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皆様、お久しぶりです。トリコレッズです。
今回は来る18/19シーズンに向けて、僕が気になる1テーマに絞った展望を「ワンテーマプレビュー」と題してやってみようと思います。上手くいったら何回か記事にするかも知れません。
とにかく記念すべきその第1回は、新戦力ファビーニョとキャプテン・ヘンダーソンが争うであろうアンカーのポジションについて。
ジャンがユヴェントスへ移籍したこともあり、明らかに補強ポジションではあったのですが、
昨シーズンは怪我さえなければヘンドのものであったアンカーポジション、ヘンドがキャプテンということもあり補強の方向性はやや難しいものではありました。
で、補強期間が始まってみるといきなり火のないところからファビーニョを獲得。ヘンドはW杯後の休暇を早めに切り上げたいと申請するほどポジション争いに危機感を覚えている模様です。
実際、リバプールのアンカーには誰が座ることになるのでしょうか?
PSMでのファビーニョのプレーを分析しながら、いくつかの項目に分けて彼ら2人を比較していきましょう。残念ながら、画像付きで分析するのはシティ戦(とごく一部のナポリ戦)のみになってしまいます。
ただし、僕がファビーニョのプレイを見たのが、あくまでリバプール加入後のPSM(書いている時期の都合上シティ戦、ユナイテッド戦、ナポリ戦)しかないため、単にコンディションの問題なのか根本的な能力の問題なのかまでは見抜けていません。モナコ時代から見ていらっしゃる方で「これは違う!」とお思いの方がいらっしゃいましたら是非コメント頂きたいと存じます(コークさんによるファビーニョの選手名鑑はこちら)。
1.ショートパス能力:ファビーニョ
パスの能力は二人とも高いものを持っていますが、各々異なる特徴を持っています。
ファビーニョは主にCBからのショートパスを受けてIHやSBへ簡単にはたくプレーを良く見せており、ポゼッションのテンポを保ちつつ選手を流動的に動かす能力には長けていると思います。また、その前提としてスペースを見つけて入り込む能力が高い様に感じます。
そのプレーを少し見てみましょう。シティ戦19分20秒からです。
この日のCBはゴメス。ファビーニョは今この位置にいます。開始直後はシティの前プレがやや激しかったのですが、ここではちょうど良い立ち位置を見つけています。
そもそものパスコースがやや厳しかったことを理解していたのか、ファビーニョは自分へのパスコースがないと思った時点でパスカットされたらプレスに行こうと考えていた模様。案の定カットされると、即座に回収へ向かいます。
ここで素早く反応し、回収に成功。後々説明するポジショニング能力にも関連するところではありますが、この辺りの読みが彼のウリのようです。
その後パスは左へ展開され直し、ミルナーがファビーニョの横までサポートに下がってきています。この試合では良く見られたシーンであり、また場合によっては4-2-3-1に見えるような場合もありました。ファビーニョはミルナーに相手選手が引きつけられることを予想し、円で描いた場所に生まれるスペースに入り込もうと動き直しています。
ミルナーからそのままフリックという手もありましたが、ミルナーはターン。下がって受けに来るカーティス・ジョーンズへ縦パスを入れます。ファビーニョはここでもパスコースを確保し、後ろ向きで受けることになるであろうジョーンズをサポートします。
ジョーンズからの落としが入ります。プレスが来ますが、ファビーニョはそのスペースを逆に利用、フリックで素早く展開します。
このフリックが通り、バイタルで味方(確かジニ)が前を向くことに成功。テンポの良いパス回しでビルドアップを完了させました。
2.ロングパス能力:ヘンダーソン
試合を見て感じたのは、ヘンドがいるときと違ってファビーニョが「発射台」になるシーンはほぼ無かったと言うこと。ユナイテッド戦、ナポリ戦では見られることもありましたが、ヘンドのようなスピードのあるタイプのキックではありませんでした。
リバプールのウィンガー陣のスピードを考えると、ヘンダーソンのキックの方が合っているとは言えるでしょう。精度も、試合によってやや波がありますが、高い方ではあります(また、ウィンガーのスピードが尋常ではないため、ちょっとぐらいずれても拾えるというところもあるでしょう)。W杯でもスターリングを狙って裏へ正確なロングパスを通したシーンがあったはずです。
ただし、追記としてはファンダイク加入後には正直彼の方がロングパス精度が高いため彼が蹴ることも良くありました。また、アリソンの加入でさらに発射台が複数用意されることになるでしょう。
3.キープ力:ファビーニョ
