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リバプール・サポーターの多くの方が疑問に思ったであろう、1月のドバイ・キャンプ後の低調なパフォーマンス。
1月19日のパレス戦後にドバイに飛び立ち、合宿後の1月30日のレスター戦で引き分けに終わるなど低調なパフォーマンスには、多くの方が「キャンプで何やってたんだ?」、「もうキャンプやらないほうがいいんじゃ?」と思ったようです(筆者Twitter調べ)。
1月いつも調子悪くなるのってキャンプのせいなんじゃないの?
— 🔴リバプールファンのT🔴 (@OOl8AsYw467O12S) 2019年1月30日
クロップ解任は論外だけど、ドバイ合宿についての反省文、原稿用紙10枚くらいの処罰はあってもいいと思う。
— Miya@超主観的YNWA (@my_ynwa_red) 2019年2月5日
更には、番記者のピアースが2月9日のボーンマス戦の前日に「クロップが『風景を変える』ために、来週はトレーニング・キャンプに向かうと語った」とか言うもんだから、KOPの間では更なる混乱が巻き起こっていたようです。
Klopp confirms #LFC squad will go away on another training camp next week for a “change of scenery, we would have done the same if we were 10pts up”.
— James Pearce (@JamesPearceEcho) 2019年2月8日
ドバイのキャンプの写真が出回ってないの、情報を遮断してんじゃなくてグダグダ過ぎて見せられたもんじゃなかった説。次のキャンプはしっかりと何してたのか明らかにしてくれる事を希望する!
— Miya@超主観的YNWA (@my_ynwa_red) 2019年2月9日
2月4日のウェストハム戦も低調だったものの、結果的には2月9日のボーンマス戦では、多くの選手が本来のパフォーマンスを発揮して圧勝を納めました。
要するに、キャンプによって選手のパフォーマンスが低下したのは事実ですが、かなり一時的な物だったと言えます。そこで、多くの方が疑問に思っているキャンプの内容と、その裏に潜むクロップが考えているであろうキャンプの目的について、専門家の端くれである、私江波戸がその一端を推測させてもらいます。
正直言って、私自身裏情報は何も無いので、キャンプで何が行われているのはさっぱりわかりません。なので、今回の記事は「キャンプ後、選手のパフォーマンスが2試合低調だった」「ただ低調なのは一時的で、その後は以前のパフォーマンスを発揮した」という2つの事実から、キャンプで何が行われているのか、更にはクロップの狙いを推測した記事になります。
また、キャンプと一言で言っても、時期やチーム状況、キャンプ直後の対戦相手によって、内容は変わってくるはずです。
話を分かりやすくするためにも、今回は、つい先日のレスター戦の直前に行われたと言われているドバイ・キャンプにのみ焦点を絞って話を進めていきます。
実際、1月20日から25日までの間でクラブのTwitterからも番記者ピアースのTwitterからも合宿中の写真も記事も一切出てきていないですし、公式からも1月25日に「ドバイでのショート・キャンプから戻ってきたら、ダイクが体調不良になっちゃたよぉ」なんていう記事くらいしかキャンプに関する記事が出てきていません。
私が知る限り、キャンプがあったことを示す情報は上記のクラブからの事後報告記事と、キャンプと同時期にノア・パターソンさんという方が、Twitterでリバポの選手とドバイで撮った写真と動画くらいです。
Liverpool in Dubai. pic.twitter.com/v2frw7QIB9
— Noor Patterson (@NoorPatty) 2019年1月21日
予め、上記の点をご了承下さい。
目次
- 結論
- パフォーマンスが低下するリスクを犯してまで負荷の高い練習を行った目的
- 筋力の維持向上がクロップサッカーにとって如何に重要か
- パフォーマンスが低下するまで負荷を上げた理由
- 1月のドバイ・キャンプが持つ意味
- CL直前の2月の合宿の目的と、実際に行われるであろう練習等
- まとめ
1.結論
前置きが長くなりましたが、毎度の如く、結論から述べさせてもらいます。結論から言うと、キャンプ後に一時的にパフォーマンスが低下してしまったのは・・・・・・・・・・・・
「キャンプで負荷の高い練習を行ったから」
以上です。
当たり前過ぎて拍子抜けしてしまった方もいるかもですが、以下では、この推測について検証していきたいと思います。
