「リバプールのすべて」をデザインした、サッカーを愛するデザイナー『Ayako』とは?

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マジスタ#7
LFCラボ@lfc_lab https://lfclab.jp/ |分析|選手名鑑|コラム|レビュー|インタビュー|和訳 YNWA!

クロップがリバプールにやってきてから早5年。
クラブは素晴らしいチームを作り上げ、ついに念願のプレミアリーグ制覇を成し遂げた。

前年の欧州制覇に続き、飛ぶ鳥落とす勢いで躍進を続けるリバプール。

そんなクラブの復権の秘密を、ピッチの内外、様々な面から紐解く書籍「リバプールのすべて」が発売された。

結城康平さんが客観的に綴った文章は、何年経った後もこの時代のリバプールを思い出し振り返りたくなるような、コンテンツとしての「リバプールのすべて」だったが、この本にはさらなる「リバプールのすべて」たる所以が施されている。

それは、書店で見かけると思わず手にとってしまような、細部を見ればみるほどリバプール要素を感じてしまうような、一冊の本に愛着をもたずにはいられないこの本の「デザイン」だ。

この本の表紙、カバーなどのデザインを担当したのは、デザイナーのAyakoさん。

ただのデザイナーではなく筋金入りのサッカーファンである彼女が、この一冊をコンテンツ面だけでなく、デザイン面からも「リバプールのすべて」に設計した。

今回はリバプール要素溢れるこの本へのこだわりと、サッカーを愛するデザイナー『Ayako』さんのサッカーへの想いについて迫るため、インタビュー企画を実施した。

快くインタビューに応じてくださり、デザインへのこだわりと、並々ならぬサッカーへの愛情を素敵な文章で語ってくれたAyakoさん。

リバプールを好きな方も、そうでない方も、本記事を通してAyakoさんの想いと人柄を知っていただけたら幸いだ。

Ayakoさん インタビュー

[マジスタ]
本日はよろしくお願いします!
まず初めに、普段からサッカーにまつわるデザインやカルチャーに関するツイートを拝見しています。
その関係のお仕事をされてるのでしょうか?

[Ayako]
よろしくお願いします!
2006年ワールドカップ ドイツ大会頃から、主にサッカーに関する仕事をしています。サッカー書籍や雑誌、広告、グラフィック、ロゴデザイン、また、Jリーグクラブほかの発行物やプロモーション、グッズなどのデザインをしたり、EUROJAPAN CUP、Rakuten Cup、高円宮杯決勝など大会のパンフレット、ビジュアルを作ったりしています。

[マジスタ]
すごい!僕が普段目にしていたサッカーのグラフィックをAyakoさんがデザインされていたなんて!
EURO JAPAN CUPもRakuten Cupのパンフレットも見たことあります!

その他にも読んだことのあるたくさんのサッカー本がAyakoさんによってデザインされていたことを知り、感動を隠せません。(笑)

他にデザインを担当された書籍はありますでしょうか?

[Ayako]
「ペップ・シティ スーパーチームの設計図」がそうです!

[マジスタ]
おぉ!これも話題になりましたね。
今やプレミアを代表する2つのクラブとして取り上げられることも多い、マンチェスター・シティとリバプールですが、デザインする際にはどのようなイメージに違いを意識されたのでしょうか?

[Ayako]
それぞれカバーの紙質にこだわり、本としてのマテリアル感を目指しました。
「ペップ・シティ」の方では、日本語タイトルよりも英語タイトルを大きくデザインすることで、洋書のような雰囲気を意識しました。

[マジスタ]
なるほど。確かに表紙を見たとき英語が大きく、フォントや配色からも洋書のような印象を受けますね!
同じ方がデザインされても、本によってこれだけ印象が変わるのはすごい・・・!

では本題の「リバプールのすべて」のデザインに関してですが、まずカバーの内側の特徴的なグリーンが大きな話題となっています。
込めた想いやこだわりがあれば教えてください!

[Ayako]
ありがとうございます!
クラブをテーマにしたものを制作する際、事前に必ず確認するのがそのクラブのオフィシャルオンラインショップです。
ファンにどのようなアパレルやグッズが届いているのかを見ながら制作イメージを固めます。
そしてリバプールのカラーを紐解くと、クレストにも表現されているあのグリーンもポイントと言えます。

[マジスタ]
クラブの象徴的な赤に続いて、クレストで印象的なグリーンですね!
クラブのオフィシャルショップの商品もデザイナーの方のイメージの源になっているとは驚きです。

リバプールのグッズやアパレルには、他のクラブと比べてどのような特徴があると感じますか?
またこれ良いなと思った商品があれば教えてください!

