こいぱに
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はじめまして、このたびLFCラボに初寄稿させていただきます。
新シーズンを目前に控えたプレシーズン真っ只中の今、自分が何を書きたいのかを足りない頭で考え抜きました。
結果、僕がこのタイミングで記事を書くにあたり、どうしても個人的な心情の描写を避けて通れないことに気がつきました。
最初の記事からいきなり自分語りを始めるのも我ながら恥ずかしい上、見苦しく感じる方がいるかもしれませんので大変恐縮ではありますが、ほんの少しだけ、昔話と長めの呟きにお付き合い頂けたら嬉しいです。
前もってお伝えしたいのは、言うまでもなくフットボールクラブとファンの間には1人1人それぞれ、特別だったり何気なかったりする経緯やドラマがあります。
これはその中のごく個人的かつ小さな、来季へ向けた雑記のようなものです。
拙い文章ですが、シーズン開幕までの多少の暇潰しにでもお使いいただけたら本望です。
6畳1間で目にした奇跡
2005年、5月25日。
当時10代の僕は学生寮の自室ベッドで深夜、1人うなだれていました。
試合開始間もなくパオロ・マルディーニの鮮やかなボレーシュートがゴールネットに突き刺さり、引退の近づいた世界的レジェンド選手のハイライトとして語られるであろう場面を、目の当たりにしてしまったからです。
「ああ、そういう試合なんだな」
その瞬間に思った気持ちは今でも鮮明に覚えています。
その後、前半だけで2失点。
当時最強と謳われたACミラン相手に3点差。
世間知らずで視野が狭く、平凡である自覚すら無い平凡以下の若者にとって、リバプールこそが自分の全てと思える存在で、心の拠り所と呼べるものでした。
絶望でした。
万が一にも翌朝、一睡もせずに誇らしきリバプールFCのユニフォームを着たまま満面の笑みで家を出る、そんなことが想像できるはずもなく。
何かに秀でている訳でも、これといってやりたい事がある訳でもない。
うだつの上がらない毎日と、漠然とした将来への不安。
「自分はなんとかなるだろう」という、よくわからない自信。
大抵の若者が過ごす時期かもしれません。もれなく僕も、その真っ只中にいました。
2000-2001シーズンのカップ・トレブルの後からリバプールを応援し始めた僕は、そんな自分と重ねるように、当時プレミアリーグの上位争いに加わりきれない古豪・リバプールを応援していました。
強豪と呼ばれた時代のことは、もちろん知識としてしか知りません。
そのリバプールが、奇跡を起こして栄光を手にする物語。
そんな「作り話のような現実」が観たかったのです。
今思えばなかなか身勝手な上に、少しばかり捻れた自己顕示欲を抱えて当時は応援していました。
言わずもがな、その身勝手な筋書きは現実のものとなりました。
14年後のマドリードで手にしたもの
2019年、6月1日。
14年前と同じトロフィーをリバプールは掲げていました。
手にしたタイトルの名前は同じですが、少しだけ意味が違うように感じました。
ユルゲン・クロップは昨季、リーグ優勝の可能性が限りなく低くなった状況で「これがあなた達と共に戦った最初のタイトルレースだ」と言いました。
オーナー交代を経て、ダルグリッシュ、ロジャース、そして現監督クロップの就任。
以降、リバプールは戦力的にも戦術的にも、間違いなく強くなりました。
それは他クラブのファンから見ても、認めざるを得ない事実でしょう。
期待してるんだけどちょっと頼りなくて、良い風が吹いても不意にしてしまうリバプール。
つい最近までのそんなチームに愛着すら感じていたファンも少なからずいると思います。
私がそのうちの1人です。
だからこそ、まるで自分自身かのように応援してきたのだとすら思えます。
誰もが認める強豪へと戻ろうとしている姿を喜べない理由なんて、存在する訳がありません。
しかし少しだけ、ほんの少しだけ、寂しいような気持ちがあったりもするのです。
ダメ息子が独り立ちして親離れしたような気分でしょうか。偉そうに。
魔法と現実と、流れた歳月
そんな現在のリバプールが、14年ぶりにビッグイヤーを掲げる姿。
それを僕は家族と呼べる人と抱き合い、喜びを分かち合いながら見ていました。
顔には無精髭が蓄えられ、肌の張りは少しばかり無くなり、お腹はぽっこりと出ています。
おっさんです。
後にイスタンブールの奇跡と名付けられる夜を体験して以降、少年だった僕を包んだ魔法のような興奮と錯覚は数日、いや数週間もすれば解けていきました。