2.パフォーマンスが低下するリスクを犯してまで負荷の高い練習を行った目的
「過密日程のプレミアリーグなんだから、休養が必要なんじゃない?」と思った方もいると思います。選手の中にもそう思った人間がいたとしても不思議ではありません。
しかし、クロップはそうはせずに、傍から見れば「リスクを犯しにいった」とも思えるような事を行ったと推測したとなると、当然そこには何かしら目的がないと、クロップの求心力に関わりかねません。実際、内情が全くわからないサポーターとしては、「キャンプまで行って何やってたんだよ」などと非常にヤキモキさせられた訳ですからね。
ではまた結論です。
クロップがキャンプで負荷の高い練習を行った目的とは・・・・・・・・・
「筋力を維持・向上して、シーズン終盤までトップ・パフォーマンスを発揮し続けるため」
だと筆者は推測します。
「サッカーをやってれば筋力は維持されるんじゃないの?」と思う方がいると思います。
しかしサッカーを行っているだけだと、「筋力が低下してしまう可能性が高い」という研究があります。
持久的トレーニングは筋力・パワーの向上、筋肥大を阻害します。
(中略)
持久的トレーニングというと、練習後のインターバル走や長距離ランニングを思い浮かべるかもしれませんが、実は競技練習自体が持久的トレーニングになりえます。(競技を行っていれば持久的トレーニングを行わなくても良いということではありませんが)こちらはバスケットボール[2]とサッカー[3]の、試合中の各走行スピードの走行距離を測定した研究をまとめた図なのですが
どちらの競技も歩行・ジョギング~長距離走程度の強度の運動が大半を占めています。
ちょっと補足させてもらうと、どこぞやの運動量が極端に低い「ゴール前バス停め作戦」と、リバプールの様な運動量豊富なインテンシティの高いサッカーでは運動量がかなり異なるので、サッカーと一言で言っても必ずしもこの研究どおりになるとは思えません。
ただ、余裕をもって勝利した際などは、そこまで負荷が高くないことも有り得ますし、試合終盤などで疲労した状態でいくら最高出力を発揮したところで、疲労していない状態での最高出力には及ぶはずがないので、「サッカーをやっているだけでは、筋力は低下する」という流れには逆らえないと思います。
3.筋力の維持向上がクロップサッカーにとって如何に重要か
「いやいや、サッカーは筋力じゃなくて技術の高低が物を言う競技だよ」と思った読者はそう多くはないと思います。何故なら我らがクロップ・リバプールが採用している戦術が、バルセロナの様なボール・コントロールのテクニックに重きを置いたものではなく(バルセロナの選手の筋力もそれなりにありますが)、ボールを失った瞬間に奪い返す「ゲーゲンプレス」を採用しているので(実際はポゼッションして崩すケースもありますが)、如何に走力や方向転換の鋭さが重要かは、既知かと思います。
そして、走力や急発進、方向転換の鋭さを支えているのは「筋力」です。急発進も含む方向転換を素早く行うには「筋力」が重要という事は、物理学的に説明がつきます。
こんな論文も。
サッカー選手において長期的なウエイトトレーニングを行った結果、特別に方向転換のトレーニングを行っていなくても、ウエイトトレーニングを行っていない選手よりも方向転換スピードが向上したといった報告もなされています。(Keiner et al, 2014)
4.パフォーマンスが低下するまで負荷を上げた理由
「10日も時間があったんだから、ハードなトレーニングをこなした上で、リーグ戦はそれなりのコンディションで臨んでよ。あの引き分けのせいで、今やシティとの勝ち点差はたったの3点だよ!」という、サポーターの悲痛な声が聞こえてきそうですが、パフォーマンスを向上させるには、どうしてもれなりの負荷を掛けなければなりません。
トレーニングの原理の1つに「オーバーロード(過負荷)の原理」というものがあります。現状の能力よりも強い負荷を与えないと、トレーニングによる向上は得られないという原理です。この事とリバプールの現状を組み合わせるとこうなります。
「一時的にパフォーマンスが低下するくらいの負荷を体にかけないと、ウィンターブレイクが無く、試合が続いた事で失ったキレ(筋力)を取り戻すことはできない」とクロップやバックスタッフは判断して、キャンプでの内容を決めたということです。
ちなみに、現在リバプールの1stチームのボールを使ったトレーニングの構築しているには、ペップ・ラインダースです。
この事は、下記動画の10分過ぎから始まるボールを使ったトレーニングを、このオランダ人コーチの指示で始まることからも推測されます。
彼は、FCポルトに在籍していた経験があり、そこで戦術的ピリオダイゼーションを学んだそうです。
