リバプールとレッドソックスの強化体制を比較する~『客観』から『主観』へ揺れるFSG~

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ヘンリー

ヘンリー

ヘンリーです。FSGやオーナーであるジョン・ヘンリー関連の記事を書いていこうと思っています。基本まったりとやっていきます。

4考察 FSGは大型補強が苦手?

 

ここまでは、レッドソックスとリバプールの強化体制の比較から、それぞれのチームが「客観」メインの補強から「主観」メインの補強へと移っていることを挙げましたが、なぜそうなったのかをこの章では考察したいと思います。

以下の表は、レッドソックスがワールドシリーズ制覇を成し遂げた2004年からチェリントンが退任する2015年までのレッドソックスの順位をまとめたものです。

試合数 勝ち数 負け数 地区順位 プレーオフ
2015 162 78 84 5th of 5
2014 162 71 91 5th of 5
2013 162 97 65 1st of 5 ワールドシリーズ制覇
2012 162 69 93 5th of 5
2011 162 90 72 3rd of 5
2010 162 89 73 3rd of 5
2009 162 95 67 2nd of 5 プレーオフ敗退
2008 162 95 67 2nd of 5 プレーオフ敗退
2007 162 96 66 1st of 5 ワールドシリーズ制覇
2006 162 86 76 3rd of 5
2005 162 95 67 2nd of 5 プレーオフ敗退
2004 162 98 64 2nd of 5 ワールドシリーズ制覇

https://www.baseball-reference.com/teams/BOS/を参照

ここまでレッドソックス側では、エプスタインとチェリントンの成功例しか紹介していませんでしたが、実はエプスタインとチェリントンが退任した理由として、それぞれが退任する以前のシーズンの大型補強の失敗が挙げられます。

上の表で太字にしたのは、エプスタインとチェリントンが退任したシーズンの成績です。両シーズンとも、成績が振るわずに両名が退任する結果となっていますが、両者が退任する引き金になったのは、大型補強の失敗が理由です。

スポーツナビのコラムで、エプスタインとチェリントンの二人の大型補強の失敗について書かれていますので、それを基に、記事を進めていきます。

① エプスタインの大型補強の失敗

(カール・クロフォード)

2011年、レッドソックスはワールドチャンピオンの獲得を目指し、大型補強を断行します。
サンディエゴ・パドレスから、エイドリアン・ゴンザレスをトレードで獲得。その直後に契約延長を行い、7年総額1億5400万ドルの大型契約を結びました。
また、カール・クロフォードとはFAで契約し、7年総額1億4200万ドルの大型契約を結んでいます。
このシーズンでは、9月までは好調でしたが、シーズン残り1ヶ月で急失速し、プレーオフを逃してしまいます。その責任を取り、エプスタインは退任いたしました。

以下に挙げるのが、クロフォードの移籍前と移籍後の2年間の成績なのですが、打率、本塁打、盗塁の数が激減しています。

・カール・クロフォード 成績比較 ※太字が移籍後

試合数 本塁打 盗塁 打率
2010 154 19 47 .307
2011 130 11 18 .255
2012 31 3 5 .282

wikipedia を参照

エイドリアン・ゴンザレスの方は、ある程度の成績を残しているのですが、クロフォードの成績が余りに悪かったため、クロフォード単独では引き取り手がおらず、クロフォードと他2選手と一緒にドジャースへとトレードされています。このトレードは、エプスタイン退任後なのですが、クロフォード獲得はエプスタインの大失敗の一つと言われています。

② チェリントンの大型補強の失敗

(パブロ・サンドバル)

2014シーズン地区最下位に終わったレッドソックスは巻き返しを図るため、大型補強に着手します。

デトロイト・タイガースから、リック・ポーセロ投手をトレードで獲得後、4年8250万ドルで契約。ポーセロはシーズンで不振に陥り、結果を残せませんでした。
FA補強でハンリー・ラミレスを4年8800万ドルで契約。ラミレスも打率が低く、年俸分の働きは見せられずに終わり、同じくFA補強で契約したパブロ・サンドバルとは5年9500万ドルで獲得しますが、低調な成績に終わり、期待された成績を残せませんでした。

・ハンリー・ラミレス 成績 ※打率は3割以上で好成績

試合数 本塁打 打率
2014 128 13 .283
2015 105 19 .249

wikipedia より参照

 

・パブロ・サンドバル 成績

試合数 本塁打 打率
2014 157 16 .279
2015 126 10 .245

wikipediaより参照

 