おそらく多くの人の人生と同様に、それからの時間は良い時もあれば悪い時もあった。
幸か不幸か僕にとっては何の変鉄もないような日常が、今日まで続いてきたのです。
ご存知の通りリバプールにも、良い時があれば悪い時がありました。
国内カップ戦等で優勝を味わうことはあったものの、14年の間に大きなトロフィーを掲げることはありませんでした。
楽しい思い出もありますが、それだけではありません。
しかし今は、もしかすると悪かった出来事すら、少しばかり良い思い出と言えるような気もしないでしょうか。
過去は美化されやすいもので、「終わりよければ全て良し」といったような都合の良いことが言いたい訳ではありません。
まして、フットボールにおいても「たられば」はタブーとされています。
ただ過去を振り返った時、一つ一つの出来事のちょっとした違いで、今よりも良い現在になっていた可能性が十分あります。
反面、ずっと最悪な今が訪れていた可能性だって当然あるのです。
それらを考えることには何の意味もないし、誰にも分かりようがない事でしょう。
でも、だからこそ、欧州王者というこれ以上ない結果を手にしたことこそ揺るぎのない事実であり、手放しで喜ぶべき結果です。
それはある意味で、今までの全てのことがあったから手にしている現在であるとも言えると思うのです。
振り返った時、それまでの道のりが全て良かったのだと思えること、その瞬間。
それが幸せなのかなと思うことがあります。
「強いリバプール」が迎える新たなシーズン
昨シーズンのビッグイヤー獲得について、奇跡的と言えるような試合を経て勝ち上がった事に疑いようはありません。
それでも、優勝という「結果」を、奇跡であると感じた人は、14年前よりも圧倒的に少ないのではないでしょうか。
決勝戦の試合内容の通り、他クラブのファンには眠くなるほど、「強いリバプール」が文句なしの優勝を成し遂げたのですから。
14年前、6畳1間でシャビ・アロンソの同点弾に狂喜乱舞していた少年はもう、すっかりおっさんです。
世間を知って一丁前にストレスを抱えて、つまらない人間になりましたが、少なからず守りたいものもできました。
並べて語るには恐れ多いですが、リバプールにもまた、守りたいものができました。
それは14年ぶりに手にした欧州王者の称号であり、プレミアリーグ優勝にあと半歩まで迫った強豪としてのプライドです。
奇跡と呼ばれるロマンチックな試合、優勝に迫ったシーズン、選手たちの輝いた姿は、これからも語り継がれていくでしょう。
それでも、現実逃避だと他所のファンに冷やかされながら、過去の栄光を語る時代は過去のものとなっていくかもしれません。
少なくとも今は、世界のトップ・オブ・トップのクラブだと呼ばれるまでの道のりが、微かでも確かに開かれている気がするのです。
そしてそれを達成することもきっと不可能ではない、監督と選手、フロントのビジョンが揃っています。
私も自身を身勝手に投影した、こっ恥ずかしくて青臭い思い入れとは別れを告げて、ここから先の大きな冒険を楽しませてもらいたいと思います。
最後に
こうして一個人の偏見をもって述べるのは、おこがましいにも程があることは重々承知しております。
都合が良すぎますが、昨季のチームが魅せてくれた奮闘と栄光の喧騒に紛れこませて、ご容赦いただけると幸いです。
イスタンブールをきっかけに応援し始めたファンの方が現在も大勢いるように、今回の欧州制覇からファンとなっていく人が沢山いるでしょう。
そしてこれかからもどんどん、日本、そして世界中に沢山のリバプールサポーターが生まれていくはずです。
どんな事が起ころうともチームを応援しサポートする、それは多くのファンの総意だと思います。
とはいえ、もしかしたら、いえ今度こそ、新たな時代を築いていくであろう、リバプールFCの進撃に胸を踊らせて、新シーズンを迎えたいですね。
気持ち、わかるなあ。
リバプールは本当に、本当に強くなった。
素直に喜んでいる自分に隠れて、過日の不安定でやたら劇的なリバプールを思い出し
一抹の寂しさを感じている自分もいます。
そこには何かしらの自己投影があるのかもしれませんね。
コメントありがとうございます。世代によって感覚は様々だと思いますが、これだけ強いと思えるリヴァプールに正直まだ慣れてない自分もいます。笑
サッカー観戦は突き詰めると自己投影のような部分が多くのファンにあると思いますが、これからも生暖かく見守っていきたいですね!
プレミアリーグのタイトルを目指すにあたって今シーズンからはじまるVARについて一言!
