リバプールのCOO アンディ・ヒューズの紹介〜データとヒューズのコメントからリバプールの財政面を読みとる〜

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ヘンリー

ヘンリー

ヘンリーです。FSGやオーナーであるジョン・ヘンリー関連の記事を書いていこうと思っています。基本まったりとやっていきます。

3 ヒューズのコメントからリバプールの財政施策を見る

①『インフラ整備』

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irishtimes.comでの記事において、ヒューズは現在のリバプールの財政施策に関して以下のようにコメントしています。

「我々はトップチームへの継続的な投資を行なっています。その上でメインスタンドの拡張に着手し、リバプールとベルファストの小売店の改装は完了しています。現在はトップチームと若手選手を一堂に集めるためのカークビーの再開発について相談しています。」

「これらの投資はすべて、さらなる進展をもたらし、クラブの財政的地位を強化し、最終的にはフットボールにおけるすべての野望を支える役割を果たすのです」

irishtimes.comから引用

このヒューズのコメントから、FSGはトップチームの戦力補強と育成設備の強化、施設面でのインフラの強化を重点的に行なっていることが読み取れると思います。このヒューズが挙げた項目の中から、アンフィールド拡張について少し昔のデータとなってしまいますが見てみたいと思います。

 

・リバプール2013-15シーズンの収入内訳

swissramble.blogspot.jpより引用

まず、上に挙げたのが、swissramble.blogspot.jpで取り上げられていたリバプールの2013-14シーズンと2014-15シーズンの収入内訳を表したグラフとなります。

このグラフを見てみると、両年ともスポンサー収入等の商業面の収入が40%前後で、同じく40%前後で放映権料のよる収入、20%でマッチデイ収入という内訳となっています。

その上で以下に載せたプレミアリーグの他チームとのマッチデイ収入を比較したグラフを見てみると、アーセナルやユナイテッドとはかなり差を開けられていることが読み取れると思います。

 

・リバプール14-15シーズン マッチデイ収入

swissramble.blogspot.jpより引用

また、以下に挙げるのが2014-15シーズンの平均入場者数の他チームとの比較データになりますが、やはりアーセナルとユナイテッドが突出していることが分かります。

・2014-15シーズン 平均入場者数

swissramble.blogspot.jpより引用

 以上のようにマッチデイ収入は多くの収容人数を誇るスタジアムを持っているチームが上位についています。実際、いわゆるビッグ6の中でランキングの一番下に位置しているトッテナムが新スタジアム建設に着手したように、スタジアムのキャパシティは入場収入の面でかなりの比重を占めていることが分かります。

 www.liverpoolfc.comによるメインスタンド拡張に関するページによると、座席数を8500席増やしたメインスタンド拡張によってアンフィールドの入場者数は平均5万3000人を超えるなど、効果を挙げています。

このことについてヒューズは以下のようにコメントしています。

 「メインスタンドの拡張プロジェクトが成功したことは大変喜ばしいことです。そしてKOPからのフィードバックは信じられないほどです。この規模の建設プロジェクトが時間通りかつ予算内で行われるためには、関係するすべての人が優れた成果を上げていることが要因なのです。」

http://www.liverpoolfc.comより引用

同じ記事によれば、今後は以下のように各インフラ整備を進めていく計画だそうです。

  • スタジアム拡張の第二段階 アンフィールド・ロードの拡張
  • アンフィールドの車椅子スペースの拡張とバリアフリー化
  • ピッチの芝のリニューアル
  • スタジアムの外にあるオフィシャルショップの追加設置
  • カークビーにある練習場の拡大

これらのインフラ整備の重要性を、ヒューズは以下のようにコメントしています。

これらのすべての進展は、チームの継続的な改善と究極的なサポートにつながるクラブの戦略の重要な部分です。同様に、我々はクラブの運営を引き続き管理し、築き上げた財務の安定性を維持しなければならないのです。」

http://www.liverpoolfc.comより引用

以上のように、ヒューズのコメントとデータを基にアンフィールド拡張計画等のインフラ整備について紹介しましたが、インフラ整備によってさらなる収入の増加を図っていることが見えてきたと思います。

次の節では、同じくswissramble.blogspot.jpのデータを使用しながら、商業面での収入について見ていきたいと思います。

②『商業面の収入という課題』

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www.irishtimes.comの記事でヒューズは、リバプールは前の節で取り上げた「マッチデー収入」、「放映権収入」、「商業面の収入」を安定して確保し続けていることをコメントしています。

「基本的な収入の増加は、選手の移籍費用、賃金、代理店の費用を伴うサッカーの上昇にもかかわらず、クラブの財政的地位をさらに強めるものとなります。」

「我々は、クラブの長期的な財務の安定性をさらに確保する新しい5年間の与信枠に合意しました。すべての3つの主要な収入の流れは強さを示し続け、商業収入はアンフィールドでの順位の影響に関係なくしっかりと保持されています。

www.irishtimes.comより引用

 

・ 2010年-2015年のリバプールの財政収入

swissramble.blogspot.jpより引用

swissramble.blogspot.jpのデータを使い、先ほどのヒューズのコメントを検証してみると、確かに2011年の買収以来、クラブの収入は右肩上がりとなっており、クラブの順位と関係なく安定して上昇していることが分かります。