ブラジル人らしく、柔らかなタッチでボールをキープするシーンがよく見られたファビーニョ。狭いスペースでもボールをキープできる能力は、アンカーとして非常に重要です。昨シーズンはリヴァプールのビルドアップを破壊したいときとにかくヘンドにプレスしまくるというチームがたまにあり、案の定組み立てが立ち行かなくなるシーンもありました。
簡単にこのシーンをチェックすると、38分17秒。
プレスを受けた右サイドからやや苦しいショートパスを受けたファビーニョ。さらに左側からはおそらくマフレズがプレスをかけています。陣形も整っておらず、奪われてカウンターを受ければかなり厳しい状況です。
ここでファビーニョが華麗なターン。モドリッチか?と思わせるような冷静さで相手を欺き、サポートに下りてきていたミルナーへ展開、事なきを得ました。
4.スタミナ&スプリント力:ヘンダーソン
ヘンドとファビーニョのプレースタイルの違いを生み出す肉体的能力の差として、一番目立つのがこのスプリントスピードの違い。手足の長さがあるためぐんぐんと加速していく感じはあるのですが、トップスピードはそれほど高くない印象です。
まずは21分27秒のシーン。
前線でボールを奪われます。ファビーニョはこの位置、ちなみにミルナーはこの位置。
ターンの向きの問題もあるのでしょうが、スタート時点では明らかに距離が遠かったミルナーの方が先に追いついています。ミルナーに任せてファビーニョはカバー、という発想は分かりますが、追いつけていないのでカバーにもなれていません。
最終的にはほぼ完全に置いてきぼりに。スプリントスピードそのものなのか、スタミナ配分の問題なのか、何にせよこのロングカウンターを防がないという考えはないので、追いつけなかったのではないでしょうか(今思ったのですが、このシーンに関しては「これなら俺が行かなくても奪いきれるな」と思ったのかも知れません)。
他には51分15秒のシーン。
シティの縦パスが入り、落として裏を狙うというパターン。
ファビーニョは落としの段階で裏狙いに気がつき、先に動き出しています。が?
走り合いの相手は恐らくベルナルド・シウバですが、スピードがない方ではないにせよ快速というほどでもありません。その彼に完全に振り切られてしまうのはやや不安が残ります。
一方のヘンダーソン、スプリントスピードはそれなりのものです。3トップ+2IHのプレスが外されて縦パスを入れられたとき、ヘンドの前にはほぼミドルサード全域か良くてもミドルサードの敵陣半分ぐらいが残されているのですが、縦パスに反応して厳しくチェック(たまに飛び込みすぎますが)、プレスの「二の矢」として相手の攻撃をスピードに乗らせない役割を担っています。
5.ポジショニング能力:ファビーニョ
はなはだ曖昧な言い方ではありますが、ポジショニング能力とは、
・攻守両方のタイミングにおいて、次に起こること(味方がパスコースを探す、相手が味方のパスをカットする等)を予測、それに合わせた適切なポジションを見つけ出すことが出来る
と表せるのではないでしょうか。ここまで大きく言ってしまうと全ポジションに当てはまってしまうのですが、アンカーにとっては「ビルドアップを円滑に進める」「ネガティブトランジション時に相手の攻撃をスピードダウンさせる、必要に応じてボールを奪う」という目標のもとにポジショニングをする必要があります。選手のスタートポジションによって、その目標が異なると考えればよいでしょう。
ここにおいてファビーニョは高い能力を示しています。相手のパスを誘い込んでカットしたり、味方のパスコースを間断なく作り出すことができます。
また、逆説的ですが、本来予想されるポジションから思い切って飛び出すことによって攻撃のオプションを増やしたり、相手の守備を攪乱したり、最後ギリギリのタイミングでシュートを防いだりすることが出来ます。
この3試合を通じて、ファビーニョはいつの間にかスッと攻め上がる、というシーンが見られました。それらのエッセンスを詰め込んだのが40分49秒からのシーンです。
相手の縦パスに対し、軽くパスコースを空けておいて縦パスを呼び込み、ファビーニョがそこを狙ってパスカットします。
そこから下りてきたララーナへ展開、そのタイミングでジニが開き、それに応じてファビーニョはアンカーのポジションを飛び出します。
ララーナがクラインに落とせばジニ、ファビーニョでトライアングルが完成します。ただし、クラインがもう少しハーフスペースにポジションを修正し、ジニが大外のレーンに入る方が良いでしょう。
実際にはララーナは中のミルナーへ落とし、そこからミルナーが結局裏へ展開、ジニへ通します。結局はパスは来ませんでしたが、ファビーニョはタイミング良く飛び出しパスコースを作り出す動きもしています。
