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2 現ASローマ会長 ジェームス・パロッタとジョン・ヘンリーの共通点
前述したディ・ベネディットが成績不振の責任を取り、会長を辞任した後、就任したのが現ASローマ会長のジェームス・パロッタです。
パロッタもボストンを拠点にして活動していますが、FSGと直接の繋がりがある訳ではありません。しかし、FSGのオーナーであるジョン・ヘンリーとは以下の3つの共通点があります。
- 投資会社を設立した。
- ボストンのスポーツチームを保有している。
- 米国外のサッカーチームを保有している。
最後の項目に関しては言うまでもなくリバプールとASローマのことなので、詳細は省き、残る二つの項目に関してここで紹介いたします。
① 「投資業界出身」という背景と「データ分析」
(ラプターグループ公式ページより提携先企業の項目からASローマとボストンセルティックスを抜粋)
まず、最初の項目についてですが、ラプターグループのホームページでの自社紹介によると、パロッタはTudor Investment Corporationで副会長など、30年以上に渡って投資業界で手腕を振るっていたようです。
パロッタは、2009年にラプターグループという、民間投資会社を設立しています。
ラプターグループのホームページでの自社紹介によると、このラプターグループはボストンに拠点を置き、コンシューマー、テクノロジー、メディア、エンターテインメント、金融サービス、ヘルスケアなど幅広い業界への資産提供と投資を行っているそうです。
ヘンリーはすでに投資業界の第一線から退いていますが、「投資会社を設立した」という点で、パロッタと共通点があります。
データを重んずる投資業界出身というバックグラウンドがあるためか、パロッタもサッカーにおける「データ分析」に注目しています。ウォール・ストリートジャーナルの記事によれば、アメリカで設立されたTag.bioという選手のデータ分析ツールをASローマに導入し、チーム運営に生かしているそうです。
このTag.bioは先ほど登場した、ラプターグループからの投資を受けて、会社を運営しています。Tag.bio公式ホームページによると、このデータ分析ツールを選手獲得の際のデータ分析や、対戦相手の分析にASローマは使用しているようです。
パロッタはsi.comでのインタビュー記事でこのデータ分析をさらに進めることを以下のように語っています。
「私たちはここ数年、スカウトで何箇所かの変更を加え、いくつかの信憑性の高い分析を構築しました。私たちは実際に、分析ツールの次のレベルに進む予定です。」
si.comより引用。
以上のように、パロッタとヘンリーは「投資業界出身」というバックグラウンドと「データ分析」を重んずるという点で共通点があります。
次の節では、パロッタがボストンのNBAチームであるボストン・セルティックスを所有している経験をどのようにASローマのクラブ運営に生かしているのかを紹介しつつ、FSGのクラブ運営における考え方との類似点を探りたいと思います。
② ボストン・セルティックスのチーム運営の経験〜ASローマのブランド価値を上げる〜
(ボストン・セルティックス)
パロッタはボストンでNBAチームである、ボストン・セルティックスを共同オーナーの形で所有しています。
cnn.comにて、このセルティックスでの経験をASローマの経営に生かそうとしていると以下のように言及されています。
「NBAフランチャイズのボストン・セルティックスのファンであるパロッタは、歴史がブランドを促進する際に果たす役割をよく認識しており、NBAのアイデアの一部を使ってASローマを活性化させています。」
cnn.comより引用
引用が続いてしまいますが、AS roma.comの記事でパロッタの下でクラブのマーケティングを担当している Sean Barrorが以下のようにコメントしています。
「ジェームスのグループがASローマを買収したとき、チームはちょっとした騒ぎになりました。 ビジネスの観点からは、さらに利益を上げるためにチームのブランド価値を上げなければならないのです。」
「ローマで静かに基盤を作っている」と、ラプターのボストンに位置する事務所でクラブのマーケティングとスポンサー契約を管理しているBarror氏は語った。「ピッチで成功すれば、クラブの価値はさらに高くなるだろう」
「ASローマは世界で最も過小評価されたスポーツチームとブランドだと思う。 ASローマを正しく見積もれば、ASローマは数十億ドルもの価値があります。これはすばらしい機会です」
AS roma.comより引用
以上にように、現在のASローマ首脳陣は、チームの潜在的なブランド価値を認識し、それを高めることを念頭に置いているようです。このASローマの潜在的なブランド価値をどのような要素に見出したのかをパロッタは次のようにコメントしています。
「『パロッタは、ローマは数多くの観光客、数千年の長い歴史、情熱的なファンベースを持っています』と語った。私は時間をかけて、新しいスタジアムを造りつつさらにクラブを偉大なチームに変えていこうと思っています。」
「『ASローマのブランド力をさらに高める必要がある』と彼は言った。 『ブランド』を持つことで、クラブの潜在的可能性が飛躍的に拡大するのです。」
AS roma.comより引用
パロッタはクラブのブランド価値を高める方法を模索していますが、その方法として、新スタジアム建設と、インターネットを使った世界的なファンの獲得を考えていることをボストン・グローブでのインタビュー記事で述べています。
「FacebookとInstagramとTwitterには現在1500万人のフォロワーがいます。それが増えればスポンサーシップはもっと高くなるはずです。我々は500万ドルを得るのではなく、特定のスポンサーから1000万ドルを手に入れようとしています。」
「そのために我々はソーシャルテレビとレギュラーテレビの視聴者数に注目しています。その後、もしあなたがASローマの試合を見ているとき、アジア、インド、および他の場所での真夜中であることを考えねばなりません。他地域のファンたちはそれを変える方法を見つける必要性に迫られています。我々がもう一度それに目を向け、改善できれば、広告数が上がり、スポンサーシップの数が増え、視聴者数は増えるのです。」
ボストン・グローブより引用
この節で書いてきたようにパロッタは、都市としてのローマとクラブとしてのASローマが有する歴史と熱狂的なファンを「ブランドの基盤」に置き、それを、インターネットを媒介に世界的に増やそうと考えています。
この考え方は、以前トム・ワーナーの記事で言及した、FSGの「歴史を重視する点」とホーガンの記事で言及した「SNSを使ったブランド価値の向上」に相通じるものがあります。
また、この記事の結びの一文に「利益の高いクラブは最高の選手を獲得し、より多くの視聴者を獲得し、より多くのスポンサーを獲得する。サイクルは継続するのです。それをASローマは求めている」と述べています。この一文も以前紹介したFSGの追い求める「勝利と利益のサイクル」と似ていますね。
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