ラインダースはちょっと異質の存在すぎて、掴み所がない。調べても何かよく分からない。オランダ生まれ。19歳の時に突然PSVで指導し始めます。アカデミーの個人トレー二ング担当します。アカデミーの監督もやります。24歳で突然FCポルトへ。どうやらここで戦術的ピリオダイゼーションを仕込まれます。 https://t.co/NiUUCMwTIo
— 林 舞輝 (@Hayashi_BFC) 2019年2月11日
ポルトFCでは知将バラス・ボアスの下で働いていたようです。この戦術的ピリオダイゼーション、通称「戦ピリ」ではボールを使った状態でフィジカル・トレーニングを行います。と言うよりか、戦術も含めたサッカーの動きの中で体も鍛えていくという何とも崇高な目標を掲げたトレーニング方法です。なので、ドバイ・キャンプでペップはひたすらインテンシティの高いトレーニング・メニューを選手に課したんじゃないかと思う訳です。実際、冒頭に載せた、ノア・パターソンさんのツイート動画も、かなり強度の高い練習です。
もちろん、「キャンプ中は休養のために、ただただリラックスして過ごしていて、2試合調子が悪かったのは鈍った体が目を覚ましてなかったから。ボーンマス戦でようやく体調が元に戻ってきた」なんて事も可能性として考えられないこともないですが、そこまでリスキーでいつコンディションが元に戻るか、そして元に戻ったコンディションをどれくらい維持できるかも不透明な方法を、名将クロップと秀才ラインダースが採用するとは思えません。
ちなみに、ラインダースについて呟いたところ、上記の奈良クラブ林舞輝GMのツイートからライターの結城康平氏からも情報提供が。
彼は、ヴィトール・フラーデの信奉者で、フラーデのアドレス帳に名を連ねる「メル友」としても知られる存在です。オランダ時代は「クーバーメソッド」を主として学んでいたようなので、ポルトでのユースプロジェクトに携わった経験を機に、ピリオダイゼーション理論に傾倒してます。 https://t.co/TnI0Cc8lso
— 結城 康平 (@yuukikouhei) 2019年2月11日
フラーデとの出会いについて、ラインダースは後に(2017年)「24歳でポルトのユース育成に携わった時、フラーデは育成理論のトップだった。言葉は通じなかったが、認識で通じ合った。要はゲームに対するコレクティブなアプローチであり、ゲームにおける複雑性だと。最高に興味深い人だと感じた」と。
— 結城 康平 (@yuukikouhei) 2019年2月11日
クーバーメソッド(コーチング?)とはこういったものらしいです。
戦術的ピリオダイゼーションに精通していて、解剖生理学やトレーニング学についても熟知していると思われるラインダースであれば、「トップ・パフォーマンスを維持するためには、シーズン中のどこかでハードなトレーニングが必要なこと」、「ハードなトレーニングの後には疲労等で一時的にパフォーマンスが低下する」なんていう、トレーニング学の基本的な事を知らないはずがありません。
要するに、キャンプ後にパフォーマンスが低調なのは、ある程度狙って行っているはずだと推測できるのです。
もちろん、負けたりはしないように、ある程度トレーニングの負荷を調整していると思いますが、そこはなにせ世界一のプレミアリーグ。毎回、思う様には行きません。
5.1月のドバイ・キャンプが持つ意味
激しいトレーニングをこなしても、その効果は1年どころか半年ももたないでしょう。特にリバプールは、スカッドが薄い中、今後週に2回試合をこなす過密日程が続きます。恐らく、ほとんどオフも無い中、リカバリー・セッション→戦術練習→試合→リカバリー・セッション・・・・という日々が続いていくはずです。ハードなトレーニングが行えない上に、週に1~2回行うサッカーの試合によって徐々に筋力が低下していきます。
残念ながらサッカーを週に1~2回行うことでどの程度筋力が低下するかを示した研究は見当たらなかったので、私の勘になりますが、ハードなトレーニングの効果はもって3か月、つまり4月の終盤くらいまでは今回のキャンプの効果がある程度持続すると思われます。昨年同様CL決勝まで進出した際には、リーグ最終節から決勝まで2週間試合が無いので、その間にまた今回の様なハードなトレーニングを行うかもしれません。
6.CL直前の2月の合宿の目的と、実際に行われるであろう練習等
冒頭にも述べた通り、CLバイエルン戦直前にもキャンプ行われるという事で、「キャンプ明け、また低調なパフォーマンスになるんじゃ?」と心配の声がチラホラ聞こえてきています。
「再掲」
ドバイのキャンプの写真が出回ってないの、情報を遮断してんじゃなくてグダグダ過ぎて見せられたもんじゃなかった説。次のキャンプはしっかりと何してたのか明らかにしてくれる事を希望する!
