マージーサイド・ダービーの意外なヒーロー

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keiko hirano
LIVERPOOL SUPPORTERS CLUB JAPAN (chairman) My first game at Anfield was November 1989 against Arsenal and have been following the Reds through thick and thin
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12月2日、イングランド・フットボール史上最多の通算232回目、アンフィールドでのリーグ戦では100回目のマージーサイド・ダービーは、劇的な96分の決勝ゴールで1-0とLiverpoolが勝ち、1999年以来アンフィールドで勝ちがないエバトンの失意の記録を持続することになった。

画像出典:LFC公式Twitter 

どこでもダービーと言えば、地元のファンにとって勝てば天国、負ければ隣人のからかいに耐える地獄の日々が待っている致命的に重要な試合であり、そのプレッシャーを背負って戦う両チームは、その時の順位や戦績に関わらず、常に行方がわからない対戦だ。そしてマージーサイドでは、気合が入り過ぎて相手を蹴りまくり、カード多発の「ダーティー・ダービー」の不名誉なニックネームを授かっていた。

しかし今回は、Liverpoolは今季プレミアリーグ13試合に無敗で2位、エバトンはここ7試合5勝で6位と、面白いフットボールを展開する好調同士の対戦とあり、全国メディアでも好意的な記事が圧倒的だった。
その背景には、ピッチ外の両陣営の団結を象徴するいくつかの実話があった。

2016年にエバトン・ファン・グループが発端となり、今ではイングランド中のフットボール・スタジアムの風物詩となったフードバンク(※困っている人に食材を提供するためのチャリティ)は、アンフィールドでも毎試合で展開されていたが、今回のダービーでは、特に多数のファンの協力を呼びかけるべく事前準備が行われていた。その一環として、アンディ・ロバートソンがフードバンクの事務所を訪れ、エバトン・ファンのスタッフと一緒に食料の配送作業を分担するという心温まる出来事もあった。

画像出典:LFC公式Twitter

更に、昨季4月のCL準決勝戦で、試合前にローマの暴徒に凶器で襲われ、頭に致命傷を負ったLiverpoolファン、ショーン・コックスの莫大なリハビリ費用を援助するための基金に、エバトンのシーマス・コールマンが5,000ユーロを寄付した実話があった。それに対して、ダービーのマッチ・プログラムでユルゲン・クロップが、コールマンに対する感謝を表明した。「シーマスは、ピッチの上ではエバトン精神の象徴だが、ピッチ外でのコックス家に対する思いやりに満ちた行動は、まさにマージーサイドのライバル意識の真相」。

試合後の記者会見では、クロップとエバトン監督のマルコ・シルバが揃って緑のバッジを付けていた。それは、昨年5月にマンチェスター・アリーナでの爆弾テロで殺害された被害者の遺族が創立した「メガン・ハーリー基金」のバッジだった。

それらピッチ外での両陣営の団結は、ピッチ上での意外な結末の後でも、お互いに対する尊重という形で残った。

試合後に、アウェイ・サポーターに謝りに行ったジョーダン・ピックフォードと選手一行に対して、エバトン・ファンは温かい拍手を送った。「試合終了の直前に相手にとっては超ラッキーなゴールを与えて負けを食らった。でも、昨季までの『ボールを蹴る前から負けていた』状況とは違う。試合結果には目の前が真っ暗になるが、チームに対しては誇りと希望しか浮かばない」。

いっぽうLiverpoolファンは、「ラッキーなゴール」という見解はエバトン・ファンと一致していたが、得点したオリジに対する誇りを語り合った。「殆どのストライカーならば、ボールがクロスバーをヒットした時には諦めて次のプレイに入っていただろう。最後までゴール・チャンスを求めて粘ったオリジの、勝ちに対する執念が運を呼んだ」。

画像出典:LFC公式Twitter

同時に、「ラミロ・フネス・モリ事件(※2016年4月のマージーサイド・ダービーで、フネス・モリの危険なタックルを受けてオリジが担架で運ばれて交代した事件。フネス・モリはダイレクトの退場)の雪辱を、オリジはやっと果たすことが出来た」と、多くのLiverpoolファンが異口同音に言った。「あの負傷を負う前のオリジは、Liverpoolの将来を担うストライカーと期待されていた程だったのに、あの負傷のせいで、復帰してからも以前の調子に戻れないまま今に至っている」。

ファンの思いをクロップが引き取った。「私はあの事件のことは絶対に忘れられない。ファウルとか厳しいタックルというのはフットボールに付き物だが、しかし、あれはオリジの選手としての成長を中断させるほどの大きなものだった」。

昨季はドイツのVfLボルフスブルクにローンに出てキャリア立て直しを図ったオリジは、うまく行かずにローン期間が満了し、行き先がないままLiverpoolに戻って来たものだった。

「今は怪我の痛みは完全になくなったディボックが、毎日のトレーニングで全力を尽くしている姿を見ているだけに、試合に出してあげられず申し訳ないと思っていた」。

試合後のヒーローインタビューで、クロップの言葉を伝えられて、感想を問われたオリジは、さわやかな笑顔で答えた。「監督が支えてくれるから、意欲を燃やし続けている」。

「今日の試合では、全員が最後まで勝ちを目指して頑張った。その結果、出たゴールだから最高の気分だ。ましてやダービーだから、スペシャル」。

*本記事はご本人のご承諾をいただきkeiko hiranoさんのブログ記事を転載しております。

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