[Ayako]
ほとんどの商品に、今やNIKEのスウォッシュのようなアイコンとなったライバーバードが採用されていますよね。
カールスバーグのロゴが入ったレトロシャツ、ウィメンズのジムウェア、そして「LFC Womens ’47 Clean Up Pink Cap」は本気で買おうか迷っています(笑)

[マジスタ]
この帽子ステキです!
リバプールファンが街で見かけたら、振り返ってしまいますね。(笑)

[Ayako]
私はヨーロッパサッカーを観に行く際ファンショップを巡るのが趣味なのですが、アパレル、キッズ、ホームスタイリング…帽子ひとつにせよ、ここまでのラインナップは見たことがありません。
もしリバプールへ行ったら、帰りのスーツケースは間違いなく重量オーバーになりますね。(笑)

[マジスタ]
超過料金覚悟ですね。(笑)
グリーンといえば、新シーズンのユニフォームも襟と袖のグリーンが印象的なデザインとなっていますよね。

[Ayako]
近年では翌シーズンのユニフォームデザインがインターネット上で早めにリークされることが多々ありますので、もちろんそちらもチェックしています。
本のカバーの折れている部分を「袖」と言うのですが、20-21ユニフォームの袖のあしらいとダジャレ的に掛けていたりします。(笑)

[マジスタ]
ダジャレだったんですね。(笑)遊び心すごく好きです。

ツイートでご自身を「ユニフォームおたく」を書いているのを見かけました。
現在のツイッターのアイコンもビジャレアルのユニフォームを着ているものですが、何着くらい持っているのでしょうか?
その中で、特にお気に入りや思い入れがあるものがあれば教えてください。

[Ayako]
数えたことはありませんが、基本的には行ったことのある街のクラブのユニフォームで気に入ったデザインのものがあれば買う、という感じです。
98-99スペイン代表の3rdなど、ボディが透かしだったり、刺繍が凝っていたりするいわゆるクラシックなユニフォームが好きです。
襟は立てるタイプです。(笑)

[マジスタ]
カントナですね。(笑)

[Ayako]
2011フランス代表のボーダーデザインや、06-07PSGのヴィトン風モノグラムなどの普段使いできるシンプルなタイプも好きです。また、16-17ボルドーの3rdのようなその街のシンボルがデザインされたものもたまりませんよね。
在宅仕事のため、夏場はほぼ毎日ユニフォームで過ごしています。

France 2011 home kit
Bordeaux 2016-17 3rd kit

[マジスタ]
普段使いできるの良いですよね。毎日ユニフォーム生活は憧れるなぁ・・・。
リバプールからもヴィトン風でました!(笑)

Liverpool 20-21 prematch top

ではデザイナーの方から見て、リバプールの新シーズンのユニフォームはどのような印象を受けますか?

[Ayako]
ボディのレッドが新鮮です! 襟や袖のティールグリーンとホワイトのトリミングも効いていて、赤色ながら熱苦しさをまったく感じさせないクリーンさがあるなと思います。

[マジスタ]
近年のデザイン・色味とは異なりますが、かなりフレッシュでかっこいいですよね!
Away kitはいかがでしょうか?

[Ayako]
Away kitは、シャツ、パンツ、ソックス…それぞれのアイテムをタウンユースでコーディネートして楽しみたいくらい、とてもポジティブで洗練された美しいカラーですよね。
パーカーやオーバーオールの中に着るなど、露出面積を狭めてのポイント使いも楽しめそうです。

[マジスタ]
ユニフォームとは思えない美しい水色ですよね!
露出面積を狭めてもいいアクセント的な役割を果たしてくれそうですね。読者の方のコーディネート楽しみにしています!(笑)

[Ayako]
お待ちしています!(笑)
これだけかっこいいと、もし来シーズン入場制限が解かれたなら、(スタジアムを赤色に染めるという意味ではHome kit一択だと思うのですが)360度赤いアンフィールドでどれだけこの色を着てスタジアムに来る人がいるかを注目したいと思います。

Ayakoさんの描いたLiverpool 2nd kit Women’s

[マジスタ]
確かにスタンドの色合いは楽しみですね。
サポーターのいるアンフィールド楽しみ・・・

またカバーを外した際に顕現する「Y N W A」の文字も話題を集めています。

[Ayako]
所々に入れ込んだYNWAのメッセージ、気が付いてくださってとても嬉しいです。
アンフィールドへはまだ行ったことがないのですが、これまで様々なスタジアムでこの歌を聴いて歌ってきたこともあり、間違いなく私の人生でも最も大切なアンセムです。

[マジスタ]
本当に大切なこの歌が、書籍の中に折り込まれていることは、間違いなくこの一冊への愛着を深めてくれました。
Ayakoさんのサッカーへの愛が成す、粋な計らいが嬉しいです!

