アレクサンデル・イサクの移籍

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平野 圭子
LIVERPOOL SUPPORTERS CLUB JAPAN (chairman) My first game at Anfield was November 1989 against Arsenal and have been following the Reds through thick and thin

12月20日、Liverpoolはアウェイでトットナムに2-1と勝って、直近の戦績で3連勝、6戦無敗となった。ただ、トットナムは監督クビの予測が飛び続けていた程の不調にあり、更に最終的に9人になった、その相手に辛うじて1点のリードを守り切ったという、内容的には不安定な勝利だった。60分にサブで出たジェレミー・フリンポンが、90分に相手リシャルリソンの肘鉄を受けて口の中を切ったと見える出血で交代した。その理由は、10人に減ることを避けたかったから(※)とアルネ・スロットが試合後に説明したが、そこまで切迫したということだった。

※プレミアリーグの規則で、出血した選手は試合を外れることを義務付けられており、血痕を除去した上でレフリーの許可が下りるまで試合に戻れない。その間、チームは1人少ない状態で試合が続行する。

必然的に、メディアの評価は厳しかった。「危機的な状況にあと一歩というチーム同士の対戦は奇妙な試合となった。トットナム・ホッツパーは自ら望んで自滅し、Liverpoolは前季のチャンピオンとは到底思えない危ないパフォーマンスに戻ってしまった」と、テレグラフ紙は書いた。地元紙リバプール・エコーですら、「まるで負けたように感じた勝利」という見出しで、「83分までは前2戦で見えた復調路線を進んだが、最後の10分で急にダメになる習癖をまたも出すかと思ったところで皮一枚で救われた」と、自嘲的な文面だった。

インデペンデント紙は、アレクサンデル・イサクの先制ゴールに焦点を当てた。「夏の新戦力のうち合計£300mの3人がやっとクリックした。ウーゴ・エキティケが相手のミスからボールを貰い、フロリアン・ビルツがスペースを得て絶妙のパスを出してイサクが決めた。これから本格的にこの£300mトリオの活躍が見られるかと思ったところで、イサクがおそらく暫く欠場だろうと思える負傷に倒れた」。

「クラブ記録の£125mでLiverpool入りしたイサクは、その投資額に見合う活躍が出来ないまま苦戦を続けた。やっと2点目が出た瞬間に負傷という不運は気の毒だが、ここに至るまでの不調に関しては自業自得としか言えないものだった」と、同紙は辛辣だった。

全国メディアが「£300mトリオ」という表現を皮肉を込めた定番として使うようになったほどに、この夏の総額£446mの新戦力については、負傷のため評価保留のフリンポンとジョバンニ・レオーニはさておき、エキティケが唯一の例外で全員不発とこれまでさんざん批判されてきた。ただ、ビルツとミロシュ・ケルケズが徐々に順応して良いプレイが出るようになったところで、視線はイサクに集中していた。

9月1日の移籍期限日に正式にLiverpool入りとなるまでの間、イサクのニューカッスルでのストライキはメディアの移籍ページを独占し続けた。2022年にニューカッスル入りして3シーズンで、109試合62ゴールの驚異的な記録を持つイサクが、この夏にLiverpool入りを決意したが、ニューカッスルは後任戦力の確保が出来ず引き留めを主張した。イサクはプリシーズン・ツアー参加を拒否し、その後も単独でのトレーニングを続けた。その間、クラブが約束を反故にしたと公の場で語り、監督エディ・ハウがイサクとの関係は遮断されたとインタビューで語り、泥沼のような別れ方をしたのだった。

世間の目も厳しかった。「クラブの意向を無視し、ストライキという強硬手段で移籍をごり押ししたイサクが最終的に自分の希望をかなえたのに対して、真面目にトレーニングに励んだ末にクラブの都合のために移籍を断念せざるを得なかったマーク・グエイ(クリスタルパレス)。この二人を見ていると、今後の選手たちがどちらの例に倣うかは自明だ」という声も出た。

かくして、イサクは古巣と決別してLiverpool入りとなった。他の新戦力は全て、古巣に礼儀を尽くし、古巣のクラブやファンから暖かい激励と共に送り出されたのとは対照的だった。

イサクの移籍が確定した直後に、フィルジル・ファン・ダイクは、「インターナショナル・ウィーク中に本人と会話して、不明な点をすべてクリアにした」と語った。ファン・ダイク自身、2018年にサウサンプトンからLiverpool入りする時に古巣と揉めた経歴があるだけに、イサクを気遣ったことは明らかだった。同時に、夏の間あれほど騒がれた事件に対して、Liverpoolの選手たちが多かれ少なかれ影響を受けていただろうとは想像できた。

Liverpoolが絶不調にあえいでいた11月に、元ニューカッスルのアナリストからは、「イサクが入ったことで、それまで強固だったLiverpoolの選手たちのチームワークを壊したのではないか」と、憶測混じりの言葉すら出た。

イサク自身が12月6日にインタビューで不調の原因について見解を問われた時は、移籍のごたごたでプリシーズンが出来なかったことは関係ないと主張していた。「もちろん、毎日トレーニングしてリズムを保つことは重要だ。ただ、負傷でトレーニングを休まざるを得ないこともある。つまり、プリシーズンが出来なかったことは特別な状況ではない」。たしかに、ニューカッスルでの3シーズンで、2022-23季には長期の負傷欠場に見舞われ、翌2023-24季に6回、2024-25季は5回、大腿の負傷で短期の欠場を経験していたイサクは、トレーニングを休んだ後で復帰して再びバリバリ活躍できる自信があったに違いない。

しかし、8月の時点でスポーツ・サイエンスの専門家がプリシーズンなしのリスクを指摘していた。「夏休みで4-5週間フットボールから離れた後のプリシーズンは極めて重要で、その過程をスキップすれば負傷のリスクは急増する。イサクは、Liverpoolに入ったとしてもニューカッスルに残ったとしても、2025-26季は本来の実力が発揮できないまま終わる可能性は高い」。

トットナム戦でのイサクの負傷は、不運な巡り合わせだったのかプリシーズンなしのリスクが実現してしまったのか、答えは出ない。ただ、モー・サラーがアフリカ・ネーションズ・カップに行ってしまってフォワードの選手層が薄くなったところでのイサクの負傷欠場は、Liverpoolのチームにとって痛いものとなった。

次は12月27日に、アンフィールドで、今季プレミアリーグで1勝も上げていないウルブスと対戦する。2025年最後の試合で、不調を克服して後半の巻き返しのスタート台にしたい。

*本記事はご本人のご承諾をいただきkeiko hiranoさんのブログ記事を転載しております。

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