フェデリコ・キエーザのプレースタイル/プロフィール解説|リバプール選手名鑑

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基本プロフィール

画像出典:LFC公式Twitter

  • 選手名:フェデリコ・キエーザ
  • 生年月日:1997年10月25日
  • 国籍:イタリア
  • 身長:175cm
  • ポジション:RWG, LWG, SS, CF
  • 背番号:14
  • チームキャリア:フィオレンティーナ(ITA/16-17~), ユヴェントス(ITA/20-21~), リバプール(ENG/24-25~)
  • 市場価格:€35.00Mill.
  • 契約終了年:2028年6月30日

プレースタイル

ストロングポイント

画像出典:LFC公式Twitter

最大の武器はその傑出したスピードとパワー。一度ボールを持てば爆発的なスプリント能力を生かしてオープンスペースを強襲し、単騎でロングカウンターを完結させてしまうだけの高い個人能力を有する。あどけない顔つきからは想像できないが、そのプレースタイルからは「殴って殴って、それでもダメならまだ殴る」という所謂“脳筋”の趣が感じられる。

ドリブルによって自ら積極的に仕掛けるタイプで、トリッキーな足技は滅多に見せず、身体能力に任せた切り替えしやターン、あるいは純粋なスピードで縦のスペースやゴール方向への最短ルートを直線的に突き進むことがほとんど。ただシンプルながらもその破壊力は凄まじく、優れた加速と馬力の合わせ技で強引に仕掛けてくるキエーザの存在は相手DFにとって厄介そのものだろう。

純粋なストライカーではなく本職はウイングだが、それを前提に考えるとシュートのクオリティも目を瞠る。ディオゴ・ジョタほど完璧な両利きというわけではないが、利き足の右はもちろんのこと逆足の左でも強いシュートを打てるのはフィニッシャーとして頼りになるポイントだ。任せる役割によってはゴール/アシストを量産する可能性も秘めているといえる。

獲得当初の位置付け的に、キエーザに求められるポジション上の役割は絶対的な存在であるモハメド・サラーのバックアップをメインに両ウイングの控え(その他、2トップの一角としての起用なども考えられる)、と言ったところだがその点においても左右両足を使えることによって両サイドで起用できるためありがたい。

ちなみに、キエーザ自身は(サラーと同じように)ウイングというポジションに強いこだわりを持っているようだ。ただ、左右に関してはどちらでもかまわないとも言っている。(もちろん与えられるタスクにもよるが)おそらくリバプールの攻撃陣においてもっとも左右でそのクオリティにブレが生じないと考えられるため、ベンチに彼がいると心強いだろう。

キエーザはプレースタイル的にかなりピーキーな性能で、世界の頂点を争うメガクラブで通年レギュラーとして起用するには不向きな選手と言える。そのため、試合の途中で切札として使って暴れてきてもらうのが現状もっとも上手いキエーザの使い方であろう。

ユヴェントスというクラブにおいてのキエーザは最高給取りの一人であり、同時にチーム最大のスターの一人でもあったため、このようなジョーカーとしての起用を立場的に本人は納得しないだろうし、クラブ側からしてもコスパが悪すぎるためできなかったと考えられる。

翻ってリバプールは、キエーザの意思はさておきクラブ内のヒエラルキー的にそういう扱いをする選手として獲得しているはずだ。あとはその役回りを本人に納得させるマネジメントが求められるが、そこはアーネ・スロット新監督のお手並み拝見、といった感じか。キエーザ自身、まずはそういう立場からのスタートであることを受け入れてのリバプール移籍だと思われるので、序列を覆すような活躍をぜひとも見せてほしいところだ。

パーソナリティの観点から見ると、(性格自体は好青年ではあるものの)ピッチの上では扱いやすいタイプではないだろう。強引でもドリブル突破を図ったり、シュートを狙ったりする姿勢からは「自分が試合を決める」といったアタッカーとしての矜持を感じる。ただ、アタッカーであれば多少のエゴイズムは必要であり、重要なのはそれを上手くコントロールすることだ。