本のデザインに話を戻しまして、書店で並んでいるのを見かけた際、とてもかっこよく、SNSでも映える印象を受けたのですが、赤の色味やフォントには何かこだわりがあるのでしょうか。

[Ayako]
ありがとうございます。
リバプールのレッドはいわゆる真っ赤ではなく、絶妙に抜け感のある、黄味の少ないクリーンなレッドが採用されています。
アマゾンプライムのサッカードキュメンタリー『THIS IS FOOTBLL』リバプール編でも、同じレッドがクラブカラーであるアーセナルを引き合いに出して「まだアーセナルの赤よ、リバプールの赤にして」と、女性がネイルを塗ってもらうシーンが出てきます。
同じような色に見えても、色にはそれぞれのクラブごとに強いアイデンティティがあるものだと思いますので、まずは「これがリバプールだ!」と一発でわかるような赤色を押し出すことを決めました。

[マジスタ]
黄味の少ないクリーンなレッド!!
これが今回の書籍含むリバプールレッドの印象の理由なんですね。

[Ayako]
はい!
また、メインの写真の選定は編集部と「セレブレーション感のある写真で」と言う意見が合致したので、あちらの写真を選びました。翌シーズンよりサプライヤーがNIKEになることが決定していたので、クロップのシューズにドーンとあるNew balanceのNが、時が経った後に見返していただいても「あのシーズンの時のこと」と、わかりやすくていいかなと(笑)

[マジスタ]
サポーターの細やかな思い出にまで配慮していただいているなんて・・・!

[Ayako]
また、タイトルの日本語フォントは一般的な元のフォントから微妙に雰囲気とリズムをつけて造作しているのと、英語フォントは「L.F.C.」などに表現されるフォントに限りなく近いものを選択し、本としてのマテリアル感を高められればと思いました。

[マジスタ]
我々が気づかないところにまで随所に細やかなリバプール要素が散りばめられているんですね・・・。
「リバプールのすべて」にふさわしいデザイン!

では本を手にとった人であれば誰もが感じた手触りの良いカバー素材。
こちらはどういった経緯でこの素材が選ばれたのでしょうか?

[Ayako]
手にとっていただいたときに「おっ!」と違いを感じていただけるであろう、通常のマット加工よりもすべすべとしたしっとり感のある加工にしました。
手触りだけではなく、見た目もしっとりとして高級感があるのが特徴です。
また、マット加工は傷がつきやすいと言うデメリットがあるのですが、今回の加工は擦れなどにも強いので、長く本棚に置いていただけたら嬉しいですね。

[マジスタ]
リバプールがプレミアリーグで優勝した年に発売された素晴らしい1冊として、いつまでも大切に本棚に鎮座させます!(笑)

そもそも本のデザイン製作にはどういう工程やポイントがあるんでしょうか。

[Ayako]
装丁のデザインをする上で一番大切にしているのは、本を購入いただいた後、本棚やお部屋に存在する状況を想像するということです。
読み終わったその後も、ふとした時に目に入れていただけたらと思って。書店に並んでいる時のことももちろん意識して、ひとりでも多くの方に“ジャケ買い”していただけたら嬉しいです。

[マジスタ]
これは間違いなくジャケ買いして本棚に並べたくなる一冊ですね。

[Ayako]
本のタイトルでエゴサもしますよ(笑)

[マジスタ]
エゴサしていて嬉しい意見とかってありましたか?

[Ayako]
やはり1冊でも多く売れてほしいので、購入報告が一番嬉しいです! 装丁のデザイン的なところにもコメントをいただいたりしているのを拝見したときには、SNSの画面越しに勝手にものすごく感謝しています。

[マジスタ]
そういった報告たくさん見かけました!
僕たちの発信は、確かに出版に携わった方の元に届いているんですね!

ツイートを拝見しているとサッカーをカルチャーの面から愛されていると伝わってきます。特に深く記憶に残っている出来事はありますか。ご自身の現地での経験でも良いですし、テレビやニュースで感じたことでも結構です。

[Ayako]
嗜好や仕事上、ユニフォームなどのデザインやいわゆるフットボールカルチャーは大好物です。ですが最近よく思うのは、「カルチャー」って、そのど真ん中で生きている人間はあまり「これがカルチャーだ」と言葉にはしないよなということ。サッカーの文化的活動や言動も大切にしたいですが、それよりもっと今この時代だからこそ、喜怒哀楽や熱狂などサッカーにおける生の情熱的な部分を改めて愛していきたいと思っています。

[マジスタ]
なるほど。とても興味深いです。
ご自身の周りでも、仕事にされてる方や楽しんでる方は「主張」というよりも「生きている」という感覚でしょうか。
サッカーのスポーツとしての側面以外の奥深さも広まって欲しいと思いますが、押し売りすればいいものではないので難しいところですね・・・。

