予期しなかった新戦力(フェデリコ・キエーザ)

The following two tabs change content below.
平野 圭子
LIVERPOOL SUPPORTERS CLUB JAPAN (chairman) My first game at Anfield was November 1989 against Arsenal and have been following the Reds through thick and thin

8月27日に、Liverpoolがユベントス&イタリア代表のライトウィング、フェデリコ・キエーザ獲得に動いているという噂がヘッドラインを飾り、翌28日には移籍金£10mで合意し、本人がメディカルに来て29日の朝には正式発表という、典型的なLiverpoolのスピード移籍が成立した。直前に、来季の戦力としてバレンシアのGKギオルギ・ママルダシュビリのサインが確定していたので、Liverpoolは2人獲得で夏の移籍ウィンドウがクローズした。

新戦力ゼロがやっと解消されたことで、ファンはキエーザ獲得を歓迎したが、いっぽうで、ポジション的には最も緊急度が低いフォワードということで、予期しなかった新戦力という印象はぬぐえなかった。地元メディアは、Liverpoolの歴代イタリア人(代表レベルの国籍)6人がいずれも成功とは程遠い評価を残して去って行った事実を並べ、キエーザは初の成功事例になるか?と唱えた。
※マリオ・バロテッリ(2014)、アルベルト・アクィラーニ(2009)、ファビオ・ボリーニ(2012)、アンドレア・ドッセーナ(2008)、ダニエレ・パデッリ(2007)、ガブリエル・パレッタ(2006)

そんな中でLFCTVが公開したキエーザの初インタビューは、ファンの困惑を一気に吹き飛ばした。流ちょうな英語で、輝くような笑顔を浮かべてLiverpool入りの感激を語ったキエーザは、ファンの間で好感度を激増させた。ユベントスの許可が下りて、即座に奥さんと共にプライベートジェットでマージーサイド入りしたという実話は、キエーザが心から望んでLiverpoolに入ったこと、そしてご家族も全面的に協力しているという明るい要素を物語っていた。

「着陸直前に窓からアンフィールドが見えので、You’ll Never Walk Aloneをかけてと奥さんに言った。ファンのチャントを背に自分がアンフィールドのピッチに立つ姿を想像して全身が震える思いがした」と、キエーザは特大の笑顔で語った。

インタビュアーが、キエーザのお父さんエンリコがアンフィールドでゴールを決めたユーロ96(試合結果は2-1でスイスの勝利)の動画を見せると、キエーザは、「知ってる!」と目を輝かせた。今回のLiverpoolの話をお父さんに話したところ、イタリア代表17キャップのストライカーだったお父さんは、即座に「行きなさい」と言ったという。

Liverpoolファンは、キエーザのインタビューに深く感銘を受けたと誰もがつぶやいた。「あの笑顔は、キエーザがいかにLiverpoolに来たかったかの象徴だ。昨年夏のロメオ・ラビアとモイセス・カイセド、そして先日のマルティン・スビメンディと立て続けに逃げられたのと対照的で、それだけでもキエーザを熱烈に応援したいと思う」。噂では、キエーザの給料はLiverpoolの新戦力の給与体系の範囲内(£80,000くらい)で、キエーザの意欲は純粋にフットボール面と見えた。

ファンの気持ちを裏付けるように、ガーディアン紙が、「何故£10mの格安価格になった?」と題して、キエーザのLiverpoolに至るまでのいばらの道に焦点を当てた記事を掲載した。「2021年夏のユーロを制したイタリア代表チームの中で、特に注目を受けたキエーザについて、代表監督ルチアーノ・スパレッティは、「我がチームのヤニック・シナー(現在世界No.1のイタリア人プロテニス選手)」と称したことは有名な話だった。ところが、2022年1月にじん帯を負傷して8ヶ月欠場する不運に遭遇して、キエーザの成功街道は大きな打撃を受けることになった。復帰後は、調整不足とぶり返しで2021年のレベルに戻ることが出来ずに苦戦を続けている」。

「2020年に£38mの移籍金でフィオレンティーナからユベントスに入ったキエーザは、ユーロ2020で更に評価を高め、その時点ならば£100mを超える金額だっただろう。それが£10mになったのは、長期負傷の後遺症に加えて、契約残り1年となったこの夏に、新監督ティアゴ・モッタの戦略に合わない戦力としてユベントスが放出を決めたためだった。売り手を探す間、キエーザは試合のメンバーから外され、単独でトレーニングを命じられた。そんな時にLiverpoolが現れたので、ユベントスは渡りに船とばかりに飛びついた」。

「いっぽう、負傷前の自分に戻って再び成長軌道を進むために新天地を求めていたキエーザにとってもLiverpoolの話は願ってもないチャンスだった。『自分の本来の力を再び見せたい』と意欲を表明していたキエーザは、Liverpoolという、この上ないチャレンジの場を得たのだった。それが実現するか否かはキエーザ本人にかかってる」と、同紙は締めくくった。

Liverpoolは、レベルの高いフォワードが5人おり、現時点では補強の必要性が最も低いポジションだ。つまり、キエーザは無理に試合に出る必要もなく、まずは調整に専念できる。試合では交代の需要が最も高いのがフォワードで、調整ができれば試合に出る可能性は非常に高い。これから過密日程を迎えるLiverpoolでは、キエーザの出番は必ず来る。サブで出た時に期待に応えるパフォーマンスが出せれば、自信もつくし試合に出る機会も増える。それをどう生かすかはまさに本人にかかっていた。

さっそく翌日のトレーニングで、キエーザが新チームメートと笑顔で会話しながら元気いっぱいトレーニングに励む様子を、ファンは笑顔で見つめていた。

「キエーザが、自分の目標をしっかり掲げてLiverpoolに来て、意欲満々で明るく頑張っている姿を見ていると心から応援したくなる。負傷の悪夢を吹っ切って本来の実力を取り戻して、数年後には、Liverpoolの大成功移籍事例の一つに入ることを期待している」と、ファンは頷き合った。

LFC公式オンラインストア

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA