ダルウィン・ヌニェスのプレースタイル/プロフィール解説|リバプール選手名鑑

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基本プロフィール

画像出典:football365.com

  • 選手名:ダルウィン・ヌニェス
  • 生年月日:1999年6月24日
  • 国籍:ウルグアイ
  • 身長:187cm
  • ポジション:CF
  • 背番号:27
  • クラブキャリア:CAペニャロール(URU/17-18~), アルメリア(ESP/19-20),  SLベンフィカ(POR/20-21~), リバプール(ENG/22-23~)
  • 市場価格:€ 55.00Mill.
  • 契約終了年:2028年6月30日

プレースタイル

巨大なポテンシャルを持つウルグアイ産のストライカー。近年のリバプールが獲得してこなかったピュアな9番タイプであり、これまでリバプールが持ち合わせていなかった新たな色を加えてくれるCFになるはずだ。

ストロングポイント

画像出典:LFC公式Twitter

フィジカル的な観点から見た場合、まずボディフレームは187cmのサイズに加えて80kgに近い体重とCFにとって理想的なフォルムをしており、身体のコーディネーションも高い。純粋なパワーは目を瞠り、コンタクトプレーの強さは圧倒的。ベンフィカの選手としてリバプールと対戦した際に、共に世界最高峰のフィジカルを持つフィルジル・ファン・ダイクやイブラヒマ・コナテとのフィジカルバトルから逃げずに立ち向かっていたのは記憶に新しいだろう。

エアバトルにもそれなりに秀でており、彼の到来によってリバプール自慢のトレント・アレクサンダー=アーノルドやアンディ・ロバートソンといったSBからのクロスがより生きるようになることが期待される。下記の表は2021-22シーズンのリーグ戦とチャンピオンズリーグの空中戦の総数と勝率をまとめたものだ。主なリバプールのFW陣に比べて頭一つ抜けている。

もちろんプレミアリーグは世界で最も空中戦が激しいリーグであるため、最初からダルウィンがエアバトルで圧倒できるかはわからないし、そもそも空中戦の強さは彼にとって最大の武器というわけでもない。とはいえ空中戦やヘディングの技術は鍛錬によって成長できる部分であり、ダルウィンのフィジカル的なポテンシャルを考えれば今後の向上に期待できる。

またそのサイズとは裏腹にトップスピードも傑出している。身体的な特徴からアジリティやクイックネスといった部分はより小柄で軽量級の選手と比べると見劣りするものの、ストライドの大きさを生かしたロングスプリントは驚異的なレベルだ。アスリートとしての総合的なフィジカル能力は極めて高いレベルにあり、リバプールのFW陣の中でも最高クラスと評していいだろう。

身体的な特徴から一見するとそのプレースタイルは最前線に聳え立って相手CBを背負いながらバトルを繰り広げるポストタイプのように見えるが、その実ダイナミックに前線を動き回りながらオープンスペースを強襲するタイミングを計ったり、サイドに流れてスペースを作ったりすることのできる現代的なタイプ。

特に左に流れることを好むが、これは利き足の右でフィニッシュを狙いやすいからだろう。スタート位置が中央でなくサイドの場合、左が多いのも同様の理由だろう。ポジショニングのセンスもよく、ウイング的な要素も兼ね備える彼は古典的な9番というわけではない。

技術的な観点で特に優れているのは多彩なバリエーションを誇るフィニッシュワーク。素晴らしいゴールセンスの持ち主であり、ボックス内で決定的な違いを生み出せる。自らがボールを持ってファイナルサードを独力で攻略してしまうような選手ではないとはいえ、リバプールにいなかった最後の最後を確実に仕上げることのできるストライカーであり、彼に期待されている部分もまさしくそこにあるだろう。

さて、リバプールは21-22シーズンのリーグ戦において、ビッグチャンス創出数97回、シュート数729本、そして94ゴールを記録している。対してリーグ王者の座を最後まで争ったマンチェスター・シティはそれぞれ87回と718本、99ゴールだ。リバプールはビッグチャンスの数もシュート数もシティを上回っていながらゴール数で負けている。たかが5点だが、されど5点。勝ち点1差でリーグ制覇を逃したことを考えれば馬鹿にはできない差だ。

