最新記事 by 平野 圭子 (全て見る)
- 全員が負けの移籍(ハービー・エリオット) - 2026年02月19日 木曜日 2:00 AM
- クィビーン・ケレハーがリバプールの今季の不調を擁護(ディオゴ・ジョッタの件)、批判は不当と反論 - 2026年02月17日 火曜日 12:00 AM
- バットマン&ロビン - 2026年02月15日 日曜日 12:00 AM
2月10日、1月の移籍ウィンドウもクローズしてCL後半ノックアウトステージの登録メンバー提出が行われた。Liverpoolは、前半グループステージの登録メンバーと全く同じ22人のリストとなった。シーズン途中の移籍や負傷などが発生した場合のためにメンバー提出が2回に分かれており、後半の方では3人までの変更が許されている。Liverpoolは、コナー・ブラッドリーが今季絶望の負傷に倒れたため、本当はブラッドリーを外して試合に出られる選手を登録したかったのが、UEFAの資格を満たす選手がいなかったために、試合に出られないことが判明しているブラッドリーを残した。
概要としては、UEFAの登録メンバーは25人まで許されており、うち最低8人が自国選手である必要がある。つまり、外国人選手は最大で17人までしか登録できない。ただし、一定の基準を満たす21歳以下の若手は登録メンバーに含める必要がなく、リストBとして、無制限で試合に出すことが許されている。ここまではプレミアリーグの登録メンバーと同じだ。ただ、UEFAの方は「自国選手」の定義はプレミアリーグよりも制限が厳しくなっている。
UEFAの「自国選手」は2つに分かれており、どちらも国籍や代表チームは問わないが、8人のうち最低4人は自クラブ育成(Club-Trained)の選手であることが必須で、残り最大4人までが同FA所属の他クラブ育成(Association-Trained)で構成される。いずれも、15歳から21歳までの間に最低3年間所属という条件がある。Liverpoolの場合、「自クラブ育成」とは、スカウサーで8歳からLiverpoolで育ったカーティス・ジョーンズはもちろん、例えばブラッドリーのように、代表チームは北アイルランドだが17歳でLiverpoolのアカデミー・チーム入りし21歳までに3年間所属した選手は資格を満たす。「他クラブ育成」とは、イングランドの他クラブのアカデミー・チーム出身の選手を指し、例えば、ジェレミー・フリンポンは代表チームはオランダだがマンチェスターシティのアカデミー・チームで9年間育ったので、他クラブ育成の自国選手としての資格を満たす。
尚、リストBの資格は、21歳以下で、かつ、15歳から現在までに自クラブに最低連続した2年間在籍したか、1年ローンをはさんで3年間在籍した若手に限定される。今のLiverpoolでは、例えば地元出身でLiverpoolのアカデミー・チームで育ったトレイ・ナイオニらは該当するが、17歳のリオ・ングモハは、2024年夏にチェルシーのアカデミー・チームから入ったばかりで「2年間在籍」の条件を満たさないため、25人の登録メンバーに含める必要がある。
以上の条件により、今季CL後半の登録メンバーは変更できないまま提出された。
そもそも、LiverpoolのCL登録メンバーは、1年前には24人だったが今季は僅か22人となった理由は、昨年夏の移籍ウィンドウで自国選手を多数失ったためだった。経験を積ませるためのローンに出した若手、および、例えばナット・フィリップスなど戦力として想定しない選手を除いて、失ったファーストチームの選手のうち5人が自クラブ育成の自国選手だった。獲得した方では、フリンポンを除くと自国選手はゼロと、CL登録メンバーの数が減ることは不可避だった。
去った5人の自クラブ育成のうち、トレント・アレクサンダー・アーノルドとクィビーン・ケレハーは不可避と言えたが、ジャレル・クアンサー(レバークーゼン)、スカウサーのタイラー・モートン(リヨン)、そしてハービー・エリオット(アストンビラ)の3人は、監督交代を機に出場機会が激減したことで仕方なく新天地へと去ったと見えた。その結果、CL登録メンバーの自国選手枠は前年の7人から5人へと減ったのだった。ただ、クアンサーとモートンは現在のクラブでまずまずの活躍が出来ているのに対して、エリオットの状況は大きく異なっていた。
2019年に16歳でフラムからLiverpoolに来たエリオットは、翌2020-21季は1年間ブラックバーンにローンに出て経験を積んで、Liverpoolのファーストチームで戦力として身を立てるに至った。2022年にはCLでリストBの資格を満たすようになり、2025年には22歳になったため25人の登録メンバー中自クラブ育成の自国選手となった。
そして、2023-24季にはプレミアリーグ34試合(うち23試合がサブ)合計1,337分の出場だったが、2024-25季は18試合(16)360分と、2024年夏の監督交代を機に出場機会が激減した顕著な事例となった。
