タイトル獲得時にたまに出るあの手の動画を少し掘り下げてみた

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かぴばろ
2018頃からの新参者です。池袋エリアのサウナに割と出没しがちです。体重だけならマティプとファンダイクに肩を並べられるおデブです。

はじめに

突然ですが、皆さんはリバプールFC公式によって制作されるこの手の動画を見かけたことがあるでしょうか。

このような動画はリバプールが主要的なタイトルを獲得した際に時折出てきます。

通称チャンピオンズウォールと呼ばれているこちらはリバプールのホームグラウンドであるアンフィールド、そして2020年までの練習場であったメルウッド(現在は女子専用施設)の通用口壁面に大きく形作られている歴戦のトロフィー獲得の証。

その証を新たなトロフィーの獲得に伴い、新しくリニューアルする時の工程を映し出すことでクラブが成し得たことを実感させるような気持ちの良いPRとなっています。

(ちなみに昨季は一応コミュニティシールドというトロフィーの形をした物を貰ってはいますが、こちらのチャンピオンズウォールにはどうやら含まれていないみたいです)。

今回は、この動画内から読み取れる一連の作業について少しばかり掘り下げてみたいと思います。

何の工事?

これらの工事は、日本の場合「サイン工事」と呼ばれるものの部類になります。簡単に言うと建物の看板や案内表示を製作する工事です。大きいオフィスの壁に付いているような社名ロゴ、階層表示、フロアマップ、トイレの男女マーク等…。

公共の建物を利用する際、まず避けては通れない物ですが、建築業界ではこれらを総称して「サイン」と言います。完成後の建物においての案内・指示役となる重要な工事であるため、考え方次第では建築工事一式のうちで最も華やかな物といえるかもしれません。

参考までに、サイン工事と検索したら上位に出てきた工事請負会社のサイトURLを以下に添付しておきます。余談ではありますが、これを読まれている方の中で今後自分が所属する会社のサイン工事を依頼したい、またはプライベートで少しお金をかけてでも依頼したいという方がいらっしゃるようでしたらこのような会社に一度連絡してみてはいかがでしょうか。

ナガサワ文具センター

パーテーションラボ

小澤忠商店

各工程について

動画内に登場するサイン工事の進行過程について、見え得る範囲の情報を拾ってお話していきます。今回は冒頭で紹介した動画と以下の動画、計2本を参考にしました。

このように立体的に見せるタイプ。

 

画像出典:@LFC

そして壁に直接デザインされたかのように見せるタイプ。

画像出典:@LFC

立体的に見せるタイプの方から順を追って掘り下げてみます。

・既存サインの取り外し

画像出典:@LFC

説明するまでも無い工程ではありますが、新しいサインを取り付けるために既存のサインを取り外します。

詳しくは後述しますが、サイン自体は接着剤の類で付いているかと思われるため、既存の壁に接着剤の汚れが付着していたらきっちり掃除して表面を綺麗にします。単純な話ではありますが、新しく取り付けるサインの材質次第では取り付け先の壁の表面が平らではなかった場合、接着不良を起こしたり仕上がりに凹凸が出て不十分なクオリティに仕上がってしまうためです。

・取り付け位置の設定

画像出典:@LFC

サインの取り付けは人の手でやっているため、何気なく見える工程でも念には念を入れて位置調整をしないと出来上がり後にサインが斜めに付くなどして不恰好になってしまいます。

立体的に見せるタイプの各文字や絵が独立しているタイプのサインについては同じように形取った台紙等を先に壁に貼り付け、それに合わせて施工していく必要があります。

今回の動画では上の画像のような巨大かつサインの形に切り抜かれている台紙を壁に貼り付け、それをベースに取り付けしている様子が窺えます。

さて、今回のケースにてサインが斜めにならないような取り付け位置調整のために平行なラインを出したい場合。皆さんはどのような出し方を思い付くでしょうか。

「サインを付ける壁の端と端で同じ高さのところに印を付け、それを一本の線で結ぶ」といった方法を思いついた方もいるかもしれません。

では、その印を打つ同じ高さはどうやって求めるのか。

床にメジャー(巻尺)の0を合わせ、そこから印をつけたい高さのところにメジャーを伸ばして印を打つ。

この方法は危険です。建物というのは経年変化を起こすのが当たり前で、一見平らに見える床でも実は部分的に大きく沈んでいると言ったケースはザラにあります。

また、本当はあってはならないことですが、そもそもの床を仕上げるまでに至る建築過程で何らかの不備があり、人の目では気付かない程度に床の高さが揃っていない状況になるということも可能性として0ではありません。

床程度の高さ不揃いであれば一見して目立たないのですが、サインのような視覚に対して対面する形のデザイン性が強い見栄え物だと床に比べて平行ラインからのズレが目立ってしまいます。

端と端でメジャーを当てて同じ高さを出したものの、そのうち片方がたまたま大きく床が沈んでいる範囲に含まれていた場合…。サインの仕上がりがどのように見えてしまうかは想像に難くないでしょう。

ところで、同様のシーンにてこのような緑色の光線が出ていることにお気付きでしょうか。

画像出典:@LFC

これはレーザー墨出し器と言い、建築に於いては非常に多くの場面で活躍しています。

画像出典:mybest

詳しい使い方は説明を省略しますが、その場所にある建物の歪みに左右されず、地球上の地面との平行ラインを確実に出してくれる道具です。

先ほどの台紙を壁に当てて微調整しているシーンを見ると、タイトル獲得の回数の上に書かれたラインに緑色の光線を合わせていることが確認できます。こうして視覚的に斜めにならない取り付け位置を決定し、いよいよ本格的な取り付けに入るという流れです。この位置決定の工程が最もシビアかつ重要な部分と言えるでしょう。

・取り付け

画像出典:@LFC

画像出典:@LFC

動画を見るに、この工事にて使用している立体タイプのサインはシンプルに接着剤+両面テープで取り付けるものでしょう。アクリル素材なのか金物素材なのかは定かではありませんが、3Dに作り上げた文字を1つ1つ丁寧に接着していく形と思われます。接着剤や両面テープと言っても皆さんの日常で見かけるような物ではなく、ホームセンターに行かないと売っていないような工事用の物を使うのが一般的です。

余談ですが、立体的に見せるタイプのサインの施工法の一つとしてこのようにサインにピンを取り付け、そのピンを壁に直接打ち込むという方法もあったりします。

画像出典:kirimojisign.com

ところで、「トロフィー獲得回数が増えただけならば数字だけを貼り変えればいいだろうに何故全体的に貼り変えているのか?」という疑問も個人的にはあります。

真相は定かでは無いのであくまで予想に過ぎませんが、部分的に触ろうとすることによって全体のバランスを損なうのを恐れ、それならばいっそまとめて一新してしまおうということでしょうかね。取り付け位置を決めるための例の台紙も数字が変わるだけで全体的に作り直す必要がありそうですし(と言ってもあの台紙の印刷データ自体は過去のものが記録として残っているでしょうけど…)。

そう考えたら単純にクラブ側の気分でいっそ全体的に…ということかもしれません。リバプール、というかサッカークラブの経営規模から見た時、この程度の内装工事の単価なんてたかが知れていますからね。

次はアンフィールドの通路の壁について掘り下げていきます。

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