南野拓実のプレースタイル/プロフィール解説|リバプール選手名鑑

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基本プロフィール

画像出典:foebes.com

  • 選手名:南野拓実
  •  生年月日:1995年1月16日
  •  国籍:日本
  •  身長:174㎝
  •  ポジション:CF, ST, LWG, RWG, AMF
  •  背番号:18
  •  クラブキャリア:セレッソ大阪(JPA/12-13~), RBザルツブルク(AUT/14-15~), リバプール(ENG/19-20~)
  •  市場価格:€ 12.00Mill.
  •  契約終了年:2024年6月30日

プレースタイル

ストロングポイント

画像出典:LFC公式Twitter

フィジカル的な観点で見た場合の持ち味は、無駄走りも厭わないスタミナだろう。ハードワークは前提条件であり加点要素にはなりえないかもしれないが、それでも彼の豊富な運動量は魅力的であり、出場機会を争うジェルダン・シャキリやディヴォック・オリギに比べてこの点においては勝っている。

例えば、囮の動きやプレスを掛けるために、強度の高い連続したスプリントを繰り返すことができる。この部分においてはリバプールでも上位に位置するだろう。地味ながらもリバプールの強さの根源ともいえるこの部分を、彼は黙々とこなすことができる。

技術的な観点で目を引くのが切れ味の鋭いターン。ファーストタッチでかわせなくとも、ドリブル中に繰り出されるターンは必見。成功率はさておき、常にファーストタッチでかわそうとしている意識はとても良い。

優れたユーティリティ性も見逃せない。基本システムである逆三角形の4‐3‐3であれば3トップの全てはもちろん、インサイドハーフでの起用も選択肢として出てくる。オプションの4‐2‐3‐1であれば、2列目の全てに加え、CFで起用されることもあるかもしれない。

画像出典:transfermarkt.com

このデータは、南野の出場した試合における起用ポジション。プレータイムによってはデータが欠けているものもあるが、彼が様々なポジションで起用されているのが一目でわかるだろう。現時点で彼の最適解のポジションは見出されていないが、ピッチの半分より上のポジションの全てをカバーできる彼のユーティリティな能力はスカッドに厚みをもたらしている。

ただ、“リバプールの南野拓実”として見た場合の最も優れている点は、傑出した自己犠牲の精神だろう。彼の献身性はリバプールの選手の中でも際立っており、守備力が高いというわけではないが、サボらずにプレスを掛け続ける姿には感銘を受ける。実際に、90分間換算のプレス回数はナビ・ケイタに次ぐ2番に良い数字を誇っている。

例えば、リードを守り切りたい試合終盤に投入し、相手選手へプレスを掛けるクローザーとしての役割が期待できる。とはいえ、20/21シーズンのリバプールは膠着したまま推移しドロー決着になることが頻発している。常にボールを保持しているものの攻め倦ねていることが多いとあっては、前線からのプレスの機会が中々ないのも仕方ない。このような試合展開で南野に声が掛かることは現状ないが、使いどころさえあれば最低限の仕事は保証してくれるだろう。

前述の使い勝手の良さに関しても、彼の利他的なメンタリティが窺える。どのポジションで使っても(もっといえば控えからの出場が多くても)一切文句を言わないだろうし、それを態度に出すこともないだろう。彼は非常にプロフェッショナルな選手だ。

献身性とはいかにも日本人らしい特徴だが、同時に日本人離れしたメンタリティを持っている。例えばセレッソ大阪時代の試合中に放った「うっさいんじゃ、ボケ」(詳細は小ネタ・エピソード欄にて記述)はあまりにも有名。負けん気が強く、ポジティブで積極性のある彼の特徴は、リバプールでもマイナスな変化は見られない。

日本人らしい献身性に、日本人離れした強心臓。この相反する二つのミックスが彼を彼たらしめているのだろう。世界最高峰の選手が集うメガクラブへの挑戦権を手に入れた最大の要因も、身体的/技術的なクオリティ以上に、ここにあると思われる。

ウィークポイント

画像出典:LFC公式Twitter

運動量以外の身体能力は基本的には水準程度、あるいはハンデを持っている部分もある。スピードという観点から見れば、オープンスペースを一人で強襲し、独力でロングカウンターを完結させるような爆発的なスピードは持ち合わせていない。純粋なトップスピードという点でサディオ・マネやモハメド・サラーに劣るし、そもそもそういったプレーを期待されているというわけでもないだろう。

コンタクトに耐えうる絶対的なパワーは明らかに物足りない部分。プレミアリーグが世界で最もフィジカル的に激しいリーグである点を考慮しても、ここは大いに改善の余地を残している。せっかく相手より先にボールに触れても、身体を当てられただけでボールを失ってしまっては元も子もない。とはいえ、稟賦に左右されるスピードとは違い、パワーであれば十分にジム・セッションで向上が期待できる。