もっといえば、シティはバーやポストに24回も当てている。翻ってリバプールは10回だ。普通に考えれば枠に当てた方が惜しいので、シティはよりゴール数を伸ばしていた可能性が高い。そのため、リバプールには決定機を確実に沈めることのできるストライカーが必要だったといえる。少なくとも、そのような選手がいれば確実に戦力は上がるだろう。

その点でいくと、ダルウィンはシュートに関する成績がとてもいい(データの対象は21-22シーズンのリーグ戦)。シュート数に対するオン・ターゲットの数も、決定率も。枠内に飛ばせるし、飛ばせば高確率で決めることができる。ちなみに、21-22シーズンのCLでも17本シュートを打って6ゴール、決定率は35.29%をマークしている。ベンフィカでこの数字はかなり立派といえる。

リバプールであればチャンスの数/質はこれまでプレーしてきたチームに比べてどの試合でも基本的に向上するだろう。そしてダルウィンは決定力の面でリバプールのFW陣を上回るため、理論上は彼の加入によってリバプールのゴール数が増えること請け合いだ。繰り返すが、ここが彼にもっとも期待するべき部分だろう。

卓越したパーソナリティも魅力的。エネルギーとパッションに溢れ、苦しい状況や展開でも闘志を全面に押し出したプレーをし続けることのできるダルウィンはいかにもユルゲン・クロップが好みそうなアティチュードの持ち主であり、チームのために走り、闘うことができる。守備の局面においても高い強度でプレーでき、攻守両面における彼のアグレッシブなスタイルはまさにダルウィン・ヌニェスという選手の個性を端的に表わすものだ。

ダルウィンのプロフィール的にリバプールのレジェンドであるルイス・スアレスを思い起こさせるが、プレースタイルの系統的にはむしろエディンソン・カバーニの方が近いだろう。また、プレーの端々(特にフィニッシュのシーン)からはフェルナンド・トレースも彷彿とさせる。トーレスはよりテクニカルでスタイリッシュだったが、ダルウィンはその分パワーがありワイルド。

爆発的なフィジカル、フィニッシュのバリエーション、強靭なメンタリティと、ストライカーに必要な要素をハイレベルで備えるダルウィンの加入によってリバプールはどのように変わるのか、非常に興味深いところだ。

ウィークポイント

画像出典:ベンフィカ公式Twitter

足元の技術はお世辞にも高いレベルにあるとは言い難い。おそらく、この部分が現時点での最大のウィークポイントだろう。基本的には圧倒的なフィジカルを利したプレーで対面の守備者をぶち抜く傾向が強く、キックの質は良いのだがゴールから遠い位置でボールを持った際コンスタントに巨大な違いを生み出せるタイプではない。

ボールスキルやクリエイティビティという点でポジションを争うであろうロベルト・フィルミーノには及ばず、当然スペースメイキングや守備への貢献といったオフ・ザ・ボールでの動きも敵わないだろう(そもそも、これらの部分においてフィルミーノ以上の働きができる選手が果たしてどれだけいるのかという話でもあるのだが…)。

フィルミーノの凄さの本質は、単体としての性能はもちろんだがそれ以上にウイング・ストライカーとして振る舞うモハメド・サラーやサディオ・マネらと3トップを形成する上で、それを完璧なユニットとして成立させていた点であると筆者は考えている。

つまるところ、3トップの中央によりピュアな9番タイプのダルウィンが入ることによりそれが周囲にどのような影響を及ぼすのかという話である。例えばダルウィン自身はそれなりに点を決めても、サラーの得点力が落ちる可能性も否定できない。とはいえ、結果的に誰が点を決めても試合に勝てさえすれば然したる問題ではないだろう。

もっといえば、サラーは2021-22シーズンのプレミアリーグにおいて得点王だけでなくアシスト王にも輝いたように、ゴールを奪うことだけに長けている選手ではない。また、左WGの一番手になるであろうルイス・ディアスも近年のリバプールのWG陣に比べるとよりチャンスメイク/アシストセンスに優れたタイプだ。言語面も含めて、ダルウィンとディアスは息の合ったプレーを披露してくれるのではないか。

