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キャプテンとしてチームを支えるジョーダン・ヘンダーソン、ワンプレーでゲームの流れを変えられるアダム・ララーナ、ドリブルで相手の守備網を破壊するアレックス・オックスレイド=チェンバレン… プレミアリーグの首位を独走するリバプールには、様々な個性の持った中盤の選択肢を持っている。その中でも指揮官であるユルゲン・クロップから絶大な信頼を寄せられている選手がいる。それがジョルジニオ・ワイナルドゥムだ。
ワイナルドゥムは今シーズン、チームで最多タイとなるリーグ戦28試合に出場し、その全てでスタメンを飾っている唯一の選手だ。その貢献度から、メディアやファンから、「彼はプレミアリーグで最も過小評価されている選手だ」という声も少なくない。
では、このオランダ代表MFがチームにもたらしている貢献とは一体どのようなものなのか。本記事では彼のルーツを振り返りながら、リバプールで必要不可欠な選手となった理由を探っていく。
サッカーIQの高さ、柔軟性を身に付けたルーツ
ワイナルドゥムは幼少期、スパルタ・ロッテルダムの下部組織に所属していた。8歳の誕生日の前に中盤の選手としてキャリアをスタートし、U-12のカテゴリーレベルでは右SBとしてプレーしていた。7シーズンを過ごしたあとに、フェイエノールトに移籍。16歳148日という若さでプロデビューを果たし、当時の最年少記録を更新していた。
フェイエノールトでの3シーズン目、監督は、彼のドリブルスキルが圧倒的であったことから右ウイングにコンバートする。このシーズン以降、ワイナルドゥムは定位置を確保し始めた。
しかし、本人は自身を中盤、特にトップ下の選手として認識していたという。5シーズン目となる2010/11シーズンに念願のトップ下でのチャンスを得ると、1試合4得点を挙げるなど、このシーズンでそれまでのキャリアで最多となる14ゴールを記録した。
「スタッフは僕を移籍させたくなかったんだ。求められたポジション(右サイド)でうまくやっていたけど、心の中では中盤の方がもっとうまくやれると信じていたんだ。でも僕は若かったから、プレー機会がある方が良いと思っていた。
成長している真っ只中で、出場を勝ち取ることは非常に重要だよね。僕はウイングでのプレーで沢山のことを学んだ。そして今、僕はそれらのポジションでプレーするチームメイトが中盤の僕にどう助けて欲しいのかを理解しているよ。
でも、年齢を重ねたあと、僕はミッドフィールダーになりたいと思っていた。僕はミッドフィルダーであることを説明するために、フェイエノールトのエージェント、マネージャー、ディレクター、最高経営責任者と話し合う必要があったんだ」
JOEより引用
と本人も当時を振り返っている。
その後、ワイナルドゥムは若干20歳でフェイエノールトからPSVに移籍。PSVでのラストシーズンでは、トップ下として躍動し、クラブをエールディビジのタイトルに導き、17ゴールを記録した。
フェイエノールトやPSVでの役割は司令塔だった為、比較的、攻撃的な役割を担うことが多かったが、既にこの時点でトップ下としてプレーできるだけでなく、ボランチとして、そしてより攻撃的なサイドの選手としてもプレーできるユーティリティな選手であった。
そして、フェイエノールトで定位置を確保した08/09シーズン以降、怪我に苦しんだ13/14シーズンを除いて、全てのシーズンでリーグ戦30試合以上に出場している。他クラブでの移籍初年度でも早々に定位置を掴み取れるだけの、高い戦術理解度がワイナルドゥムには備わっているのだ。
2016年、リバプールはニューカッスル・ユナイテッドに2,500万£を支払ってワイナルドゥムを獲得した。当初、クラブは彼を攻撃的な選手としてチームに迎え入れていた。
アンフィールドでの彼のデビューシーズンは、 マンチェスターシティ、チェルシー、アーセナルとのビッグマッチでゴールを決めるなど、6ゴールに9アシストを記録。チームの期待に見事応えたのだ。
しかし、クロップはこの時からワイナルドゥムにより守備的な役割を与えようと考えていたという。
「リヴァプールに加わり、クロップ監督と話したんだ。監督は僕について、より守備的な役割ができるプレーヤーだと見ていたみたいだよ。僕もプレミアリーグで中盤の役割を担う上で、もっとオールラウンドであるべきだと思ったんだ。もちろん、攻撃に慣れていたから、このポジションにフォーカスするのは簡単なことではなかった。けど、いろんな壁を乗り越え、今ではより完璧なオールラウンドプレーヤーになったと思っているよ。」
