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リバプール(街)編
Amazonで「リバプール 本」と検索すると水着のお姉さん達が大量にヒットするような状態のため、日本語でリバプールについての記述がある本はそう多くない。『ビートルズ都市論』では冒頭の1章のみではあるがリバプールの歴史や地域性が紹介されている。クラブがきっかけでビートルズに関心を持った方も新書なので気軽に手に取れる。ちなみにAmazonの検索結果は「旬のアイドル・タレントなどの映像コンテンツを手掛けるリバプール株式会」の存在が故。社名の由来は不明。
『リバプールより悪意をこめて』でも50年ほど前の等身大の姿のリバープール、イギリス、そしてフットボールに触れられる。日本のテレビでも活躍した(らしい)トニー・クロスビーによってユーモラスに描かれてている貴重なエッセーだ。章間でのサポーターソングやスカウスのコラムも必見。馬主がユナイテッドに加入する前に書かれた本なのでワンダーボーイへの評価が非常に高い。こちらと『英国のダービーマッチ』は残念ながら中古品しか現在は出回っていないので注意。Amazonのkindleリクエストでどうにかなるかは不明だが読みたい方は試してみる価値はあるかもしれない。
スーパーリーグ騒動編
『英国のダービーマッチ』と『億万長者サッカークラブ』はリバプールを主題とした本ではないが、それぞれ〈リヴァプール-マージー川を超える熱気〉と2章〈アメリカ編〉でリバプールについて取り上げられている。前者ではイングランドとスコットランドの8つのダービーマッチを題材としてクラブや土地、ライバル関係の歴史といった「伝統的なフットボール」が綴らている。一方後者ではアブラモヴィッチ以降のマネーゲームに巻き込まれたフットボール界の様相が記され、リバプールについてはH&GからFSGへの変遷、チケット値上げ騒動までが収められている。
20-21シーズンの主要トピックスとなってしまったスーパーリーグ論争を考えるうえでも参考になる2冊ではあるが、事の問題は単純な「ファンvsオーナー」や「ローカルvsグローバル」といった構図では決してないだろう。慢性的な財政面の問題は常に3ポイントを望むファンの要求に応えるための投資でもあり、そのためにグローバル市場を無視することは不可能だ。アメリカ人オーナーを諸悪の根源とする論調も目立ったが、いわばファンと共犯的に進められたのがメガクラブの拡大であり、一線を越えた先がスーパーリーグであった。反対運動による帰結は「ファンの勝利」と称えられたが、持たざるクラブが栄光を手にする可能性は既に”宝くじを買う権利” (スペインの友人談) 程度のものだ。メガクラブのファンからすると、現在のフォーマットのなかで非主要クラブの段階的な衰退からは目を逸らせても、多くを”殺す”ことになる体制解体への加担には抵抗感を覚えたとしても無理はない。
とはいえ国内リーグの地域性がフットボールの魅力を高めているのは(フットボールファンにとっては)紛れもない事実であり、ローカルファンの存在はグローバルファンをより強く惹きつける。遥々アンフィールドへ足を運ぶならば、「旅行客よりも、聴き取れないようなスカウスを話す地元ファンに囲まれたい」のが自らも観光客でありながらも抱く本音だろう。少なくとも短期的には財政面で”合理的”な判断をしたオーナー陣(とはいえ動機から行動まで全く一枚岩とはなっていないが)が選手や監督、ファンの意志に対する過小評価が意図せざるものだったかは計りかねるが、今回の構想頓挫をもって反対派を一方的な「正義」としても持続可能な結論を得られるかは疑問が残る。複雑な要因が絡まり合って度々浮上するスーパーリーグ構想の背景がまとめられており、騒動を今一度考えるのにもお勧めの本になっている。
オフィシャルパートナー講談社編
突如発表されタイムラインを賑わせたリバプールと講談社の「オフィシャル・グローバル・パートナー シップ」契約の報。アンフィールドやマッチデープログラムでの広告の掲示といったリバプールのチャネルを活用したグローバル展開は勿論、 LFC 財団と共にリバプールの学生の雇用機会を提供する「Creative Works」というプログラムを立ち上げる(詳細はこちら)。つまり、このパートナーシップ契約により講談社から出版される本は全てリバプール本となった(ならない)。ご贔屓のクラブとパートナーシップを結ぶ企業もいかに贔屓にするかはファン・サポーターの腕の見せ所であり、リバプールファンはニベアで洗顔・保湿後に、朝食にシャウエッセンを食べ、全身Levi’sを身に纏ってからファルケンタイヤで移動するのが相場となっている(その他のパートナー一覧はこちら。もちろん晩酌はカールスバーグです)。という訳で講談社の作品を広めるべくTwitterで「#リバプールファンが選ぶ講談社オススメ本」にて投稿を皆さまお待ちしております。ちなみにゲキサカは講談社が運営しているのでどんどんアクセスしましょう。
紹介するのは三島由紀夫賞受賞、芥川賞候補作ともなった『旅する練習』。サッカー少女とその叔父が利根川沿いを歩いて鹿嶋を目指すコロナ禍の物語。成長あり、出会いありの旅路はまさにYNWAであり完全なるリバプール本となっている。心情や風景の細かな描写が美しく、散歩に出かけたくなる一冊。終着地が鹿島アントラーズの本拠地であることもリバープールのチームカラーを暗示しているのではないか。
続いては伊坂幸太郎『PK』。3点ビハインドから追いつきPK戦の末にビッグイヤーを掲げたイスタンブールでの栄光を想起させるタイトルからもリバープール本である可能性が高い(※ちゃんと読みました)。もっとも、作中のPKは試合中のものであるのだが、思い返せばマドリードでのタイトルもサラーが決めたPKが決勝点だ。3篇の物語が進んで行きながらも読み終えると1つの長編となるSF作品。
高校女子サッカーを描いた『さよなら私のクラマー』もゲーゲンプレスが出てくるので間違いなくリバプール漫画。ピッチでのメンタリティ、戦術、青春、そして女子サッカーならではの苦悩が詰まった、”This is Football!”と叫びたくなるようなシーンに溢れた漫画。ぜひノンちゃんにはLiverpool FC Womenに加入してイングランドで活躍して欲しいものです。中学時代の 『さよならフットボール』を読んでからだとより楽しめる。アニメ、映画も公開中。
フットボールは犠牲だ
『さよなら私のクラマー』11巻より
望むポジションで望むプレイだけできる選手なんて
まーいない 絶対いねぇ
たいてい意に沿わないタスクをいくつもかかえている
おわりに
以上、リバプール本のまとめでした。他にもまごうことなきリバプール本ありましたら、コメント、Twitterにてぜひぜひ教えてください!
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