リバプールが4-3-3というシステムを継続するのであれば、フィルミーノのゼロトップという形でウイング・ストライカーのサラーやマネがゴールを量産する形から、ディアスとダルウィンの到来によってゴールまでのプロセスそのものが変わる可能性は大いにある。

また、ダルウィンはベンフィカで多くのシステムやポジションを経験している。3トップ(1トップ)のCFはもちろん、3トップの左WGや、2シャドーの一角、さらに2トップの一角としても多くプレーしている。ただ中央でプレーするCFではないということだ。

ただ、現時点でリバプールの枠組みにダルウィンを当てはめるのであれば、左WGが最適かもしれない。彼の資質やその天井を考えれば中央での起用がベストではあるが、前述の通りリバプールの攻撃スタイルは中央に偽9番となる選手を配置し、両翼がウイング・ストライカーとして振る舞うというものである。であればワイドでも問題なくプレーできるダルウィンを左に置き、サイドをスタート位置とするストライカーとして起用するのも一興だろう。

リバプールでのプレーを重ねていくことによって攻守両面の技術的な部分やインテリジェンスなどを磨き、徐々にポジションを中央に移していくという算段もいいかもしれない。リバプールの前線はタレントが豊富であり、質も量も優れている。よほど怪我人が多発しなければそのとき使える選手でいかようにも組めるので、ダルウィンがどのように使われていくのかは非常に興味深い。

もしダルウィンを中央に配置してフィニッシャーの性能を引き出したいのであれば、WGにはより仕掛け/崩しの局面で力を発揮できるタイプを置くべきだろう(もっと言えばスタイルが変わるのでインサイドハーフも…なのだが話が長くなるので割愛する)。ファイナルサードの攻略方法次第によってダルウィンが力を発揮できるかどうか大きく変わるため、しばらくは彼がプレーしやすい下地を作る必要がありそうだ。

たしかなことは、技術的な観点から見ればまだまだ荒削りなダルウィンは、逆にいえばそれだけ伸びしろが残されているということ。絶対的なクオリティという点で彼のテクニックがフィルミーノのような選手に到達するとは思えないが、そもそもタイプ的に超絶技巧を有する必要があるわけでもない。

ダルウィンは間もなく23歳になろうとしている選手であり、スタイルの方向性はすでに決定づけられているが成長の余地は多く残されている。即戦力でありながら今後の成長が楽しみな選手でもある。

本題とはずれてしまうが、少しだけクロップとロベルト・レヴァンドフスキとの間に起きたストーリーについて触れておきたい。レヴァンドフスキがドルトムントに移籍した初年度、クロップは彼をCFではなくトップ下で多く起用した。ストライカーとして9番の位置にこだわる彼は10番としての起用に納得いかず、シーズン終了後の移籍も考えていたという。

しかし、迎えた2シーズン目、レヴァンドフスキはCFとして固定されると大爆発。公式戦47試合で30G/12Aという素晴らしい結果を残した。(ルーカス・バリオスとの兼ね合いもあったのだが)クロップは彼をトップ下のポジションでプレーさせることによって、より万能なタイプのストライカーへと進化を計り、成功させたのである。

レヴァンドフスキはこのことについて「はじめのうちはクロップがなぜ自分をCFでなくトップ下で使うのかわからなかったけど、後からわかった。彼が自分を完璧な選手にしてくれた」と語っている。クロップがダルウィンをどのように育てるのかはわからないが、現在世界最高峰のストライカーとしてサッカー界に君臨するレヴァンドフスキはクロップの下で進化を遂げた。

たしかに現時点でダルウィンに対して総額1億ユーロという移籍金の額は見合わないものの、クロップの下で彼がさらに成長を遂げ、リバプールで世界最高峰のストライカーとして向こう何年も活躍してくれればなにも問題ないだろう。年齢的に獲得時点での完成度が違うとはいえ、ファン・ダイクやアリソン・ベッカーは超高額の移籍金の正当性を自らのプレーによって証明している。