ただし、一つ気になるのは、セットされた守備でのポジショニングは良いのですが、被カウンター時に中央のポジションをしっかりと防がないシーンが散見されたこと。もう少し早く中央のポジションに戻らないと……と思うシーンでも、ややのんびり戻っていてスペースを使われるシーンが見られます。一応確認しておきたいのはナポリ戦の67分27秒からのシーン。
ナポリの縦パスに対し、ファビーニョは反応。周りと連携しながら前を向かせずに対応することに成功します。
ナポリはバックパスから逆サイドへ展開。ファビーニョはアンカーのポジションから飛び出してボールにアタックしたため、元の位置に戻ってバイタルエリアを塞ぐ役割を果たさなければなりません。
バックラインは押し込まれている上に、ボールを受けたマリオ・ルイがドリブルでカットインしてきているため、ファビーニョはバックラインの前でバイタルをケアしなければならないのですが、そもそも全力で下がってカバーしているようには見えません。
結局のところ、これだけのスペースを与えてしまっています。
最終的にはかなり際どいシュートを打たれてしまいます。ファビーニョはパスコースを消すという意味での危機察知能力はあるのですが、スペースに対する守備能力はそれほど高くないのかな?と思わせます。アンカーとしてのプレー経験が浅いという問題もあるのでしょうが、リバプールというチームにおいて求められるアンカーの守備意識はかなり高いものがあるため、これから改善が必要になってくるでしょう。
ヘンダーソンはどちらかと言えばボールを受けた相手に食らいつくタイプであり、攻撃時に上がっていっても追い越していくよりは落としを受けてアーリークロスというパターンが多いです。
6.ボール奪取能力:ヘンダーソン
ヘンダーソンは、どちらかといえばその運動能力と危機察知能力を活かし、相手の縦パスが入ったところへ激しく食らいつくシーンが多く見られます。イングランド人らしいハードタックルも得意としていますが、時折「そこまで行かんでも……」と思わせることがあります。責任感が非常に強い選手のため、自分が止めきらなければ!と思うのでしょう。
総評
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これまでの全6項目を見て分かるように、少なくとも純粋な選手としての能力を比較したとき、彼ら2人はアンカーとして全く違う特徴を持ちながらも各々レベルの高い選手であることが分かります。
再度大まかにまとめれば、
- ファビーニョ…ビルドアップ時には相手のマークを上手くかわして味方のパスコースを創出、簡単なショートパスをはたいてリズムを生み出す。はたいた後には前線へ上がっていくパターンもある。セットされた守備時のポジショニングに長け、相手のパスコースを読み切ってインターセプトする。
- ヘンダーソン…時にはCBの間に落ち、ビルドアップ時のパス出し役を担う。ショートパスもそうだが、スピードのあるロングパスで局面を一気に打開する。豊富なスタミナとスプリント能力、また高い危機察知能力を活かし、広範囲をカバー、相手の縦パスに食いついて奪い取る。
イメージで言えば、ファビーニョはマンチェスター・シティのフェルナンジーニョによく似たタイプのように感じます。
優先順位は付けにくいのですが、「リバプールの」アンカーとして、すなわちリバプールの持つ強みを最大化することを目標として考えると、個人的にはヘンダーソンの方がやはり適しているのではないかと思います。ゲーゲンプレスで前方向へ多くの人数をかけるリバプールにとって、アンカーは特に縦方向に広大な守備範囲をカバーする必要があります。そうなると守備時のスプリント力、走力に優れるヘンダーソンの方が向いているように感じられます。
とはいえ、ヘンダーソンを休ませるため、あるいはヘンダーソンをIHで起用することによってファビーニョとの共存は十分可能であり、彼らのどちらが出場するかによってチームとして異なる顔を見せてくれることでしょう。というかもしかしたら、アンカーファビーニョ+IHにヘンドorミルナーという組み合わせがかなり機能するのではないか?という気もします(それについては他の記事で考察すると思います)。
大型補強でついにプレミアを狙う陣容が揃ったと言われる我らがリバプール、毎試合熱くなる試合を見せてくれることは確実でしょう。毎週の試合をさらに楽しむため、アンカーの人選からゲームプランを予想してみるのもよいのではないでしょうか。
それでは。
(写真を見ていて気がつきましたが、ヘンダーソンの履いているスパイク、僕のフットサルシューズと同じ……嬉しい……)
記事を読む限り、ファビーニョは「のんびり屋さん」ですかね・・・
でも!? プレミアで数試合、経験すれば!? 嫌でも!?
「攻守の切り替え」に全力を注ぐハメになるでしょうね♪
確かに、プレミアはやや異常なぐらい切り替えが速いですからね苦笑
フィットしてくれれば非常に高い戦力になるので、期待しています!