本人がそう語るように、このシーズン以降はチームのバランサーとしての役割を任されるようになった。
リバプールでの貢献
時にはSBの上がったスペースを埋め、時には攻撃参加をして相手ゴールを脅かす。攻守において、彼が高い貢献を示せるのも、キャリアを通じて様々なポジションを高いレベルでこなしていたからこその役割だ。ストライカーとディフェンダーを繋ぐリバプールの『黄金の糸』。サッカージャーナリストのMelissa Reddy は彼のリンクマンとしての役割をそう表現した。
それに加えて、ワイナルドゥムは「汗かき役」としてピッチを縦横無尽に駆け回り、チームに貢献している。プレミアリーグのデータによると、ワイナルドゥムは常にリバプールの試合で平均11km走っている。彼にはモハメド・サラーの様な一瞬で相手を抜き去る驚異的なスプリントや、サディオ・マネの様な身体能力を活かしたキレのある瞬発力は無いが、ピッチの端から端まで走り、常にチームのカバーに徹することが出来るのだ。
リバプールでも複数のポジションでプレーで貢献してきた。 18/19シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ 準決勝1stレグ バルセロナ戦では、負傷のロベルト・フィルミーノに代わってセンターフォワードのポジションでプレー。加入初年度には、ブライトンとの試合でエムレ・ジャン、デヤン・ロブレンとならんで3バックの一角としてプレーした。
彼のサッカーIQの高さと柔軟性はクロップからも高く評価されている。
「ジニはある考え方から別の考え方に切り替えることができ、それは我々にとってかなり良いことだ。様々な状況でも自分を落ち着かせ、常に冷静な判断が出来る。チームにとって非常に重要なんだよ」
JOEより引用
現在、オランダ代表では司令塔として10番を背負い、リバプールとは全く違った役割を任されている。そして代表戦に出る度にゴールを決め、まるで別人の如く違った活躍を見せるのだ。クロップが言う様に、高いサッカーIQを駆使して”切り替え”られるワイナルドゥムだからこそ出来ることだろう。
「多くの人が僕を攻撃志向のプレイヤー、ドリブラー、またはゴールスコアラーだと思っていた。チームメイトの動きを守り、確認する規律が与えられていなかったからね。だから、みんなが僕を違った形(攻撃的な選手)として見てくるんだ。僕が今の自分(守備的な選手)の様にプレーできるとは思っていなかったと思う。
それに加えて、ランニングと得点も出来ることを示したから多くの人を驚かせたんじゃないかな。ボールを取り戻し、パスのリズムを保って、周りの人をカバーする。そしてアシストもするんだ。今、みんなは僕の完全版を見ているってことだね」
JOEより引用
改めて、彼がリバプールでどの様な貢献をしているのか。クロップが本記事をまとめる様なコメントをしているので紹介する。
「彼は私が必要とする多くのものを組み合わせているんだ。1対1の状況では、彼は対戦相手とボールの間に体をキープし、それからボールをパスすることができる。彼がプレーしたポジションの数は計り知れない。彼はインサイドのポジションで本当に上手くやっているんだ。ミッドフィールドの3つのポジション全てををプレーできるしね。彼は素晴らしい選手なんだよ。」
Sky Sportsより引用
今のワイナルドゥムは数字として記録を残す役割では無いため、チームへの数字での仕事率と重要性は時々無形に見えるかもしれない。そうなると、彼の貢献を表現するには難しい時がある。
しかし、ワイナルドゥムがゲームのバランスを取っていることでリバプールがチームとして結束し、それぞれの選手が最高のパフォーマンスを気兼ねなく出せていることは過言ではないだろう。
話は変わるが、リバプールとの現行契約が2021年の夏までに迫っているが、『Daily Star』によると、最近新契約に向けた交渉を開始したようだ。
リバプールは1年間の延長オプションが付随する2023年までの新契約を掲示した模様。リバプール残留を切望するワイナルドゥムもクラブとの交渉を前向きに進めているようだ。
リバプールの縁の下の力持ちとして。相思相愛のストーリーは、これからも続いていきそうだ。
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