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3月11日にCL準々決勝でPK戦でPSGに敗退し、次の試合だった3月16日のリーグ・カップ決勝でニューカッスルに2-1と敗れて今季初優勝杯を逃した2連敗の後で、イングランドの全国メディアは異様な批判を書き立てた。いわく、「今季のプレミアリーグは通常より難易度が低いので優勝の価値は高くない。Liverpoolはプレミアリーグ優勝だけで終わるので成功シーズンとは言えない」というもので、Liverpoolファンは一斉に絶句した。
難易度が低いという根拠として、昨季まで4連覇のマンチェスターシティが早々に優勝争いから脱落する低迷に陥っていたこと、昇格3チームが揃って降格する見通しで(※4月26日の時点で数字上決定)3ポイント確定の試合が多いこと、そして、いわゆる伝統的ビッグ6のうちマンチェスターユナイテッドとトットナムが絶不調だったこと、などが上げられた。Liverpoolはその時点で2位アーセナルに15ポイント差の首位を独走しており、全国メディアの理論では、降格3チームもほぼ確定しLiverpoolの優勝はもう決まったから、残った楽しみは来季のCL出場権争いだけになった、というものだった。
Liverpoolファンの間では、全国メディアや中立のアナリストに対する信頼度は決して高くはないが、それにしても今回の主張はあまりにも非現実的だった。そもそも、今季はプレミアリーグ優勝の価値が低いという言い分は、実際の数字と大きく乖離していた。4月10日の時点で、プレミアリーグはUEFAのリーグ別ランキングによりCL出場枠が増枠され来季は5チーム出られることが決まった。つまり、今季のプレミアリーグはヨーロッパで最もレベルが高いという成績が実証されていた。ELでは、準決勝進出を決めていたマンチェスターユナイテッドはプレミアリーグ15位、トットナムは16位と、プレミアリーグのレベルの高さは明らかだった。
「世間は、Liverpoolのプレミアリーグ優勝の価値を下げようと必死になっている」と、Liverpoolファンは苦笑した。2020年の優勝シーズンには、コロナウィルスのロックダウンでリーグが中断した時期に、「シーズンを無しにすべき」という議論すら出たことを、ファンは覚えていた。同時に、その時には30年間待ち焦がれたリーグ優勝を、みんなで盛大に祝うことが出来ない悲しみが痕を引いていた。それだけに、ファンにとって「プレミアリーグ優勝だけで終わる」という全国メディアの主張は、真相と大きく乖離していた。
4月23日に、アーセナルがクリスタルパレスに2-2と引き分けて優勝まであと1ポイントとなった時、Liverpoolファンは、次の試合だった4月27日のアンフィールドでのトットナム戦で決着をつけて、35年間待った優勝を心行くまで盛大に祝う決意を固めた。
「トットナムは、4日後にEL準決勝を控えてプレミアリーグの試合に対する集中力を欠いている。Liverpoolは細心のプレイが出来なくても1ポイントくらい取れるだろう」と、世間は勝手な予想を立てた。クリスタルパレスは「3日後にFAカップ準決勝を控えていたので関心が半分の状態で臨んだ」はずだったがアーセナルに引き分けた。フットボールは卓上ではなくピッチ上で勝敗が決まるという表現は、特にプレミアリーグでは定説だった。
もちろん、その1ポイントを取る厳しさは誰もが認識していた。
そしてLiverpoolは、トットナムに先制されながら5-1と逆転勝利を収めて通算20回目のリーグ優勝を確定した。スタンドのファンとチーム一行が歓喜のお祝いをしている中、LFCTVのインタビューに応えたスロットは、「チームバスでスタジアム入りした時のファンの歓迎を見て、これで負けることはあり得ないと思った。選手たちも皆同じ気持ちを抱いた」と語った。
コップ・スタンドの前でチーム一行がファンと一緒にYou’ll Never Walk Aloneを歌った後で、コップがモー・サラー、アリソン、フィルジル・ファン・ダイク、と始まり、全選手のチャントを捧げた。それに対してチャントしてもらった選手が一人ずつ立ち上がり、コップのファンにお礼の挨拶を返した。
試合後のスカイスポーツのインタビューで、サラーは、「クリスタルパレス対アーセナルの試合を見ていて、パレスが勝たないことを祈った。アンフィールドでファンと一緒に優勝を決めたかったから」と語った。
ファイナル・ホイッスルの直後にファン・ダイクとハグしながら涙ぐんでいたアリソンは、2019年のCL優勝市内パレードの時に、「このファンのために絶対にプレミアリーグ優勝する」と決意を語った。
やっと、それが実現した。
*本記事はご本人のご承諾をいただきkeiko hiranoさんのブログ記事を転載しております。
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