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プレミアリーグ好き、リバプールサポーターの中には既にこの本を読んだ方も多いはずだ。
「スティーヴン・ジェラード自伝〜君はひとりじゃない〜」
本書はジェラード自身がリバプールでの年月を振り返っていく自伝である。「ジェラードのことを深く知りたい」という人はもちろんだが、リバプールサポーターかどうかは問わず、欧州クラブの表に出てこない部分に興味をそそられる方にこそ読んで頂きたい一冊。とりわけ、移籍期間中の水面下での駆け引きや選手の葛藤について、オフシーズン中に発想を巡らせるのが好きな人にはぴったりである。
ジェラードが歩んできた道のりとその中での精神的な浮き沈みやチームメイトとのやりとりが実に具体的にまとめられているが、彼がただの一選手ではなくクラブ内部の人間としての役割も果たし、また世界中の名だたる選手や監督との関係性がある選手だったからこそ残せる記述が溢れている。
具体的にどの様な情報かというと、例えば移籍市場においては以下の5つのポイントについての知識や考察を得ることができる。
①移籍期間における選手との移籍交渉のはじまり
ジェラード在籍時のリバプールの場合、獲得をしたい選手がいると「ジェラードから直接メールをする」という飛び道具からアプローチをする。監督やフロント陣から連絡するよりもジェラードによるメッセージの方がインパクトがあるということだ。確かに、伝説的な選手に「お前とプレーしたい」と言われたら確かに心が揺らぎそうなものである。ジェラードはこのことを「慣れ親しんだゲーム」と呼んでいる。
②移籍市場においてチャンピオンズリーグの出場権利はどれほどまでに重要か
ジェラードがメールでアプローチをしたもののリバプールへの移籍を断った選手達はこぞって「チャンピオンズリーグでプレーしたい」と話している。トーレスもスアレスもジェラードとの個人的な会話の中で移籍志願の理由についてチャンピオンズリーグを挙げている。またジェラード自身も同じ理由でチェルシーへの移籍間近まで迫った。ちなみにリバプールは「立地」の影響で断られることも多々ある。「ガールフレンドがロンドンに住みたいと言っている」ということだ。
③なぜバロテッリを獲得する必要があるのか
クラブは想像する以上に移籍期間中水面下で動いている。例えばリバプールはジェラードからクロースにメールを送らせている。ただ、実力ある選手はそう簡単には獲得できず、時にメディカルチェックで引っかかるということも起こるのだ。そうなると監督は賭けに出る必要がある。本書ではリバプールのバロテッリの獲得について「選択肢が無い中での危険な賭け」だったと明記されている。
④連日メディアに掲載される移籍期間における選手のコメントの真意
選手のインタビューの受け答えが移籍期間中に物議を醸すがどこまでが真意なのか。ジェラード自身の経験やスターリングの例などから「単に真実を述べている」ということが伺える。他方、選手は話すことのプロでは無いので、使う言葉を間違えたり、その時の精神状況に影響されたりと、本人の意図とは違う形で捉えられてしまうことがある。彼らはサッカーはとてつもなく上手いが、中身は我々と同じ普通の人間なのである。
⑤選手の代理人や周囲の人間が移籍に与える影響
選手達は移籍をすべきか、するならどこのチームがよいか大いに悩んでいる。ジェラード自身はチェルシーへ行くべきかを悩み、最終的には父親の助言を受け残留を決めている。スアレスはジェラードの助言によりアーセナルへの移籍への考えを改めた。つまり、身近で信頼できる人の一言が移籍を決める可能性があるのだ。選手の一番近くにいるのが「代理人」であるが、ジェラードはスターリングのシティ移籍に絡めて代理人が選手に移籍をそそのかしている可能性について考察をしている。
上述のポイントはあくまで内容の一部分であり、本書には移籍期間における具体的な監督との会話やクラブからの契約提示などについても詳細にまとめられている。
言わずもがな「移籍」という観点だけでなく、「怪我」「精神状況とパフォーマンス」「悪童との練習」「致命的ミス」「ロッカールーム」「クラブ会長と選手」「スタメン落ち」「チャリティマッチ」など数多くの舞台の裏側を、栄光と切なさが入り混じる英国のレジェンドスティーヴン・ジェラードの歩みと共に味わうことができる。彼のシンプルかつ感情の詰まった語り草は思わず時間を忘れて読み入ってしまう。自信を持って推奨できる一冊なので、まだ読んだことのない方はぜひとも本書を手にとって詳細をご覧頂きたい。
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