは、数的不利な状況でカウンターを喰らうことも多い。ファン・ダイクはそのようなオープンスペースでの窮地を、独力で救ってしまうだけの卓越したスピードとアジリティを備えている。193cm/92kgという体格の持ち主としては、例外的と言っていいだろう。
テクニカルな観点では、なんと言ってもビルドアップの貢献度の高さが際立つ。パスは精度・強弱共に文句無しで、最終ラインからプレーのリズムを生み出し攻撃の起点になる。パスが出せるCBとは一口に言っても、単にボールを預かってシンプルに捌くだけではビルドアップに貢献しているとは言い難い。
ファン・ダイクは難易度の高いパスにも積極的にチャレンジし展開を変えることができるという点で、他のCBとは一線を画している。必見なのが対角線上のSB(主に右)に届けられるパス。テンポを緩めるふわりとしたパスと、鋭い直線的なパスを状況によって使い分けているが、どちらも非常に美しく、彼の才能が現れている。
STOP IT VIRG pic.twitter.com/m71ZK6994G
— Jordan Chamberlain (@Jordan_AC90) May 13, 2018
どのような状況においても慌てることなく最適解を見出し、そこに質の高いパスを通すファン・ダイクは、アンカー(彼の加入以前は基本的にジョーダン・ヘンダーソン)を封じられると、後方からのビルドアップが機能不全に陥るという弱点を見事に解決して見せた。
このようにフィジカル・テクニカル共にハイレベルなファン・ダイクだが、その実タクティカルな点にこそ真価があるというのが筆者の見解だ。フィジカル自慢のCBは往々にして起こった状況にリアクションするだけでお茶を濁せるため、集中力を切らす嫌いがあったり、戦術的インテリジェンスが欠落していることが多い。
しかし、ファン・ダイクは常に状況を読み、先手を打って対処しようと心掛けている。その優れた危機管理能力は的確なカバーリングやインターセプトからも見て取れるが、これらはフィジカルを武器としない(或いは180cm前後の)CBに多い特徴。彼ほどのフィジカル的資質を持ちながらここまでクレバーなCBは非常に稀有である。
殊に現れているのがデザインされたヘディングによるクリア。単純に跳ね返すのではなく、味方に繋げようと意識しているのは間違いない。空中戦で崩れないボディバランスや、狙ったところに落とせるヘディングの技術の高さはもちろん、競り合う前から味方と敵の位置・状況を把握し、どこにクリアすれば味方が回収して攻撃に転じられるかを瞬時に計算できるのは彼が優れた戦術的インテリジェンスを持っているからだ。
余裕を持ってクールに対応するファン・ダイクの落ち着きは、チーム全体に波及している。リバプールの最終ラインは、彼の到来によって劇的に改善された。
デヤン・ロヴレンは見違えるほどパフォーマンスが向上し、ジョー・ゴメスは彼の横で頭角を現し始めた。SBは以前よりも後ろのスペースがCBによってカバーされているので積極的に攻撃に参加できるようになった。ファン・ダイクはDFリーダーという枠組みを超えて、リバプールの最終ラインにオーガナイザーとして君臨している。
一つのミスが致命傷になりかねないCBというポジションで、苦しい局面でもボールを要求し打開を図るファン・ダイクの傑出したパーソナリティは、精神的な強さの現れ。鍛え上げられた肉体と試合展開を読み解く慧眼を持つエキゾチックなCBは、リバプールにやって来てからというもの圧倒的な格の違いを見せている。DFとして、ファビオ・カンナヴァーロ以来のバロンドール受賞にも期待がかかる、まさしく世界最高のCBだ。
ウィークポイント
前述の通り、どの観点から見ても最高クラスのクオリティを誇るファン・ダイクに明確な弱点はない。それでも強いて挙げるとすれば、攻撃の局面においてもっと積極性を出してもいいように感じる。
時折インターセプトからそのまま攻撃に参加することこそあれど、基本的に彼が攻撃で違いを生み出そうするのはパスに留まる。しかし、これはあくまでプラスアルファの要求。CBとしては十分な創造性とビジョンを持っており、引いて守る相手が崩せないのでミドルシュートを叩き込んでください、などとは口が裂けても言えない。
ファン・ダイクは、DFとしてワールドレコードの移籍金7500万£(約114億円)で獲得したという事実からか、他チームのサポーターには正当な評価をされているとは言い難い。しかし、それは恥じらいの現れであり、ファン・ダイクは間違いなく世界最高のCBの1人である。
今では彼の移籍金の話などするKOPはおらず、(いたとしたら流石に少数派に傾きすぎだろう)正しい投資だったと誰もが感動している。そんなファン・ダイクの唯一にして最大の弱点は、彼がいないときのリバプールは不安だとKOPに思わせてしまうことだろう。
エピソード・小ネタ
・彼の「Virgil」という名前の語源は、古代ローマの詩人ウェルギリウスである。このラテン文学史上最も偉大な詩人の「Vergilius」という名前の綴りは、五世紀以降に「Virgilius」という表記も現れ、それが英語圏で「Virgil(ヴァージル)」という名前に受け継がれた。
