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エピソード・小ネタ

画像出典:リバプール公式HP
◆ケレハーの出身地はアイルランド第二の都市コーク。「コーク(Cork)」という都市名はアイルランド語で「Corcaigh」と表記し、「沼地」を意味する「コルカッハ(corcach)」を由来とする。1185年にジョン王が都市の建設を勅許しているが、リバプールもまたこのジョン王によって1207年に勅許されている。コークはリバプールと同じく、ケルン(ドイツ)と上海(中国)と姉妹都市である。ただし、アイルランドでリバプールと姉妹都市なのはダブリン。
◆アイリッシュ海に面するリバプールは当然地理的にアイルランドとの繋がりが深い。殊に有名なのはやはり「ジャガイモ飢饉」だろう。この大飢饉によってアイルランドからリバプールへ数十万人以上が移住したとされている。リバプールの人々の訛り(スカウス)はアイルランドなどからの移民の影響が色濃く反映されたものであり、リバプールに住む多くの人々(スカウサー)にアイルランドの血が流れている。
◆前述の通りリバプールとアイルランドは切っても切れない関係であるが、ケレハー以前にリバプールでプレーしたアイリッシュは同国のレジェンドであるロビー・キーンまで遡らなくてはならない。
◆「Kelleher」はアイルランド姓が英語化された綴りで、元の形は「Céileachar」である。意味としては「親愛なる仲間」と言ったところ。地元コークでは多い姓だそう。
◆非常に難読な「Caoimhín」という名前の発音やカタカナでの表記は(揺れはあるものの)主に「クィビーン」や「クィービーン」など。そしてこのCaoimhinが英語化された綴りが「Kevin(ケビン)」である。「Caoimhin」と書いてどうやって「クィビーン」と読むのか、と思わずにはいられないが、「ケビンの起源」と言われれば少しは納得できるかもしれない。姓のケレハーと同じように名前も英語化されたものであればケビン・ケレハーだった、というわけである。ちなみに、Caoimhinは古アイルランド語で「高貴な」を意味する「cóem」と「誕生」を意味する「gein」が組み合わさって出来たものだ。つまり意味としては「高貴な生まれの」と言ったところか。
◆ケレハーはスポーツ一家で育った。体育教師だった父・レイを持ち、兄のフィアクレはかつてセルティックにも所属していたプロフットボーラー(現在はコルチェスターに所属)で、他の兄弟も他競技のプロとして活躍している。
◆リバプールに移る以前は地元のリングマホン・レンジャーズでプレーしていた。14歳まではチームのエースストライカーとして活躍していたが、GKがクラブを突然辞めてしまったため、ケレハーの父がコーチへ「息子をGKで使ってみてほしい」と提案する。コーチ陣はチーム最大の得点源であったケレハーをGKとして起用することに難色を示していたが、最終的にそれを承諾。するとケレハーは瞬く間にGKとしての才能を発揮し、イングランドのクラブからもスカウトが来る選手へと成長したという。

画像出典:リングマホン公式Twitter
◆ケレハーの父であるレイ・ケレハーは2014年に死去している。そしてケレハーがリバプールとサインしたのは、父が亡くなった1年後の2015年のことだった。レイは映画鑑賞が趣味で、お気に入りは『ショーシャンクの空に』だったそう。
◆アイルランド時代にブラックバーン・ローヴァーズとアストン・ヴィラはケレハーとの契約を狙っており、実際にヴィラのアカデミーで何度かプレーもしたそうだが、突如現れたリバプールにケレハーの気持ちが完全に傾き、すぐさまリバプール入りが決まったという。リングマホンの公式Twitterでは、彼がリバプールとサインした際の写真がポストされている。
Congratulations to Caoimhin Kelleher who officially signed for @LFC last night well done to Caoimhin & his family pic.twitter.com/VLvrmXLKoB
— Ringmahon Rangers (@RingmahonRanger) April 16, 2015
◆リングマホン時代の恩師であるエディ・ハリントンは今でもケレハーと連絡を取り合っており、食事をすることもあるそう(今では少し非現実的だと感じているそうだが)。ハリントンはケレハーの人間性も高く評価しており、曰く「私たちが募金活動をしていた際、彼はPK戦のゲームに参加し、アイルランド代表のジャージ(おそらくユニフォームを指す)などをプレゼントしてくれた。彼は素晴らしい人間で、(自分のルーツである)私たちのことを決して忘れないだろう」。ちなみにリングマホンの公式Twitterでは、ケレハーが優勝に大きく貢献した2021-22シーズンのリーグカップ決勝で実際に着用したユニフォームとユルゲン・クロップからの手紙がクラブハウスへ届いたことを明かすツイートがある。
What a lovely gift to get for the Clubhouse. Caoimhin Kellehers Cup final @LFC winning Jersey. And to top it off a hand written letter from manager Jurgen Klopp. Thanks so much to the @johngibbonsblog from @TheAnfieldWrap for sorting us out. pic.twitter.com/Rcw5wo3bB0
— Ringmahon Rangers (@RingmahonRanger) March 28, 2022
◆2021-22シーズンのリーグカップ決勝でスタートするGKがケレハーであることをクロップがアリソンに伝えた際、アリソンは「わかりました。優勝したら壁画にケレハーの顔を加えてあげてください」と返したそう。リバプールのAXAトレーニングセンターのGKエリアにはクラブで優勝カップを掲げた歴代GKたちの壁画があり、アリソンはそこにケレハーを追加することをお願いした、というわけである。また、ケレハーはそのときを回想して「アリソンは決勝で僕がスタートすると知っても嫌な顔を全くせず、それどころかアドバイスと激励をしてくれた」と語っている。
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