— Miya@超主観的YNWA (@my_ynwa_red) 2019年2月9日
しかし、今回はバイエルン・ミュンヘンとの重要な一戦の直前なので、フィジカルの向上ではなく、戦術的練習の割合が高くなると思われます。もちろん試合勘という意味では10日間も試合から離れてしまうので、鈍る部分はあると思います。しかし優秀なペップが練習の強度を調整するでしょうから、1月のキャンプの様にパフォーマンス低下を招くほどコンディションを崩すようなことは無いと思います。
と、ここまで頑張って書いてきたんですが、ほぼ同じ内容の事を番記者のピアースがモリニューでの敗戦後の1月18日に呟いていました。
Klopp on next week’s training camp: “We will have recovery and rest. We will try to bring everyone in the best shape for the rest of the season. If you are out of the cup, you can suffer or you can use the time.” #LFC
— James Pearce (@JamesPearceEcho) 2019年1月18日
クロップは来週のキャンプについてこう語りました。「我々は回復と休養の時間を得られるだろう。残りのシーズン、全員が最高の状態で臨めるように努力するよ。カップ戦に負けるのは愉快な事じゃないけど、その分、時間を得る事ができるね」(筆者訳)
ちなみに、下記記事にはバイエルン戦直前のキャンプについても記述ありです。
Just five games in six weeks, a warm weather training camp and 10 days to prepare for Bayern. Klopp will get exactly what he craves after early FA Cup exit. Now he must make it count. #LFC
— James Pearce (@JamesPearceEcho) 2019年1月8日
Liverpool will have another blank weekend – giving Klopp a full 10 days to get his tactical master-plan sorted for the Bayern showdown.
「リバプールはまた別に(2月にも)試合の無い週末があります。それによってクロップはバイエルン戦に向けた戦術プランを落とし込むための10日間を得る事ができます(筆者訳」
ちなみに、スパーズサポの方ですが、こんなツイートも。素晴らしい観察眼。
リバプール、ドバイキャンプは2週間ぐらいしたら効いてくるやろ。
逆にスパーズは毎年バルセロナでキャンプしてて後半ブーストしてたけど、今年はキャンプしてないから怖い…。— ヴィンセント (@suprs_yido71) 2019年2月5日
6.まとめ
1月のドバイ・キャンプ直後のレスターとウエスト・ハムとの試合こそ、リバプールの選手は低調なパフォーマンスに終始したが、その後のボーンマス戦では以前の様なキレのある動きを取り戻した。以上の客観的事実から、ドバイ・キャンプではシーズン後半戦に向けた体力、特に筋力の維持・向上を目的にハードなトレーニングが行われた可能性が高い。シーズン終盤、尻すぼみする他チームを横目にリバプールが快進撃を続け、リーグとCLの2冠を達成した場合、1月のキャンプが果たした役割はとてつもなく大きい物だったと言えるかもしれない。
執筆後記
試合と準備運動様の練習の冒頭しか見れない我々サポーターからすると、戦術や采配でも度々疑問に思うような事がありますが、恐らくクロップの言動や判断には全て何かしらの意味があると思われます。いいですか?大事な部分なので繰り返します。
クロップの言動・判断全てに意味があります
そういう前提に立って考えてみると、キャンプ後に低調なパフォーマンスであっても、ここまで書いてきたような意味があったんだろうと、私個人は推測しました。
ハードなトレーニングをしたかどうか、実際は不明ですが、番記者のピアースがあんな事を書いてるんで、何かしらの意味があった事は間違いないと思います。
それではまたどこかでぇ(^^♪
YNWA
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