・名前の日本語表記はオランダ人と言うのも相まって難しい(そもそもカタカナで表記するのに限界があるが)。基本的にオランダ語は「Ⅴ」をハ行で読むため「フィ」から始まるといいかもしれない。ちなみに現地実況ではややこしさからか普通に英語読みで「ヴァージル・ヴァン・ダイク」と呼ばれることが多い。また、グーグル翻訳を使いオランダ語で「Virgil van Dijk」と発音してもらうと、「ファージル・ファン・ダイク」と言っているように聞こえる。が、ここら辺は個人差なので皆さん一度聞いてみてはいかがだろうか。
・ファン・ダイクはしばしば「VVD」という愛称で呼ばれる。しかし、オランダ国内で彼がこう呼ばれることはないという。というのも、オランダには「自由民主国民党」という政党があり、この党のオランダ語が「Volkspartij voor Vrijheid en Democratie」 、そして略称が「VVD」なのだ。オランダ人にとって、VVDはこの政党を指すため、彼がこの愛称で呼ばれることがないということである。
・ファン・ダイクは17歳になるまで身長が高くはなかったそうだ。2008年頃に急激に伸び、18cmも身長が伸びたという。それ以前のファン・ダイクは、体格やフィジカル能力に頼ることが出来なかったため、技術やインテリジェンスといった面を磨いていたわけだ。結果的に193cm/92kgという頑強な身体を手に入れ、あらゆる面で優れた守備者が完成した。
・フローニンゲン時代、ファン・ダイクは生命の危機に直面したことがあった。虫垂炎を患った彼は、さらに腹膜炎の合併症に見舞われ、その上、腎臓まで悪くさせた。極めて危険な状態に陥った彼には緊急手術が行われ、数日間をICU(集中治療室)で過ごすことになった。術後、彼は本当に死を覚悟したという。ベッドに横たわる自分の目に映るのは、体に繋がれたチューブとワイヤーだけ。死んだときのことを考え、遺書まで書いたそうだ。「あそこで終わっていたかもしれない」とファン・ダイクは振り返っているが、彼の精神的な強さは死の可能性に打ち勝つという壮絶な経験から来ているのかもしれない。
・ダンディーでプレーしていたアンドリュー・ロバートソンとは、セルティック時代に対戦経験がある。ロボのプレーに感銘を受けたファン・ダイクはセルティックに「彼を獲った方がいいんじゃないか?」とも言ったそう。ロボがセルティックの熱烈なサポーターで、過去にその愛するクラブのアカデミーから出されていたことまで知っていたかは定かではないが、リバプールで今そのロボと隣同士でプレーしているのは、どんな感覚なのだろうか。
・サウサンプトン時代に答えたインタビューで、対戦した中で大変だった相手は誰か?という質問に、ダニエル・スターリッジとセルヒオ・アグエロを挙げている。
・ポール・ジョイスによれば、夏のリバプール移籍が叶わなかったファン・ダイクが、11月にアンフィールドでリバプールと対戦し3-0で敗れた際、試合後のドレッシングルームでサウサンプトンのチームメイトに「なぜここでプレーしたいと思わないんだい?」と言ったそう。言うまでもなくファン・ダイクの獲得にはユルゲン・クロップの存在があってこそだが、情熱的なアンフィールドやKOPがそれを後押ししていたのは間違いないだろう。
・リバプールがファン・ダイクへの評価の現れとして7500万£の移籍金をサウサンプトンに支払った後、クロップがKOPにお願いしたのは「移籍金のことは早く忘れてくれ」だった。忘れられる額ではないが、間違った額はなかった。
・リバプール移籍当初は移籍金を巡る論争が激しく、多くのアナリストは7500万£の価値はないとしていた。アラン・シアラーは「ファン・ダイクの移籍金は馬鹿げている。これは地獄の取引だ。」とまで言い放っている。
・ジェイミー・キャラガーとギャリー・ネヴィルもファン・ダイクの移籍金に疑問を呈していたものの、今ではすっかり評価を覆し絶賛している。キャラガーはファン・ダイクをプレミア最高のCBと評し、全盛期のヴァンサン・コンパニの領域に入ったとしている。一方ネヴィルは「ファン・ダイクはモンスターで、ヤープ・スタムを彷彿とさせる」と話している。
・背番号は「4」だがこれはもともと好きな数字だったとのこと。リバプールの背番号4と言えばサミ・ヒーピアが思い出されるが、そんなヒーピアがリバプールにやってくる前にプレーしていたのがオランダのヴィレムⅡというクラブである。そしてこのクラブはファン・ダイクがユース時代に過ごしたクラブでもあり、リバプール移籍後のインタビューにてそのことについて触れている。
Virgil van Dijk is a Red. 🔴https://t.co/iGWEpGu1YH pic.twitter.com/qMLLjZjEUS
— Liverpool FC (@LFC) 2018年1月1日
・リバプール移籍直後、オランダ代表の主将に就任した。そんなオランダの先輩であるディルク・カイトはファン・ダイクのことを絶賛しており、リバプール移籍に非常に喜んでくれていた。ちなみにカイトとファン・ダイクは代表ではすれ違いで、共にプレーした経験はない。
参考サイト
transfermarkt:世界のサッカー選手の移籍情報を中心としたデータベースサイトです。
WhoScored:欧州サッカーのスタッツや最新ニュースが掲載されているサイトです。
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