身軽さゆえにクイックネスには優れており、それは守備の局面であればプレスで生かされている。攻撃の局面では足元以上に、俊敏さを生かしてスペースを見つけ、そこに積極的に走り込んでボールを呼び込むことが多い。だが、プレスの際に空回りが目立つのは気になるところ。プレーを予測する能力ではなく、俊敏さを生かして無理やり間合いを詰めるタイプなので、間に合ってもボールを奪いきれないシーンは少なくない。

狭いスペースや密集地帯ではドリブルを選択することは稀で、基本的にはパスによるコンビネーションで打開しようとする傾向が強い。というよりも、そもそもドリブルのスピードや技術はこのクラスで違いを生み出せるほどのレベルにはないように見える。そのため、(体裁よく言えば)自分の特徴を理解し、正しい選択ができているとも言える。

しかし、だからといってパスが特筆して優れているわけではなく、精度や強弱、タイミングといった様々な部分でなにかしらのズレが生じてしまう。だが、パスを出す方向やダイレクトでのリターンといった狙い自体はとても良い。ここがハマってくれば、より攻撃の際にアクセントを付けられる選手になってくるだろう。

フィジカルやテクニックで周囲に劣るとなれば、タクティカルな部分でその差を埋める必要があるが、そこもまだ不十分。加入から1年が経った2021年1月時点でもイングランド(あるいはリバプールの)プレースピードやテンポに未だ適応しきれていないように見える。前述したプレスの空回りが目立つのも、これに起因しているのだろう。

例えば、相手よりも先に身体を入れているのに、プレスやコンタクトに対する予測や準備が十分でないのか寄せられるとタッチが乱れロストしてしまうことが多い。かなり軽量級の選手であるため、純粋なコンタクト・プレーに打ち勝つのは難しい。先手を打ってプレスや接触を回避/準備をするしかないし、そうしなければまともにボールを持ってプレーできないだろう。

以前、DAZNの番組で内田篤人が南野にパスを出したジェームズ・ミルナーに対して「パスがよくない。俺ならもっといいパスを出した」と発言した(20/21シーズンの第10節ブライトン戦でのシーン)ことがあった。敵陣の深い位置に走り込んでいた南野へミルナーが縦パスを出すも惜しくも合わずボールを収められなかった場面に対して内田は「ミルナーのパスが悪い」としていたが、筆者は彼とは異なる見解を持っている。

確かにミルナーのパスは強かったが、それはリバプールを日頃見ている身からすると見慣れたパスだった。決して悪いパスではなく、仮に受け手がマネやサラーであれば収まっていたように思う。むしろミルナーが「これくらい追いついて収めてくれよ」と思っていても不思議ではない。もちろん、彼が南野の特徴を理解し、もう少し緩くコントロールしやすいパスを出していれば収まっていたかもしれない(このような臨機応変にパスの強弱を操る技術をミルナーが有しているかは怪しいが)。

だが、結局のところそのような“優しい”パスを収めたとして、次の局面で困難に陥っていたのではないか。ボールを収めるまでに時間がかかれば必然的に相手DFとの距離も近づき、フィニッシュに持っていくまでの難易度も高まる。ミルナーが出したパスを収めることができればチャンスになったかもしれないが、あれよりも弱いパスを収めてもチャンスにはならなかったように思う。

南野がプレーしているリバプールは、ミルナーのあのパスがスタンダードなクラブなのだ。もちろん、人には得手不得手がある。マネやサラーのように多少強引に見えるパスでも無理やり収めて理不尽にゴールを生み出すことは出来ないだろうし、それは仕方のないことだ。だが、あのようなパスを収めることは最低限求められるプレーだろう。身体的にも技術的にもワールドクラスだらけの環境の中で南野が生き残るためには、なによりもまずこの差を埋める必要があるのではないか。

南野は、適正ポジションも絶対的な武器も、イマイチ定まっていないように思う。最前線なのか、サイドなのか、二列目の中央なのか。ストライカーでもなければドリブラーでもないし、ましてやパサーというわけでもない。

爆発的なスピードやパワー、傑出したテクニックといった分かりやすい武器を持っていない彼のようなタイプの究極系は、バイエルンのトーマス・ミュラーだろう。だが、そのミュラーでさえも決して扱いやすいタイプではない。この手の選手は万能で汎用ゆえの難しさという側面を常に抱えており、それに鑑みれば南野の適性が見出せないのも致し方ないのかもしれない。

とはいえ、南野はミュラーのような“クラブの中で最上位のヒエラルキー”に位置する選手ではない。ミュラーのクオリティやヒエラルキーは、彼を中心に組織を構築するようなレベルにあるが、リバプールにおける南野はそうではないため、彼の存在が時にマイナスに働くようなことはない(少々余談だが、リバプールの他の選手が異次元なだけであり、彼のクオリティは日本代表という枠組みで見れば中心に据えるべきレベルにある)。