・リック・ポーセロ 成績  ※防御率は低い方が好成績

登板数 勝利数 敗戦数 防御率
2014 32 15 13 3.43
2015 28 9 15 4.92

wikipediaより参照

結局、チームは最下位に終わり、チェリントンは退任します。
この両名とも成功した補強もありますが、チームが勝負をかけたシーズンの大型補強に失敗した結果。職を離れるという結果になってしまっています。

以上のように、レッドソックスでは、勝負をかけて大型補強をしたシーズンで失敗してしまったケースが2度あります。反対にリバプールではどうなのかを次に紹介しようと思います。

③ リバプールと大型補強

・2010-ロジャース監督期までの移籍金1000万ポンド以上の選手

Club Transfer sum
2010-11(冬季)
Andy Carroll Newcastle £41,00m
Luis Suárez AFC Ajax £26,50 m
2011-12
Stewart Downing Aston Villa £20.52m
Jordan Henderson Sunderland £16.20m
2012-13
Joe Allen Swansea £17.10m
Daniel Sturridge Chelsea £13.50m
Fabio Borini AS Roma £11.00m
2013-14
Mamadou Sakho Paris SG £17.10m
2014-15
Adam Lallana Southampton £27.90m
Dejan Lovren Southampton £22.77m
Lazar Markovic Benfica £22.50m
Mario Balotelli AC Milan £18.00m
Alberto Moreno Sevilla FC £16.20m
Divock Origi LOSC Lille £11.37m
Emre Can Bay. Leverkusen £10.80m
2015-16
Christian Benteke Aston Villa £41.85m
Roberto Firmino TSG Hoffenheim £36.90m
Nathaniel Clyne Southampton £15.93m

www.transfermarkt.co.ukより引用

以上引用したのが、リバプールのFSGが買収してから、ロジャース期までの補強で移籍金1000万ポンド以上の選手を抜き出したものです。

見にくくなってしまい、申し訳ありませんが、太字で示している選手は、現在退団もしくは戦力外の扱いを受けている選手です
スアレスなどの引き抜かれた選手はいますが、このように見てみると、高額の投資を行なった選手の退団数が多いことが目立っています。

このように、FSGはデータを使った「過小評価された選手の発掘」は得意としていますが、
リスクがあるが、即効性のある高額投資を苦手としています。

その理由として、レッドソックスは「マネー・ボール」戦略が他球団にも広がったため、「過小評価された選手の発掘」が難しくなっている点と、FA補強の場合は既に成績を残している選手のため、データを使用しても、契約金額が上がってしまう点。リバプールは、コモリの「マネーボール戦略」がサッカー界に合っていなかったこと、ロジャース時は補強の意思決定がブレてしまったのが原因と考えられます。

それを踏まえ、レッドソックスでは多数のトレードやFA補強を成功させてきたドンブロウスキー。リバプールでは、現在のリバプールの戦術を一番よく知り、ドルトムントでの成功実績のあるクロップの両名の主観を重視するようになったのではと思います。

5 まとめ

 

今回の記事をまとめると、レッドソックスとリバプールの補強体制は、データメインの「客観的」な補強体制から、監督や補強責任者の意向やスカウトの経験を重視する「主観的」な補強体制に切り替わっていると言えます。

今シーズンのサッカー界の移籍マーケットでは、移籍金のインフレが進み、選手の移籍に対して高額な移籍金が必要になるケースが増えています。よって、より高額化する移籍金が必要な大型補強に失敗してしまうと多大な損失を抱えるリスクが増大しています。

また、MLBでも選手の年俸額は年々増加しており、補強を失敗してしまうと、長期間、多額の無駄金を払い続けることになってしまいます。

レッドソックスとリバプールともに理由はそれぞれ違いますが、クロップとドンブロウスキーが就任したのが同じ2015年であり、そこから「主観的」な補強方針に変わったのは、双方の失敗を踏まえ、高額な選手補強を確実にモノにするためであると思います。

今後、チームの移籍戦略が上手くいくかは分かりませんが、今回書いた内容を基にリバプールとレッドソックスを追っていくと、より面白いかと思いますので、頭の片隅に入れて頂ければと思います。

今回も非常に長い記事となり、分かりづらい部分もあったかと思いますが、最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

参考

・レッドソックス側

FOX スポーツによる、ベン・チェリントンの成功と失敗

http://www.foxsports.com/mlb/just-a-bit-outside/story/boston-red-sox-general-manager-ben-cherington-downfall-hanley-ramirez-081915

www.fangraphs.comによる、レッドソックスとタイガースのスカウティングの比較

The Tigers, the Red Sox and Advance Scouting

エプスタインの紹介記事 レッドソックス公式サイト

http://boston.redsox.mlb.com/bos/fenwaypark100/gm.jsp?year=2006_2011

ドンブロウスキはセーバーメトリクスを使うのかという記事

Will Dave Dombrowski mean less analytics for the Red Sox?

