ヘンリー
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2. 2015年以降のレッドソックスとリバプールの「補強方針」を比較する
①ドンブロウスキー体制の「補強」を考察 〜リスク覚悟で意中の選手を取りに行く〜
ドンブロウスキーとJ.D.マルティネス
・FSG買収以降のレッドソックスの主な高額FA契約表
選手名 | 契約年 | 契約時年齢 | 契約年数 | 年俸総額 | GM | |
J.D.マルティネス | 2018年 | 30歳 | 5年 | 1億1000万ドル | ドンブロウスキー | |
デビッド・プライス | 2015年 | 30歳 | 7年 | 2億1700万ドル | ||
ハンリー・ラミレス | 2014年 | 31歳 | 4年 | 8800万ドル | チェリントン | |
パブロ・サンドバル | 2014年 | 28歳 | 5年 | 9500万ドル | ||
カール・クロフォード | 2010年 | 29歳 | 7年 | 1億4200万ドル | エプスタイン | |
ジョン・ラッキー | 2009年 | 31歳 | 5年 | 8250万ドル | ||
(ポスティング代) | ||||||
松坂大輔 | 2006年 | 26歳 | 6年 | 5200万ドル+ | 5111万ドル |
wikipedia 各選手ページを参照
上に挙げた表がFSG体制になってからのレッドソックスの主な高額FA補強です。
この表で注目したいのが、ドンブロウスキーが30歳以上の選手に総額1億ドル以上の大型契約をしている点です。
エプスタインの時では、29歳のカール・クロフォードに1億ドル以上の大型年俸契約を結んでおり、松坂大輔にも年俸とサッカーでいう移籍金にあたるポスティング代を含めると総額1億ドル以上の投資を行っていますが、いずれも選手が20代の時に結んでいます(クロフォードはギリギリですが。)
チェリントンの時はFAでの大型補強に消極的だったこともあり、総額1億ドルを超えるFA契約は行っておりません。30歳を超える大型FA補強は不良債権化してしまうリスクがありますが、ドンブロウスキーは必要だと感じた選手には躊躇なく大型契約を結んでいるように見えます。
また、ドンブロウスキーはトレードによる戦力補強も積極的に行っています。
・ドンブロウスキー体制の2016年のトレード
獲得選手名 | 有望株名 | 移籍年 | 有望株ランキング | |
クリス・セール | ←→ | ヨアン・モンカダ | 2016 | 1位(2016) |
マイケル・コペック | 5位(2016) | |||
ルイス・バサベ | 9位(2016) | |||
ビクター・ディアス | ||||
ドリュー・ポメランツ | ←→ | アンダーソン・エスピノーザ | 2016 | 4位(2016) |
タイラー・ソーンバーグ | ←→ | マウリシオ・デュボン | 2016 | 12位(2016) |
トラビス・ショウ | ||||
ジョシュ・ペニントン |
https://www.minorleagueball.com を参照
特に2016年に行なったトレードによる補強では、当時の有望株を積極的にトレードの駒として、現在のレッドソックスのエースである、クリス・セール等を獲得しています。
以上のように、レッドソックスにおいてドンブロウスキーは、必要だと判断した選手には、高額な年俸や球団が保有していた有望株を思い切って投入し、戦力の補強を行っています。
トレードにおいて有望株を積極的にトレードしていった結果、マイナーリーグが弱体化してしまいましたが、そうしたリスクを負ってでも意中の戦力を取りに行くというドンブロウスキーの姿勢が見えてきたと思います。
これらを踏まえ、次の節では、リバプールでのクロップ体制になってからの選手補強を考察していきたいと思います。
②クロップ体制での補強を考察 〜プランAしか持たないということ〜
次にクロップ体制での補強に関して考察を行います。リバプール・エコーの現在のスカウト体制に関する記事において、以下のように補強での意思決定について言及されています。
「クロップのマネージメントスタイルは、彼のクラブのあらゆる面をコントロールしているアレックス・ファーガソンやアーセン・ベンゲルのようなものではありません。代わりに、彼はスタッフ、選手、スカウトなどの彼の周りの人たちの意見を委任し、聞くことが出来ます。」
「それでも、彼はリバプールの補強戦略に重要な役割を果たしています。チームの改良したい分野を特定しているのは彼です。プレーヤーに対する彼の意見が最も重要視されています。」
以上のように、現在のリバプールの補強体制ではクロップの判断が最重要視されているようです。現に、ファン・ダイクやナビ・ケイタ、アリソン等、最近の補強した選手は事前の報道でクロップのプランAとされていた選手達でした。
リバプール公式サイトでの記事でクロップはモハメド・サラーの獲得に関し、以下のようにコメントしています。
「サラーが私たちを助けることができると確信していた。マイケル・エドワーズ、デイブ・ファローズとバリー・ハンターの意見を私は耳にしていたのさ。モハメド・サラー、彼は解決策だ!」クロップはLiverpoolfc.comに語った。
「テーブルに20人の選手がいて、異なる選手がいれば、早期決定をするのは難しいが、我々はすべて確信していたので、早期に決定を下して本当に彼を得ることができた。彼は素晴らしい人、人格者で、本当に良いサッカー選手だよ。」
このように、現在のリバプールの補強体制では、スタッフがクロップの意見に基づきながら、データ分析(マイケル・エドワーズ)やスカウティング(デイブ・ファローズ、バリー・ハンター)を行ない、クロップもスタッフの意見を尊重しているような意思決定となっています。
それにより、クロップのコメントにもあったようにクロップがゴーサインを出した選手に関しては、出費も惜しまず取りに行く補強体制となっているようです。
・リバプール移籍金(昨シーズン冬まで。ケイタは当時移籍内定)
選手名 | 移籍シーズン | 移籍金 | |
1 | Virgil van Dijk | 17/18 | 78,80 Mill. € |
2 | Naby Keïta | 18/19 | 65,00 Mill. € |
3 | Christian Benteke | 15/16 | 46,50 Mill. € |
4 | Mohamed Salah | 17/18 | 42,00 Mill. € |
5 | Sadio Mané | 16/17 | 41,20 Mill. € |
https://www.transfermarkt.comを参照
このように、両チームの共通点としてデータやスカウティング等、様々な観点から選手の能力を判断しつつ、レッドソックスでは編成本部長のドンブロウスキー、リバプールでは監督であるクロップの判断に基づいて動いていることが見て取れます。
この次の章ではこのFSGの「専門家の意思決定に委ねる」という判断の裏にある背景を『かくて行動経済学は生まれり』を参考にしながら、考察したいと思います。
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