以上のようにFSGが買収してからのリバプールは安定した収入の増加を達成していますが、他のクラブと比較してみるとまだまだ少ない結果となっています。

・デロイトによるフットボール・マネーリーグの2014-15シーズン

(www2.deloitte.comよりswissramble.blogspot.jp作者が表作成)

swissramble.blogspot.jpより引用

このデロイト・フットボール・マネーリーグとは、デロイトが各フットボールクラブにおける総収入をランキング形式で発表しているものです。この指標を見てみると、総収入においては上位クラブとはまだ差があるように見えます。特にこの中でもスポンサー収入などの商業収入に関してはまだユナイテッドと2倍近くの差があります。

swissramble.blogspot.jpが特に課題としているのは、ユニフォームのシャツスポンサー収入です。リバプールのシャツスポンサー契約は年間2500万ポンドとされていますが、ユナイテッドの4700万ポンド、チェルシーの4000万ポンド、アーセナルの3000万ポンドと比べて低くなっています。

以上の内容をまとめると、確かにヒューズのコメント通り、FSGが買収してからのリバプールは毎年収入を安定的に増加させてはいますが、商業収入の面からみると上位クラブとはまだ差があります。これを改善するため、ホーガンの記事でも紹介したメインスタンド命名権の売却や、アジアにおけるマーケティングの拡大等、FSGはクラブのブランド価値のさらなる向上を図っています。

4 現在の商業収入増加への動きとまとめ

(Claymore Winesとリバプールとのコラボワイン)

https://www.claymorewines.com.au/Liverpool-FC/Photo-Galleryより引用

リバプール公式サイトでのヒューズによるリバプールの2016年の財務発表で、現在のリバプールの状況が発表されていますのでそれを要約する形で紹介します。

  • FSGがLFCの所有権を取得して以来、総収入は過去最高額となり、前年比で増加
  • Draftkings、Vixlet、Claymore Wines、Skypeを含む10の新しいパートナーシップの発表。
  • 既存の4つのスポンサーとのパートナーシップの更新。
  • 中国のJD.comに正式なLFCオンラインストアの立ち上げ。
  • LFCウェブサイトにおけるアラビア語、フランス語、スペイン語の追加。
  • クラブ公式SNSの新しいフォロワーが18%増え、クラブのソーシャルメディアプラットフォーム全体での合計で5千万人越えを達成。

http://www.liverpoolfc.comより引用

以上のように、リバプールは商業収入のさらなる確保のために、新たなスポンサー契約の拡大や、クラブの世界的なマーケティングの拡大に動いていることが分かります。

これを踏まえてヒューズは現在クラブは世界規模のマーケティングを重視していることを以下のようにコメントしています。

「ほぼ1年前のこの報告期間以来、我々は堅調な財務の進展を続けています。」

「メインスタンド拡張と新たな放映権の契約が成功したことに加えて、 私たちの商業活動は、新たなパートナーシップの拡大、世界的なグッズ販売の成長、世界規模のサッカースクールの発展、そしてオーストラリアで最近開かれたアカデミーで成功し続けています。」

世界中のサポーターと直接つながることは、デジタル戦略の重要な部分であり、非常に重要です。私たちは引き続きSNSへの参加を目指しており、世界中のTwitterアカウントで700万人のフォロワーに近づいています。」

www.liverpoolfc.comより引用

以上書いてきたことを踏まえて、今回の記事のまとめとしますが、FSGの買収以来、前オーナーの時代に負っていたクラブの負債は確実に減少しています。

しかし、第2章で挙げたようにクラブはまだまだ銀行からの借り入れやFSGからの借り入れを使用している状態です。さらなる収入の増加のために、FSGはアンフィールドの拡張によるマッチデイ収入のさらなる増加や、ヒューズのコメントにもあるように、クラブの世界規模でのブランド力向上によるスポンサー収入の増額を試みています。

今後もFSGの施策を見るにあたり、競技面の成績だけでなく、スポンサー収入や入場客収入等のクラブの収入がどのように変化していくのかを見ていくことも面白いかもしれません。

今回も長めの記事となってしまい、引用が多い記事となってしまいましたが、最後までお読み頂きありがとうございます。

参考

・今回の記事を書く上で入り口にさせて頂いた、szakeさんのマンチェスターシティの財政に関するブログ記事

http://wegottadigitupsomehow.hatenablog.com/entry/2017/08/09/002342

・swissramble.blogspot.jpによるリバプールの財務に関するブログ記事

今回取り上げたテーマ以外にも様々な視点からリバプールの財政について考察していますので興味のある方は是非

http://swissramble.blogspot.jp/search/label/Liverpool?updated-max=2016-11-22T07:17:00%2B01:00&max-results=20&start=1&by-date=false

・アンフィールド・ロード拡張に関するヒューズのコメント

http://www.liverpoolecho.co.uk/sport/football/football-news/liverpool-consider-further-anfield-expansion-12988877

・アンディ・ヒューズとアンフィールド拡張計画に関するコメント

http://sportslens.com/the-most-important-signing-liverpool-will-make-this-summer/109426/

・メインスタンド拡張計画に関するヒューズのコメント

http://www.liverpoolfc.com/news/announcements/262361-anfield-s-main-stand-nears-completion

・www.insidermedia.comによる、前財務責任者の辞任

https://www.insidermedia.com/insider/northwest/liverpool-fc-vice-chairman-departs

・irishtimes.comによるリバプールの財政とヒューズのコメント

https://www.irishtimes.com/business/liverpool-fc-make-19-8m-loss-despite-record-301m-revenue-1.2993452

・www.insidermedia.comによる、ヒューズの紹介

https://www.insidermedia.com/insider/northwest/liverpool-fc-strengthen-board-of-direc

リバプール公式サイトでのヒューズによるリバプールの2016年の財務発表

http://www.liverpoolfc.com/news/announcements/255334-lfc-announces-financial-results-for-year-to-may-2016

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