FOXスポーツによる、レッドソックスの強化方針の変化

http://www.foxsports.com/mlb/story/boston-red-sox-john-henry-analytics-sabermetrics-theo-epstein-ben-cherington-liverpool-bpl-022516

ベン・チェリントンの略歴 レッドソックスプレスリリースよりhttp://boston.redsox.mlb.com/bos/fenwaypark100/gm.jsp?year=2011_present

sports.vice.comによる、チェリントンからドンブロウスキーへの転換https://sports.vice.com/en_us/article/gv7zgj/dave-dombrowski-and-the-end-and-the-beginning-of-the-red-sox

si.comによる、エプスタインの2002年のチームづくりに関する記事https://www.si.com/vault/2002/12/23/8109398/the-babe-is-28yearold-theo-epsteinthe-youngest-gm-in-historyready-for-one-of-baseballs-most-scrutinized-jobs-running-the-red-sox-hed-better-be#

slate.comによる、エプスタインに関する記事 レッドソックス部分のみ参照

http://www.slate.com/articles/sports/sports_nut/2016/10/theo_epstein_saved_the_red_sox_now_he_s_rescuing_the_cubs_here_s_how.html

レッドソックス公式サイトによる、ベン・チェリントンの紹介記事

http://boston.redsox.mlb.com/bos/fenwaypark100/gm.jsp?year=2011_present

スポーツナビのレッドソックス低迷に関する記事https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201508070005-spnavi?p=1

スポニチの上原に関する記事http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2013/11/02/kiji/K20131102006929980.html

J sports のGM変更に関する記事http://www.jsports.co.jp/press/article/N2015082111093801_3.html

 

・リバプール側

BBCによる、コモリとセイバー・メトリクスに関する考察記事http://news.bbc.co.uk/sport2/hi/football/teams/l/liverpool/9156815.stm

BBCによる、なぜロジャースは解雇されたのかに関する考察記事http://www.bbc.com/sport/football/34440168

sports.vice.comによる、ダミアン・コモリとマネーボールhttps://sports.vice.com/en_us/article/jpz4ed/damien-comollisoccers-would-be-moneyball-heroon-how-it-all-went-wrong

thisisanfield.comによる、ロジャースVS移籍委員会の記事

Brendan Rodgers vs. The Transfer Committee: Myths, mistakes and Liverpool’s transfer strategy

Thisisanfield.comによる、移籍委員会のメンバーに関する、説明記事

The Liverpool FC transfer committee explained

tomkinstimes.comによる、コモリが用いた統計理論に関する考察記事

Moneyball Statistics and Damien Comolli

ガーディアン紙による『The Secret Footballer』コラム 1

https://www.theguardian.com/football/blog/2012/apr/06/the-secret-footballer-andy-carroll

ガーディアン紙によるコラム「Secret footballer」2 サッカーとマネーボールhttps://www.theguardian.com/football/blog/2012/apr/13/secret-footballer-moneyball-stoke-liverpool

リバプール・エコー ジェームズ・ピアースによる、今夏の移籍マーケットに関するQ and A 記事http://www.liverpoolecho.co.uk/sport/football/transfer-news/lfc-reporter-james-pearce-van-13258270

bbc.comによる、ダミアン・コモリがリバプールを離れた際の考察記事http://www.bbc.com/sport/football/17687524

サイモン・クーパーのコラム1

https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/wfootball/2012/08/26/post_153/index_4.php

サイモン・クーパーのコラム2

https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/wfootball/2012/08/27/post_154/index_3.php

worldsoccertalk.comによる「なぜサッカーでマネーボール理論が上手くいかないのか」に関する考察記事https://worldsoccertalk.com/2012/06/06/why-moneyball-will-not-work-in-soccer/

 

2 件のコメント

  •  こんにちは!! ボクの好きな「マネー・ボール」とリヴァプールが、こんな関係

    で繋がっていたなんて!? とても興味深く読ませて頂き、勉強になりました♪ 

    • 背番号4さん、コメントありがとうございます。
      そう言って頂けて、嬉しく思いますし、励みになります!
      現在書いている記事でも「マネー・ボール」が出てくる予定なので、お読み頂けると嬉しいです。

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