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8月23日、アーセナルがリーズユナイテッドに5-0と勝った試合で、15歳のマックス・ダウマンがプレミアリーグ・デビューを飾り、PKを得る活躍でヘッドラインを独占した。その余韻が続いていた2日後の8月25日に、Liverpoolのリオ・ングモハが16歳でプレミアリーグ・デビューを飾り、100分の決勝ゴールを決めたことで更にすごい騒ぎとなった(試合結果はLiverpoolが3-2で勝利)。その週末に17歳になったングモハは、プレミアリーグ史上4番目の年少ゴールスコアラーという記録で、イングランド・フットボール界の話題No.1となった。そして、ングモハの偉業はダウマンとタイアップして、ティーンエージャー2人がしばし脚光を浴びることになった。
ところが、翌週には正反対の話題が勃発した。ブライトンがマンチェスターシティに2-1と逆転勝利を収めた試合で、39歳239日のジェームズ・ミルナーが同点PKを決めて、プレミアリーグ史上2番目の年長ゴールスコアラーとなった。同じ日に、前週登場したダウマンとングモハが直接対決するかもしれないということで、全国メディアの注目がティーンエージャー2人に集中していたところで、その2人の合計年齢(32歳)を超えるベテランがアナリストの称賛を一身に受けることになった。
ミルナーは、2002年に16歳356日でプレミアリーグ初ゴールを決め史上最年少ゴールスコアラーとなった。ダウマン(2009年)とングモハ(2008年)が生まれるはるか前にミルナーはプレミアリーグのゴールスコアラーになったわけだった。2005年にエバトンのジェームズ・ボーン(16歳270日)が記録を塗り替えてミルナーは史上2番目となったが、23年後に年長記録のゴールを決めるという偉業は、純粋に敬意に値するものだった。
その日のマッチ・オブ・ザ・デイは、「フットボール界のレジェンド」と題してミルナーのインタビューを含める特集を組んだ。生まれ故郷でファンとして育ったリーズを始め、ニューカッスル、アストンビラ、マンチェスターシティ、そしてLiverpoolと、プレミアリーグのビッグクラブで輝かしいキャリアを築いたミルナーは、1月に40歳になる。「これだけ長いこと第一線でプレイし続けている選手は、今のプレミアリーグでは他にない。その経験が、今日の場面でPKを決めることができた」と、同番組のレギュラー・アナリストであるマーク・シュワルツァーが語った。
ミルナーのゴールは6年ぶりで、それまではLiverpool在籍時の2019年にレスターシティに4-0と勝った試合が最後だった。2023年にフリーエージェントとしてブライトン入りしてからの初ゴールを決めたミルナーは、Liverpoolで最も親しくしていた友人の一人だったディオゴ・ジョッタの祝ゴールで追悼した。悲劇から1か月経った8月3日に、ミルナーは背番号を6から20に変えた。それまで20番を着けていたカルロス・バレバが17番に変えたことで空きになったので、ジョッタを偲ぶために20番をもらうことにしたとミルナーは語った。
「僕は今季そんなにゴールできるとは思っていなかった。たぶん、背番号のマジックだと思う。偉大なゴールスコアラーだったディオゴが助けてくれたのだと」と、ミルナーは悲しげに笑った。
それまで負傷とは縁がなかったと言ってもい良い23年間のキャリアで、昨季は負傷のため僅か4出場で終わったミルナーは、契約満了となったこの夏に引退を考えたという。「ブライトンが契約更新してくれるとは思わなかったので、昨季が最後だと思った」。ミルナーの予想に反してブライトンは1年契約を提示したのだった。
監督のファビアン・ハーツラーは、ブライトン就任時には31歳でプレミアリーグ最年少監督となった人で、ミルナーより7歳若かった。ハーツラーがミルナーの経験を貴重な財産として必要だったことは想像に難くない。「ミルナーは重要な選手であり、チーム内で非常に重要な人材だ」と、ハーツラーはミルナーのゴールの後で語った。「彼の自信はチーム全体に波及する。PKを蹴る時のプレッシャーは大きいが、彼はそれを克服して成功することができる経験をキャリアの中で培ってきた。今日の試合でもそれを証明した」。
ハーツラーの同国人で、ミルナーをLiverpoolから送り出したユルゲン・クロップも同趣旨の証言をしていた。「彼はチーム全体のお手本となる人だ。ピッチ内外で、高い水準を築き、それを私も含めて全員に教授することができる貴重な人材だ」。
Liverpoolファンの間でも、ミルナーの偉業に対して盛大な拍手が沸いていた。「新天地に行ってしまった元選手たちの中で最も親近感を抱いているのがミルナーで、ブライトンで頑張っている姿を心から嬉しく思っている」と、ファンはうなずき合った。「引退後はコーチとして戻ってきて欲しい。ミルナーなら、ングモハのような若手を指導して立派なプロに育ててくれるだろう」。
*本記事はご本人のご承諾をいただきkeiko hiranoさんのブログ記事を転載しております。
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