テンポを重視するか、より公正なジャッジを重視するかっていうところですね。プレミアリーグはテンポが大事だよなあと思いますが、不公平なジャッジにストレス感じる事があるのも事実なので、どうなるか見てみよう、です。笑
とても素晴らしい、同じリバプールを愛する身として引き込まれずにはいられない文章でした。感動しました。
あれから14年。ほんの少しの「良いとき」と、たくさんの「そうでないとき」を過ごしてきました。それは、私の人生と同じです。愛着が、これでもかというほどに。
さらに、チームと同等に私が大好きなのは、そんなチームをずっと愛し続けるサポーターの存在です。YNWAの精神は、中学校で教員をする私にとって、子ども達に最も伝えていきたいことの一つです。
ありがとうございます、同じように感じていた方がいるのは凄く嬉しいです。
色々ありますが、その色々をクラブとともに過ごしてきた小さな歴史がきっとファンやサポーターそれぞれにありますね。
ことリバプールに関してはサポーターの存在やアイデンティティが本当に魅力的で、僕も同じように感じます。
実は記事のテーマで1度考えたのですが、YNWAには「一人じゃない、共に歩もう」という直接的な日本語訳以上の、もっと感覚的な深い意味があるように思います。
学校にそんな先生がいたら最高です!笑
僕は13~14のスターリングのシティ戦でのゴールに感動してサポになりました。
当時はリバプールというよりスターリングが好きだったんですけど、移籍によってサポーターから嫌われてしまって凄く悲しいです。こいさんはスターリング嫌いですか?
切り返して決めたやつですよね!あのゴールは僕も興奮しました。スアレス&スタリッジにスターリングがトップ下のような位置に入る形が好きでした。
僕はスターリングを選手として今でも好きですが、嫌いになってしまった人の気持ちも分かります。
しいて言えば、代理人なんかも出てきて少し揉めた上での移籍だったので、もう少し綺麗に出ていってくれば、悪く言う人も少なかったと思うので残念です。
ただスターリングに限らず、サポーターが移籍した選手にブーイングしたり悪く言ったりするのは愛情の裏返しで、それだけ去ったことが残念だという事だと思います。
未だに時々、クロップのチームに彼がいたらどうなってたかな~なんて考えたりします。
僕は、好きな選手は他のサポーターがどう思おうと結局ずっと好きなままの事が多いです!一時的な感情で嫌になっちゃったりする事もありますけどね…。笑
カップトレブル以来のファンとかイスタンブールのハーフタイムの様子とかあまりにも自分と被るので、思わずコメントしちゃいました
思えば「ついにここまで来たか」という感じです
同じCL優勝でも、04-05と18-19では全く状況が違い、今後の展望にワクワクが止まりません
せめて左WGと左SBの控えくらいは獲ってほしいところですが、クロップが若手に賭けるというならそれに従うまでです
今までサッカーの試合で泣いたのはジョホールバルとイスタンブール、そしてアンフィールドの奇跡3試合しかありませんが、またあんな熱い試合を見せてほしいと思います
コメントありがとうございます。
あのとき同じ日本に同じように感じている人がいるなんて想像もできないくらい、僕は若かったです。笑
左問題は気になるところですがミルナーと若手に頑張ってもらうのも全然アリですね。シャキリの左WGも見てみたいです。
CL優勝はいつでも最高の栄誉ですがイスタンブールとマドリードでは味わいが別物でしたね。
僕はジョホールバルの時はサッカー見てなかったのですが大体同じです。
ELのドルトムント戦も熱かったですね。
強くなっても魂を揺さぶるような試合をしてくれるのがリバプールだと思うので、これからも胸を打つプレーを沢山見せてほしいですね!
私はカーリングカップ優勝も嬉しかったですけどね。120分間の死闘。トップディビジョン(プレミア)に属するリバプールが、チャンピオンシップに属するカーディフと対戦し、格下相手に余裕で勝てるだろうと、見ていたら大苦戦!! ただ、ここ一番の頑張りどころで、ダウニング、カイトが躍動! PK戦では、ジェラードのいとこ?のアンソニー・ジェラードのPK失敗。試合後、アンソニーを気づかうスティービー。国内カップの優勝はあったものの・・って、アッサリ流さないで下さい。暗黒期の中で勝ち取った一つの輝きですよ! あと、ロジャースじゃなくて、ロジャーズですね。
コメントありがとうございます。
直近ふたつのCL制覇にスポットを当てて考えていたので、カーリングカップの優勝に限りませんが、ネオさんが暗黒期と仰っている時期の一つ一つの試合に僕も一喜一憂していましたし、全く同じでは無いかもしれませんが、思い入れも沢山あります。
ただ、文面に配慮が足りなかったですね。申し訳ありません。
また表記について、ブレンダン・ロジャーズが正しい事を初めて知りました。勉強不足でお恥ずかしい限りです、重ねてお詫びします。ごめんなさい…!