2025年夏には、Liverpoolでプレミアリーグ初優勝(※2020年はローンに出ていたため個人栄誉には含まれない)に輝いた後で、欧州アンダー21選手権で連覇を達成したイングランド・アンダー21代表チームの超主力として活躍したエリオットは、大会の最優秀選手賞に輝き、栄光に満ちたシーズンを終えた。22歳になって、アンダー21代表チームを卒業したエリオットは、フル代表入りの目標を抱いて、試合に出られるクラブを考え始めたことは必然と言えた。
ロンドン出身だがLiverpoolファンのご家庭に育ったエリオットは、お父さんと一緒に2018年のCL決勝戦を見にキエフまで行ったという話は有名だった(試合結果は3-1でLiverpoolは敗れ、レアルマドリードが優勝)。そのLiverpoolを出るということは、エリオットにとっては大きな決断だった。
そこまでの決意でアストンビラ入りしたエリオットは、悪夢に直面することになった。
アストンビラは、財政フェアプレイ違反を避けるために移籍金の支払いを1年先延ばしたいという名目で、まずは1年間のローンとなった。ローン中に10試合出場すれば1年後に£35mで正式移籍を義務付けた契約で、途中でローンを切り上げる条項はなかった(※通常、経験を積ませるために若手をローンに出す時は、試合に出る機会が得られなければ連れ戻して別のクラブにローンに出すために、切り上げの条項を付ける。エリオットは放出を決めていたため切り上げ条項は付けなかった)。
後から判明したことだったが、エリオット獲得を決めた時のスポーティング・ディレクターが途中でアストンビラを退陣し、監督のウナイ・エメリはエリオットを欲しくない戦力と評価を下した。そこで、もともと財政的な余裕はないアストンビラにとっては、監督が不要と決めた選手を£35mの移籍金を払って取ることはできないという結論に達したのだった。
それは10月中旬のことだった。その時点で、エリオットは既に5試合に出場していた。あと5試合出ればアストンビラは£35mで正式移籍の義務が発生するため、急きょエリオットは試合のメンバーから外されることになった。
並行して、アストンビラはLiverpoolに対して、エリオットのローン契約の条項を変更して欲しいという交渉を開始した。10試合の縛りを撤廃して1年ローンの後に違約金なしでエリオットを返すか、もしくはキャンセル料なしで1月にローン契約を切り上げるという交渉だったらしい。Liverpoolは、違約金無しで契約を破棄という要求は受け入れられないとして却下し、話はまとまらないまま1月の移籍ウィンドウはクローズした。アストンビラのリクエストのうち後者は期限切れとなり、残った10試合の撤廃の方に望みを託した。
その間、エリオットは試合に出られないまま3か月が経過した。試合に出るために、ファンとして育ったLiverpoolを出たはずだったが、実際は泥沼に落ちてしまったのだった。
「エリオットを試合に出したい」と、エメリは悲痛な表情で語った。「本人も試合に出たいと強く希望している。クラブ間の財政的な事情のために試合に出られないという、不運な状況にあるというのに、エリオットは文句ひとつ言わず毎日真面目にトレーニングに励み、チームメートを助けるために全力を尽くしている」。Liverpoolはローン契約の緩和を却下しており、エリオットは9試合に達した時点で、再び試合のメンバーから外れてシーズン末まで過ごすことになるという。
エリオットの悲惨な状況に関しては、地元紙リバプール・エコーは随時動きを報道していたが、2月10日に「全員が負けの移籍」という見出しで深刻な記事を掲げた。違約金なしで契約を破棄したいというアストンビラの要求は、法的には受け入れる義務はない。ただ、このままでは、結果的にLiverpoolも不利益を被ることになる。アストンビラはエリオットを獲得しないと決めているので、10試合に達する前にエリオットをトレーニンググラウンド張り付きにするしかない。Liverpoolはというと、アルネ・スロットがエリオットを不要戦力と決めたことは明らかで、今季末にエリオットが戻ってきた時に新たな行く先を探すことになる。その時、まる1年間ほとんど試合に出なかった選手を獲得するクラブは果たしてどのくらいの移籍金を払うだろうか?少しでも有利な移籍を実現するためには、今アストンビラで試合に出た方がLiverpoolにとっても利益になる。
何より、エリオット本人の精神状態とフットボール面は大きかった。
「2024年夏にLiverpoolを去る時に、ユルゲン・クロップは、『後悔していることはあるか?』という質問に対して、『優勝を逃したとか、試合がらみの後悔は無駄だから一切感じていない。ただ、唯一、ハービー・エリオットをもっと試合に出してあげたかった。それが悔やまれる』と語った。もし、今もクロップが監督でいたととしたら、エリオットは今季もLiverpoolで試合に出ていただろう」と、同紙は締めくくった。
*本記事はご本人のご承諾をいただきkeiko hiranoさんのブログ記事を転載しております。

















コメントを残す