[Ayako]
同感です。
「カルチャー」と文字にすると競技やスタジアムの現場がそうではないように捉えられがちですが、サッカーはスタジアムこそ、そこに生きる人々こそがカルチャーだと思っています。ピッチもスタンドも、新たな世代がスタジアムを訪れることでミックスしていく歴史が面白いです。近年はファッション的なストリートとの融合ブームを良しとし過ぎて、見た目がフォーマット化してしまっても逆につまらないかなとも思います。心にクレストさえあればどんなスタイル、年代も受け入れてくれるスタジアムが理想です。

[マジスタ]
その通りだと思います。
また心にクレストすらなくても、その場を楽しみ、自然と心にクレストが宿るような場所にもなれれば最高だと思います。

画像出典:Liverpool FC 公式Twitter

そのように感じたのにはご自身の経験が大きいのでしょうか?

[Ayako]
2005年、ワールドユース・オランダ大会とコンフェデレーションズカップ・ドイツ大会へ各日本代表の応援に行ったのがはじめてのヨーロッパでのサッカー観戦でした。代表戦を観に行ったのに、それぞれの街のクラブのファンの方々が歓迎してくれたり、一緒に戦ったりしてくれて。おらが街にサッカークラブがあることがどれだけ幸せなことか、情熱的な光景を目の当たりにして、たくさんの思い出があります。

[マジスタ]
なんとも羨ましい経験・・・!
特に代表戦ならではの経験ですね。
今まで何カ国、いくつのスタジアムを訪問されたのでしょうか?

[Ayako]
ヨーロッパで10カ国、アジアチャンピオンズリーグなどを入れると12カ国でしょうか。ヨーロッパでおそらく34、韓国や中国を入れると40のスタジアムかなと。

[マジスタ]
羨ましいです・・・。
特にお気に入りのスタジアムってありますか?(クラブではなく)

[Ayako]
40のスタジアムそれぞれに濃厚な思い出がありますが、一番…となると、スポルティング・リスボンの「ジョゼ・アルバラーデ」かもしれません。とても家族的な雰囲気に包まれているんです。アズレージョと呼ばれる伝統的なボルトガルタイルが外観に張り巡らされていたり、スタンドの椅子の色がカラフルなのも素敵だったり。
近代的なタイプで言えば、昨年行ったヘント(ベルギー)のスタジアムもスタイリッシュでかっこよかったです!

ジョゼ・アルバラーテ
画像出典:Sporting Clube de Portugal 公式Twitter

[マジスタ]
あ!ジョゼ・アルバラーテは知人も行って本当に良いスタジアムだったと言っていました!
スタジアムでのエピソードだけでインタビューしたいくらい素敵な経験なのでしょうね。
他にヨーロッパのスタジアムで印象的なエピソードはありますでしょうか?

[Ayako]
2005年のヨーロッパでの代表戦観戦の後、ワールドカップやEURO、CL、EL、リーグ戦などで様々なスタジアムへ行き、以前で言うところのエリートスタジアムにもいくつか行きましたが、昨年スペインのラージョやベルギーのロケレンなど久しぶりにコンパクトな規模のスタジアムへ行って、2005年にはじめて得た感情を思い起こしました。
「そういえばあの時出会った人々はカルチャーを生きていたのだろうか?」
サッカーを愛する上でも、仕事をする上でも、いつも考えていることです。着飾っていない、リアルな人生や日々の生活の中にサッカーがあり、それがとても素敵だということを大切にしたいと思っています。

[マジスタ]
最後の一言に心が動かされました。
この素敵な一言がAyakoさんのサッカー愛、そしてサッカーでの素敵なお仕事に反映されているのですね。

それでは様々なサッカークラブの魅力を知るAyakoさんの視点で、リバプールの魅力とはどのように映っているのでしょうか?

[Ayako]
「THIS IS ANFIELD」と言い切るすべての勝利、すべての奇跡、すべての悲劇、そしてそこに集うすべてのファンがクラブの魅力と言えるのではないでしょうか。個人的にはベニテスの時代がよく印象に残っていますが、今のクロップの歴史のうちに、ぜひアンフィールドへ行ってみたいなと思います!

画像出典:Liverpool FC 公式 Twitter

[マジスタ]
ありがとうございます。
Ayakoさんの目にもそのように映るクラブを応援していること、改めて本当に幸せに思います。
「THIS IS ANFIELD」も「This means more」もこのシンプルな一言に、多くを語らない魅力が詰まっていますよね。

本日はありがとうございました!
最後に一言よろしくお願いします!

[Ayako]
今回「リバプールのすべて」の発売にあたりリバプールファンの皆様の情熱に触れ、驚きとともに本当に感動しました! いつかアンフィールドへ行く時が来たら、ぜひビールでも飲みながらリバプールの街のオススメなどレクチャーいただけたら大変嬉しいです!

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