プレー面以外で不安なポイントを挙げるとすればプレミアやメガクラブに初挑戦という部分だが、こればかりはどんな選手でもついて回る不安だろう。誰であれ絶対にないとは言い切れない。とはいえリバプールは抜群に補強の上手いクラブであり、とりわけ高額で獲得した選手で上手くいかなかったとされるような選手はほぼほぼいない。

「ポルトガルで見せていることをイングランドでもできるのか」という点も、彼よりも半年早くリバプールでプレーしているディアスがその疑念を払拭している。だからといってダルウィンもそうなるとはやや短絡的かもしれないが、これまでのリバプールの実績を考えれば杞憂に終わると期待していいだろう。

総額ではクラブ・レコードになるかもしれないダルウィンは新時代へと突入するリバプールの新しいエースストライカーとして相応しいポテンシャルの持ち主だ。クロップという稀代の名将の下、世界最高峰の選手が揃ったリバプールで彼がどのような活躍を披露してくれるのか。リバプールとダルウィンに素晴らしい未来が待っていることを期待したい。

エピソード・小ネタ

画像出典:ダルウィン・ヌニェス公式Twitter

◆「Darwin(ダルウィン)」という名前はイギリス起源であり、意味は「最愛の友人」といったところ。英語読みだとダーウィンとなる(「進化論」で有名な自然学者チャールズ・ダーウィンと同じ)。また、「Nunez(ヌニェス)」という姓はスペイン語圏では非常に一般的であるものの、その由来や言葉の意味がなんなのかは明らかになっていない。

◆ブラジルとの国境沿いに位置するアルティガス出身。アルティガスは米の生産が盛んとのこと。ちなみに、米といえば我らが日本人の主食だが、そんな日本語版Wikipediaに載っていた「ヌニェスは日本食が大好きで、毎日寿司を食べている」という情報はおそらくデマであり、現在その記載は削除されている。とはいえ、多分寿司は好き(個人的願望)だと思うので、ぜひオフシーズンには来日して美味しい寿司を食べていただきたい。

◆ダルウィン・ヌニェスは非常に貧しい家庭で兄のジュニア・ヌニェスと共に育った。建設作業員である父の収入だけでは足りず、母はペットボトルや瓶を集めては売って家計を助けていた。しかしそれでも食べ物を買えず、兄弟は空腹のまま寝る日も多かったという。ただ、ダルウィンは「もっと最悪だったのは僕たち以上に母が食べずに寝ていたこと。自分がどこから来たのか決して忘れない」と語っている。

◆ダルウィンの才能を発見したペニャロールは彼をスカウトした。ペニャロールはウルグアイの首都モンテビデオに本拠地を構えるクラブである。大きな都市を見たことのなかったヌニェスは、バスでトレス・クルーセスに降りたとき恐怖を覚えたという。またホームシックも味わい、一度アルティガスに戻っている。しかしながらダルウィンの才能を失いたくないペニャロールの懸命な説得によって徐々に適応した。

◆兄のジュニアもペニャロールのアカデミーでダルウィンと共にプレーしていたが、家族の問題(母の病気)によってアルティガスに戻らなければならなくなった。しかし兄が「サッカーを辞めて戻るのは自分だけでいい。お前には未来があるからここに残りなさい」とダルウィンに言い、サッカーを続けさせてくれたという。

◆ペニャロール時代に二度の大怪我を経験している。まず十字靭帯を負傷し、手術とリハビリを乗り越えて復帰したものの、今度は膝蓋骨を骨折した。膝に二度の大怪我を負いながらも現在これだけのアスレティックなプレーを披露しているのは驚異的と言わざるをえない。

◆2017年11月22日にプロデビューを飾ったダルウィンだが、その試合で途中出場した彼の代わりに交代で下がったのは元リバプールのマキシ・ロドリゲスである。

◆同胞の先輩であるルイス・スアレスは、彼がスペインのアルメリアでプレーしていた際、バルセロナに彼を注視するよう提言したものの、あまり相手にされなかったという。

◆フィルジル・ファン・ダイクは2022年5月のインタビューで「最も対戦するのが難しかったFW」に5人を挙げており、セルヒオ・アグエロ、リオネル・メッシ、キリアン・エンバペ、アーリング・ハーランドと共にダルウィンを選んでいる。

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