現時点でキエーザが自分のプレースタイルやパーソナリティと上手く付き合っているかと言われればやや疑問だが、心機一転、新しい環境に身を置くことでそれがどう変化するかは非常に興味深い。おそらく彼にそこまで難しいことは求められていないはずであり、任された役割を遂行しようとする精神を彼が持ち続ければきっといい未来が待っているだろう。

ウィークポイント

画像出典:ユヴェントス公式Twitter

ボールスキルやクリエイティビティといった点は水準程度で、状況判断能力やインテリジェンスにも怪しさが残る。おそらく、圧倒的なフィジカルを利したプレーで大抵の局面をどうにかしてきてしまったがゆえに、そういった能力が磨かれずここまで来てしまったものだと思われる。

やや厳しいことを言うと、フィオレンティーナで一世を風靡し、ユヴェントスに移籍後も素晴らしいプレーを見せていた若かりし頃からそういった面の成長がほとんど見られない。加えて、過去に負った左膝の前十字靭帯断裂や度重なる筋肉系の故障によってフィットネスの低下が見られる点も厄介。

特にキエーザのような身体能力に依存していた選手にとっては致命的であり、それもあって全盛期のような輝きを放てていないのは誰もが認めるところだろう。これらの事情もあったからこそ今こうしてリバプールに実績や知名度とはかけ離れた破格の移籍金でやってきたわけである。

プレー選択や判断能力の面を掘り下げると、その時々の最適解を選ぶというよりも自分のやりたいプレーを選ぶきらいがある。悪手によってボールをロストするシーンもめずらしくなく、この部分は少しでも改善していかなければならないだろう。

技術的な側面で見るとトラップやタッチが乱れたりすることが少なくない。オープンスペースでは未だ無敵でも狭いスペースでボールを失わずに前進させるようなプレーは(その状況判断能力も相まって)不得手であるため、そのような状況に置かれた場合は優しい気持ちで見守りたい。

単騎での突破や局面を変えるプレーを選びたがるという点でルイス・ディアスとやや似た傾向にあるが、それをフィジカリティに全振りしたバージョンがキエーザといえる。ディアスは囲まれた状況でもキープできる圧倒的なスキルを持ち合わせているが、それでも一人でサッカーをやっている(周囲と上手く連動していない)ように感じられるシーンは多々ある。そのためキエーザからも連動性の欠如を感じる機会がある可能性は否定できない。

試合によってムラがあったり、あるいは試合の中で集中力が継続しなかったりする点も課題の一つ。例えば守備の局面においてプレスに行ったり行かなかったりと、メンタル的なコンディションに左右されやすいのか波が激しい。リバプールはすでにその道のプロであるトレント・アレクサンダー=アーノルドを抱えているが、右サイドでアーノルドとキエーザが縦関係を築いた際は(悪い意味で)凄いことが起きそうな気配がある。

とはいえ、キエーザがチームのために働く精神を持ち合わせていないのかと言われれば当然ながらそんなことはない。前述の通り彼は「自分の力でチームを勝たせる」という意識が強いため、攻守両局面でコレクティブではない動きや選択をしてしまうことが多いだけだ。例えばそれらは単騎による強引な突破やプレスという形で現れると考えられる。やはりここでも彼を上手くチームの中に取り込みプレーさせるマネジメントが求められるだろう。

また、キエーザは対峙する相手にそのフィジカル的な優位性によって巨大な違いを生み出していたが、同じことがイングランドで出来るかどうかは見物だろう。近年、イングランドからイタリアに行きフィジカルにものを言わせたプレーで活躍する選手は少なくないが、その現象の逆パターンだからだ。ただプレミアリーグは組織以上に個人能力が重要視される傾向が強いため、プレースタイルが適しているのはポジティブな要素か。

そしてこれも避けては通れない問題だが、怪我への耐性はお世辞にも高いとは言い難い。元来のフィジカル依存なスタイルに加え大怪我を負ったことも相まって細かい故障を繰り返しては欠場することがめずらしくなく、この点については多くのファンが不安視していることだろう。