以上のことから、南野はボールを持って巨大な違いを(コンスタントに)生み出すタイプの選手ではないので、ボールを持っていないときにこそ真価を見せる必要がある。ユルゲン・クロップも南野のスペースを見つける能力や、オフ・ザ・ボールの際の積極性を高く評価しており、期待感は十分に漂わせている。

その証拠に、ここで南野に出していれば、というシーンはめずらしくない。彼がボックス内でいい位置にいる証だ。パスが来ないのは、まだピッチ上での信頼を勝ち取っていないゆえだろう。少ないチャンスをモノにしゴールやアシストといった目に見える結果が伴ってくれば、パスをしてもらえる機会が増え、さらにゴールを生み出す、という好循環を生めるのではないか。

やや厳しいことを書いてしまったが、チームの文脈をより深く理解しフィットすれば彼は今以上にリバプールで活躍できるはずだ。同胞として、彼のリバプールでの活躍を願わずにはいられない。

エピソード・小ネタ

画像出典:number.bunshun.jp

◆南野は1995年1月17日に発生した「阪神淡路大震災」の前日である1月16日に生まれている。拓実という名前の由来は、「自分で開拓して実る」だそうだ。自身の名前の由来を知った時、彼は「名前負けしないように」と決意を新たにしたという。そんな彼の幼馴染には日本代表の室屋成がいる。

◆初めて見たワールドカップは1998年のフランスW杯。憧れていたのはロナウドで、マイケル・オーウェンがアルゼンチン戦で決めたゴールも記憶に残っているそう。

◆南野の負けず嫌いを表すエピソードは数多くあるが、幼馴染の室屋が明かしたものの中に「少年サッカー大会とかでPK戦になると、『俺が止める』とGKに入っていた」というものがある。おそろしいほどの負けず嫌いである。

◆南野を指導していたセレッソ大阪ユースの藤野コーチによると、高校生だった15~16歳の頃はAKB48の大ファンだったようだ。彼のピッチ外の意外な素顔だが、ただ好きだったというわけではなく、海外遠征に行った際にAKB48のグッズを外国人選手にプレゼントし、コミュニケーションを取っていたという。

◆セレッソ大阪時代、地元の野球チームである阪神タイガースの試合に観戦したことを自身のTwitterに載せている。ユニフォームの番号は19番だが、これは彼の同学年にあたる藤浪晋太郎のものだ。

◆前述の「うっさいんじゃ、ボケ」発言について。これはセレッソ大阪時代に、チームメイトのカカウ(元ドイツ代表の大ベテラン)が自身へのパスではなく半ば強引なシュートを選択した南野に対し文句を言ったところ、南野が言い返した(とされる)発言だ。当時のカカウは33歳で19歳だった南野よりも14も年上。もちろんフットボーラーとしての実績も比較にならない。そんな相手に対しても一切物怖じせずに言い返せるというのは、彼の強靭なメンタリティの現れといえる。カカウほどの選手に対して南野のように言い返せる日本人選手は極一握りだろう。仮にこれが若気の至りだったとしても、厳しいプロスポーツの世界においてはむしろ素晴らしいメンタリティともいえる。

◆チアゴ・アルカンタラとリバプールでチームメイトになった南野。実は過去に南野は彼からファンサービスをしてもらっている。15/16シーズン、ウィンター・ブレークのキャンプ地にカタールのドーハを選んでいたバイエルン。それと同時期にカタールで開催されていたのがAFC U-23選手権2016だ。U-23日本代表は見事優勝を飾っているのだが、彼らとバイエルンは同じホテルに滞在していたそう。ワールドクラスの選手に目を輝かせる若き侍たちだが、南野も例に漏れずその一人だった。実際にチアゴとは写真を撮っており(矢島慎也曰く、チアゴはめっちゃいい人)、リバプールでチアゴとチームメイトになった際にこの出来事が改めて注目を浴び、「なんというストーリー!」と話題になった。

◆リバプールに移籍した際、南野がチームに早く馴染めるように、クラブは彼のロッカールームの席を8番のナビ・ケイタ(ザルツブルク時代のチームメイト)と10番のマネ(非常に面倒見の良い、ザルツブルクの先輩)の間にするという計らいをしている(元々その位置だったロベルト・フィルミーノは移動となった)。ちなみにこれはリバプールの旧トレーニング施設であるメルウッド時代の話であるため、現在カービーにあるAXAトレーニング・センターでどうなっているかは不明だ。

◆リバプールといえば、ビートルズ。史上最高のロックバンドのメンバー全員の出身地であるリバプールには、当然彼らゆかりの地が多くある。南野もリバプールという街に馴染むために、彼らの関する場所を積極的に巡っているようだ。かつてリバプールのアイドルだったフェルナンド・トーレスも、ビートルズの曲を良く聴いていたというエピソードがある。リバプールという街に馴染む秘訣は、ビートルズにあるのかもしれない。

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1 個のコメント

  • FAカップでデビューした彼が「懸命に身振り手振りでボールを要求」

    する姿に好感が持てました・・・この調子で早くチームに溶け込んで

    欲しいですねっ!!。

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