これに関してはもはやプレー以前の問題なのだが、ただリバプールへの移籍による立場/役割の変化によって(ローテーション要員やジョーカー役として起用がメインとなれば必然的にプレータイムは減少するので)、これまでと比べて身体にかかる負担は軽減されると思われる。そうでなくとも彼は大怪我から復帰した2022-23シーズン以降の2シーズンでトータル4000分ほどプレーしており、(比べる対象として相応しいかどうかはさておき)同時期に約3000分しかプレーしていないジョタよりは稼働している。環境の変化による怪我の減少に期待したい。

最後になるが、キエーザはそのプレースタイルや年齢、怪我歴などを考えると、全盛期以上のパフォーマンスを発揮することはおろかそれを取り戻すことさえ難しいと考えられる。少なくともフィジカル的なピークの峠はもう越えてしまっただろう。そのため継続性や集中力、プレー選択といった頭や心に抱える課題を克服し補っていくことが今まで以上に求められる。

キエーザが世界最高峰のアタッカーになりえるポテンシャルの持ち主だったことに間違いはなく、これらの課題が改善されれば自ずと結果はついてくるはず。彼の獲得は賭けの要素も強いがそこも含め活躍を楽しみにしたいところだ。

エピソード

画像出典:ユヴェントス公式Twitter

◆「Chiesa(キエーザ)」という名前はイタリア語で「(建築物としての)教会」や「聖堂」という意味を持つ。英語で言うところの「Church(チャーチ)」である。語源は「集会」や「召集された者」といった意味を持つギリシャ語の「ekklēsia」にあり、それが「Ecclesia(エクレシア)」と変化していった。

◆「Federico(フェデリコ)」という名前の語源を辿るとゲルマン祖語にあり、「平和」と「支配/導く」が組み合わされた意味を持つ。ドイツ語だと「Friedrich(フリードリヒ)」、英語やフランス語だと「Frederick(フレデリック)」、ポルトガル語だと「Frederico(フレデリコ)」、そしてイタリア語やスペイン語だと「Federico(フェデリコ)」へとそれぞれ変化する。

◆父は元イタリア代表で名ストライカーだったエンリコ・キエーザ。そんなエンリコはかつて、アンフィールドでゴールを決めたことがある。1996年にイングランドで開催されたUEFA欧州選手権(EURO)のチェコ戦での出来事だ。

◆ジェノア生まれのフィレンツェ育ち。両親の教育方針により、プロのサッカー選手になれれなかった場合に備えてフィレンツェのインターナショナル・スクールに通っていた。そこではイタリア語ではなく英語が使われていたため、キエーザは流暢な英語を操ることができる。

◆サッカーと同じぐらい宇宙が好きだという。宇宙の神秘性に惹かれ、その謎を解き明かしたいと今でも思っているらしく、もしプロになれなければ宇宙物理学を勉強して物理学者を目指していただろうと語っている。また、大学でスポーツ科学を2年間学んでいる。

◆14歳のときにサッカーを辞めようと考えたこともあったとのこと。当時のキエーザは体が小さく痩せていたため、同年代の選手たちとまともに戦えないと感じていたそうだ。しかし、そこで諦めずサッカーを続けることを選択したキエーザ少年。結果的に15歳のとき背が伸び始め、あれは人生における最高の決断だったと振り返っている。

◆2022年5月に「フランク・ランパード、スティーブン・ジェラード、ポール・スコールズの中で最高のMFを1人選ぶなら誰?」という質問に対しジェラードと回答し、話題になった。この3人の中からジェラードを選ぶとは、控えめに言っても最高のセンスの持ち主であると言わざるをえないだろう。

◆リバプールでプレーする7人目のイタリア人選手。これまでのメンバーは、ガブリエル・パレッタ、ダニエル・パデッリ、アンドレア・ドッセーナ、アルベルト・アクィラーニ、ファビオ・ボリーニ、マリオ・バロテッリである(ただし、パレッタはリバプール在籍時まだアルゼンチン国籍)。

◆イタリア代表と同じく、リバプールでの背番号はジョーダン・ヘンダーソンの退団以降、空き番となっていた“14”となった。曰く「リバプールから僕のキャリアを振り返るビデオが送られてきたんだけど、最後に14番を背負った僕が出てきて運命だと思った」とのこと。

 

画像出典:LFC公式Twitter

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